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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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101.多くない?

サラの結婚宣言式にはミラルダさんに貰ったノースリーブのキャミソールドレスに刺繍入りのローブを羽織ってティアラを付けて参加した。


おそらく本来の伝統的な宣言式なんだと思う。

生成りのレースを付けた布地で飾り付けられた会場。新郎新婦が招待客を直接入口で出迎え、お祝いを言ってお礼を言われながら中へ。


サラのドレスは髪色に近い艶のある緑のドレスの上に、上から下まで細かな刺繍をたっぷりと施されたローブ。旦那さんの方はやはり髪色に合わせた長い布地に、細かい刺繍を全体的に追加したローブ。


流石、子供の頃から親族総出で作るだけあり、どちらももの凄い手間を掛けたと分かる見事な刺繍だった。


全員が揃ったら2人も中に来て、両家の親がごく簡単なプロフィールを読み上げ、両家の絆を深めてこれからも互いに発展して行けるようにと挨拶。

そして宣言式のイベントとして、カリナがチャイムで伴奏を叩く中、サラとマシューの合唱を披露。

彼はお腹からしっかりとよく響くテノールの素敵な歌声で、サラの優しいアルトの調べとよくマッチしていて、サラも気持ち良さそうな笑顔でマシューと微笑みあっていた。


そして、歌い終えた2人が揃って結婚宣言をして、拍手とお祝いの言葉を受けたらもう式は終了。

サラと彼はこのまま速やかに新居へ移って結婚休暇に入るという。


驚いたことに、招待客たちも今後仲良くしましょうねと挨拶をし合ったり次に会う約束をする程度で長話もせずに即解散……

チョーコたちも一緒に呼ばれたマリアンたちに近付いて軽く挨拶をし合うが、皆もやはりこのまま帰るのだという。


「え、本当に宣言式ってあっさり終わるんだね?貴族ならもう少し式の後に親族で何かするんだろうなって思ってた」

「俺も貴族式は知らなかったが、平民ならもっと簡単で、最初の挨拶や歌もないのが普通だったし、こんなものかなとは思う」


「やっぱり物足りないわよねぇ?でも皆、せいぜい今日みたいな歌や、絵画の品評会みたいなものを組み合わせるくらいなのよ。

チョーコの式後に食事会が付いているっていうのも驚いたけど、普通は何もないのにずっと居残るのはマナーが悪いから、ふたりが新居へ向かった後はそのまま帰るものなの」

「そうなんだ……マナーが良くないなら今日はこのまま帰った方がいいね。教えてくれてありがとう、またね?」

「次はわたくしたちのお誕生会かしら?会えるのを楽しみにしているわね!」とマリアンたちと別れ、チョーコたちも車へ。


そっかぁ……水と木の粉生活だった頃からの伝統だから、お祝いにご馳走を食べる習慣すらなかったわけで。向こうで考えたら、式だけで披露宴なしとかそんな感じが当たり前ってことかな?


エスが私の結婚宣言も色んな人に刺激を与えてたみたいなことを言ってたけど、元がこれなら、確かにそうか……


せっかく音楽とご馳走が生まれたわけだから、お祭りとかイベントごとも、色々増えた方が楽しいかも?

商店街では満月祭り、新月祭りで月2回、不死族が花を飾ってセールなどをやるらしいけど。

お正月だのバレンタインだのクリスマスだの……バリエーションがあっても良いと思う。


考えている間に家に着いたみたいで、またナチュラルにオクティが抱っこして家の中へ運んでくれていた。


「あ、ごめんまた考え事しちゃってたみたい」

「全然いいよ、むしろ今の時期はボーッとして転んだりしたら怖いし、ずっと抱えて運ぼうか?」

「こ、転ばないようにはするけど、あんまり過保護にしすぎるのも難産になるんじゃなかったっけ……?」


「そうなのか?それなら、安定期に入ったら、歩ける範囲で散歩に付き合うからたくさん出掛けよう。でもそれまでは家で、産むまでは街の中で過ごそうね?」

「え。流石にそれまで家から出ないとか、安定期に入っても街から出ないは……やりすぎじゃない?」

「オクトエイド様……徒歩やちょっとした階段の昇降程度でどうにかなることはございませんわ。転送盤で繋がっている範囲の移動までなら徒歩圏内と考えても宜しいのでは?」

リナもひと言入れてくれた。


「チョーコって運命に愛されているというか、色々引き寄せる体質だから。なるべく引きこもってた方が良いんじゃないか?

……ほら蜂蜜酒のダンジョンの時だって吹き飛ばされたりしたしさ?」


「12月の満月デーまではおとなしくするって約束したけど。安定期に入れば、サニーさん達に付いてきてもらったり、テレポートで行けるような、今まで行ったことがある所までなら大丈夫なんじゃ……ないかなぁ?」

「絶対平気とは言い切れないよね?」

「それは、絶対ではないけど」


「無事に産むのが一番楽だし、母体に負担がかからないらしいよ?死ぬようなことになるのは途中で流れた時だけだって」

「私が無事に産みたいって思ってるから……その辺りは大丈夫だと思う」


「んん、それはまぁ、否定できないな。

……わかった。病院でどのくらいまで平気か確認した上で、チョーコも大丈夫って思うなら出掛けていい。

でも、本当にちょっとでも迷ったり違和感あったり怖いと思ったら行っちゃ駄目だよ?

誰かを急いで助けるとかも、俺やメイドや施設育ちの奴らを代わりに送り込むこと。良い?」

「うん、自分で前には出ないようにするね」


ようやく床に自分で立たせて貰えた。


リナが苦笑しながらマナを呼んで、2人付き添いで水場へ。化粧は落として髪も解いて漉き直し柔らかく暖かいワンピースに着替える。


「うーん、見た目も変わらないし、なんか変な感じもないからあんまり実感ないんだよね……つわりで気付くとかそういう話は聞いたことあるけど、別に吐き気とか酸っぱいもの食べたいとかそういうのもないし」


「親たちの話によると、最初期は違う属性の子でもない限りは定期的に魔眼で検診を受けていないと全く気付かないものだそうですよ?

魔力の流れが乱れて吐き気などが出るのは子供が魔力を積極的に取り込み始める半月以上経ってからですもの。

その時期によくお腹が空くのは魔力が高い子が生まれる傾向にありますので、素直に沢山食べるのが良いそうですわ。

甘酒やローヤルゼリーは身体に良さそうですから多めにお出ししましょうね」


お酒はどうなのと思ったけれど、アルコールという名前なだけで魔力補充剤だったわ。

「よろしく。……あ、でもお酒は酔うまで飲んだら子供にも悪いんだって。酔わない程度にお願いね」

「かしこまりました」


本当に何も実感がなくて、オクティの過保護にも苦笑気味だったものの、素直におとなしくすることに決め。

牛の村、洞窟、西の海の魚人さんたちにも出産まで目立つ活動は控えますと挨拶と説明をして回り。魚人さん達にも集めた魔石板とテレパシー魔石の補充を受け取りつつ、今度からしばらく受け取りに来られないから分地の池から直接コンヴィニ商会に預けてもらいたいことも伝えてきたし、通信石や翻訳機製造の為にテレパシー魔石も洞窟へたっぷり預けたし。


薬屋さんの倉庫へも行って月末のご褒美用に残っている水差しに入っている分をまず全部預け。

空になった水差しは商会の倉庫に預けてもらえばいいと伝え。

それ以降の分は実のまま持ってくるのでこちらに入れて使ってと、倉庫にシンプルなガラス樽を連結して積み上げ、実から注ぎやすいように差し込む蛇口も幾つか渡してきた。


不死族からは多分使うだろうと、産卵草から抽出した栄養剤と、きゅうりとルーズベリーから作った吐き気止めのセットを多めに貰い。

なんなら妊婦健診とか出産の補助も病院で出来るし遠慮なく来て欲しいと言われたので、ありがたく……もう今から早速お願いすることに決めた。


オクティも大丈夫な範囲をちゃんと確認したいだろうし、私もこちらの世界のお産が軽いとしか知らないけど、やっぱり怖いもんね。


病院では白衣を着たサキュバスさんが来て、なんかすごくそれっぽい分娩台みたいな椅子に座らされるけれど、やったこととしては下半身に毛布を掛けられた中にサキュバスのお姉さんが両手を突っ込んで直接お腹周辺をペタペタと素手で触りまくっただけ。


サキュバスさんの手は思った以上にひやっと冷たくてちょっとびっくりした。

なんていうか、文字通り死体の手みたいな冷たさ。

「あっ驚かせちゃった?ごめんねぇ?チョーコは普通に触っても平気かなって思ったのよ。お店に出る時みたいに先にお湯で温めておいた方が良かったかしら」

「だ、大丈夫です。……どうですか?」


「うーんとね。あら珍しい!4人もいるわよ。よっぽど伴侶との相性が良かったのねぇ♪」

「ふぁっ?!よん?!」


説明によると子供が出来るタイミングで気持ち良かったりするとお腹に魔力が貯まりやすく、沢山魔力が溜まっていると一気に複数出来ることが多いんだそうで。普通は多くても2か3なんだけど、2人とも人間にしては魔力が多いから4まで行ったんでしょうねという。


一般的に双子や3つ子は両親の魔力相性が良いとか、魔力が多い家系の象徴みたいなものなので、良いことだと喜ばれるらしい。


「4……は多い気がするんですけど、その、大丈夫なんですか?」

「母体への負担が大きくないかってこと?人間の身体って結構頑丈だから全然平気!6人くらいまでは産めるわよ。ただ、全員かなり魔力が高そうだから、つわりは結構きついでしょうね。伴侶と交わるのが魔力回復には一番なんだけど、安定するまではキスくらいにしておいた方が良いし。産卵草の栄養剤飲んだりしてもどうにもならなかったら、すぐ病院に来てねぇ?」


普段の生活的には全力ダッシュやジャンプ、重いと感じるものの上げ下ろし、疲れるほど長い階段の昇り降りは控え。飛行する場合は急降下からの急停止が危ないのでしてはダメ、伴侶との激しい交わりも今だけは避けた方がいい。


「気をつけるのはそのくらいかしら。普通に歩いたり、転送盤やテレポート、獣人車で移動とか、疲れを感じない範囲で動くのは全然大丈夫よ。走ったりもちょっとくらいでどうにかなることはないから心配し過ぎないで、元気な子を産んでねぇ♡」


……病院の後にオクティに話すと、4?!とかなり驚いた。改めて視るけど3属性持ちが1人しか見えないという。あと3人は無属性の子が居るってことらしい。


覚悟の問題だけど、早めに診て貰いに来てよかった、かな?


***


歩くくらい全然平気だし獣人車でお出かけしたっていいと病院で言われたけど。流石に四つ子がかなりの衝撃だったらしく、オクティが前にも増して過保護になってしまった。

本当に庭の畑にすら出さない勢いで苦笑するしかない。


仕方なく家にひきこもり、紙とペンを貰って、ロイドさんに年間行事的なイベント表、スケジュールが書き込めるカレンダーを作って、例えば商店街の設立記念を毎年祝うお祭りをやる、毎月何かしらのイベントを、など企画したらどうか?とか書いて持って行ってもらったり。

暇ならお仕事しますか?と秘書さんたちから転送盤や誓いの碑文の注文がどしどし来たのを受けて作ったりしながら平和に過ごしていたのだが……


――数日後、唐突に発熱と吐き気とひどいめまいを起こして倒れかけ、メイドさんたちに即ベッドへ担ぎ込まれることになった。


風の柱をテレボートで飛ばした時くらいの魔力の乱高下があれよりずっと長い間続いている感じ。


アイテムボックスからきゅうりを出して齧ったり産卵草の栄養剤と吐き気止めで落ち着きはするんだけど、しばらく経つとまたダメになる。

これは外出厳しそうだと、マリアンたちの誕生会への出席は辞退すると連絡して貰った。


すぐに2人からつわりが酷いのなら仕方ないしお大事にというお見舞いの手紙と共に届けられたのが、産卵草の栄養剤と、きゅうりとルーズベリーから作った吐き気止めのセットがまた沢山。

あ、やっぱりどこでもこれが使われるようになったんだ。これも先に見つかってて良かった……


お詫びと誕生祝いを兼ねて何をしようかと考え……庭の苺とアズキ、それからモチゴメや片栗粉を使って、ミナにほぼ全部やってもらいながら作ったのは、大きな苺大福!


初、餡子の和菓子!

気持ち悪さがマシになったタイミングで自分も味見させてもらったけど、さすがはミナ!と叫びたくなる塩と砂糖の加減も完璧な仕上がりだったから、きっと喜んで貰えると思う。


彼女たちの場合だと両手で持ってかぶりつくなんて無理だし、大きくて1個食べきれないと思うので、ケーキみたいに切り分けてフォークで食べるのだと説明を付けた。

そのまま緑茶と合わせてもいいし、ホイップクリームを追加してから紅茶やコーヒーと合わせてもいいとか。


自家製の苺は高山の畑のものほどは甘くないので、そのまま食べるにはちょっぴり残念な気持ちだったけど、大福に入れてしまうならむしろちょっと酸っぱめくらいの方が丁度いい。

自宅栽培の苺は熟してからジャムか、餡子やチョコやクリームと合わせるのがいいかもね。


なんだか凄い美味しかったのでオクティと一緒におやつでも食べさせて貰ったら。イチゴが大きいから大福もすごい大きいサイズだったのに、ペロリと1つ完食して、まだ食べ足りないと感じた。


オクティが俺は半分でいい、もっと食べなと言って口に入れてくるので食べさせて貰ったらそれもペロリ。


ミナがまだ食べられそうですか?と、スライスした苺と生クリームとカットしたホットケーキを餡子で包んだオリジナルお菓子だとか、甘酒に解したオレンジの実を入れてゼリーで固めたお菓子、薄切りのパンに焼きウニや野菜などを乗せたしょっぱい系のおつまみ……次々と作っては持ってきてくれるのをパクパク食べていたら、何だか気持ち悪さとめまいがましになってきた。


あれ、これはお腹が空きすぎて気持ち悪かったってこと?と、朝晩の食事もちょっと多めにしてとミナに頼む。


ほうれん草やニンニク、砂糖やお酒がなんだか妙に美味しくてパクパク食べちゃう。

お肉や魚もオコメも美味しい!

果物も牛乳も野菜も……


サラの料理は元々おいしいけど、本当に美味しくて止まらない。細く刻んだローストナッツを食べてもお腹が苦しくならない。

ただ、ナッツは栄養価はあるけど魔力量はそんなないみたいで、なんか別の所がお腹空いてるような変な感じがする?


色々食べた中では、ルーズベリーとローヤルゼリーを使ったソーダのカクテルにミードをちょっと垂らしたのが蜂蜜レモネード味で特に美味しいかな。


いや『ちょっと』どころではなくなってる。明らかに今までの3倍くらい食べてるのに足りない。


「さすがにおかしくない?どうなってるんだろう……」

オクティに改めて視て貰った。

「あ、本当に無属性の子も3人居た。すっごい元気に魔力を吸ってるね……お前たちもうちょっと手加減してくれないか?吸いすぎだぞ?」

「あぁいや、ちゃんと強く育って欲しいからいっぱい吸っていいよ。私がもっと沢山食べればいいのかな?」


気持ち悪いのは子供に勢いよく吸われまくって魔力欠乏が度々起きる上に、チョーコ本人の魔力回復の勢いも凄くて、魔力がめちゃくちゃな乱高下をし続けているせいだと、納得した。


食べないとすぐにめまいや吐き気が来るので食べづわりというのかな?吸われるのに負けないように常に食べ続ける。

吐き気止め飲んで充分食べてれば落ち着いてるし寝たきりにはならないものの、これは本当にオクティと2人きりの生活だったら大変だったはず。


倉庫への納品は箱を持ってきてもらったところにアイテムボックスから出した荷物を詰めるだけで持って行ってもらえるし。

オクティと触れ合い、といっても安定期に入るまではキスくらいしか出来ないけれど、それで回復するのには嬉々として協力してくれたし、食べ物も飲み物もここぞとばかりにミナが用意してくれる。倒れるほど酷いのは最初だけでなにも困らず生活出来ている。


ほんと、メイドさんたち雇っておいてよかった……


ウィスキーのボトル詰めとか不死族へのブランデーやアブサントを届けるような量が多くて人数必要だったりメイドさんだと酔っちゃいそうな作業は施設育ちの人たちが全部代わりにやってくれたし。


それどころか何組か転送盤が欲しいと言うので作ってあげたり、洞窟へ魔石板の小さいのを持って行って翻訳機を作って良いかと許可を取りに来たので、施設育ちの人たちが困らない程度に作って使う許可を出しておいたら。


ドットさん達はもちろん天人さん達とも交渉して、油の木のダンジョン、果物畑の隣、新果物畑、3ヶ所の最下層と魔塔を転送盤で繋いできた。


チョーコから渡されるワインとビールとウィスキーの実は熟成の深い高級品だと理解して。仕込みの浅いワインとビールとウィスキーに油の木とマスカット、黒砂糖に白砂糖、魔獣の核も自力で集めに行ける環境を整え。

廉価品として白いリボンを結んだ仕込みの浅いウィスキーボトル、花も蔓も無しのボトルに入れたボジョレーヌーヴォーボトル、花付きのヌーヴォーシャンパンボトルの追加だとかを洞窟で詰めては、魔塔で箱詰めして卸倉庫へ売り始めたそう。


ビールはチョーコから貰った方は貴族向け熟成ビールという限定品にして今までより高めに、新しい方は平民向けにより薄く安く卸すようになったそうで。

飲み比べると確かに新しい方が苦味と香りがもっと鮮烈に強くて更に薄められるけれど味の深みはやや弱めの、ドライな感じだった。


新酒ウィスキーは度数から低くて100%だし香りも弱め、普通に水で薄めてしまうと香りが弱いから水っぽくなる。こちらはコンヴィニ・ウィスキーとは完全に差別化して魔塔産ウィスキーとして商会紋を付けず、アルコールと同じように一般販売の許可を取ったそう。

ただ新酒の中でも、ヌーヴォーワインとシャンパンだけは、色々とプレミアが付いて商会紋指定となっただとか。


うーん……色々凄すぎる。施設育ちの人たちも、あのタイミングで来てくれて助かったなあ。


――少しずつ自分のペースが出来てきたころ、イベントカレンダーの原案だというものがロイドさんから提出されてきた。

1年は16ヶ月あって、4ヶ月で1期、8ヶ月が半年だそう。

全月14日の満月と28日の新月は不死族がカラフルな花を飾ってサービスする日として既にイベントデーになっているが、それと別に色々イベントを考えるというチョーコの案は良いと思ったらしい。


でも、1期の最初の月の1日を新期祝い。その後の3ヶ月は月1くらいで何かのイベントを追加するか、満月と新月のイベントを差し替えるかたちでやっていくのはどうだろうか、と思いはするものの。肝心の内容が全く思いつかないそうだ。


商店街がオープンした日が8月28日の新月だったので、8月の新月デーと9月の新期祝いを2日続けて毎年『コンヴィニ商店街周年イベント』にすることと。

16月28日の新月と1月1日の新期祝いを続けて『新誕祭』という、魔塔の子供や施設育ちや平民でカレンダーをちゃんと理解せず誕生日が分からない人たちをまとめて祝う年齢を数える年越しイベントにするというもの。

まだこの2つしか具体的な案がないとあった。


他……ないんだ。

うーん、たしか、影猫ちゃんたちを見つけたのがオープン前の洞窟掘ってる途中だったから、8月のイベントに『影猫祭り』を入れて欲しい!とメモに描きこんでおいた。

8月限定で、黒染めの布と銀糸でぬいぐるみとか、黒猫の刺しゅう入りのハンカチみたいな影猫グッズを沢山作って商店街中で売るとかどうかな?


あとやっぱり王道として、好きな人にとか、大切な人にとか、普段のお礼にとか。

花とかお菓子とか決まった色のアイテムを贈るようなイベントはたくさんあるとそれっぽくなりそうだよね。

告白したい人に決まったプレゼントを贈って、受け取って貰えたら気持ちが通じるかもとか、貰った人にお返しをする日、みたいな。


最近だといつ何があったかなと思い出してみる。

遡るとチョーコの結婚宣言は8月11日だったらしい。サラの結婚宣言が9月の15日でマリアンとリリアンの誕生日が9月の27日だった。本日は10月の6日、28日にはマリアンとリリアンの結婚宣言予定なので、それだけは顔だけでも出しに行こうと思ってる。


そして順調に行けばお腹の子は1月半ばくらいで生まれるんじゃないかという予想。

双子や三つ子だとやや早めに生まれやすいとメイドさんたちが言うので、新誕祭付近で生まれるかもしれない。


……私の誕生日は11月30日なんだけど、こっちだと11月は28日まで。そもそも年齢の数え方をこっちに合わせるとだいぶずれるんだよねぇ。こっち換算で現在26歳ってことにして、1月1日の新誕祭でまとめて数えて貰えばいっか?


「チョーコ、何書いてるんだ?」

食堂の机で紙とペンを広げていたら、後ろからオクティが抱き着いて紙を覗き込んできた。

「ロイドさんからイベントカレンダーのイベント案を出してくれって話が来てたから考えてたの」


「ふーん、今決まってるのは8月と16月だけか、11月が28日までしかないっていうならチョーコの誕生記念日は12月のイベントでどう?エスの使いが生まれた日って作っておこうよ」

「なにそれ、クリスマスみたい」

「へぇ、そういう日があったのなら丁度いいんじゃない?その日は美味しいものを買って早く帰って夜は家族や恋人と過ごす日にしよう?」


「えーじゃあ、12月28日から13月1日までを家で恋人や家族と過ごす『聖夜祭』そしたらバランス取って4月28日から5月1日も入れたいよねぇ」

ガリガリ紙に書きながら考える。


「プロポーズの日で『天人の花祭り』とかは?」

「あ、長持ちするように造花とかで、高山の花の色に染めた花を商店街のあちこちに飾って、集めてプロポーズするとか面白いかも!」

「流石にただで置いとくと全部持ってかれそうだから、商品のおまけだとか色別で色々なところに分かれて安く売るとかでどうかな」

「それはそうかも、でも宝探しみたいなイベントは面白そうな気がする」


「何かを隠しておいて探すイベントは……商店街でやると車道とか車止めとか店の中まで探すやつがいて迷惑にならないか?隠す場所は決めた方が良いと思うよ」

「あ。それなら新しい施設の中にイベント会場とか、何かの式典専用に使える場所を作って貰おうかな」


そういうイベント会場も追加でいくつか作ったらどうかという案も書き込んで、月々のお祭り案はとりあえずいっぱい出しておいたら適当に当てはめてくれるかなぁとカリカリ……


影猫祭り、オレンジ祭り、餅つき大会、餡団子祭り、味噌鍋の日、焼肉の日、海産物を扱う海の日、ビール祭り、チョコ祭り、ワイン祭り、愛の日(大事な人に赤やピンク系のプレゼントを贈る日)、ポップコーン祭り、みどりの日(健康祈願で野菜を食べる日)、ペイントボール投げ(イベント会場)、楽器演奏と歌を競う音楽大会(イベント会場)、美術品オークション(イベント会場)、安産祈願のニワトリの卵を使ったイースターエッグ探し(イベント会場)……


ざっくり名称と、こじつけの意味とか、絡められそうな商品とか書いていく。


他に思いついたら追加したり書き換えたりして貰えば良いと思うし、1日だけのイベントにするのもいいけど、1週間とか1ヶ月丸ごと使うイベントでもいい。

決まった色のものだとか決まった素材だとかをテーマにして、何をする日みたいなイベントにしたらやりやすいと思うなど。


そんなコメントを沢山書き込んで商会へ持って行って貰ったら。マイクとリックが愛の日は毎年10月にしましょう。あと10月に結婚したカップルは幸せになるみたいな話を付けて流しましょう!と早速食いついていたとかなんとか。


その上式典専用に使える会場を作っていいのなら、新しい会場の1つに結婚宣言場を作りたいと言っていたらしい。

100人くらい招待客を呼んでテーブルに座って見学出来る規模。商店街の飲食の輸送ルートに繋げて、料理関連の持ち込みが出来るようにしたり、宣言台に通信石を持って立つと会場内に拡声器で声が広がる造りにしたいとか。


エスに結婚を誓う専用の会場かぁ……なんとなく、そういうところって神域っぽいし神珠石を安置しておきたいかも!


直接エスに願いが通じそうだよね。『どうかこの愛と繋がりが永遠に続きますように!』みたいな。

――すごく御利益ありそうじゃない?


もし置けそうだったら、ちょっと設置してみちゃおうかな?


イベント案をあれこれ書いた紙を商会に届けに行って貰った時。新しく北の海の魚人と交流が出来て、手に入ったものが落ちものらしいから見て欲しいと言われて持ち帰ってきたものがあった。


新しい落ちもの!と期待いっぱいに見たら、プチプチした細かいつぶが付いた海藻に見えるもので、説明には『暖かい海』で栽培出来る『海ぶどう』という名前もあって一瞬テンションが上がったんだけど。


残念。食べると気持ち良くなっちゃう系のお薬だった……禁断症状はまた食べたくなるというだけだけど、中毒性もかなり強い。

魚人は常に大量の水の魔力を循環させているので、食べても一時的に気持ちいいだけで中毒にはならないから。北の海の魚人たちにとっては酔い水草と同じただの嗜好品だそう。


なるほど、本当に魚人って中毒性の薬物や毒に強いんだ……


海神族ってたまに説明文では見るけどどういう種族なの?と思ったら、もっと海のど真ん中の、暖かくて小島が沢山ある地域に住んでいる魚人とは別の水棲種族。

見た目はクジラやイルカやシャチのような完全に魚型だけど、れっきとした人族らしい。完全肉食で気性は獰猛。半魚人や蛸人はもちろん魚人すら捕食対象。……こわっ。


言語は超音波のような独自の音で会話する上に魚人とは適正が違うのでテレパシーや魅了は使えないし、陸地にも上がれるけど普通は上がらないので人間とは関りがない。でも魚人と不死族とは交流があるみたいで、不死族の古い血の1人の伴侶が女性のイルカ種だそう。


海ブドウは海神族が住む地域で育つものらしい。毒の排出が早い魚人や海神族、あとは身体の構成的に魔人族には効かないけど。ほかの人族には不死族にすらちょっとは効いちゃうという強力な中毒性薬物。


チョーコに見せたのは、海神族が育てている珍しい落ちものの水草らしいので、単純に何らかの使い道があるか確認して貰おうと思って見せただけで、既に魔眼で毒判定がはっきり出ているから誰も試しに食べたりはしていないので大丈夫ということだけど。

情報的にも使い道はなさそうなんだよねぇ……うん、残念。


いちおう、不死族の人に毒抜きできるかとか、解毒剤やこれを使った薬が作れそうかとかを見て貰うついでに、食べづわりもひどいから再度妊婦検診をして貰おうと思って薬屋に向かうことにした。


その中毒性の海ぶどうの発作自体は棘草の解毒剤で解除出来るし症状自体は強くないからあまり危険視はしなくていいそうだ。

ただ、中毒性がしつこくて。1回飲んでスパッと終わりじゃなく、数日間は解毒剤を少量ずつ続けて飲んでいないとまたこれが食べたい気持ちが復活してくる、ちょっとめんどくさいものらしい。


ちなみに不死族にも効くというのは中毒性の部分だけで、気持ちよくはならないし美味しいわけでもないのに、何かあれをまた食べたくて仕方が無くなるという迷惑なライン。

しかも毒抜きをするとハッキリ美味しくなくなるので、これは……本当に使い道がなさそうだった。


プチプチ海藻……残念。

海藻は高山のダンジョンから採れないから期待しちゃった。


まぁ毒ってことはわかってるし、もし食べた人がいても解毒剤は棘草でいいらしいし、棘草の生産と仕入れをちょっと増やしておいてくれるということなので、これに関しては終了。


妊婦検診は、今回はアブサントを届けた時の女性のヴァンパイアの白衣を着た人が担当してくれて、同じように調べて貰った結果。

「うふふ、全員魔力豊富でとっても元気ですよ。あぁ……美味しそうな子たち……早く直接触れてみたい」

うっとりした顔でコメントされてちょっと固まる。


「吸おうとしないでくださいね……?」

「あぁ、ごめんなさい?直接吸うわけではないの。赤ちゃんってとても生命力に満ち溢れているから、普段人間の近くにいるよりずっと濃くて素敵なんです。それに産む時は素手で取り上げますから。触れるだけで充分……美味しいのですよ」

想像したのかほうっとため息をつく。


食べづわりが酷いことについては、本当は伴侶との交わりが一番ですが、体内が子供をしっかり支えるように変化するまで激しく揺らしたりするのは良くないことがあるので、まだあと2ヶ月くらいはキスだけにしておいた方が無難ですね。と説明され。


それまでは少しつらいだろうけど、今の『吸われるのに負けないくらいしっかり食べる』で対処するのがいい、産卵草の栄養剤は多めに飲んでも大丈夫。

お勧め食材は葛湯、アズキ、わらび餅、甘酒、ローヤルゼリー、産卵草、ミードなどだそう。

あぁ、ミナに食べさせて貰って特に美味しいと感じたもので大体合ってるらしい、良かった。


数が多いと早産になりやすいから、スケジュールには余裕をもって。産み月近くなったら入院も受け付けるので、いつでもいらしてくださいと勧められた。


ヴァンパイアの女医さんの妖艶な笑顔で言われると若干不穏に感じてしまうのだけれど。

実際初産で4人はちょっと不安ではあるので、お言葉には素直に甘えさせて貰おう……

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