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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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25/93

25.やりかえしてみた

今日もパリィがトレーニングを終えるのに合わせて着替えて下に行き、朝のお茶をしながら秘書さんの来訪を待っていると。


「ん?来たが……足音が違うな、誰だ?」

パリィがそう言いつつもあまり警戒の強くない足取りで玄関へ向かう。

「別の秘書が来るかもとは言ってたな」

「うん、三つ子みたいにそっくりな3人組だったからその誰かだと思う」

気になってちらっとドアの影から見ていると。


「おはようございますっ」コンコンッ「本日は第一秘書が所用のため第二秘書が参りました!」

声質まで似ているけど、ノックの勢いや口調とかはいつもの感じと違う。


パリィがすぐに開け、入ってくると彼ではなくこちらに目を合わせてにぱっと笑顔を浮かべてきた。髪型と背格好を合わせていても表情や目元の感じは違うし、髪の色も第一秘書さんが薄い青緑色なのに比べてもうちょっと緑に近い気がする。


「本日はチョーコ様もお加減がよろしいようで何よりです。『本日中に遠征隊が帰還する予定のため、明日の訪問時にご確認頂くものがあるかもしれません。話し合いの方も問題なくカタがつきそうです』と伝言をお持ちしました」


「明日ですね、分かりました。あ、色々メモを書きたいことがあって、ペンとインクと紙ってお願いできますか?」

「承りました!長兄……あ、忘れてくださいっ。第一秘書がチョーコ様からの頂き物を大変に気に入っているようで、感謝していると申しておりました。あの、こちらで直接購入可能と伺ったのですが……壺1つでおいくら程になりますでしょうか?」


「値段は決めてなくて、というかまさかもう無いんですか?あれ白砂糖たっぷりなので食べすぎると危ないですよ……?」

「いえ、主人に頂いた分も含めて味見の希望者が多すぎて争奪戦なんです。現金で済むなら話が早いのですが、希少品ですので」

「あー、そういうことなんですね」

ちょっと中に引っ込み、アイテムボックスから小分けした壺を1つ出してきた。


「味見の時点で足りないということでしたらもう1つだけお渡ししておきます。このサイズの壺、使い易いので、次回少し補充して貰えますか、あと大きいお鍋もお願いします」

「なんと、ありがとうございますっ!筆記用具とこの壺と一番大きいサイズの鍋、確かに承りました」


***


最終日ということで、パリィは最初から泳ぐモード。今日こそは泳ぎでサカナを捕まえてみせると張り切っていたが、昼近くなっても取れず。


オクティが手伝うと言っても自分でやると言って聞かない。

泳ぎ2日目でサカナに勝てないのは当然と慰めて一旦川でサカナを取って食事にしたあと、改めて海でリトライ。


ウニは拾うたびに焼きウニにしてアイテムボックスに貯めつつ待っていたけど、まぁ素潜りの素手でサカナは取れないよね。


帰る時間も近付いてきた頃にようやく捕まえた!と言って見せられたサカナはまた種類が違っていた。観賞用の金魚や熱帯魚のようにふわふわと長い尾びれと胸びれ、全体の鱗は明るい青でとても綺麗。


その魚は、明らかに命乞いをする姿勢で胸びれを前で合わせてぷるぷる震えながら、主にチョーコを見て助けを求める顔をしている。


「いやバリィお前、その態度はただの妖精じゃないだろ……」

オクティからもツッコミが。


魚人族の幼体、だった。


魚人や半魚人は卵の期間が一週間ほど、幼体として魚で過ごす期間が5年ほどあって、それを過ぎると身体が人型に変化して亜成体となり、魚人はそこで初めてテレパシーや言語が使えるようになるらしい。


「あぁぁ、まだちっちゃくて喋れないけどこの子は魚人族の子供だって、食べちゃダメ」

「なに、お前魚人だったの?そいつぁ悪かったな。魔獣も亜人も居て危ねぇんだぞ、子供はちゃんと親の近くにいろよ?」


今回は投げたりせずにそっと水に戻す。青い魚は一度ぴょんと空中に跳ねてから深い方へ戻って行った。


「パリィって魚人好きだったっけ?妙に優しいな?」

「魚人には優しくしとくと良いことあるんだぞ?干からびかけてた魚人に水をやって助けたら水の国へ魔法で連れてって貰った話とか、海で溺れた旅人を人魚が助けて夫婦になった話とか知らねぇの?」


「へー、この国にもそういう話があるんだぁ、じゃああの子も何年かしたら凄い美人になってバリィに恩返しに来るかもね?」

「いいなそれ、けど俺火属性だからなぁ、美人な魚人が来ても恋人にゃなれなそうだ、残念だぜ」


「パリィってモテそうなのに……」

横から小さく。「触れてやるなそこは」とオクティが囁いてきて口をとざすが。バッチリ聞こえてたみたいで苦笑いされた。


「そこまで気にしなくって良いけど、筋肉ダルマは好みじゃねえってフラれたばっかなんだよ。その前の子には夜の寝付きがよすぎる、朝も私よりトレーニングが優先なのねとか謎のキレ方されて別れたし。俺にも一緒に冒険に行けるような彼女出来ねえかなぁ……」


「相性って、あるよね……つっついてごめん」

「俺もパリィは良い男だと思うんだけどな……一緒に寝るのに甘いこと一切なしが毎日は多分俺もつらいかもしれない」

「健康優良男子がいいって人を探すしかないよね」


私たちの場合はオクティが生活時間は黙って合わせてくれてたし。ん?夜も朝も私は寝落ちしまくってばかりでは?


「あれ、もしかして私の方がオクティに無理させてるんじゃ……」

「俺は寂しいとか構って欲しくなったら言うし、言えばチョーコも合わせてくれるからいいんだよ」


「おーいお前らー、恋人いねぇって話した直後に目の前でイチャイチャすんなー」

「「ごめん」」


そんなことを話していたら日もだいぶ傾き始めてしまったので、焼きウニを食べてお開き。


***


恒例のお風呂タイムからの寝落ちはいつも通りだったけど、起きたら背中側から抱き込まれていてまったく抜け出せない状態になっていた。

頭の上に顔が乗っているので、髪が規則的に吹かれる感覚がちょっとくすぐったく。向きが変えられないかともぞもぞ動いたら起こしてしまったようで腕が解かれる。


「あ、ごめん起こしちゃった?」

「んーいや、一度起きてチョーコ抱えて寝なおしたから多分そろそろ起きた方がいいかな……」

伸びをしてもそもそとベッドから降りて身支度を始めようとする。

そういえば、掛け声は既になくって水音がしてる。


「うわぁ一度も起きなかったわ。オクティとくっついてると本当にいくらでも爆睡しちゃうみたい」

私も起きて支度をすることに。


いつも通りに下へ降りると、パリィは既に荷物までまとめ終わってた。

「おはよ。いやーこっそり行く海の冒険もとうとう終わりか。名残惜しいぜ……楽しかったしサカナもウマかったし、あーまた食いてぇ」

「泳ぎとかサカナ取りとか、お休みの日があったらまた行こうね」

「ほんとか!?マジで毎日行きてぇんだけど!」


「チョーコと二人きりの時間なんだからちょっとは遠慮しろよ、来たら目の前でイチャイチャしてやる」

「地味に心にくる嫌がらせしようとすんな!んじゃ俺に彼女出来たら祝いに連れてけ……ってそうか、あの魔法は秘密だったな」

「うん……パリィの彼女さんなら大丈夫かもしれないけど、付き合いたてじゃ分からないもんね」


夜だけ帰ってこられれば安全に休めるから、テレポート使える人が増えたら遠征や探索だって一気に進むと思うんだけどな。いろんな物がすぐ腐るというか分解されて消えちゃう世界だと、鮮度が大事なものとかは遠くから持ち帰って来られないし。

全部の輸送に私がついてくわけにもいかないし、でも教える手段があったとしても魔力量の関係で使える人は限られそうだし……


「またチョーコが何か思い付いてるのか?そっとしといた方がいいんだっけ」

「あ、ううん。今はただ、テレポートを他の人たちも使える手段があればいいのになって考えてただけ。今日は引きこもり終わりってなったら何すればいいんだっけ?」


「俺は護衛期間が終わるから、冒険者組合に報告。あとオクティは俺ん家に隠れてた事にするんだろ?報告ついでに一緒に行くか」

「そうだな。生存報告と……魔塔から研究再開のために冒険者活動禁止、俺が顔出したら魔塔に報告が行くってやつが出てたはずだから、それがどうなってるかも確認だな」

「それは私がついてく必要なさそうだから、私は家で今日届く紙に色々描いて待ってようかな」


「……って言ってる間に来たな。いつものやつじゃないけど昨日のやつ……か?」

昨日と同じようにパリィだけドアの前に立って応対する。ノックの音や口調は同じで第二秘書を名乗ったけど、ドアが開いたらパリィが入室にストップをかけた。


「かなり似てるが昨日のやつと匂いが違う。誰だテメェ?」

たしかに昨日の秘書さんは第一秘書さんより髪が緑っぽかったけど、今日の人はほぼ同じ薄青緑。

彼はとても困った顔で荷物を抱えたまま手のひらだけ両方見せて。


()()()()()()()がわたくしなだけで、確かに昨日とは別人です。が、本当に怪しいものではございません。収穫物の確認もありますのでお通し頂けませんか?」

「……嘘はねぇっぽいな」

振り返られたので頷くとパリィが中へ通す。


「えっと……三つ子さんかと思ってましたけど、もっと沢山居て交代制なんですか?」

「詳しいことは口外出来ませんがそうなんです。こちらがご注文の品と、今回の遠征の収穫物ですのでお確かめ下さい」


「あっ、オレンジだー!」

今回の遠征隊は川の、丁度私たちが最初にテレポートで辿り着いた近くに出たらしい。流れる水の出処を辿って上流に向かい、途中で見つけたものだそうだ。


水草も一つだけ見つけたらしく、ただ周りの鞘部分は既に溶けて粒だけになったものを見せられた。

オレンジは収穫から数日経ったせいか皮が乾きかけていて、あまり美味しそうな状態ではない。


水草は木の粉とほぼ一緒でお腹にたまり、茹でるとタピオカになって、飲み物などに入れると美味しいということや。

オレンジは渡したジャムの原料で他にもいろいろな使い方ができること、でも収穫してすぐに加工しないとこうして萎れてしまってあまりおいしくない。


なので、実の中に種が入っていて植えて増やすことが出来ることを説明する。情報を見ると、実まるごとや種をそのまま地面に放置しておいても勝手に生えるが、魔獣の核を砕いたもので埋めておくとかなり早く育つそうだ。


ツチノコが特にこのオレンジの木の若い葉が好きで食べに来るらしく、しばしば食い荒らされるとあるけど、枯らしてしまってもオレンジならば追加で実や若木を取りに行けるので、加工よりもまず果樹園造りを頑張って欲しい。


水草の方も、水中に落ちた魔獣の核から育つものらしいので、水を貯めた中に核をまいたら収穫出来るかもしれない。


ふんふんと一心にペンを動かす秘書さんが一段落してそろそろ帰ろうという頃、私でも聞こえるくらいの走る音が玄関先に近付いてきてノックが鳴った。

パリィが先に立って待つ。

「第三秘書ですっチョーコ様いらっしゃいますかっ」


「お前が昨日のやつだな?」

「え゛。あ、はいその通りです」


名指しされてるので出る。確かに髪が緑っぽい方の秘書さんだ。

「あぁよかった、すみませんが大至急です。遠征で連れ帰った魚人族と思わしい方々をチョーコ様に会わせるため、すぐに城へ連れてくるよう主人から命を受けました。獣人車をご用意しておりますので、ご同行願えますか?」

オクティは心配だったようでドアのところから渋い顔をしていた。


「チョーコ1人で城……」

「身の安全はわたくしが、命にかえてもお守り致しますっ」

塀の外に止めてあるのは、柴犬っぽい獣人が引く二人乗りの人力車。私と秘書さんが乗ったら定員。


不安が全く無いとは言わないけど、行く先がお城となると勝手に人数増やすのは良くないんだろうし、魚人に会わせるって宰相さんが言ってるなら行った方が良いと思う。

「オクティとパリィは冒険者組合に行くって言ってたから、私はお留守番の予定だったし、行ってきていいかな?」


「本当に1人で行くのか?」

「大丈夫だよオクティ。魚人族が捕まってるなら気になるもん、いざとなったらその子たちもまとめて逃げてきちゃう!」

「チョーコがそういうなら、仕方ないな」

ギューッと抱きしめてから放してくれたので、第三秘書さんと共に獣人車の方へ。


「わっふ?!チョーコのあねさーんっ!」

「もしかしてフクタイチョー?!えっ、皆捕まっちゃったの?」

「フクタイチョーはオイラの兄っす!捕まったのは隠れ家と村の連絡隊だったオイラたち5人だけっす!ここはチョーコのあねさんのいる群れだったんすねー!みんなにも知らせておくっす!」


「5人だけって……でも捕まった獣人は奴隷扱いなんでしょ?大丈夫なの?」

「うーん?たしかに捕まってすぐは叩かれたっすけど、人間のばーべきゅー隊長と一緒に焼肉して仲良くなったら、優しくして貰えるようになったっすよ」

「い、一緒に焼肉……確かにそれはただの獣人じゃないってわかって貰えるかも。そっか、皆が元気にやっていけてるなら良かった!」


……喋っている隣で秘書さんが唖然として見つめていた。


「はっ、ご、ごめんなさいっお待たせして!」

「あぁいえ。『違う種族の言葉も分かる』とは聞いていましたが、本当に会話が成立しているのだなと」

慣れた様子でチョーコに手袋を着けた手を差し出して車に乗るエスコートをしてくれ、運転席の乗馬鞭っぽいもので本当に軽く肩をトントンとやって走らせる。


「遠征が始まった初期の頃に捕まえた獣人の中で、5体だけ異様に物分りがいいという噂はあったのですが。軍部で夕飯に妖精肉を焼いていたら擦り寄ってきて、焼いた肉をねだるのではなく()()()()()()()()()そうです。左腕に目印として軍部の紋が着いた布を巻いているのがその5人で、今はエリート獣人と呼ばれていますね」


「エリート獣人って呼ばれてるんだ、カッコイイね、お城までよろしくね?」

「わふーん!ほめられたっす!どれのことっすか?大きい住処がいっぱいあるっすよね」

「1番広いとこわかる?」

「あーあのやたらでっかい、この群れのソンチョーの家っすね、わかったっす!」


曲がり角を合図なしでとっとこ進み始めたので、秘書さんが目をきらきらさせている。

「道、わかるんですか?」

「たぶん一番広いとか、わかる特徴があれば多分分かると思いますけど、説明が難しいですよね」


「人間の家は匂いが混ざりすぎててわかりにくいっすねー。オイラたちを呼ぶ家はだいたい決まってるから、乗った人間の匂いで何となくどこ行くのかはわかるっすけど」

「あ、乗った人の匂いでいつもだいたいどこ行ってるか覚えてるの?……例えばこの人は?」

「その毛色が似てるしゃてー(多分舎弟?)たちは、あっちこっちおつかいで行かされてるっすよね?いつも出てくる大きい家は決まってるけど、行く先はバラバラっすねー」

「わ、そんなことまで覚えてるんだ。すごーい」


「わたくし、いつもどこに行っていると思われているんです?」

「秘書さんと似てる格好の人達はおつかいでいろんな所に行かされてるから、出てくる家は同じだけど行き先はバラバラだって」

「おぉ……ではわたくし達が家に戻って欲しいと言えば、宰相邸へ行けるのでしょうか……」


「あ、ついたっすよー!」

城の門の前に勝手に止まる。

「本当に着きましたね。えー、良くやりましたっ」

立ってわしわしと頭を撫でると、獣人さんは嬉しそうにへっへと舌を出して喜んでいる。


門の人に獣人車を誘導するように言付けてから、チョーコを連れて城の中へ。

石と木を混ぜて使った彫刻家の力作みたいな入口を抜けると、壁一面に木彫りのレリーフが施された大きなエントランスホールで両側に階段が作られているが。

案内されたのは真っ直ぐ正面奥の大きな扉。


入口で揃いの濃い青のローブ(ローブではあるけど動きやすいようにあちこち袖の幅や裾の長さなどが調整されててなんとなくメイドさん的なイメージのもの)を着たお姉さんたちから、純白地に茶色い模様が大きく入っているローブをそれぞれ渡されて、生成色のローブは預けさせられた。


礼服とかドレスコードの代わりに上から着ればお城でも失礼にならないっていうのは楽でいいかも。

この国だと純白は皇帝の色とされていて、一般人は純白の服を着ちゃいけないんだって。


扉の先はロイヤルブルーの絨毯が奥まで敷かれ、壁全面が大理石かあの老木の芯の部分を磨いた石か、純白の壁に、シャンデリアっぽい灯りまで下がった豪華な部屋。


正面の一番奥が1段高くて玉座っぽいものが置かれ、そこに長い白髪をゆるい三つ編みにしている、宝石をこれでもかと縫い付けた純白ローブの偉そうな男性が足を組んで座っていた。


段の横を見ると、宰相さんが死ぬほどゲンナリした顔で腕を組んで目を閉じている。

隣を見ると秘書さんは「わたくしが命を受けた時は主人だけでしたから……割り込まれましたね。暴力的な手段からは護りますが、いざとなったらお逃げ下さい」と小声で囁いた。


話が出来る距離まで近づくと、なんというか……にやにやしてて私は好きじゃないタイプ。

「よい、発言を許可する」とだけ、皇帝が言う。


は?と思ったら隣の秘書さんが一歩前に出て恭しく胸に手を当てて顔を下げる。

「お召により参上いたしました」


「お付のものに用はない、下がれ。それ、異国の冒険者とやら、フードを取って顔をよく見せよ」

ちら、と宰相さんを見ると、2度ほど頷く。

黙ってフードを取ると、皇帝は一目見てあぁ要らん要らんと手を振った。


「戻せ。なんだ、顔は美しいと期待したが黒髪ではないか……良さげな娘であればそばに置いてやったものを。だがまぁ、聞けばなにやら、各国を回ってきた知恵者であるとか?」


なるほど、皇帝は黒髪に興味は無いから見せて良いと思ったわけね。すぐに被り直す。


「余の前に服従の誓いを立てよ。何を望むか?」

ん?細かいところを聞きそびれた?

「……今回呼ばれたのは魚人について調べて欲しいということでしたし、誓いがなくても必要な時は協力するつもりですが?」


「余は口約束など信じられぬ。我が帝国はようやく、全国平定の為に動き出すことが出来た。その功績の多くはそちのものであると聞き及んでおるぞ?余はな、感謝しておるのだ……望む褒美を言うがよいぞ。おおそうだ。新たに手に入れた素材の優先権はどうだ?」


「優先権はともかくですね。全面的に服従しろという条件は無理です。この国は他の国を侵略支配を目的としていて、戦争とかもやるつもりですよね?私は平和で豊かな生活が欲しいんです、戦争に力を貸せとか命令されるのは嫌です」


「余に対し生意気な物言いであるが、寛大に許そう。よい、では『そちは戦いに関わらないものに限り、この帝国のため力を尽くす』『余は新しく見つけたものを優先的にそちに使わせる』どうじゃ?」


引く気ゼロだなと思うし、宰相さんもここはどうにもならなそうな顔で若干項垂れ気味だが。

考えてみればこれはチャンスでは。


「はー……わかりました、条件として休日と身の安全もつけて貰えるなら良いですよ」

一瞬生意気なと睨むような目をしたが、すぐに鷹揚に頷いた。


「よいだろう、ではゆくぞ。以上と余が言ったあと、制約を了承すると唱えよ。

【偉大なる人族至上帝国は全ての上に立つべき存在であり、その祖たる皇族の言葉は絶対である】」


喋り口調が変わったところが制約言語というやつかな。

小さな声で、でも魔力を込めて呟く。

「人族至上主義帝国は、全ての知恵ある人族を尊重するべきである。武力や隷属による支配を行う前に、友好的で有意義な交流を模索し、交易による豊かな国を目指していくこと。……以上」


「「制約を了承する」」

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