表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

彼女の本性

「ちょっと、並本さん。どういうつもり?」

私が怒ったその時だった。

「酷いです。私、みんなと仲良くしたかっただけなのに……」

ポロポロ涙を流し出したじゃない。

私達が驚いていると、部長が現れて

「まさか、社内虐めじゃないよね?」

と、私達が呼び出されてしまった。

しかし、そこは普段の人徳。

人事の人が私達の言い分を聞いてくれて、一時は派遣契約終了まで話は行ったのだが、何故か営業部に異動となったのだ。

私達の会社は、総務経理と営業部とはフロアが違うので、彼女に会う事は無くなった。

 あの日以降、結局、凛は彼氏と破局。

葉子は失恋してしまい、なんとも後味が悪い状態の中、営業部に異動になった彼女のせいで、元々仲が良くなかった営業部の女子と完全に亀裂が生じてしまう。

恐らく並本さんが流したのであろう噂が、彼女の異動前から流れ始めた。

それは私達が意地悪して並本さんを追い出したという噂だ。

 彼女が異動してからというもの、営業部からの当たりが厳しくなってしまう。

 それでも私は何故か50代の方々に可愛がられていたので、摩擦が起こりそうになると技術部のおっちゃん達が助けてくれた。

そんな日が続いて半年が過ぎた頃、営業部の女性から声を掛けられた。

どうやら並本さんは、営業部に異動してから本性を剥き出しにして来たらしい。

営業部は花形で、若い男性社員が多い。

並本さんは最初こそ大人しくしていたが、男性社員へのボディタッチが多く、仕事が忙しいから廃止した男性社員へのお茶出しを勝手に始めてしまったんだとか。

なんでも

「外から大変な思いして帰って来ているんですから、お茶出しくらいしてあげないと。独身の子じゃ、そういう気は回らないわよね」

とか言って、夏は冷たいお茶。

冬は温かいお茶を給茶機から入れて、営業さんが戻るとお茶出ししているのだとか。

だから

「並本さんが勝手にやるのは自由なので止めませんが、私達には求めないで下さい」

と言って続けさせてはいたが、彼女は営業さん(男性)にお茶出しが最優先で、他の依頼していた仕事は後回しになり始めたのだそうだ。

そして何より怒りを買ったのは、冬に若い男性社員さんが外から戻ると

「私、末端冷え症なんです~」

と言いながら、彼等が脱いだばかりのコートを羽織り

「わぁ……、まだ○○さんの温もりが残っていて、温かい」

と言ったり、営業部のホープ君には彼が缶コーヒーを買って来ると、わざわざ彼の缶コーヒーを持った手ごと両手で包み

「温かい~」

って上目遣いで微笑むらしい。

しかしホープ君はモテるので、その手をするりと外して

「じゃあ、その缶コーヒーあげるよ」

と言うと

「酷い! 私は、手が温まるまで借りたいだけだったのにぃ! そういう態度って酷くない?」

なんて言って、他の人に同意を求めたりするのだそうだ。

もちろん、女性社員からは乾いた笑い。

馬鹿な男性社員は

「雪ちゃんは天然なんだから、優しくしてやれよ」

なんて言ってたそうだ。

(どんな天然だよ!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ