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四話 あの後わたしは

 

 キーンコーン カーンコーン


 六限目の終わりのチャイムが鳴るとクラスの皆が一斉に動きだした。帰宅する人、部活に行く人、教室でだべっている人。そんな中でも私が一番寂しいかもしれない。私は今入学早々に配られたアンケートを集めて職員室の担任のもとに向かっている。


 なぜなら私は学級委員長だからだ。別に好きでなったわけじゃない。ただ委員長っぽいと他薦されて、そのまま多数決をで決まってしまったんだ。中学時代もそうだった。やっぱり眼鏡と髪型のせいなのかな。それともこの長い丈のスカートか。


「失礼しました」


 自分でも地味だと思う。高校デビューすれば良かった? 無理無理できないって。そんなことを考えている間に自分のクラスに近づくと楽しそうな男女の声がした。教室からはたかお君の声も聞こえてくる。


 すごいな……中学違うのにもう仲良くなってる。そういうのって素直に羨ましい。うん、気にしてても仕方がない。鞄とって早く帰ろっと。でもそう思っていても自然と耳に入ってきてしまう。


「え~、うっそーだー」

「いや、マジだって」

「そんなことよりさっさと行こうぜ」

「あれっ? 委員長じゃん。委員長も誘う?」


 えっ? 何? もしかして私?


「どーせ誘ったって来ねーだろ。さっさと行こーぜ」

「そりゃ感じわりーよ。一応誘ってみようぜ」


 もう既に感じ悪いよ。なんか(みじ)めになってきた……


「俺が誘ってみるよ。皆は行ってて」

「んじゃ、よろろ~」


 たかお君が向かってくるよ。どうしよ、ドキドキしてる。


「よう、東谷(あずまや)。これから皆でカラオケ行くんだけど一緒に行かない?」

「う……ううん。行かない。ごめんね」

「そっか……。うん、それじゃまた明日な」

「うん、さよなら」


 断っちゃった……。でもこれでいいんだよね? 私がいても盛り上がらないし……


「なに? たかお知り合い? それともアレ?」

「そんなんじゃねーって。小中同じだったの」

「え~、なんか怪しー」


 遠ざかっていく声に近寄らないように、ゆっくりと帰り支度をすると電車に乗って帰宅した。自宅と高校は二駅の距離。歩いても行ける距離だけど私には無理。自転車通学は禁止されてるし。たかお君は歩いてるみたいだけどね。


「ただいま~」

「お帰り、あずさ。ちょうど良かったわ」


 あっ、これはもしかして……


「いま買い物に行こうと思っていたのよ。あんたちょっと醤油買ってきてくれない? ちょっとこの後、寄るとこができちゃってさ」

「えぇ? 私、今帰ってきたばっかりだよ」

「いいから、いいから。ねっ? お願い」


 お母さんが両手を合わせてお願いすると断れなくなる、いつもこのパターンだ。忙しそうにしてるし、別に手伝うのは全然いいんだけどね。


「もう、しょーがないな~。帰ったらなにか作っておこっか?」

「ホント? 嬉しいわ~。母さん、あんたみたいな娘をもって幸せよ。まるで私の娘じゃないみたいにしっかりしてるんだもん」


 いやいや、あなたの娘だって。


「はいはい、そういうのはいいから。いってらっしゃい」

「はーい。いってきまーす」


 自室に戻って一息つく。でも買い物は早めに済ませたいな。


 ……………………


 目を覚ますとそこはリーフェのベッドだった。リーフェの姿は……まあ、いいや。今はおいて置こう、考えをまとめたいから。


 今のは絶対夢じゃない。……そうだ思い出した。あの後わたしは買い物途中で交通事故にあったんだ。それで意識を失う前に確か黒猫を……そう黒猫を見たら体がというより魂?が空に引っ張られて……それでこの世界に来た?


 もしかしたらあの黒猫がライガスという名の魔女だったのかもしれない。確かめる術はないけど。というかできれば魔女には会いたくない。食事の時にすこしだけ聞いたんだよね。魔女ってのは気まぐれで、人智を越えた存在で災害みたいなものだって。


 まあ、それは置いといて状況を整理してみよう。日本での交通事故で弱った私の魂がこっちに送られた。それで傷ついたリーフェの魂とくっついた。傷ついた二人の魂が回復すれば元の世界に戻れる。


 うん、こういう流れでいいと思う。私がリーフェの体を操っているのは私の魂の方が状態が良いのかもしれない。それで魔女の魔法でリーフェが回復したら、私は自分の身体に戻っていくと。


 ん? ってことは今、私の体には魂が入っていないってことじゃない。体が治ったとしてもそれって植物人間……? そんなの絶対駄目! 早く戻らなきゃ!


 でも私の魂は回復するのかな。いや大丈夫……だよね? 外はまだ暗い。もう一度眠ろう。

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