表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/10

諸悪の根源

「えっ! どういうこと!」

驚いて叫んだ私に、創造の女神とやらは、元ソフィアで、前世で私から婚約者を寝取った『並本雪花』の悪巧みを話し始めた。


 並本雪花との出会いは、会社に来た派遣社員と社員という関係だった。

前世の私は、中小企業の商社の経理部に所属していて、32歳で取引先の人と社長の紹介で出会い、トントン拍子で婚約が決まり幸せだった。

職場も、同期入社の鈴木葉子、長瀬凛の3人で仲良し経理3人組で楽しく仕事をしていた。

そんな中、繁忙期の為にファイリングを頼む派遣社員を依頼したのが運の尽き。

彼女は紺色のスーツに身を包み、派遣社員としてやって来た。

第一印象は、女の敵だった。

何となくだったけど、今思えば『女の勘』というヤツだったのだろう。

あまり近寄りたく無い存在だった。

しかし、部長や課長から「彼女は年齢も近いし、仲良くするように!」と念を押されてしまい、渋々、彼女とご飯を食べるようになる。

しかし、話してみると天然ではあるけど、サバサバしていて楽しい人だった。

「私、何故か女の人に嫌われちゃうの。だから、こんなに仲良くしてくれる職場で良かった」

と話す彼女に

「きっと、雪花ちゃんが可愛いから、嫉妬されちゃうんだよ」

なんて言っていた。

 今思えば、経理部は男性が少なくて、居ても50代の部長と課長。後は、冴えない既婚者だった。

彼女は男性が居ないと、話題も豊富で面白い子だった。

いつしか私達は、4人で居る事が増えていった。

そんなある日の事、突然並本さんから

「ねぇ、菜穂ちゃんの婚約者さんを見てみたいからさ、葉子ちゃん片想いの人も呼んで合コンしない?」

なんて言い出したのだ。

「え?」

「ほら、葉子ちゃんってずっと片想いじゃない? みんなで協力しようよ」

彼女の提案に、私達が戸惑っていると

「菜穂ちゃんと菜穂ちゃんの彼氏、葉子ちゃんと葉子ちゃんの好きな人に、その友達2人」

手帳を出して言い出した。

「ちょっと待って! だったら、雪花ちゃんのご主人も連れてくるべきじゃない?」

私がそう言うと

「うちは無理だよ。2人で来たら、子供の面倒は誰がみるの?」

と答えたのだ。

そう。彼女は25歳で結婚し、7歳と5歳の女の子を持つ母親だった。

しかも旦那さんは3つ年下で、お相手が大学生の時から付き合っていたらしい。

相手が社会人になってすぐに結婚、妊娠、出産だったと話していた。

そんな彼女に

「じゃあ、無理に飲み会しなくて良くない?」

何となく嫌な感じがして言うと

「何で? みんな冷たいよ! どうして葉子ちゃんの片想いを応援してあげないの?」

と言って怒り出したのだ。

その真剣さに葉子が

「私の為にありがとう。私も、勇気出して誘ってみる」

なんて言って、私の婚約祝いって事で飲み会が決まってしまったのだ。

お店や待ち合わせを私と凛ちゃんで決めて、婚約祝いだから渋々、彼にも事情を話して協力をお願いした。

 葉子の片想いの相手も良い人で、知りもしない私達の婚約祝いに同席してくれる事になった。

多分なんだけど、この頃まで葉子と片想いの相手は両想いだったんじゃないかと思う。

じゃなきゃ、知らない人のお祝いになんて来てくれないだろう。

凛ちゃんも、当時付き合っていた彼氏を呼んでくれる事になり、並本さんだけが一人で来る事になってしまった。

それでも彼女は

「私、葉子ちゃんの応援に行くだけだから、別に一人でも良いよ」

なんて言っていて、私達は本当に葉子の為を思っているのだとすっかり騙されてしまったのだ。

 飲み会当日。

彼女は15時までの時短勤務なので、一度帰宅した。

この日、彼女の子供達は金曜日という事もあり、近所に住む彼女の両親に預ける事になっていると話していた。

だったら、ご主人を連れて来たら……と話したら

「うちの人、人見知りだから……」

と、結局、連れて来なかった。

そして待ち合わせ場所に現れた彼女を見て、私達は絶句した。

職場では髪の毛を後ろに纏め、シンプルなデザインの服を着ているのだが、この日の彼女は気合いが入っていた。

透け感のある白いフリフリのシャツに、フワフワのスカート。メイクも職場ではナチュラルだけど、気合いが入っている。髪の毛も下ろして、毛先がカールしてあり、まるでお姫様みたいだ。

そして私達と合流するなり

「場がしらけちゃうから、私が既婚者って事も言わないでね」

なんて言い出した。

私が納得行かなくて

「待って! 葉子ちゃんのキューピットをするなら、既婚者と言うべきじゃないの?」

と注意すると

「私が既婚者だと、葉子ちゃんの好きな人に結婚させられるって、圧掛けちゃうでしょう?」

なんて、屁理屈を言い出したのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ