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OTUBONEであるために、わたしはここにいる。

作者: H川

「はじめまして株式会社 大滝産業の川村と申します」


幸子が差し出した名刺の先には白人男性がいた。

名刺の役職にはOTBNと記載されていた。


「貴方がOTBNでしたか。この度は本当にありがとう」


話はさかのぼる。

昨年の2月頃は期末のため多忙な時期だった。


幸子は短大卒業後、大谷産業に入社し20年になる。


大谷産業はレンタルおしぼり業界では大手だが、最近では衛生面とコストの観点から、使い切りの紙おしぼりを置く店が増え、売上は右肩下がりだった。


幸子は多少の部署移動はあったが、大半は総務部で過ごしていた。

女性が少ない上に、先輩女子社員達は結婚して妊娠すると会社を去っていき、気が付く「OTUBONE」になっていた。


近年、情報は共有化され記録は電子化された。

自分の業務が減少していることから、幸子は居場所がなくなってきている気がしていた。


そして世界では企業買収が散見されていた。

 

大谷産業は、多様な企業と良好な関係性を持ち、優良不動産を所有していたため日本進出の足掛かりにはいい塩梅の企業であった。


突然の買収提案に、創業者の大谷雄一は緊急入院し、長男の雄二が社長代行となった。


大ピンチの中、起死回生のプランが必要であり、

重役達も必死で考え、究極のおしぼりを復活させることにした。


当時の顧客満足度98点の究極のおしぼりには秘密の調香レシピがあった。

その香りは人々を魅了し桃源郷へ誘った。ただ、保管されていたレシピは何かが欠けていた。


当時の開発者は退職しており、手掛かりは無いように思われたその時、重役が叫んだ。

「総務の川村さんがいる!彼女が社内の人の相談を受けている姿を見た!彼女なら何か手掛かりをつかめるかもしれない!」


大急ぎで雄二は幸子に連絡した。


究極のおしぼりは全国的に大ヒットし、やがて宇宙飛行士が地球に帰還した際に手渡される程の逸品となった。


究極のおしぼりで大谷産業はV字回復したのであった。


結果的に海外企業もパートナー企業として一緒に事業を展開した方がメリットがあると判断し、双方の敵対心は瓦解した。


新聞各社はこの件を老舗企業の復活はAIでもDXではなく、人の感情、人そのものを大切にし続けた「OTUBONE」の存在であったと報じた。


事業を立派な樹にするためには、立派な「根」が必要で、その「根」を体現するのがOTUBONEであった。


こうして、日本のOTUBONEは世界共通のビジネス用語になったのである。

















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