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クモ

作者: みくた

 夜、机に向かい書類を書いていると視界の端で何かが動く。

 手を止め視線を向けると、机の端に一匹のアシダカグモが居た。

「食べる物はあるかい?」

 なんとなくクモに声を掛け作業に戻る。

 思い返せばここ最近、家の中で虫を見ていない。


 どうやらこの家の虫は食べ尽くしたようで、今から次の戦地へ向かうところです。


 頭の中に直接語りかけるような声にハッとし、クモに目を向けると机の影に消えゆく細い脚だけがわずかに見えた。

 私は思わず戦地へと赴くアシダカ軍曹に敬礼を贈った。

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