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第2話
読者のみなさんは王城も追い出されて、ここで更に彼女の暮らしが悪くなるのではとお思いなるかもしれないが、彼女は公爵家で当主の叔父に引き取られるとまず王城で暮らしたとは考えられない粗末な身なりを整えた。
特に酷かったのは櫛も通らないくすんだ青銀の髪だった。
トリートメントに漬けて指で梳けるまでに2日はかかり、本来の青銀の色を取り戻した際にはメイドたちから歓声が上がった。
体格も年齢にそぐわない痩せ細り、辛うじて栄養失調は免れていた。
丸々1週間彼女のメンテナンスに充てたその後、公爵領の3分の2を占める広大な森へと移動した。
公爵領には観光資源となるようか場所もなければ、貿易の柱となる港湾もなく、名産も何もない。これが文字通り都落ちだ。
加えてこの森は未開な部分もあり、遭難者を多く出していた。一度踏み入れると二度と森から出られず、有彩色が一切ないこの森は別名「無彩の森」とも噂されていた。
この森には陰獣と呼ばれる黒い獣が度々出現する。大きさは個体差があり夜活動し、知能は低く俊敏な身のこなしと鼻が効き、人の血を欲する獣である。