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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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46.ニワトリも増やそう

商会組合で扱っている食材を色々教えてもらったところ、現状お酒類と果物と牛乳は入る端から売れているので売り切れになりがちで、ハーピーとワイバーンの卵は今朝試しに持ってきてくれて3個ずつ入って来たのが初めて。ウニとサカナはまだ養殖が本格化していないのでもう少しかかるそうで。

潤沢に出せるのは葉野菜、平地の妖精肉3種、干し昆布、木から取れるもの、板ゼラチンだけ。


うーん。牛乳は大きい牛乳缶一個あるし、バナナはまだ20本くらいある。

シンプルに葉野菜と豚肉を沢山仕入れて、手持ちのニラと玉ねぎを一緒に焼いて、風の石もちょっと買ってソーダ水とバナナ牛乳と緑茶を選べるようにしようかな?


「結構な量だな、調理が大変そうだし、串焼きの屋台を一軒貸そうか?」

「えっ、あれって動かせるんですか」

「そりゃそうだ。別に柱を深く刺してるわけじゃないから、そのまま持ち上がるぞ?多分話を聞けば、いつも店番やってる奴らも手伝うんじゃねーかな」

「そこまでして貰うと申し訳ない感じもしますけど、ちょっと面白そうですね」

「んじゃ話を通しに行くか。門の外だし、ついでに一緒に行くか?」

「あ、はい」

手伝ってもらうなら直接顔見た方が良いかもしれない。


組合長さんに連れられて門の外に出ると、門からすぐに見える所に大きな石組の焚火が作られていて、パリィみたいなピンクの髪の軍人さんが腕に布を巻いた5人の獣人たちに囲まれながら上機嫌でヘイホーヘイホー♪肉を焼こう~と歌って肉を焼いているのが見えた。


獣人たちも声を合わせてわうー♪わうー♪うぉーんと一緒になって歌っており、楽しそうに肉や薪を運んで手伝っている。

……獣人村との交易が出来たら、卵、手に入るのになぁ。


ハーピーとワイバーンの卵は貴重品だし、日持ちしない。でも小麦粉と牛乳が手に入っても卵が無かったら作れるものは限られちゃう。


「卵……」

「ん?」

「あっ。えーっと……実はですね、あそこに居るエリート獣人たちの故郷で卵を産むニワトリっていう落ちものの妖精を飼っているんですけど。こっそり仕入れて街で育てるって出来ませんかね」

ひそひそ伝えると、組合長さんはナニッと小さく驚いたあと、あそこに居るララビア・グラス隊長に話を通してみるか、と言ってスタスタそっちへ歩いて行った。


ばーべきゅー隊長はパリィのお兄さんだって話は前にオクティから聞いたけど、ララビアさんっていうのか。


組合長が先だって歩いているのには反応しなかったのに、チョーコが近付いた途端、獣人たちが5人纏めてバッとこちらを振り返ってびっくりした。

「「「チョーコのあねさぁぁん!」」」


「うぉっ、急にどうしたお前ら?って、あれ、グレイさん?……と、後ろの2人はえーっと、確か冒険者の?パリィと同期の魔法使いだったかな。どうしたんすか。その2人が何か?」


組合長がちょっとそこの獣人たちとお前さんに話がある、と声を潜めると。隊長さんはちょっと人を呼んで火の番を頼んでから、人がいない方へ場所を移した。


「で、こいつらも含めて話って、どういうことなんすか?」

「実はチョーコがこのエリート獣人たちの村と交易出来ないかって言っててさ。お前がこいつらのことは一番詳しいだろ?だから連れて来たんだ」


「こいつらの……村?」

「えーっと、多分私が説明するより、直接話を聞いた方が良いかもなので……」


翻訳機の残りがあったので2つ取り出し、組合長と隊長にそれぞれ持ってもらう。


「?なんだこれ」

「「「ワフッ?ばーべきゅー隊長がしゃべったっす?!」」」


「あ、オイラ知ってるっす、あそこに付いてる白い石、チョーコのあねさんのしゃてーが触らせてくれたやつに似てるっす!」

柴犬さんが目を輝かせる。


「しゃてーってあのオイラにも話しかけてた人っすね」

こちらも同じ毛色の柴犬さんが答えた。双子が話しかけてた柴犬さんがこっちの子なのね。


「オイラと見分けがついてなくて、間違えられてたっすよ」

「人間は匂いがわかんないから毛色で見分けるしかないっす、しょうがないっす」

ごめん、私も見分けつかないと心の中で謝っておく。


組合長と隊長が口をパクパクしていた。


「あ、それが魚人さんたちに協力して貰って作った翻訳機なんです」

「お、おぉ、んじゃこいつらと喋れるって事か?おーいお前ら、俺の言葉分かるか?」


「「「ワッフ!わかるっす!オイラ達、ばーべきゅー隊長としゃべってるっすー!」」」


「ふおぉぉぉ、まじか、お前らそんなペラペラ喋ってたんだな。もうちょいカタコトだと思ってたわ。この2人がお前らの知り合いってのも間違いないか?」


「「「チョーコのあねさんとあねさんのツガイっす!」」」

組合長はだいぶ困惑しているが、隊長は一気にテンションが上がったようだ。


「おぉぉ、ほんとにこいつらと知り合いだった。で、えっと……嬢ちゃんはこいつらの村と取引したいんだって?」


「はい。この子たちの村で飼ってるニワトリっていう妖精は、亜人みたいに卵を産んで増えるので、つがいを貰って育てれば、増やして鶏肉と卵が採れるんです。ただその、この子たちの村の人たちは、野良の獣人の扱いを知ってるので、あまり人間と付き合いを持つつもりはないみたいでですね。連れていくことは出来るんですけど皆には場所とかを内緒にして欲しいんです」


「ふーむ……その村って見るからに『村』なのか?もしそうなら、多分ワイバーン乗りが捜索した時に見つかる可能性が高いだろ。今のうちに区別は付けといた方が良いかもしれんぞ?」


難しい顔で腕を組む隊長だが、獣人たちはきょとんとしている。

「わふん?ひさしぶりにニワトリ食べたいっす。ばーべきゅー隊長は何の話をしてるっすか?」

「俺たちは森の中を色々探してるところでな、どこに何が住んでるかを調べてる。だからお前らの村が見つかっても騒ぎにならんように、先に俺たちの知り合いだってハッキリさせといた方がいいんじゃねーかなって話だ」


「くーん……?ソンチョーは人間とオイラ達は離れて暮らすのがお互い幸せって言ってたっす」

「人間と仲良くなりすぎるとふこうになるっすよね?」

「でもオイラ達、ここで幸せっすよ?」

「わふ?言われてみればそうっす」

「ソンチョーにそう言いに行くっすか?あ、でも鞭のねーさんに勝手に出ちゃだめって怒られるっすね」


隊長はふーむと顎を撫で。チョーコの方に目を向けてから、組合長の方を見る。

「グレイさん、そのニワトリってぇ妖精を飼える場所だけ、用意できます?」

「まぁ、場所は確保するが、そもそもどういう妖精なんだ?」

チョーコを見る。


「ニワトリはオスとメスが居て卵を産んで増えます。短い羽毛が生えていて、大きさはブタとあまり変わりません。走るだけで飛んだり地面に潜ったりもしないので、ちゃんとした柵があれば逃げないと思います。肉の味はツチノコに似てて。餌は木の粉と水ですね」


「卵かぁーっ、さっきのあれを食っちまうと卵は是非欲しいなぁ……しかも育てて増やせると。羽もクッションなんかに使えるかも……飼育場所はなんとかしてすぐに用意するが。どうするんだ?」

隊長を見る。


「いや単純に、いつも肉にしてる妖精を持ってって、これと交換してくれって頼んでみるだけだが。そもそも嬢ちゃんはなんか方法があるからそう言ってんだよな?」

「私もこの子達を連れて行って直接譲ってくださいって話に行こうと思ってました。この子たちにばーべきゅー隊長って慕われてる隊長さんなら多分連れて行っても怒られないと思うので、一緒に来て貰っていいですか?」


組合長はじゃあ俺は準備をしておくと歩いて行きかけて、最近天人たちが良く来るようになったからこの翻訳機は商会の受付に置いときたいというので。私から貰ったと後で宰相さんに伝えて貰うことにしてそのままあげた。


隊長さんに木製の檻に4匹ずつブタが入ったものがいくつも積まれているところへ案内してもらい、増やすってことなら8匹くらい交換ならいけるか?と、とりあえず2つ檻を持ってくる。


エリート獣人5人と、隊長、ブタ8匹分入った檻を揃え。

「じゃあ皆ー、こう、オクティと私みたいにこの檻を掴んでおいて?」

「「はいっすー」」


隊長も言われるままにガシッと掴んだのを確認して、目を閉じて獣人村に着けた目印を探る。周囲に障害物もなさそうなのでそのまままとめて『テレポート』。


「「「わふん!?村っす!皆いるっす!」」」


隊長もエリート獣人たちも見張りをしていた獣人も皆驚いているが、見張りたちは連れてきた5人とチョーコとオクティが居るのに気付くとちょっと警戒を解いた。


「わおーん?!お前たち生きてたっす?」

「オイラ達はチョーコのあねさんの群れに入れてもらったっすよ!」

「久しぶり!チョーコです、ソンチョーさんいますか」


ソンチョーさんは見慣れない人間が来たので怪訝な顔をしつつも、チョーコが作った道具で話せるようになっていると知ると普通に話してくれた。


隊長さんから森の探索が始まったことなどを聞いて、ソンチョーさんは難しい顔をしたが。

獣人たちは別に人間が嫌いなわけじゃないし、分かり合えるなら嬉しい。ただ、分かり合えない人間が多すぎる。こうして分かる人間が遊びに来るのは構わないが、村のスタンスとしてはお互い不干渉でいて欲しいと思っているということを話す。


5人にも、既に別の群れに入り直したのだからこのまま頑張りなさいと言うと。

「オイラ達はエリート獣人って呼ばれてるっす!」

「獣人車で街を走るの楽しいっす!」

「他の獣人たちもオイラたちの言うこときくようになったっす!」


と楽しそうに報告しており、ソンチョーさんは嬉しそうに頷きながら聞いていた。


もし、他の人間が来た時。話せるように翻訳機を置いておこうかと聞くと、チョーコの心遣いはありがたいが。そういう希少品を持つのは火種にしかならないと断られる。


隊長は一通り話を聞き、丸太で柵が作ってあったりする村の中を見て、確かにただの獣人じゃないと思う一方。自分たちの街の状況を考えると、天人たちのように人族として受け入れられるかといえばそうは思えないな、と素直に同意。


「俺が信用していて、エリート獣人たちをもともと可愛がっているメンバーにだけはこの村のことを見ても手出ししないように伝えさせて貰うかもしれない。ただ、この村の存在は上層部に上げたり、無理に交易路に組み込んだりしないように働きかけておく」

と約束しつつ。何か困ったら国に来てこいつらを通して呼んでくれ、と5人の背中を叩いた。


ニワトリとブタの同数交換は喜んで応じてくれたので、囲いの中に入って入れ替え。

ついでに生みたての卵があったら少し欲しいと言うと、4つくらいなら選んで持って行っていいというので、遠慮なく触って生みたてのものを選ばせて貰う。


一通り用事も話も終わって、テレポートで元の所に帰還。

組合長は用を済ませた後、その場でずっと待っていたらしくすぐに人を連れて寄ってきて、ニワトリの檻をどこかに運んで行った。追加で貰った卵は1つは自分で貰い、3つは渡しておいて。

……そういえば新しい食材が沢山増えたけど、宰相さんの家の料理人が研究したがるかな……と思って話を通して貰えるか聞いたら。

彼女は毎日のように仕事帰りに受付に来ては新しい食材やチョーコが付けた解説はないかと確認してから帰っているらしい。


相変わらず凄い情熱。

そう言えば、もう板ゼラチンは潤沢に売れる品物として並んでたよねぇ。


組合長さんは色々と肩の荷が下りた顏で、引継ぎをしたら休暇に入ると言い、屋台と串焼きづくりはもう頼んでおいたから、後で家の前まで持って行くからなと言って先に引き上げていった。


隊長も用が済んだので、良いとこに案内してくれてありがとなと言ってから獣人たちと去ろうとするが、手の中の翻訳機を見て、とっても、もの言いたげにしている。


オクティの方にまで説得して欲しそうな視線を向けたので、オクティはちょっと肩をすくめた。


「そいつらが普通に話せるようにしたいって?まぁ、翻訳機はこれから広まるだろうからなんだそれとはならないとして、いきなり獣人が話せるようになったら不審がられないか?」


「あー、実は軍部でこいつらを気に入ってる奴らと一緒にちょっとだけ魚人に頼みこんで通訳して貰ったことがあってさ。直接話せたわけじゃないが、喋ってるのは本当だって話はもう知られてるんだ。流石にここまで流暢に喋ってるとは思わなかったが、俺の歌が好きだとか、調教師のルーシアは怖いけど怪我すると治してくれて優しいとか色々教えて貰った」


「魚人のにいさんねえさん達はなんかすっごいいい匂いするから好きっす!お近づきになりたいっす!」

「めちゃくちゃ喋るねってびっくりされたけど、いい子だねってなでて貰ったっす!」

「可愛いって言ってくれたっす!オイラも求愛したいっす!」


「えっ、お近づきになる方の意味で好きって言ってたのか?まじか。あー、一応言っとくが、この国に来てる他の人族は客だからな。強引に迫ったりするんじゃないぞ?」


「……求愛するのはだめっすか?」

「絶対ダメだ。褒めるだけならいいが、迫ったりしたらお前らが処分されちまう。せめて獣人にしとけ」

「きゅーん、わかったっす」


「魚人と一緒に居た羽生えた人たちも優しかったっす!もっと話したかったっす」

「それがあったら普通にこうして喋れるっすか?喋りたいっす!」


「んー、この子たちが喋っても問題にならないなら、5つ用意してこの子達にそれぞれ持たせる方法もありますけど?」


「ぐぅっ、これを5つ、軍部の予算からなんとか、うーんいける……か?」


「宰相さんが何というかわからないですけど、私は別にこの子たちが欲しいんだったら……あなたたちは欲しい?」


「「「「「ほしいっす!」」」」」

何の迷いもない即答だった。


「じゃあ私からということで。でもちょっと重いんですよね。ただの紐だと切れちゃうかも?」

「あーこのくらいなら全然なんとでもなる。ちょっと待ってな」


隊長がたたっとどこかへ走って行った。


聞いていた獣人たちが期待できらっきらした目を向けてきている。

「あー、今作っちゃうね」


魚人から貰ったテレパシーの魔石も魔力板もまだまだあるから、待ってる間に4つ、オクティに手伝ってもらってぱぱっと作る。


「待たせたな、これでいけるだろ」

隊長が持ってきたのはハンドタオルくらいの幅がある、かなり長さのある布が数枚。怪我をしたときなんかに治療魔法が使える人がすぐに居るとは限らないので常備している包帯らしい。


石を包んで上下を結び、一部に穴を開けて直接石に触れる部分を作り。たすきのように斜めに1人ずつ結んでいく。


「こんなもんか、どうだ」

「わっふ、これで言葉が通じるんっすか?」

「おっ、わかるぞ!」


「わふーん!号令が分かりやすくなるっすね」

「やっぱりチョーコのあねさんはすごいっすー!」

「よかった、これで皆が他の人間に勘違いされないようになるといいね!」


「んー、こいつらの普段の行動見てて思ったんだが。他の獣人たちの統率が妙にうまいんだよな」

「わふっ?野良獣人よりオイラたちの方が強いから言うこと聞くっすよ」


「ほう、そうか!ちなみにゴブリンたちは命令聞かせられないのか?」

「むりっす、あいつらは多く肉を食べることしか考えてないっす」


「まあ獣人だけでも充分か。いいか?お前らが獣人たちを纏めて、獣人部隊としてちゃんと働けるようになるなら、その石を持たせた面目が立つ。ちょーっと頑張って貰うぜ?」

「「「わっふ!がんばるっすー!」」」


ニワトリが増えればたまごも手に入るし、この子達も喋れるようになって、いずれ落ちもの獣人の認識が変わっていってくれるかもしれない。


なんだか少し楽しみ!

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