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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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12.妖精は妖精だった

「商店街へ行くなら、やっぱり魔塔のローブを着せるべきか?しかしな……」

「うーんと、オクティと私が一緒に歩いてるのを見られるのがまずい?」

「いや、まず魔塔のローブは身分の証明をするものだから、基本的に関係者以外が着ているのがバレると罪になるんだ」


「……門通る時にやっちゃったこと、バレたらまずいよね、やっぱり」

「バレたらな。けど『俺が魔塔のやつと一緒に仕事で門を出入りする』のは初めてじゃない。魔塔で外を調べる必要がある時は、護衛として他の冒険者を雇うより、事情が漏れても良い俺が付くから」

「そうなんだ」

「今日、俺が冒険者組合と魔塔両方に、あのダンジョンの仕組みを報告しに行ったのも事実だし。わざわざ俺の調査に魔塔の誰かが同行していたかなんて、門から魔塔に確認を取ることは無いと思う」


「じゃあ普通にこの格好……あ、黒髪が目立っちゃう?普通の白いローブとか帽子の方がいいのかな」

「街の人たちを見て思ったかもしれないが、一般的に魔力相性は恋人とか親しくなる段階で大事だから、髪色を隠すような格好をしているやつってほとんど居ないんだ。だから隠してる時点でなにかあると思われる」

「あー……」


「それに、その目な。目の色は何色でも、魔力量が多いと色が薄くなるのが特徴なんだ。チョーコは俺とほぼ同じくらい薄い金目だからさ、俺と同じくらい魔力が高いなって見ただけで分かる」

「門番の人が『その目は確かに魔塔の秘蔵っ子』って、そういうこと!」


「うん。だから、魔塔の人間だって思われてれば詮索はされにくい。特に茶色は『実験体』の色だから細かいことを聞いて来ようとするやつも少ないし」

「――もう落ちものだってことだけ隠してさ、旅の冒険者で攻撃魔法なら得意なんですって魔塔へ正式に身分保障を願い出て、譲歩できる範囲で研究に協力する方が良くない?」


「確実に、俺と子づくりして子供を魔塔の研究のために提供しろって言われるけどいいのか?その条件が飲めるなら、少なくとも身分保証はされるぞ」

「あぁぁ……実験用に子供を寄こせは絶対にいやだ。人体実験みたいな感じじゃなくて、定期健診みたいな軽い感じならまぁ分かるんだけど」


「そもそも魔眼持ちがちゃんと見れば、チョーコに属性が1つもないのは見えるんだからな?それなのに攻撃魔法が得意って時点でおかしいんだ。それに『抽出』や木の粉の加工とか、記憶に刻まれてる知識やら『テレポート』に『アイテムボックス』魔塔の研究員たちが自制を捨てて欲しがりそうな情報が多すぎる。簡単な検査だけで終わるとは思えないな」


「うぅ、魔眼もちって魔塔にしかいないの?」

「魔力が高めだと魔眼になりやすいから魔塔のやつに多いけど、魔塔の全員がそうじゃないし、高位貴族の中にも少しなら居るよ。平民街には居ないな」


「魔塔だけじゃなくて、お偉いさんに存在知られた時点で亡命したくなる確率が高いってことだね」

「まぁ、何度も言うけど俺はチョーコと一緒なら亡命でも何でもついてく気でいるし。実際川まで行ってきた感じ、俺たちが組めばそんなに危険なく逃げられると思うからそこまで心配はしなくていいけどな」

「うん……」


でも、少なからずオクティにはずっと育ってきた中で友達や知り合いだとか、関係が歪とはいえまだ生きてる実の親とか、色々いるわけよね。利用目的の特別扱いに辟易してる雰囲気はあっても、周りを恨んだり嫌ったり拒絶してるようにも見えないし。普通にちゃんと、人との繋がりは感じてると思う。


本人はチョーコさえいればって言ってくれるけど。

多分それは物理的に触れ合える人間が私だけだからって部分が大きくて……

私のせいで、他の全ての人と引き離してまで亡命させるなんて、絶対いやだな。


こうなったら私だけで国を出るのが一番平和かも、と思うのと同時に、こうも思った。


そうやって黙って抜け出すヒロインを全力で地の果てまで追いかける系の話、いっぱいあったよね?

そしてオクティ、文字通り飛んできそう!

飛んで来てくれたら、きっと私、ころっと連れ帰られるか一緒に連れて行っちゃうわ……だってそういう話大好きだったし。


やっぱりなんとか亡命の必要がない方法で、身分保障を得られるように頑張ろうっ!


「えぇとね、まずは、少なくとも罪になることは避けておくべきだと思うの。身分詐称で捕まって魔塔行きなんて、それこそ交渉も何も無くなっちゃうじゃない?」

「うん。確か色付いてないローブも使ってないのがあるから出しておくよ。だが魔塔所属じゃないとすると、説明が必要になったらどうする?」


「さっき玄関先で叫んでたから、オクティがパリィに説明した話が広まるよね。だったら……」


森をはるばる旅してきてた冒険者グループが、この国に近づいたところで強力な魔獣に襲われて全滅して、たまたま激しい戦いの魔力を見たオクティが気になって見に行って、その魔獣を倒した。

で、冒険者たちの死体を燃やして回ってたらギリギリ死んでなかったチョーコを見つけて治療して連れ帰ったの。

傷は全部塞がったけど、まだ精神的には色々怖くて人の顔は見られなかったから、今まではずっと引き篭ってて、ようやく回復して出られるようになってきた。という設定でどう?!


「うん。幸い俺の家に出入りするやつは滅多にいないし、しばらく前に見つけて隠してたことにするのは良いと思う」


「そしたら塩と砂糖と木の飲み物は他の国の技術ってことにしていいよね。『抽出』だって獣人の落ちもの知識だけど他の国の技術だし、レシピがあるってことはこの世界の誰かが作ったことがあるってことだからどこかの国の技術だもん、嘘じゃないよね」


「獣人たちは『抽出』の使い方が広まってくれた方が良いってことだったし、その情報はそれで問題ないだろう。落ちもののオレンジは多分あそこにしか生えてないから、チョーコが居た場所があのダンジョン方向ってことになって、俺が前に見つけて隠してたって話と矛盾するから秘密だな」


「そうだね。オレンジは秘密で……焼肉は?砂糖と飲み物だけじゃ塩の出番はないし、確か森の中で四つ足の妖精居たよね、ああいうのを捕まえてきて囲いに入れて繁殖させたらいいと思う!」


ニワトリを毎回獣人村から持ち帰るのは限度があるし、自力で育てて食べるのは絶対食べきれないのもあるけど、まず自分で飼った動物を絞めるのが無理なんだもん。何とか焼肉を流行らせて、街で食べられるようにしたい!


「妖精を繁殖させる……?」

「え?獣人村でも見たでしょ?ニワトリを囲いに入れてオスメスで卵を産ませて増やすの」

「見たことない妖精だとは思ってたが……おそらくニワトリも落ちものだ」

「えぇっ?!」


草食で二足歩行しない生物は全部妖精と呼ぶことは聞いてたけど。なんと妖精は森の中で育ち切った老木が、ある日スパーンと縦にけて、その中から生まれてくる生き物らしい。生まれた時から小さめの成獣の姿で、オスメスの区別はなく繁殖して増えたりしない。当然卵も産まない。


茶色いブタみたいな見た目で『妖精』って言われると違和感だったけど、確かにそういう生態だったらその翻訳で間違ってないと思う。


ちなみにこの辺りの地域で見かける妖精は、羽虫のような羽があってゆっくりと飛ぶツチノコ、四つ足で足の速い茶色のブタ、地面の中を動き、木を直接内部から食い荒らす巨大ミミズの三種――テレパシー翻訳のせいだと思いたいけど凄いのしかいないな。


「えぇぇ、じゃあ妖精の繁殖は無理だし、ニワトリと卵も広めちゃだめかぁ……落ちものなら獣人村にしか居ないってことだし、それが分かったら色んな意味で困っちゃうもんね」

「そうなるな」

「あうぅぅ」


「焼き鳥は美味かったけど、別に無理してまで街に広めなくてもいいと思うけどな。どうしても食べたくなったらまた獣人の村に俺と行こうよ」

「それはそう、なんだけど……」


「ちょっと早いが、今日はもう寝るか。昨夜だって獣人たちに守って貰ったとはいえ外だったし、ずっとダンジョン暮らしであんまりよく寝れてなかっただろ」

「うん、まぁ。オクティと一緒だとなんかよく眠れるから、寝不足ってことはないんだけど。ちゃんとしたベッドで眠れるのはいいよね」


じゃあいこうと手を引かれて二階へ一緒に向かう。

そういえばあの部屋ベッド一つしかないよね、と思ってる間に寝室に着いた。


「ベッド広いから、一緒でもいいだろ?これあげるから、パジャマに使っていいよ」


ベッドわきのチェストの引き出しを開けて、長袖Tシャツとゆるっとした腰ひもタイプのズボンをくれる。オクティも同じようなのを取り出して、外で着替えて来るからと出て行った。


言われるままに着替え……終わって。これは呼べばいいのか、それともベッドで待ってるものなの?いやまって、着替えてベッドで待ってるってかなり恥ずかしくない?!

赤面して挙動不審になっている間に、終わった?とノックの音がする。


「う、うん。終わった、はいっていいよ」

入室したオクティはチョーコの顔を見て、ちょっと首を傾げながらベッドに登る。

「どうした?こっち来なよ」

「あ、うん」


ぎくしゃくしながらベッドに登って、思わず正座になるチョーコに、オクティはちょっと困った顔で笑ってから口を開いた。

「心配しなくても、いきなり手を出したりしない。そういうのは、堂々と一緒に居られるようになってからにするつもりだから安心しろよ」


大事にされてるなと胸がいっぱいになると同時に、恥ずかしくなって顔を覆う。

「は、えっと、あ、ご、ごめん。私だけ期待しちゃったみたいではずかしい……」

「っ?!いや俺だってしたくないわけじゃないぞっ?!でも、今は……えっと、さっきも言ったけど俺たちめちゃくちゃ相性良いだろ、多分。やったら俺の体調が変わって、魔塔の定期検査でバレる」

「――?!」


驚いて顔を上げると、オクティがほらと手を差し出してきて、手を繋いで隣で寝転がった。

ぎゅっと握られた手は暖かくて、身体の力が不思議なくらいに抜けてくる。


いつの間にか、あっさりと眠りに落ちていた……

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