私の首が……揺れている
「このクソ女! 人が死んでるっちゅうのに、なに可愛子ぶってるんだよ!」
そう叫んで目覚めた私は、部屋の中を見回した。
真っ白で統一された家具に、やたらレースを使ったカーテンや寝具に天蓋付きのベット。
今、着ているナイトウェアも、ピンクでフリフリだ。
私はベッドから飛び起き、鏡の前に飛んで行った。
鏡に写る私の顔は、ゆるふわなロングの金髪に色素の薄い透き通るような肌。
目はピンクダイヤモンドの瞳をしていて、めちゃくちゃ美少女だ。
しかも前世の私は学生時代、夏のプールの授業の度に、体育教師から
「渡良瀬、水泳やっているのか?」
と聞かれる程、逆三角形で体格が良かった。
骨太でガッシリした体格で、男友達と木登りしていて、木から落下しても、男友達は骨折したが私は無傷だった程だ。
骨太だった私は、華奢で可憐な人を羨んだ事もあったけど、今思えば、骨太に産んでくれてありがとう! だよ。
それなのに、何?
この折れそうな程に細い手足と、撫で肩で薄い身体。
(しかし、乙女ゲームのヒロインだから、胸はそれなりにしっかりある)
そして何より、私は鏡に映る自分を見て愕然としていた。
容姿が美少女なのは良しとしよう。
(いや、むしろラッキーだろう)
身体が華奢なのも、仕方ない。
だけどさ、何で首が揺れてるの? ソフィアさん。
そして、そんな自分に驚いて、無意識に口元に両手を当ててるその手! いります?
庇護欲を誘う仕草に、前世の最後に見たあの女を思い出してイラッとした。
しかも、その間もずっと首が揺れている。
「お前は赤べこか!」
自分にツッコミを入れながら、無意識レベルで揺れるこの首を疎ましく思った。
いや、良いのよ。
やりたい方はどうぞ! なんだけどさ。
私は嫌だ!
この首、揺れすぎじゃねぇ?
前世で見た首長族のリングか、首のコルセットでも巻いて矯正してやろうか?
そんな事を考えていると、部屋にノック音が響いた。
「はい」
答えたこの声も又、ヒロイン声。
可憐で可愛い容姿にピッタリな、高くて鈴の音色のような声。
そんな事を考えていると、ドアが開きメイドさんが入って来た。
彼女はソフィア付きのメイド、ロッテンマイヤーさん。長いから、私はロッテと呼んでいる。
「失礼致します、お嬢様」
ペコリとお辞儀して入って来たロッテは、前世の私タイプ。
細身だけど、しっかりした骨格をしている。
しかも声も、女性にしては低音。
まさに、前世の私だ。