30.お土産開封
頂き物のほとんどはアイテムボックスにしまってから運んだのだけど。
その中で一つ気になったものがあったので、それだけ桶に水を入れてそこに入れて持ち帰った。
見た目でそうかなと思ったのだけど、本当に『昆布』だ!これも落ちものの一種らしく、水底に撒かれた砕いた核の上に根付いて増えていくらしいので、テレポートで持ち帰ってすぐ、家にあったちょっと大きめの古い桶の底に砕いた核を敷いて入れてある。
水からあげたまま放っておくと枯れて植え付けは出来なくなるけど、普通に干して乾燥させたら長く保存が効くので、交易品として買って持ち帰る分には困らないと思う。
これで、昆布だしと塩と黒砂糖の味付けで肉や魚の煮たのが作れるようになる!
あぁもう本当に野菜が足りない……野菜ってどこにあるんだ、と食材関連が増えたという脳内情報を見たら高山地帯にあると。
ちゃんとあるのは分かったけど高山ってどこ?!
アイテムボックスに入れた荷物を出すのはオクティも手伝って、視ながら付き添っていてくれる。
昆布の出汁の話を聞いて興味を持っていたようなので、夕飯は昆布とツチノコのなんちゃって和風スープにしようっと。
今のところオクティの好みはニワトリの塩焼きと黒蜜のわらび餅と私がいれた砂糖抜きの紅茶が不動のトップスリーみたいだけど、昆布だしはどうだろう?
あぁ唐辛子とかコショウとか、味噌や醤油なんかの調味料も欲しいな。シイタケ系のキノコもあったら全然違うよね。どこにあるの……と思ったら、スパイス系とキノコ類は火の地域まで行かないとないらしい。うぅ、洞窟?砂漠?どこっ。
――とりあえず、今行けない場所はおいておいて、お土産開封の儀を再開。
まずなんか妙に大きな水草?と思っていた、ソラマメみたいな太さと長さのある鞘から出て来たのは、戻し済みの黒い大玉タピオカそっくりの、むにっとした丸い粒々で。
顔を近づけただけで分かるほどの芳醇なお酒の匂いがした。
『酔い水草』深海で生える水草。強い水の魔力を含んでおり、魚人でも酔うほどらしい。甘くないラム酒のような味。
これの鞘は多少筋があって簡単にグズグズにはならないけど、やっぱり食用としても素材としても微妙な感じなので諦め。
ようやく出てきた。甘くないお酒!
そして『抽出』で何か出来そうだったので、使ってみたところ。
『純アルコール』というのが出来た。
ほぼ無属性の魔力で構成されている液体。火と混ざれば燃え、水にも油にも混ざり、風に混ざれば蒸発する。魔力回復剤としてとても優秀だが、濃すぎるので少量でも酔う。純アルコールは魔力的に大変安定していて、何かに混ぜたり魔力を加えたりしなければ勝手に気化しない。
木や金属の入れ物より、石か陶器の入れ物が魔力に影響を与えにくいので良いらしいんだけど、陶器ってそういえば見た事ないな。それか……石の壺?
次点で保存に適すると出たのはゴム。
「うーん、ゴムの酒袋?」
「なにそれ?……あぁ、蓋付きの入れ物の内側を全面塗ってみるとかどう?」
金属の壺でやってみたら、アルコールを入れて蓋を閉めたあとでゴムだけ上下がくっついて金属から剥がれて、結果的にアルコール入り水風船みたいなものが出来てしまった。
……まぁ、穴開ければ出せるし、石のツボ探してくるまでの仮ってことで、そっ閉じ。
ともかく他の味がついてないアルコール分が手に入ったなら、昆布酒とかジュースにちょっと入れてカクテルとか、お酒関連が一気に進みそうな気がするなぁと思いながら見ていたら。
アルコールが香料に混ぜると香りの消失が抑えられる素材だということも分かった。
香水瓶も作って貰えたらオレンジのコロンが作れそう!
あとのお土産は食べ物ではなさそうなものたちで。
ローレライやマーマンテイルの大きな鱗が各色各サイズで沢山、サンゴのような形をした石材も鱗と同じようなカラーバリエーションで沢山、それらは特に特殊な魔法的な特性はなさそうなので、単純に小物や宝飾品の素材として売れそう。
なお、獣毛や鱗など動物性素材そのままのものは、長持ちさせたかったら毎日身につけたり触って手入れをするのが一番よいとか。鱗とか骨とかは何年でももつイメージだったけど、この世界では生きた魔力に触れないようにしまったまま放置しておくと半年くらいでボロボロに砕けてしまうそうだ。
逆に愛用しているものは革製の鞄などでも年単位で使えるらしい。
次に、あの時核の中から取り出した真珠か磨いた貝のような綺麗な白い石を調べてみると『神珠石』という名でエスの力の欠片、破壊不可とだけ分かった。
オクティにも見て貰ったけど、あまり見たことがない力が詰まっているだけで、効果は何も見えないらしい。
これはさすがに売ったり出来そうにないのでアイテムボックスに封印……お守り代わりのアクセサリーにするにはちょっと大きいし、貴重品っぽいもんね。
最後に魔獣の核から作る魔石とよく似た色の円盤状の平たい結晶が数枚あった。
直径50センチくらいで厚みも5センチくらいあり、調べてみるとそのまま『魔石板』というもの。
深海に降り積もった魔獣の核が水圧で圧縮されて生み出される結晶体らしく。通常の魔石より透明度が高くてすごく硬い。魚人の国では水中の家の窓ガラス代わりに使われている素材なんだって。
深海の水圧に耐えるくらい硬いけど、水の魔法などで削ったり、足りない部分に魔獣の核を載せて圧縮して継ぎ足したりすることで装飾も可能。
そこに、あ、これは『追加情報』だなと何故か感じられる部分があり。
マジックアイテム『転送盤』の作り方。という情報が見つかった。
既存の小さい魔石に『テレポート』の魔法を籠める。
その魔石を2つに分け、2枚の魔石板のそれぞれに乗せ、上から魔獣の核を被せて『圧縮』をかけ、完全に封入する。
作り方はそれだけ。
使用方法は、魔石板の色が変わるまで魔力を籠める。籠める魔力の種類はどれでも良いが。1種に絞るか3種同時に籠める必要があるのは通常の魔石と同じ。
色が変わった状態の板側に触れ『転送』と唱えることで、所持品ごと対になっている板に隣接した空間へ瞬間移動する。
所持品に含まれるものはテレポートの時と同じで、唱える本人が自分と繋がっていると認識している人や物を全て含み。よく産出される50センチサイズの板のものであれば、400キロ程度のものまでまとめて飛ばすことが出来る。
溜められる魔力量と、一度に送れる重量上限はほぼ比例しており、大きな魔石板を使ったり、魔獣の核を使って複数枚を接着して使うことで上限を増やすのも可能だそうだ。
飛ぼうとしている側の板が破損などしていて魔力容量が足りない、重量オーバー、両方のテレポートの魔石がきちんと全部埋まっていない、転移先に出現するための充分な空間が無い。
といった要因があると、それを理解して転送は発動しない。
「おぉ……エスに頼んでおいたの、早速追加してくれたっぽい!」
「エスに?……へぇ、魔石に魔法を直接籠めるなんて聞いたこともないな。頼んで作れるようにして貰ったということだから、多分そこの仕組みから追加されているんだろうね」
「さすが神様って感じだよね。……仕組みから追加されてるのなら、テレパシーとか他のものも直接魔法を籠めたりって出来るのかな?」
「どうだろうな……やってみるか?」
オクティが隣でポコポコ魔石を作ってくれたのを渡して貰って、1つ手に持って目を閉じる。
テレパシーの魔法を籠める……
んー……魔法をこめる?
「んー、出来そうだけど出来ないっていうか、感覚がよくわからないの」
「今、俺も圧縮とか盾とか結界とか、他の魔法を籠められないか試してみてるんだが。盾と圧縮はやろうとした時点で出来ない感覚があったし、結界は練度も足りてないが、まず魔石の容量不足で出来ないと感じる。多分、ハッキリ無理と感じないものは訓練が必要ってことだと思う」
「うーん。いろいろ商会組合に頼んでおきたいこととか職人さんに話を持っていきたいものとか、結構溜まって来てるんだよね。本格的に練習するなら、先にちょっと街に行きたいかも」
「そうだな。俺もちょっとこれは腰を据えて調べたいし、心残りは全部片付けておいた方が良さそうだ」
朝早くから川へ行ったお陰でまだ昼くらいだし、そのまま商会組合からまず訪ねてみることにした。
受付に顔を見せると、2人が揃ってるのを見ただけで職員が奥へ走っていって組合長が呼び出され、前と同じように防音付きの応接室へと案内される。
「おぉよく来てくれたな二人とも!あのオレンジって果物と水草ってのの育て方もお前たちからの情報なんだって?後でそれとか水草から発生する妖精の使い方なんかを説明しに来るはずだからしっかり聞いておけってジュラ―ルから聞いてるぜ」
以前と同じようにソファーに座って、今回は目の前に緑茶が並ぶ。
「あ、こんにちは。えーと色々上手く育てられそうですか?」
「水草の方はまだそんなに広い水場が用意出来てないが、オレンジの方は順調に育ってきてるらしい。ツチノコが好むって話だったからあまり森の近くで育てないように気を付けてもらったが、本当に森の方から時々ツチノコが飛んでくるようになったそうだ。まぁ途中で亜人に食われたり焼き肉の素材として回収されたりしてるみたいだけどな」
ジャム、干したオレンジ皮、輪切りで乾かしたもの、普通に剥いた実、絞ったジュースをサンプルで渡し、あと新鮮な皮から抽出できる香料も見せるが、その香りが飛ばないようにするものとして、強く酔う酒から抽出できるアルコールというものがあるという話をしたら。
「酔えるものっていうと、白砂糖とかでも使えるのか?」
というので改めて調べてみる。壺一杯抽出してようやく小さなコップ一つ程度ではあるけど、取れるらしいのでそう伝え、抽出を試し、そのアルコールの一部とオレンジ香料を混ぜてコロンを作って渡す。
ついでにお茶割りを作ってちょっと飲んで貰ったら、物凄い刺さったみたいで、一口で我慢するのがつらそうだった。
砂糖から作ろうとすると原料は大量に必要ではあるものの、地上においてはアルコールは木から抽出する方が楽に入手できるかもしれない。
スプレータイプの瓶の作り方は知らないので、蓋に棒が付いていてそれでちょいちょいと皮膚に付けられるタイプの香水瓶を絵に描く。ちょっと聞いてみたけど、スプレーやポンプはまだ知らないらしく、どういうものかの説明だけ詳しく聞かれた。
小物や鍛冶をやっている者にちょっとそのアイディアについても聞いてみるらしい。
サカナは捌き方についての説明、ウニは捌いた直後なら生で食べても大丈夫なくらいだけど、傷むのが本当に早いので、売るなら焼いて食べるようにと説明。焼きウニもちょっとだけ試しに出す。
「さっきのお茶割りとこれ、持ち帰っていいか……家で寝る前に食いたい」
「……他の人に見つかったら怒られません?」
「ここで食っちまったことにしとく」
そしてゴムについては実物を見た方がいいだろうと、クラゲの乾かし方やゴム液の作り方を説明しながら、大鍋や何種類か作ったゴム輪、ついでに作って水風船になってしまったアルコール風船を見せる。旗の棒などに塗っておくと妖精の食害を避けられるとか、性質についてとかも含めて一通り説明。
水飴状態のそれを扱うのに、そのまま掬って使うのは大変なので、ドレッシングボトルのような口が細くてしっかり蓋が出来る入れ物とかないかと聞いてみたところ。
ちょっと席を外した組合長が持ってきたのは、なんというかジョウロ?蓋のないやかん?そのまま火にかけることも可能で、口の部分の先が直線的に細く絞ってあって、少量ずつ注ぐのに適してそうな金属製の入れ物だった。
「まとめてインクを作って小さい入れ物に分ける時につかうやつだが、ほら、これだったら直接水と干したクラゲを入れて火にかけて、ゴム液になってからそのまま使えそうじゃないか」
そう言いながら、ちゃっかりお茶のカップとウニの皿に使えるゴムの蓋を作って持ち運べるようにしている組合長。いや、実際ちゃんと使えるかどうかを試すには使ってみるのが良いんだと思うし、初めて使う素材なのに上手だなと感心しちゃったけど。
「ほんとですね。――あ、これがあるんだったら、最初に試して欲しい人がいるんです」
オクティにもお店の場所の説明を手伝って貰って、服屋の妹のランジェリーショップをしているピンクの髪のお姉さんに靴下や下着の素材の話のことをしたことがあって、ミラルダさんにも頼まれているということを伝える。
「あぁ、マギーのことか。……そうか、そういえばあの子のところは母親の代からずっとミラルダさんのお気に入りでよく目を掛けられてたな」
話を聞くと、彼女の母親は髪結いをしていて、若い頃に植物繊維と染色魔法を使えば自由に髪色を変えて楽しめるウィッグを作れるんじゃないかというアイディアを出したことがあり。それをミラルダさんに気に入られてから付き合いがあるらしい。
白髪も禿もない世界な上に、髪色を隠すことをあまり歓迎しない風潮のせいでウィッグはほとんど流行らず、事業としては失敗してしまったのだけれど、見捨てることなく何かと気にかけて親子まとめて仲良くしているそうだ。
「マギーはデザイナーとしてのセンスもあるし、実際母親の髪結いの技術も服飾の技術も高いから、あの親子が貴族に気に入られるのは納得だがな。それでも平民の職人に目をかけてくれるミラルダさんは、市井でも人気が高いんだ」
「やっぱり昔からいろんな人に支援をしたりしてた人なんですね。えっと、ゴムを使った服なんですけど、布にそのまま塗ってもただ水が汲めるくらい防水の布になるだけで伸びないし、通気性が無くて蒸れるだけで。服に使える伸びる布にするためには、ゴム自体を糸の形に固めて普通の糸を縦糸にしてゴム糸を横糸にして織るところからやらないといけないはずなんです」
「あぁそういう職人ならたくさんいるから任せて貰って良いぞ。マギーと仲が良いやつを中心に話を持ち掛けて、服関係の開発は彼女中心にやらせるってことで良いんだな?」
「はい。ミラルダさんがマギーさんに最初にやらせてあげて欲しいって言っていたので、よろしくお願いします」
組合長はちらっと大鍋と乾燥したクラゲのサンプルを見て。
「これだけあれば服の開発のためのゴム製品作りはそれなりに出来ると思うが。まだ水草生産は本格的に進んでない。足りなくなった時は追加注文をしても良いか?服飾は勿論、ミラルダさんが優先しろといっているなら優先的にマギーの所から回すが、こいつは色んな職人が欲しがる。間違いない」
「そこまで大量にだと困りますけど、私も新しい便利な製品が増えてくれたら嬉しいので必要なら持ってきます!多分、手の形に作った鉄型とかに塗って剥がすと簡単にゴム手袋が出来て、熱いものはダメですけど水も油も弾くので手が汚れないとか、便利に使えるものだと思いますし」
「っくう……早いうちに遠征が進んで、交易路も出来て欲しいもんだな」
「ほんとですね。海もですけど山のものにも欲しいものが色々あって。早く交易路が繋がって商人が行き来するようになってくれたら嬉しいんですけど……」
「はー……殆ど伝説や夢物語みたいな話だが、なんか嬢ちゃんが言うと出来そうな気がしてくるよなぁ」
「出来そうっていうか、出来て欲しいですねぇ」
「チョーコ、山にも行ってみたいんだ?」
「うん……山にも洞窟にも砂漠にも行ってみたい。まだ足りないものが色々あるんだよね」
特に野菜!スパイス!
小麦はもうちょっとしたら入手ルートが出来る予定だし、卵は何とか獣人村と……あとどこかで牛乳って手に入らないかなぁ。
ふと我に帰ったら、組合長がなんだか凄いほほえましいものを見るような優しい目になっていた。
「うちにも丁度嬢ちゃんくらいの双子の娘がいて、最近急に美味しいものが手に入るようになったから、もっと色々な所に行けたらもっと旨いものが食えるかって夢見てるけど。似たような顔してんなぁ」
「そうなんですか?」
「嬢ちゃんがもうミラルダさんとも顔繫ぎを済ませてるのなら、もしかしたらそのうち声がかかるかもしれないな。いずれ娘たちと会うことがあれば仲良くしてやってくれ」
「あ、はい……」
顔繫ぎを済ませてるのなら?よくわからなかったが、特に掘り下げることはせず。
「今日見せられるものはこんなもんか?他にもあるならこっそり見せて欲しいところなんだが……」
「えーっと?」
「アルコールは出してきたのに、白砂糖から取れるのは知らなかったろ。強く酔える酒だっけ?何から作ったんだ?」
「あ」
「お茶割とは別の何かもあるんだよな?」
「うー……これは海の地区でも凄い深い所じゃないと取れないやつらしいので、魚人と交易しないとだめなんですけど」
鱗とサンゴは丸ごと全部。酔い水草はお椀一つ分くらいだけ渡すことにした。
魔石板は多分後で使うので、今は出さないでおく。
「うぉぉ、すげーな!魚人との交易か……魚人にはどういうものなら売れる?」
「水の中で暮らす種族なので布の服とか木製のものは苦手で、金属と宝石で出来たものと、それから水の魔力だけでは作れない、火を使った料理の類は売れると思います」
「なるほどなるほど。皇帝に献上されたって魚人の娘も服は着てなかったらしいしな。売れる商品を考えておかなきゃな」
***
深海の品まで勢いで出してしまい、ほくほくしている組合長を残して商会組合を後にする。
ついでなので街の中を少し歩いてみると、真新しい建物があって、入り口周辺にテンションの高い酔っ払いのような人たちが溜まっていたりする。
「あれが、噂の新しく出来たって黒砂糖茶屋ってやつかな?」
「酔っぱらってる人がいっぱいいるし、そうかも」
「あーなー?きーてくれよぉ、最近ほんとに腕章エリートのやつらがよう、俺といっしょに肉食ってるときに、すげーわうわう話しかけてきて、かーわいいんだってー」
「隊長、その話10回は聞いてますって、いやホントに懐かれてるなってのは知ってますよー」
「ほんとあれ、絶対何か喋ってるとおもうんだよなー?なんて言ってんのかなー、聞いてみてぇー」
「はいはい。いくら明日も休みだからって、飲みすぎですからねー?」
「おーおー♪大きなしっぽに立派な耳とー大きな口ー♪かーわいいー獣人たちーなーに言ってんのかなー♪っとぉ!」
とうとう歌いだした隊長とやらを部下らしい3人ほどの同じ服装の人たちが捕まえて、はい帰りますよーと門の方へ引っ張り出していく。
大変そうだなとも思うけど、部下の人たちも皆ニコニコしてたし、なんやかんや部下にも慕われている隊長ではあるらしい。
「今の歌ってた人、パリィの兄さんだぞ」
「そうなのっ?」
「あぁ。隊長って言ってたから長男のはずだ。顔立ちちょっと違うけど、髪と目の色が全く一緒だろ」
「目まではちゃんと見てないけど、言われてみればそうかも」
「チョーコ、なんかあいつのこと見てたけど……あぁそうか、獣人の話だったからだな」
「う、うん。よくわかったね?このまえ獣人車を引いてくれた獣人の子が、仲良くなったばーべきゅー隊長がよく歌ってくれる歌が好きって言ってて。あの人の事かなーって」
「そういうことか。んー、魚人たちが本格的にこの街に来るようになったら、ああいうのも通訳して貰えるようになるのかもな」
「そうなったらいいねー。そもそもどうやって、どこに話を持っていけば良いのか分からないけど」
「まぁ、遠征隊が海や魚人たちと接触してから考えれば充分間に合うさ――さ、帰って実験するか!」




