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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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1.ここはどこ

それは本当にたまたま、深夜にパソコンで動画見てたら小腹がすいて、近所のコンビニへ行こうと財布と鍵だけポケットに突っ込んで出かけ、慣れた道を歩き出した……はずだった。


なんで、だろう?


そこまで都心ではないがベッドタウンとして有名な住宅街。確かに深夜で外を歩く人はほとんど居ないけど、街灯もコンビニも当たり前にあって、足元が見えないほど暗いところなんてなかったはずなのに。

突然真っ暗になったのだ。

室内ならまだしも屋外。停電で街灯や店の灯りが全部消えたとしたって、月や星の光までひとつも見えなくなったりするはずない。


何度思い出しても、何がきっかけかは分からない。本当にただアスファルトの路地を歩いていたらいきなり、本当に突然、周囲がまっくらになった。立ち竦んだまま見回しても何も見えないし。耳を澄ませたりしたところで、音も匂いも、風の動きさえ一切感じない。


恐る恐る周囲に手を伸ばして動かしてみるも、手に当たるものもなくて。恐る恐る足でちょいちょいと周囲の地面を突いて確認した時、アスファルトにしては凸凹感があるなと思った。


しゃがんで手で直接地面を確認すると、明らかにアスファルトじゃなかった。岩っぽい手触り。でも自然な岩場じゃないと思う。デコボコだけど高さが揃って規則的に四角く窪んでいる、人工的に切り揃えられた石のブロックで作られた床。


ちゃんと立つのは怖くてへっぴり腰になりつつ、いきなり床がないなんてことがないようにつま先で慎重に周囲を確かめながら周りに手を伸ばしてジリジリと進む。しばらくして指先が床と同じような岩っぽい壁に触れ、少し探ったらつるっとした丸みのある石のような感触のものに触れた、と思ったらその石がいきなりぼわっと白っぽい光を放つ。


急な明かりでちょっとだけ驚いたけど、間接照明くらいのやわらかさで辺りがほんのりと照らし出された。


見回せばかなり長く分かれ道や曲がり角もありそうな、石で出来た回廊の中だった。いつの間にか少し湿った匂いや、どこかから遠く響く水音や風のような音が耳や鼻にも届いてきている。


呆然としながら小さく呟く。


「これってやっぱ、異世界転移って、やつ?」


***


私は花田千代子、32歳。親は既に亡くなっており、その遺産で食いつなぎながら引きこもり生活を送っている、チョコパンナのペンネームで細々と活動していたイラストレーター……だった。まぁ曰くオタクでもある私は、ウェブ小説だとか漫画やアニメも幾つか追っているし、ここがいわゆる『ダンジョン』と呼ばれるような場所なのかな、とうっすら予想は出来る。が。


転生ものって、死んでから移動する前とか直後とかに神様的なものが雑でも何でも説明してくれたり、転移ものならそなたを呼んだのはこれこれこういう訳で困ってるんだとか、なんかそういうのがあるものじゃない?!

もしかして、実は召喚する座標を間違えてて、城の地下にあるダンジョンに飛ばしちゃってましたテヘペロとかそんなオチ?!


あっ、うん、呼び出す場所間違えましたとか、そういう作品どこかにありそう。だとしたら、どこに間違えて飛ばしたか呼び出した本人が気付くまでじっとしてるべき?でもなかなか間違えて呼んでたことに気付かなかったり、そもそも全然関係なくて、いくら待っても迎えなんか来ないってことだってあるよね?


***


かなり長くグルグル悩んだけど、結局まずはこのダンジョンの構造を調べて、出口を探す努力はしてみようと決めた。


迷路とかは右手か左手を壁に付けたまま進めば、ドーナツ状の回廊じゃない限りいつか出口に行けるってどこかで見たんだよね。今触っている壁に右手で触ったから右壁に沿って進むことにしよう。


こんなとこに電気が通ってるとはとても思えないけど、壁にポツポツと埋め込んであるつるっとした石は触るとスイッチが入って光る。もう一度触れても消えない。どのくらいの時間光ってるのか待ってみようかとも思いつつ、誰かが探しに来てくれたなら、光ってれば誰か光らせた人がいるってことはわかってくれると思うし、出口探しを優先しようと思う。


すぐに曲がり角について、よし右に曲がろうと分かれ道を覗き込んだら、灯りの届く先ギリギリくらいに何か見えて足が止まった。


緑と茶色をまだらに混ぜたような気持ち悪い色がついた半透明の、自動車一台分くらいありそうな大きいゼリー状の小山になっているものが……ゆっくりゆっくり動いていた。


……たまにどこかから聞こえる、ぴちゃっとかべちょべちょした水音っぽいものはあのバケモノが立ててるの?

なんともいえず背筋がゾッとする。ああいうのがダンジョンのあちこちにいるってこと?

どうやらあれが動いている辺りは更にT字路の分かれ道になってるみたいで、こちらへ向かってくることなく、右から左へゆっくりとだが見て分かるくらいの速さで巨大な塊が通過していっている。


私がここを右手に従って進むとしたら、あれが左に通り過ぎるのを待ってここを進んであの角を右へ曲がるんだよね?

いや、むりむりむり。その角は曲がらずに真っすぐ進むことにした。


ダンジョンの道は思った以上に入り組んでいる上にかなり長いみたいで、体感的に一時間はたっぷり歩いただろうなと思うのに、景色は何も変わらない。目の前には灯りの消えた暗い道、後ろには灯りのともる道。

今のところ、右に行って行き止まりだったから戻ったりしても、見える範囲の来た道が暗くなってたってことはないから、一度点けた灯りはそれなりにもちそう。


時々見かけるのはあのスライムみたいなバケモノばっかり。某RPGみたいに数歩歩けば必ず戦闘開始ってほど、どこにでもうじゃうじゃいるわけじゃなくて助かったけど、いつ見つかるかとひやひやしながら進む。

あぁ、疲れてくると余計に色々考えてしまって嫌だ。


なんどもあのバケモノを避けたくて右に進むの止めたんだよね、右手に従うルールを破っちゃってるのがいけないのかもしれない。


もしかしたら大きくぐるぐる回ってるだけで、時間が経って消えてしまった灯りをまた1から点け直しているだけかもしれない。


なんかもうお腹もすいたし、上に戻るでも下に進むでも何でも良いから階段とか扉とか目印が欲しい。


道が似てるのが悪いんだ、全然覚えられない。目印を付けようにもジャージのポケットには小銭の入った財布と鍵しかない。ペンなんて部屋には腐るほどあるのに。


あぁもう、マップ機能欲しい。自分が踏んだ所だけでいいから自動マッピングして、それかミニマップが常に見えるようにして。

魔法でもゲームのステータス画面でもどっちでもいいから見たいよぉ。

ぐだぐだ考えながら進んでいたけど、とうとう果ての見えない行軍に疲れ果て。


「んもー!どこなのよここー!誰かいないのー?!」


半ギレの叫びを全力で叫びながら、とうとう道の端にぺたんとお尻を付けて座りこんだ。

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