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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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11.オレオレ詐欺?

絵の為のものは調べたし、あとはやっぱり食糧事情!

せめてあの木の粉から砂糖以外の何かが作れれば……煮る、焼く、干す、何かと混ぜるとか。


見せて貰った竹というか若木と老木の中身を思い出しながら、そこから出来る料理のレシピがないかと記憶を探っていたら、何か脳内に出てきた。


葛湯:木の粉末+火と水の魔力、緑茶:若木の皮の粉末+火と水の魔力、紅茶:老木の皮の粉末+火と水の魔力

木の粉だけじゃなくて皮の部分まで粉にして煮るとお茶にして飲めるんだ、意外!


抽出とか特殊な魔法を使わないレシピが出るのならジャムとかも出そうなのに、なんで出ないんだろう。

――あ、この世界で実行されてない魔法が使い方登録されてないのと一緒なのね。

ふーん、水に木の粉を加えて火で加熱するのを試した人が前にいたからレシピがあるんだ。そっか、果物は落ちものだったら試した人が居るわけないか。


つまり料理のレシピに出てないものは作れないんじゃなくて、自力で材料揃えて料理する必要があるってことね。新しい魔法は作れる気がしないけど、あっちの世界の料理再現だったらいける気がする!

まず木の粉は黒砂糖入りの生くず粉に近いみたいだから、挑戦するなら餡掛け料理なんてどう?あっ、獣人村でとり肉は手に入る!


きゃー!鶏肉のあんかけ……あーお野菜が無いんだ。穀類も欲しいし、卵――あっ、卵はある。でもあそこの卵は全く管理されてる感じじゃなかったから、適当に貰って割ったら中に雛がいたりしそうんで怖いんだよねぇ……

うー、でも卵焼き、だし汁ないから甘いやつしか作れないけどそれでも、の前にフライパンがなーい。

あぁぁぁーー!


頭抱えてゴロンゴロンしてたら下からちょっと強めのノック音がして目を開けた。

留守でーす。って声かけるつもりはないけど。今、私なんか叫んじゃってたりした?

誰だろう。


部屋からそろっと出て、階段の上から玄関を覗く。


「おーいオクティ!居るんだろー?!俺だー開けろー!」ドンドンドン!


すっごい知り合いっぽい雰囲気出して扉を開けさせようとしてる。新手のオレオレ詐欺ってやつ?

黙って待ってたら、足音が庭の方をぐるっと回り、窓とかを全部ドンドンガチャガチャやってるのが聞こえてくるよ、いやまって、コワイコワイコワイ!


「おいこら!誰だ?絶対誰かいるって分かってるぞ、音がしてたからな!」

しかも確信を持っててしつこい。


ようやく諦めたかなってところでオクティが帰って来て鉢合わせしたみたい。不審者はパリィと呼ばれてるから本当に知り合いではあったっぽい。


「お前んち誰か隠れてるぞ!危ないから俺も一緒に入る」

「必要ない、今日は帰れ」

「いやホントに居るんだって!信じてないな?」

「信じてないわけじゃない、付いてこなくて良いって言ってるんだ」

「お前が強いのは知ってるけど、何があるかなんて分かんねーじゃん。遠慮すんなよ」


「あーもうしつこいな。良いんだよ、俺が連れてきたんだから何もない!」

「は?……えっ、女だったぞあの声!何お前彼女できたの!?なんだよ教えてくれてもいいじゃん、今いるなら会わせろよ!」


「はぁ……いい加減にしろ!魔獣に襲われて死にかけてたから治るまで俺のところに置いてるんだ。ようやく落ち着いて寝れるようになったんだから静かにしろよ。お前のせいでまた怖がったり寝れなくなったら責任とれんのか?!」

ややガチギレ気味の声がする。


「え。ごっごめん、悪かったって。お前の家からあーとかきゃーとか妙に興奮した女の声が聞こえたから何かあったと思って……そっか、一人で目が覚めて、色々思い出しちまって錯乱してたのか……うーん、俺が直接謝りに行っても怖いだけだろうから、ごめんなって伝えといてくれ」

あ、意外と素直。よかった。


トーンダウンしたやり取りが少しあったあと、すぐ立ち去った気配。そして玄関が開いてオクティだけが入って来て、茶色のローブを脱いで玄関のコート掛けにかける。魔塔に行って取り換えて貰ったのか、もう袖は破れてない。


彼だけなのを確認してから、姿を見せてひらひらと手を振った。

「おかえりなさい」

「ただいま。大丈夫だったか?さっきのは冒険者仲間で、といっても別にチームを組んでるわけじゃなくて……」


彼は大剣使いのかなり有名な冒険者でパリィア・グラス、通称パリィ。魔法は身体強化しか出来ないっていうバリバリ前衛系なので、ずっとオクティと組みたがってて何かと絡んでくるらしい。

身体強化の影響で耳がすごく良くて偵察も得意だし、罠や仕掛けへの勘もいいので冒険者としての腕は一流だし、意外と人情家で悪いやつではないんだが……と。


「あ、うん、悪い人じゃないんだろうなっていうのは分かったし大丈夫。でも、うん……会ったり話したりするのは、ちょっと怖いかな」

ひとりでいる時にガチャガチャドンドンしつこくされるのは結構来るよね、やっぱり。


「怖かったよな、遅くなって悪かった。食事するから下においで。粉でも飲めそうか?」

「あっ!そのことなんだけど、あれを美味しく飲める方法を調べてたんだよね。ちょっと試させて!」


パタパタと階下に降りるが、木製のコップの中で直接煮たりして大丈夫かなと若干不安になる。

「チョーコ、何に困ってるのか説明してくれ?」

「あ、この粉に水と火の魔力をゆっくり足すと、粉が煮えて葛湯っていう半透明のトロっとした飲み物になるはずなんだけどね、木のコップの中で水を沸騰させるって大丈夫なのか心配なの」


オクティは無造作に自分のコップに一食分の粉を入れる。

「これに、コップ一杯分の水の魔力と、その水が沸騰するくらいの火の魔力をゆっくり……こうか?」

白い粉の入ったコップに手をかざすと、全体的に粉がいきなり膨らんでいくように量を増しながら、細かくふつふつと煮立って半透明に変わっていく。


「そ、そう!これ!」

「気を付けるのは火の魔力の効果範囲だな、粉と水しか加熱しないように指定すれば大丈夫だ。水が全てなくならない限り燃えたりはしないから」


とりあえず自力でやってみたい。二種類の魔力を同時とかそういう難しいことは止めて、まずコップに自分で水と粉を入れて、くるくる揺らしてよく混ぜる。


「粉の入った水だけゆっくり煮える弱い火よ」

想像しているじっくり弱火で葛湯を煮るイメージの通りに温まって煮え、水に白い粉が混ざった状態から半透明に変わっていく。


無事できた。まず自分で作ったものをそれぞれで味見。めちゃくちゃ熱いから冷ましながら気を付けて飲むとダマも生っぽくもなく、成功したと思う。

あまりしょっちゅう飲んでたものではないし、イメージ的に冬の飲み物ではあるけど、粉と水のまま飲むのとは全く違う。甘い香りを裏切らないトロッと熱く甘い風味にホッとする。


「うんうん、やっぱり生っぽいと思ってたんだよね。これで成功してると思うんだけど、どう?」

「初めて飲むから成功かどうかは分からないが美味い。そっちも味見していいか?」

「あ、そうだよね。じゃあ交換しよ」


コップを交換してひとくち。どちらも同じようにトロッと滑らかな感触は同じだし、オクティのも成功というか。自分が作った方は優しいほんのりとした甘みだけだったけど、受け取ったものは蜂蜜でも少し足したかな?と思うくらい、甘くておいしい。


「チョーコの作ったやつの方が、ずっと甘くて美味しいな」

「えぇっ?絶対オクティの作った方が甘くて美味しいと思うけど?」


驚いたチョーコの顔を見たオクティは、理由が分かったようでにやっとする。

「本当に相性の良い相手の魔力は、とても甘く感じると聞いた。そういう相手と()()()()すると、魔力交感が起きて互いの魔力や怪我が一気に回復したり、力が増したりするらしいぞ?」

と、ペロッと舌を見せてからかってきた。


「ふぐっ……」

完全に絶句して目を開いたまま硬直してしまう。

オクティも流石に少し恥ずかしかったか視線を外して、すまん、からかい過ぎたと残りを飲んだ。


「……しかし火と水の魔力を加えるだけでこんなに変わるのか。簡単で美味いな」

普通のトーンに戻って話しかけてきたので、チョーコも少しほっとする。

「でしょう?あとね、若い木の皮と、老木の皮も、それぞれ同じように粉にして煮ると、そっちはサラッとしてあまり甘くない、お茶っていう飲み物になるらしいよ。若い方は緑茶、材木になってる方は紅茶になるんだって」

「へえ……気になるけど今は飲んだばかりだから試すのは今度な」


一食分の粉から出来た葛湯は、全部飲みきると大体お腹いっぱいになるから、原材料と満腹度は同じくらいなのかな。


「あとね、実は元の世界で絵を描くのが趣味だったの、だから画材が欲しくて色々調べてたんだけど。黒いインクの作り方と糸や布を染める方法だけ分かったんだよね」


インクに必要なものは木材と妖精の皮らしい、それから絵を描くのに使いたいから何も切ったり縫ったりしてない布、これは別に立派なのじゃなくて服作る時の余りとか破れたり汚れたりしたシャツでもいい。

描くときインクが服につくとまずいからエプロンやスモッグもあった方が良いけど、当面は使ってない分の布を巻くとかでなんとかなるし。本当は筆とか万年筆とか欲しい所だけど、まぁただの落書きだから今は割りばしペンみたいなものでも大丈夫だろう。妖精の皮は定着を良くするだけで木材だけでもインクはインクとして使えるみたいだから、今は省いても良いと思う。


「――だから、早めに欲しいのは端布と木材かな」

「木材は丸ごと切ったのがそのまま入ってるし、倉庫に破れたシャツもあるな」


「まだ売ってなかったなら良かった!早速――あっ、インクを入れるのに水飲むコップは流石に駄目だよね、将来的に料理もしたいし、色付きのインクも作れるようになったら何色も作りたいし、たくさんのインクが乾かない蓋つきの入れ物とか食事用のお皿、カトラリーは木を削って箸でいいか、あぁそのうちまた獣人の村に遊びに行ったら卵分けて貰えるかもだし、その時はナイフとトングと焼き網を持参で、いやせめてフライパンか鍋だけは鍛冶屋さんとかに特注したい……」


頭を抱える。

あぁぁ、やりたいこと考えたら欲しいものがどんどん出てくる。さっき作った葛湯とか、お茶とか、沢山取ったオレンジとか、砂糖や塩なんかと交換で作ってくれる人いないかなぁ。


「ただの壺なら倉庫にあるし、ナイフくらいはその辺の店で普通に売ってるが、どうも新しく作らないと手に入らないものが色々あるっぽいな?」

「うーん、多分そうだと思う」


「職人は色々いる。岩や老木の石や木材を扱う彫刻家、金属の中でも主に鉄器を作る鍛冶屋、繊細な加工が得意な彫金師とか、商店街にも店があるし、何人かは手伝いで呼ばれたこともある知り合いだ。実用性は一切ないけど珍しい素材なんかを喜ぶやつが多いし、チョーコが作ろうとしている道具や入れ物自体が新しい仕事だろうから喜んで引き受けると思う。ただ……どうやっても目立ちそうだな?」

「うぐぅ。それは、そう」


でもなー、木で箸とかスプーンを彫るくらいならまだしも、蓋つきの器作ろうとしたら、インクが乾かないようなピッタリ蓋が閉まるのなんて作ったら開ける時に硬くてバシャッてなりそうだし、フライパンとか焼き網とか、そもそも作れないものもあるし、誰かには頼みたい。


「とりあえず……普通に出回ってるもので使えそうなものを探しながら、信用できる職人を見つけてこっそり作って貰うとか、どう?」

「うーん珍しいものに飛びつく職人は、何でも作ってはくれるが、作ったものを人に見せたがるからな」

「まぁ職人さんって、新しいもの作ったら色んな人に売るところまでが仕事だもんね」


「そもそも、俺が見ても使えるかどうか判断できないし。チョーコを直接連れていくことになるな……」


なんでそこで難しい顔になるんだろう?

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