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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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36/89

36.前夜祭的な

そして昼すぎ、待ちきれなかったのか冒険者組合の組合長の二人がわざわざ家まで呼びに来て、パリィに何か問題があったかと聞きながらチョーコとオクティも皆と共に山へ向かうことになったが、北門の外に竜人さんと共に集まっている天人さんが6人しかいない。


人数が少ないというと、横に付いてきていた商会組合の組合長が。

「あぁ。折角の機会だから魚人の彼と一緒に天人の男女一組が残ってくれるってことになってな。人間との相互理解の為に、俺の実家に泊まって貰うんだ」

と教えてくれた。


皇帝の前例があるので、いきなり惚れた腫れたの話にならないよう、直接のお世話担当として接するのは火属性の貴族の中から選ぼうと意見を出して、商会組合長の家を宿泊場所として貰ったんだそう。


高山と海の特産品とか、彼らの欲しいものとか、魚人や天人や竜人の生活習慣だとか、他にも知ってる種族はいますかとか、色々腰を据えて聞きたいのだと。

「うちの娘たちが他の人族の食事やファッションに興味津々で、ぜひ話したいってせがまれちゃっててな。なんとか選んでもらえてよかったよ」

「良い話し合いができるといいですね」

うんうん、人族同士の理解が深まるのはいい事だと思う。


――騎竜の訓練生に合流し、荷物は全部まとめて天人たちのアイテムボックスに入れて貰い、騎竜の尾に掴まったり手を掴んだりしてひとまとめになってから、天人たちの風の魔法で全員纏めてぶわりと浮き上がって、代表でサニーさんがテレポートを使う。


場所は前回と同じ、青い花の咲く風の柱の上空へ。


流石の風使いというか、本当に安定した風に守られての飛行で、安心して周りを見回しながら全員そのまま纏めて運ばれていく。

視界の限り大小の山が連なる景色や草に覆われた地面が広がる光景。


「「ふおーっ?!ここが山かーっ!」」

感動する訓練生たちと共に周囲を見回し……下に咲いている青い花を改めて見る。


『七色花』高山地帯の各地に生える花。場所によって花の色が違い、花びらを乾燥させて粉にすると絵具、染料の主原料となる。


あぁぁぁ絵具の素材って、あの花だった!


思わず振り返りはしたけど、あの場所って天人さんが聖域って呼んで大事にしている場所だし。そこに生えてる花を下さいっていって分けて貰えるもの?勝手に取ったら流石に怒られそうな気がするし、後でこっそり何かと交換出来るか聞いてみようかな。


先導する竜人のユグードさんについて行く。人間が泊まり込むことについて事情が通りやすいということで『牛の村』を目指すみたい。

今日はもう昼を過ぎているし初日なので、本格的な訓練は明日からにするそうだ。

泊まる場所を整えたら、ワイバーン捕獲のためのレクリエーションを軽くして身体を動かし、明日からの訓練に協力する竜人たちが集まって、顔合わせついでに一緒に食事するだけで終了。


牛の村へ着くと。竜人夫婦の2人と、村人の天人たち数人が出迎えてくれて、ユグードさんが手短にチョーコ達を含めて12人の人間達を預かるという説明をして。

皆で遊牧民のテントみたいな組み立て式の家を4つ、手際よく建ててくれた。

天人族はハンモックで寝ていて、竜人族は床に直接寝転んで毛布を被るだけのスタイルらしく、どっちがいいかと言われる。


「ハンモック……寝たことないから興味はあるけど、寝てる時に落っこちそうで怖いかも」

「寝てみたいなら試しに使ってみますか?」


女性の天人さんがチョーコのつぶやきに反応して聞いてきたので、ちょっとだけと、テント中央の柱から壁部分に引っ掛けて準備して貰ったのだが。


登り降りが1人じゃできない!

多分元の世界でハンモック使う時ってあまり高い所に設置しないか、踏み台を準備すると思うんだけど、二段ベッドの上の段くらいの高さで周りに何もない。


簡単に浮遊も飛行も出来るから気にしたことがなかったと、そりゃそうだよね。

オクティがすぐ近付いてきてひょいと浮かしてくれたので、とりあえず一旦乗せて貰って、真っすぐ寝ると回って落ちてしまうから斜めに寝るのだと寝方を教えて貰った。


「あ、凄い!寝心地はリラックスできていいかも……でもやっぱり寝ぼけてうっかりそのまま降りようとして落っこちそうだから怖いし、夜は床で寝ます」

「確かに飛べない方には危ないかもしれませんね」


訓練生の人もちょっと興味を持ちはしたみたいなんだけど、彼らは高さ云々ではなく、体格的に無理そうだと言って試すのは止めていた。

確かに天人さんって魔法使いタイプらしいというか、背が高い人はたまにいても、男女共に痩せてるか小柄な人ばっかりなんだよね。

逆に竜人さんは筋肉質な人しか見たことない。


そろそろ降りる?とオクティが再び下ろしてくれる様子を見てお姉さんがふふっと笑う。

「仲が良くて素敵ですね」

からかいの意図は欠片も見えない、微笑ましいものを見た笑顔をされるとただ恥ずかしい。

「えっと、はい。ありがとうございます」


訓練生たちは皆冒険や遠征の時に使う一人用のベッドマットを標準装備で持ち歩いているので、床に寝るスタイルならいつも通り。4つ建てて貰ったから3人ずつ使おうと決まってチョーコ達の所へはパリィが混ざることになった。


パリィにはお邪魔かとからかわれたけど、さすがに皆と一緒の遠征中にまで2人きりを要求する気はないよ?!


使うテントも決まったし、天人さんたちに預かって貰っていた荷物も各自のテントの中に運び込み。少し開けた所へ集合して、軽いレクリエーションをするという。


外を改めて見てみると、牧場の牛が前見た時よりずいぶん増えている気がして、そんな一気に繁殖するわけないと思い、移動しながら天人さんたちに話をきいたところによると。

どうやらチョーコ達が追い払って以降この辺りはまだ亜人たちの襲撃が一度もないそう。でも別の山だともう復活している亜人が多いらしくて、一旦被害のないこの村へ、周囲の山々から牛を集めてきているらしい。


「ということはこの村は今のところ平和ってことですよね……転送盤を設置させて貰っていいでしょうか」

転送盤を取り出して天人さんに、魔力を充填したこの板に触れて『てんそう』と唱えると対になっている板の所へテレポートが出来るんだと説明すると興味津々。テレポートの行先を持ち運んで設定できるのがとっても画期的らしい。


すぐに人を集めて使い方の説明をした後、訓練生の泊まるテントの近くに設置することになった。


「転送盤すごーい、私も欲しいー!」

天人の中では一番小柄な女の子がチョーコの傍に詰め寄ってくる。

「何か欲しいものない?交換して欲しいっ!」


「えぇっと、まだ今はこれ1組しかなくて……高山で欲しいものといったら絵具とか、欲しいものはあるんですけど」

「絵具、かぁ。あれは増やすのに時間がかかるから、売るほどたくさんはないの。商売人には渡しちゃダメって怒られちゃうし」

「あ、売るんじゃないです、私が描くのに使いたくって」

「絵を描くの?わぁ、じゃあ今度ここの長老を紹介してあげる!子供たちに絵を指導してる人だから」

「今度?今はいないんですね?」

「んー、いないみたいね。テレポートであちこち回ってるんじゃない?そのうちふらっと戻ってくるから大丈夫よ」


天人たちって、のんびりというか気分屋が多いのかな?ふらっと姿を消してふらっと帰ってくるのは通常運行だから心配要らないらしい。


喋っていたら大きな声で集合がかかって、広場へ。

最初に竜人さんが連れていたワイバーンも連れて来られて、彼がそのワイバーンを両手で起こしてお腹側が見えるように持ち上げながら。どこが弱点か、どういう方向で攻撃を入れたらいいかなどの説明をしたり。


……なんの予備動作もなくひょいっとワイバーンを持ち上げたけど、どんな腕力をしてるんだろう。


その後はレクリエーションと言っていた通り、打撃などは一切なく。腕や足を当ててみるだけ、触ってみるだけの動き方や体裁きについて解説を1人ずつ順番にチョーコの通訳付きで説明、実際に動いて当ててみるのを一通りやって、皆はそれを見ながら学ぶという練習を10人分丸々1から繰り返し。


普段からユグードさんは竜人の若手にワイバーンの捕まえ方や乗り方を説明することがあるらしく。彼のワイバーンはこの扱いに慣れているというか諦めているというか。

知らない人間たちに腹を見せて弱点を触らせるという行動に対してもされるがままで、噛みつくどころか嫌がりもしない。


ただ流石に実際の撃ち込み練習の的となると話が違うそうで、明日からは実戦形式の練習のために、竜人たちが協力して野生のワイバーンをそのまま引っ張ってきて打ち合い練習をさせてくれるんだそうだ。


レクリエーションが終わる頃にぞろぞろと村へ集合した竜人さんたちは15人もいた。

皆、手に手にオオトカゲのような妖精やら、食パンの1斤カットくらいのサイズがある大きな卵やら、調味料の入っているらしい、凄くいい匂いのする石の壺やらを持ってきている。


ユグードさんの部下の人達と紹介された彼らは、あの日に雲霞のような亜人の群れにまみれて戦ってたり、地面に座り込んでた竜人たちだった。


あれはさすがにキツイ戦いだったから、助けられたよと順番にお礼を言われ、牛乳欲しかったのでと答えてそうかそうかとフードの上から頭をぽふぽふ撫でられたりしているうちに。天人さんたちも野菜や果物を抱えて広場に集まってきて、全員座れるように広場に大きな敷物を何枚も敷いて宴会会場が出来ていく。


竜人さんたちが持ってきた巨大卵はいったい何だろうと思ったら、ハーピーらしい。今日生みたてだそうだ。ハーピーとワイバーンの卵は生みたてほやほやの当日中、遅くとも次の日までのものに限り、割って生で直接飲むんだそう。


竜人って卵生のはずなのに卵も平気で食べるんだなとちょっとだけカルチャーショック。だけど獣人村との取引以外で卵が手に入るかも!


「なんだそれ?チョーコ、それは食えるやつ?」

わらわらと訓練生の皆も寄ってきた。

「あ、パリィ。うん。ハーピーの卵と高山の妖精でオオトカゲだって」


ワニと言われても不思議はないサイズだけど、調べたら『オオトカゲ』だった。皮が固くて革鎧やカバンに使えるけど、天人は羽と毛だけで革や毛皮は避けるらしく、使っているのは竜人だけ。金属鎧の裏に貼ったり、竜人にはアイテムボックスが無いので各自の鞄を作ったりしているらしい。


お肉の肉質としては鶏もも肉に近く、ジューシーで柔らかい美味しいお肉だそう。

竜人さんたちは普段はオオトカゲと卵だけじゃなく牛も食べてたんだけど、今は牛が減っちゃって増えるまでは繁殖優先だと言われてるので、今日は食べさせられないと残念がっている。


オオトカゲのお肉が楽しみだという訓練生たちは。自分たちも火の準備とかした方が良いのかと聞いてきた。そういえば……竜人さんたち、肉と調味料だけ持ってて火箱的なものを持ってない。


ちょっと聞いてみたら。

竜人さん、お肉を生でいける種族でした。


天人さんが食べる用に用意していた牛乳とサラダと果物はともかく、竜人さんの生肉と生卵にはストップをかけさせてもらう。人間は肉食じゃないので生肉は無理なんだと説明して、人間側でバーベキューの準備をさせてもらった。

チョーコも火箱とフライパンを出して、卵も調理させて貰うことにした。


卵が大きくたっぷりあったので、ボウルを3つに分けて。卵焼きは昆布だしのしょっぱいのと、砂糖入れた甘いのの2種類と。

搾りたて牛乳と砂糖を混ぜてホイップクリームと果物を乗せたプリンを作ってみることにした。


卵は輸入出来そうかなと触って調べてみたところ。山のような風の魔力に満ちた土地に置いておかないと1日くらいで死んでしまって、死ぬと3日ほどで()()する、アイテムボックスに入れた場合も同じ。ただ死んだ直後に消えたりはしないので、運搬当日に調理まで済ませてしまえば何とかなるかも!


天人さんたちはバーベキューは遠巻きにして一切近寄らなかったけど。

卵焼きとプリンの方は全員味見だけだけどちゃんと口にして、美味しいと言ってくれた。


――高山でオオトカゲ以外の妖精って何かいるのかな?と気になって調べてみたら。


他には『ケサランパサラン』という、なんと白の絵の具の原料になるらしい巨大な綿毛のような飛行生物……生物なのかな?風のままにただ空を漂い、数日で姿を消すもの。

そして『岩ガニ』という、背中が岩石そっくりで中にヤシガニというか巨大なヤドカリみたいなものが入っている姿の妖精で、そちらは綺麗な石を見つけると自分の殻の内側に溜め込む習性があって、たまに宝石を拾っているから大きく育ったのを捕まえるとお金になるのだと。


今回食器として持ち込まれた岩のサラダボウルみたいなものが、その岩ガニの殻らしいけど、情報が無かったら分からないくらいただの滑らかな石。サイズ的に両腕で抱えて腕が回り切らないから、かなり大きいと思う。

……このサイズのヤドカリはちょっと怖いかも。


一応岩ガニは両手の大きいハサミと足だけカニっぽい味がするしちゃんと美味しいらしい。ただ、胴がジャリジャリすぎて食べられないから身体の大きさに対して可食部がかなり少なく、食材にする目的でわざわざ狩ることはないそうだ。


バーベキューが出来上がってきて、肉と卵焼きとサラダにプリンとフルーツのデザートで宴会。


天人さんが『酒の実』という、見た目はマンゴーみたいな赤寄りのオレンジ色の楕円形の果物を薄切りにして皿に並べてくれたので摘まんでみたら、凄いトロピカルな味が付いたリキュールって感じで、お菓子のシロップとして絞って混ぜたら美味しい洋菓子になりそう。


美味しいけどかなり度数が強いお酒の味だし、これだけ食べるよりカクテルみたいなものに入れたいかも。

折角なので牛乳を生クリームにしてホイップして、オレンジジュースに酒の実とホイップクリームをトッピングしたら、天人さんたちが目の色を変えてきた。


チョーコ天才!このオレンジっていう果物も美味しいとわらわら寄ってきてどんどんおかわりを求められ、ホイップクリームの作り方を教えて自分たちで作れるようにしたらもう止まらなかった。


竜人さんは甘いものより肉で、飲み物は牛乳があれば充分らしい。天人さんたち、カクテル飲んでテンションが上がると物理的に飛んでしまって全然座っててくれないんだけど……楽しそうだからいっか。


今回持って来られた生野菜はサラダで食べられるサニーレタスみたいな葉野菜と、セロリみたいなサクサクした歯応えの野菜だけで、竜人さんたちも別に肉しか食べないわけじゃなく、野菜で肉を巻いたり乗せたりしながら。焼肉も旨いなぁ!と喜んでいる。


ちなみに持ち込まれた調味料に塩があったし、牛乳から生クリームにするのも教えたら抽出で出来るのかと驚いていたし、抽出は山の人たち普通に知ってたみたい。そして胡椒コショウがあった!


そう、気になってたの。火の魔力使えないはずなのに竜人さんの装備もワイバーン用の馬具も金属使ってるんだもん。

火の地域に胡椒があるって調べた時に、洞窟っていうのが火の地域としてカウントされてて、山なら洞窟くらいあるのでは?ってちょっと思ったりしてた。


胡椒に興奮しつつ話を聞いてみると、高山の中でも北に近い方に洞窟の多い地域があり、そこに小人族のドワーフ種やノーム種が住んでいるという。

小人も肉食種族なので竜人と親交があり、狩ったハーピーを持って行くと、金属製品を作ってくれるらしい。


洞窟地帯というのは高山の北の方にあるんだ。つまりキノコとスパイスはそこへ行けば手に入るのね。


「洞窟!いつか行ってみたいです!」と言ったら。

「ワイバーンの馬具を新しく作って貰うだろうから、訓練が終わったら案内しよう」と言って貰えた。


やったー!


今日のデザートとして持って来られた果物は酒の実の他には、この前食べた黄色いメロンとパイナップルがあった。

この2種類と酒の実は同じダンジョンに実ってるもので、風の柱からちょっと離れた所にあるんだけど、そこだけは『果物畑』として天人さんたちが日常的に奥まで入る唯一の大きなダンジョンだそうだ。


それ以外のダンジョンは入口を覗いて美味しそうなものが無かったら奥へは入らないので、ほぼ未開拓だけど、少し深いところでバナナが取れるところと、最下層へ行けば別の酒の実が取れる小型のダンジョンは幾つか知っているらしい。


あぁバナナも好き。バナナと生クリームの組み合わせっていいよねぇ!ぜいたくを言えばチョコレートも欲しいけど、あれは結構手間がかかるからどうかなぁ……


そろそろ小麦の一部は熟してるかなぁ、卵と牛乳が手に入るならクレープが現実的に作れそう。

声に出ていたのか、チョコレートって何?生クリームってカクテルに乗ってたのだよね、確かにバナナに合いそう!チョコレートっていうのも合うの?!と食いつかれた。


カカオの木っていう木になる実で、という話をしたら、ダンジョンの中に生えるのは草と蔓だけで、木は無いから、平地のどこかにあるのかもしれないけど高山のダンジョンにはないかもとショボンとされる。

濃い茶色で凄く苦いけど、火を通してすり潰して、砂糖を混ぜて滑らかにして使うという説明で『苦い実』が生るダンジョンは幾つかある、らしい。


ここのダンジョンのは食べちゃダメという注意喚起で逆に有名になってるから場所も分かるという。パッと思いつく苦い作物というと、ゴーヤ、コーヒー、カカオとか?全然関係ないのもあるだろうけど、何種類かあるというならどれかは似たものが手に入るかも!


宴会は思いのほか盛りあがってしまい、はっと気づいたら暗くなってきてる。どうも高山の方が平地より日が長いみたいで、多分もう8時くらいだと思う。訓練生の人たちは健康優良男児揃いなので、既にもう眠くなり始めているらしいし。竜人さんたちや天人さんたちも灯りは一切使わなくて早寝早起きな人達。夜番の竜人さんを残して速やかに引き上げていった。


つまり8時就寝4時起床なのね高山の人たち……うわぁ。


暗いのに夜の見張りとか帰り道は大丈夫なのかと思うけど、竜人の目は魔眼みたいなものなので、暗くても生物は光って見えるし、天人は明るい所だと気付かないくらい本人がうっすらと発光しているので、暗くて困るってことはないんだそう。


なお、天人の身体が光るのは髪や肌に含まれる魔力が膨大だからで、沢山食べたり元気だと強めに光って、飢餓や魔力枯渇で弱ると光らなくなるそうだ。

確かに帰っていく天人さんたちはたっぷり食べてピカピカしてたような気がする。


***


彼らが帰って訓練生たちもテントに戻ろうというところで、ふと。

そういえば今日は解説をのんびり通訳していられたけど、明日からは野生のワイバーンを捕獲して実戦形式の打ち合いをするんだよね?と思い出した。


「ねぇパリィ、今日みたいに説明だけとか飼いならしたワイバーンを使っての訓練中はともかく、戦闘中は悠長に通訳挟んでいられないよね?」

「ん?右、左、上、後ろ、行けと止まれ、集合とかの簡単な天界語の号令は教えてもらったし。戦闘中は皆だいたい自分で判断して動くもんだから、そこまで切羽詰まったことにはならないんじゃないか?」


「いや危ないって時、とっさに言葉が分かるかどうかって大事な気がする……ちょっと待ってて」

訓練生10人分。翻訳機を10個作ってオクティと2人でぱっぱと魔力を籠め、パリィに渡す。


「これは?」

「まだ出来たばっかりの試作品みたいなものだけど、翻訳機。これを身体のどこかに身に着けてたら、他の種族の言葉が分かるから。訓練中は皆に持ってて欲しいの」

「お、おぉ……またスゲェもんが出てきたな。俺たちもテレパシーで話せるようになるってことか?こんなの勝手に俺らが使っちまって大丈夫なのかよ」


オクティが頷く。

「大丈夫だ。この先必要だと思って開発した、表に出す予定のものだし。訓練生の専用装備として必要と判断したから先に渡したってことで報告しておくよ。パリィたちの訓練終わって帰る時に返して、次の訓練生に回して貰えばいい」

「そういうことなら遠慮なく借りるぜ、皆にも配ってくるな」


人によって都合のいい装備部位は違うから早めに渡してくると、パリィはすぐに他のテントへ向かってくれた。これで、明日からの格闘訓練はちょっと安全になるかもしれない。

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