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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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50.トラブル発生

外出してあちこち飛び回ったので、一度帰ってから身支度をし直す。

黒い魔石のついたリボンで髪を留め、ミラルダさんに貰ったオレンジの色石付きの腰帯がチョーカーと色味が凄く合うので飾りにそれだけは結んで。


手土産代わりにお茶の粉や砂糖や塩を入れた壺、ゼラチンで作った牛乳ゼリーにオレンジソース。

そわそわしながらあれこれ作っていたら午後になったので、凱旋待ちのために少し早めに待っていようとオクティと共にいつもの白いローブを着てドアを開けたら、家の扉の前からほんの数歩離れた所でメイドさんたちが2人、立って何か話しあっているのが見える。


「わっ?ど、どうしたの?」

「先程お預かりした転送盤について洞窟行きのものであると本家に報告をあげましたら、すぐに転送所へ設置したいので持ってきて欲しいと言われまして、そのお知らせと共に。おふたりも午後には遠征隊の帰還を出迎えに行く予定のはずですから、ここで合流して広場までご一緒しようと思いましたの」


「それでなんで外に?普通にノックして貰って良いのに……」

「それなのですが。どうやら少々問題が起きているようで、ただいま本家の秘書達と連絡を取っておりました」

「問題?」


「遠征隊から、帰還の先触れが届いていません」

「えっ」

「遠征隊には、冒険者の中で魔獣を単独で問題なく処理できるものを必ず複数人同行させておりまして。帰還時は先行して到着の半日ほど前に先触れが来るはずなのです。どんなに遅くとも昼前には到着していないとおかしいのですが、現時点で未着とのこと。斥候と遠征隊がそれぞれどうなっているのか、現状確認のため早急に捜索隊を組んでいる最中とのことです」


オクティと顏を見合わせる。いつもよりキツい目つきでグッと堪えた後、冷静に口を開く。

「――俺は冒険者組合に顔を出してみる。転送盤はそのまま設置で構わないから届けておいてくれ」

「承知いたしました!」


メイドさんの手をよく見ると、彼女たちの襟についているのとは違うデザインの、見覚えのある秘書さんに渡した通信石のピンがあった。

「オクトエイド様から許可が下りましたので、設置お願いしますわ。わたくし達は冒険者組合へ向かいます」

「参りましょうー!」

2人ともついてくるみたい。

秘書さんの石を持ってる方のメイドさんが前を、もう一人が後ろを歩いて広場まで向かう。


確認出来ている話によると、今回の遠征隊が向かったのは今までの川やオレンジがあったのとはほぼ反対方向。

空から見た時に見えた凍土が広がっている方角を探索に出た、という話のようだ。

まだそちらは初探索なので慎重に、まずは一気に行かず片道二日くらいで今後の探索について目星を付けるだけという予定だったそう。


「ふむ?街から2日程度か。それだとまだ凍土までは到達しないはず、だよな?」

「うん……私たちが空から見た時は確かメイジア国と同じくらい離れてるように見えたから、4,5日はかかると思うんだけど」

「あちら側は探索が進んでいませんから、単純に前代未聞な規模の魔獣溜まりが発生していて全滅、という可能性も捨てきれませんが。それなりに遠征に慣れたメンバーが8名に魔塔の魔法師団4名、斥候や周囲警戒のための冒険者も6名付いていたといいますから。ただの亜人や魔獣相手ではない可能性が高いと考えられておりますわね」


冒険者組合に駆け込むように受付へ直行すると、既に受付前のロビーに青髪の組合長や多数の冒険者たちが集まっていてこちらに視線が集まる。

「オクティ!お前も聞いたんだな?こちらにもつい先ほど報せが来て、メンバーを選んでここに居ない奴は呼び出そうと思っていたところだ」

「今日の先触れが来ない以外に、連絡がつかなかったことは?」

「いいや。昨夜まで、日が落ちた後に火魔法で『予定通り』の合図が空に打ち上げられたことを城壁の上から確認しているし位置も想定から大きく外れたりはしていなかった。異変は昨夜から今朝の間のどこかで起きたということだ」


やっぱり魔獣が湧き放題の森でのキャンプは危険なんだ……遠征隊にも転送盤を持たせて夜は帰って来て貰うとか、通信石を持たせてこちらでも誰かがずっと握って連絡を受けられるようにしておくとか、何かしらの対策を持ってもらうべきなのかもしれない。


「組合長。捜索部隊の人選は終わってるのか?俺も参加を希望したいんだが」

「私も!」

「オクティは勿論だが、その……」

「遠征に参加している魔法師団の1人が、オクティのお母さんのはずなんです。私も行きます!」

「そういうことか、わかった。正直に言ってかなり助かる。ワイバーン乗りの訓練生たちが間に合っていたら行って貰ったんだが、風使いの中でも何十分も長距離飛行が出来るやつは少ないんだ。上空からの索敵のあるなしは大きい」


後ろでメイドさんたちが小さく挙手をする。

「自衛はしますので追従させてくださいませ。わたくし達には仲間同士の通信手段がありますので、街との直接連絡が出来ますわ」


ふと、アイテムボックスの中に、先に組んでおいた転送盤がまだ3セットほどあるのを思い出した。

私たち2人にメイドさんを1人連れて3人だけくらいならオクティ1人でも充分飛べるし、というよりも見てる人が居なければテレポートが使い放題だし、他の人が居ない方が動きやすいかも。


隣のオクティの服を引いて、抑えない周りにも聞こえる声を出す。

「ね、ねぇ。転送盤の片方を幾つか置いていくから。私とオクティとメイドさん1人だけ、転送盤を持って飛んで上空から探して。人が必要になったら街に連絡して、転送盤で増援を送って貰うんじゃダメ……かな?

――これから人を選んだりして時間をかけるより、少しでも早く行った方が良いと思うの」

「スピード重視なら確かにありだと思う。組合長、俺たちで先行してもいいか?」


「ぐ。冒険者所属ではない者たちを危険な任に着かせることになるが。状況が状況だ。――わかった。君たちは先行して捜索し、増援が必要になったらどこか地上に降りて転送盤を設置し連絡を送ってくれ。こちらは獣人部隊を加えた地上部隊を作って街側から順次捜索を行うと共に、連絡があればすぐに飛べるように増援部隊も控えさせておく」


オクティと目を合わせて頷いて、ローブの中に手を突っ込んで転送盤の片割れを3つとも床に取り出して並べ。

「じゃあ先に行きますね!」


2人のメイドさんも片方が小走りに駆け寄って来たのでそのまま3人で組合を飛び出し、サッと建物の陰に駆け込んで二人の腕を掴んでテレポート。以前獣人が暴走しそうだったダンジョンの印を選び。

「上空、かなり高い所にテレポート!」と雑に指定。

……本当に結構高い所へ飛んでしまったようで、足元ずっと下の方に赤い傘を被った街が小さく見えた。


「わわわ高すぎたかも?!手を放さないでね!!」

「ひ、ひゃいっ?!ちょ、ひ、先に教えておいて欲しかったですのぉっ!チョーコ様ちょっと失礼いたしますわっ!」

必死になってぎゅうっとチョーコに両腕でしがみ付いたメイドさん。服の下に鉄板でも入ってるのか、角が当たる部分はどこにもないけど、どこもかしこも金属のように固い。


「……防御を上げてるのはリナとマナ、だっけ?」

「わたくしは警備隊長のルナですわぁ!このくらいのプロテクターは全員付けてますの。リナとマナはシールド魔法と部分的な身体強化を含めた護身術が得意ですのよぉ」

「そうなんだ。ルナは何が得意なの?」

「格闘と風の刃も一応習いましたけどぉ、得意なのは毒とワイヤーと身体強化ですのぉ!……この高さで一切びびらないとか、ご主人様たち度胸がありすぎではございませんこと?!」


「「慣れてるから。あ、被った」」

本当に台詞が全部被って思わず2人で笑ってしまう。

「似たもの夫婦なんですのねぇ……」

落ち着いてみれば、既に周囲はオクティが保護していて強い風にあおられていたりもしないし、スムーズに凍土が見える方向へと高度を下げながら向かっているのが分かる。

ルナも半ば呆れたような深呼吸のようなため息のような呼吸をしてから、地上に目を走らせた。


「――あ!あの旗が昨夜、遠征隊からの合図が送られてたというキャンプ地のはずですわぁ!」

ルナが指さした先をよーく見ると、確かに他の木よりも高い所に白いひらひらしたものが小さく見えた。

「わかった、あの辺りに飛ぶね!テレポート」


旗を上から見下ろせる位置に飛ぶと、オクティは下へは降りずにまず上空から木の間を確認するようにぐるりと滑空する。

白い数人が寝られそうな三角の大きいテントが5張り、大きめの焚火が1つ、四方を囲むようにかがり火が4つ。薪はすべて完全に燃え尽きた状態になっており、ひとけはない。


「キャンプを畳もうとした痕跡が見られませんわねぇ」

「人間もだが、亜人や魔獣の気配もないぞ……どういうことだ」

「降りてみても大丈夫かなぁ?」

周囲の警戒はしながら降りて、テントの中や見張りが居たはずの焚火周囲やキャンプの周りを見て回る。


テントの中は普通に毛布が捲れた状態で落ちていて、装備などは置いてあったが、誰かに外されて捨てられたんじゃなく、自分で外して並べて置いて寝たんだろうなと思える整い具合。焚火の周囲には木箱に乗った飲みかけのお茶の入ったカップもあるけど、倒れたり零れたりもしていない。


「うーん……勿論魔獣に襲われたわけじゃないとして。盗賊が忍び込んでってこともなさそう。ねぇルナ?毒を使うのなら人を眠らせるとかそういうのもない?」

「睡眠というよりは気絶させるものはわたくしも持ってますけどぉ、刺したり飲ませたりした直後に一瞬で昏倒するわけじゃないですわぁ?このキャンプには総勢18人もいましたのよ?誰かは身体の異常に気付いて、もがいたり暴れたりした跡を残していないとおかしいですの。……それに、靴が1つも残されていない、というのが変ですわよねぇ?」


「毛布を使った跡はあるし、装備品も外したままだ。つまり『寝ていた者たちもわざわざ靴を履いて外に出た』ということだよな……」

「おかしいというなら、亜人や魔獣が一切出てこないのも、おかしい部分ですわよねぇ」


「オクティ、魚人さんが住んでる湖みたいな、魔獣や瘴気を追い出す結界とか張られてたりしない?」

「ない。が……ん?瘴気が、あっちに向かって吸われてるみたいだ」


指さしたのは、街と反対、森の奥の凍土がある方向……

「瘴気を吸い込む何かがある?……ちょっとそっちに行ってみようか」

「他に手がかりはないしな」

「そろそろ増援を頼んだ方がよろしくありませんことぉ?」


「いや、まだいい。それなりに戦えるメンバーを含んだ18人もの集団が消えたんだ。単純な戦力を増やすだけでは、被害者を増やすだけになりかねないだろ?問題を確認して何が必要か判断してからにした方が良い」

「あと私も、周りの人目が少ない方が、色々力を使いやすいんだよねぇ……」

「確かに、それらの言い分は納得できますわね」


メイドさんは自分の襟に付いたピンを触ってオクティの魔眼で瘴気の異常な流れを調査するので、増援が必要かどうかはその後に判断すると連絡をしながら、後ろを付いてくる。


「森の中だと見通せないな、やっぱり少し上から見てみよう」

暫く歩いてから、オクティがそう言ってチョーコの手を取ると、チョーコの背にルナが素早くしがみ付く。


チョーコの目には単純に動くものがなにも見当たらないただの森にしか見えないけれど。オクティは木の上へ高度を上げて奥へ飛びながら周りを見回しているうちに、何か見つけたようで少しだけ進行方向を変え、速度を速める。

「何か、見つけたの?」

「森の中を歩いて一日くらいの距離だと思うが。この方向にまっすぐ行った所に瘴気を吸い込む……おそらく深い穴のようなものがある」

「場所が分かれば飛べるんだけど何かない?」

「力の流れ以外の目印……少しずれるが、前日のキャンプ地にしていたと思われる、あの白い旗が近いかな」

「わかった!」


テレポートで旗の所に飛んでから少し移動、といっても本当にかなり近所だった。

多分直径は2mよりちょっと広いくらい?土にそのまま開いた穴で、不思議なほど綺麗に縁も崩れてない……ということは何かが出入りしてるなら、ロープだとかはしごで上り下りじゃなく、飛べるとかそういう能力があるってこと?


着地はせずに高度を下げただけで中を覗き込むけれど、まっくらで何も見えないし、耳を澄ませてもとりあえず聞こえてくる音はなさそう。

「……深いな。どこまで続くんだ」

穴の奥を覗き込むオクティの目は光っているけれど、表情が硬い。

「入って……みる?」

「何が居るか分からない。それにしてもこの穴……本当にどこまでも続いているな」


「無策に飛び込んで底に毒霧や罠など仕掛けられていても困りますものねぇ……火を点けた木切れでも落としてみましょうか」

「あ。深い穴の確認をする時にそういうのあるらしいよね?」

「じゃあ試してみよう」

近くの木から取ったらしい木切れに火をつけてから穴に放り込むと、本当にどんどん光が小さくなっていく……途中で消えたり爆発もしないから、ガスとか酸欠とか水が溜まってたりってことはないんじゃないかな。壁の色が途中までは土だったけど、岩が見えて……更に暫く待ったところで底に灰色が見えた。


「――遠いね」

「底の周囲は横穴というか、広場のようになっているようだな。……火が落ちてきたのに近付いてくる気配はないようだ」

「下で動いてる人が居なさそうなら……一旦下に飛んでみていい?地面には降りないで、何かあったらすぐ戻ろう」


それなら出来る準備はしてからいこう、ということで。

転送盤を地上に3つとも並べ、その場に印もつけておいて。念のため自分たちの身体が引き離されないようにお互いの胴のところを紐で繋ぎ合わせてから。

――広間っぽくなっているという穴の底へとテレポートすることにした。

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