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雪のバレンタイン

作者: 白玄
掲載日:2023/02/19

とある所に投稿した自作創作お便りを物語にした作品。バレンタインは過ぎてるだろ?知らねぇなぁ!!

 その日は乾燥した雪が音もなく降り注いでいた。そう、今日は2月14日、俗にいうバレンタインである。

 だからと言って、この俺には一切関係のない日だ。中学二年生の俺は学校内の妙な熱量に嫌気が差し「バレンタイン?んなもん知っちゃこっちゃねぇ!!」と声に出さずに叫び、ショートホームルームが終わったと同時に教室を離脱した。

 今日は、というよりは今週は掃除の当番がないという幸運のおかげで帰宅まで最速ラップを叩き出せそうだ。もちろん、この降雪と踏み固められて雪道だ。夏場よりは時間はかかるだろうが、まぁしょうがない。14年生きた俺にとってこの程度の雪道、なんてことはないがな!

 そんなこんなで走ることなく、しかし足早に帰宅を実行する。走らないのは氷で滑ってこけないようにするためだ。


 学校から離れ、僅か5分程歩いた時だろうか、背後からバタバタとした足音が近づいてくる。音を聞く限り、その音の主はこの雪道を走っているようであった。正直、馬鹿だろと思ってしまったが俺は悪くない。雪が降った後は路面が雪によって隠れてしまい、その隠れた凍った路面を踏んでしまった時には盛大に音を立てながら転倒するであろう。

 北に住む人間にとっては常識なのだが、はて?そう急ぐことがあるのだろうか?まぁ、理由は人それぞれだ。俺には関係がない…まぁこけないことを願って…


ゴッ!!


 …言わんこっちゃない。音からして派手にずっこけたようだ。しかも真後ろ…流石に無視を突き通すのも良心が痛むので、仕方なく…仕方なく!後ろを振り向くことにした。


「って、お前かよ」

「うぅ…痛いぃ」


 尻から派手に転んだ本人は俺の幼馴染であった。中学生になってから疎遠になっていたがなんだかんだで幼稚園から一緒だった奴だ。不器用でどんくさい奴。そう俺は認識している。


「おい、大丈夫か?」

「痛いぃ…私が転んだのはあんたの所為なんだからね!速攻帰るとかありえない!」

「んな、理不尽な。部活動に入ってない俺がさっさと帰宅するのは当然だろ?学校に長居したころでなんも良いことはない。しかも今日はバレンタインと来た。余計周りが煩い。さっさと帰宅してネトゲをするようが俺にとって有意義だ」

「うるさいうるさい!!あんたの所為ったらあんたの所為なの!!!」

「…めんど」


 なんだか喧しい幼馴染の手を取り、立ち上がらせる。その際、顔を赤くしていたが、あれか。派手に氷で滑ってずっこけたのを見られたのが恥ずかしかったのだろうか、ざまぁ。


「で、なんで急いでたんだよ。どっさどっさ音立てて走って…牛か?」

「うるさい!私はあんたに用があったの!!」

「…ふーん。で、肝心の用事は?」

「えっと…あれ!?紙袋は?」

「そこに落ちてるやつか?」


 俺は雪道に落ちている紙袋を指さす。その紙袋は幼馴染が転んだ際に尻で押し潰されたのか、ぐちゃぐちゃになっていた。その紙袋の惨状を見た幼馴染は呆然と立ち尽くした。そして、目に涙を浮かべて泣き始めた。


「う、うぅぅ…折角作ったのにぃぃ!!」

「って、おい!いきなり泣くなよ!」


 泣き始めた女子、しかも幼馴染の対応なんて俺は知らない。14年しか生きていない中学生2年生な俺は途方に暮れるしかなかった。しかしいつまでもそうしてる訳にもいかないので、とりあえず紙袋を拾い、中身を確認することにした。


「ほら、とりあえず中身確認するぞ。紙袋だけダメになったかもしれないし…」

「!?あ!ちょっと待って!」

「待ってって…ん?」


 紙袋の中身を確認すると綺麗に包装されていたであろう、現在はぐしゃぐしゃになったアルミ箔の小袋。そして俺宛の手紙…


「…」

「…何よ!返してよ!こ、こんなぐしゃぐしゃになったやつあんたに渡せないじゃない!!」

「ヤダね」

「は!?」

「これは俺宛の物なんだろ?俺がこれを受け取ったから返品は不可だ」

「なっ!だから…!」

「じゃ、これは俺が美味しく頂くとするか…じゃ、俺はさっさと帰るからな!お前はゆっくり帰れよ!転んでも助けてやんないぞ!」


 俺はそう、幼馴染を言いくるめ、雪道をダッシュして自宅へ向かう。俺はあのドジな幼馴染と違って無様にこけることはないからな!

 と、自分に言い聞かせ、不覚にも熱くなった顔をあいつに見られないようにその場から離れる。


「…っこの、いじわる!!ばーか!ばーか!あんたなんて転んでしまえばいいのよ!!」


 幼馴染の無駄な悪あがきを聞き流し、素早く、最短で、効率的に自宅へ向かった。


〇✕△□


「…よかった」


 私は幼馴染の男子が奪っていった、いや受け取ってくれたことに安堵した。あの幼馴染とは幼稚園の頃からの仲であるが、最近はクラスが離れたりして疎遠になっていた。


 そんな私は友人に幼馴染と前みたいに一緒に過ごすにはどうすればいいか相談した。

 すると、友人は「もうそろそろバレンタインだし、チョコを送ったら!?その幼馴染のこと好きなでしょ!?」と私が幼馴染のことを「好き」であると断言され、とても恥ずかしかった。

 けれども友人が言うことは間違いではない。私は幼馴染のことが「好き」だ。だから心を込めて、苦手な料理、チョコ作りを友人や母親に手伝ってもらい、今日渡すためのチョコレートを完成させた。


 しかし、あいつはショートホームルームが終わると同時に帰宅するではないか!私のクラスはショートホームルームが終わるのがほんの数分、遅かったためか、幼馴染のクラスに行く頃にはもういないと言われた。

 そして急いでこの雪の中走ってあいつを見つけて、チョコを渡せると思った矢先にあいつの真後ろで転んでしまった。

 とても恥ずかしかった。けれどもあいつが手を取って立ち上がらせてくれたのはとても嬉しかった。


 が、私は転んだ際にせっかく作ったチョコをお尻で踏んづけてしまった。流石に丹精込めて作ったチョコレートを、あいつに渡すチョコレートを台無しにしてしまった事実に泣いてしまった。

 あいつの前では泣きたくなかったのにとても悲しくて哀しくて、涙が止まらなくなった。


 私はぐしゃぐしゃになったチョコレートをじゃなくて、新しく作ったものを改めて渡そうと思い、返してもらおうと思ったが、あいつはそれを拒否した。適当に勢いで私を言いくるめてとっとと帰ってしまった。

 けどあいつはぐしゃぐしゃになってしまった私が作ったチョコレートを貰ってくれた。傍から見たら奪ったように思われるだろうが、あいつは私が作ったチョコレートを受け取ってくれた!


 私も素直になれず「ばか」や「転んでしまえ」なんて言ってしまったけど、そんなことは思っていない。ただの照れ隠しだ。

 今はただ、あいつがチョコレートを貰ってくれた喜びを噛み締めたい。


〇✕△□


「たっだいまー」


 幼馴染から紙袋を強奪し、全速力で冬季徒歩20分の道のりを15分に短縮して帰宅した。もちろん、その間無様に転ぶということなくミスなく家に到着した。どんくさいあの幼馴染と違ってな!!

 

 帰宅した俺は手早く手洗いうがいを済ませ自室に向かう。親にこの紙袋を確認されると面倒だからな。

 自室に勢い良く入り、紙袋を勉強机に置き、鞄やコート、その他の防寒具は適当に放り投げる。


「さて、折角頂いた訳だし?ありがたーく食べてやろうじゃないか」


 ぐしゃぐしゃになった紙袋からアルミ箔の小袋を、そしてその中のチョコレートを取り出した。チョコレートは予想通り粉々になっていたが、察するに元はハートの形をしていたと思われる。

 俺はその砕けたチョコレートの一欠けらを口に運んだ。味は、市販品と比べたら味は何段か落ちるだろう。


 けれども、なんだろうか…とても暖かい気持ちになる。


「…あいつの書いた手紙があるんだったな。ならそれを読みながらチョコレートを食べてやろうじゃないか」


 そう、そんな気持ちを隠すように言葉を放ち、幼馴染の書いた手紙を開く。



///


終わり

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