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二話 お友達になりましょう

 私は凍り付いたままのメディレスさんから逃げる様に視線を逸らしてリーフェに毒づいた。


(ほらぁ、やっぱり駄目だったじゃないですか)

(あれぇ? 思ってたのと違うなぁ)

(ちょっとリーフェさん。そんなんじゃなくてもっと他に何か話すことがあるんじゃないですか?)


 だけど私の問いにリーフェは反応してくれなかった。そうこうしている内に魔の手が……じゃなくて、氷の魔女が話しかけてきた。


「ねえ、あなた?」

「ひゃい!」


 思わず悲鳴のような声が出てしまう。かなり失礼な反応だったかもしれない。


「あなた、お名前は?」

(アズだよ!)

「アズです……」


 リーフェにつられてアズと名乗ってしまった。でもそんなことは気にならない程緊張していたし、気が動転している。そんな私の様子を見たためかメディレスさんは一つため息をつくと、冷静さを取り戻したように優しく語り掛けてきた。


「ねえ、アズ? さっきのはリーフェが言ったのよね?」

「は、はい」

「ならいいわ。ほら、そんなに怖がらないで。……ごめんなさいね。本当なら私、こんなこと言える立場じゃないのに……」


 メディレスさんは立ち上がるとお辞儀をして部屋を出て行ったしまった。何の事を言われているのか分からなかったけど、私もつられて頭を下げた。ほっとしたのも束の間、「そういえば」とドアの隙間からメディレスさんが顔を出すと心臓が飛び出そうなほど驚いた。


「アズって女の子よね?」

「ひゃい、そうですけど……」

「そうよね。なら問題ないわ。ねえ、リーフェ? 聞いているのでしょう?お話が終わったら下りてくるのよ。いいわね?」


 そうして返事を待たずに階段を下りていった。リーフェは暢気に、はーい、お母さまと返事していたけどね……。それにしてもこれからどうなるんだろう。そんな不安で一杯になってきた。


 部屋に二人きりになると左隣で浮かんでいるリーフェの方を向いた。


(それでリーフェさん。話すことって何なんですか?)

(そう、それだよアズ!)


 先程よりも、とげとげしい態度で話しかけたにもかかわらず、気にせずリーフェは語りだした。どうやら私の話し方が気に入らないらしい。いや、でも初対面なら丁寧に話すのは当たり前……だよね?


(私ね、あなたが目が覚めるまでの二ヶ月間、ずっと一緒にいたから他人って気がしないの)


 二ヶ月? 私そんなに眠っていたの?


(それでアズと寄り添ってたら、私となんとなく似てるなって感じていたの。それに私、お友達ってそんなにいなくて……ねっ? いいでしょ?)


 リーフェは寝た切りだったけど、私が身体に入ってからは意識があったようで、それからずっと添い寝してたら親近感が湧いたそうだ。それで母親の事もずっと見えていたから、感動の再会も温度差があってさっきの惨状が生まれたという訳か。はぁ、なんか緊張しているのが馬鹿らしくなってきた。別に仲良くしたくないわけじゃないしね。


(うん、分かったわ。お友達になりましょう)

(ほんと? 嬉しいわ)


 そういってリーフェが私に抱き着いてきた。でも幽霊だから抱き着けるわけもなく、左から右に通り抜けてしまった。


(……はははははは)


 リーフェが振り向いて照れくさそうに笑うと私もつられて笑顔になった。


(それじゃあお母さまの所に行きましょ)


 リーフェが楽しそうに言う。


(え? 私に話があるんじゃないの?)

(うん。だから今お話したでしょ?)


 話が通じていないような……もしかして話ってさっきので終わりってこと?

 たったあれだけ?

 だったら追い返さなくても良くない?


 なんてことも思ったけど私がそんな主張なんてできるはずもなく、リーフェに同意して下の階に向かうことになった。だけど私は自分の体が思うように動かないことを忘れてしまってた。ほとんど動かずにいると、それを察したのかリーフェはお母さまを呼んだらって提案してきた。


(ううん、もう少し自分で頑張ってみるわ)


 私はつい思ってもいない事を口走ってしまった。だって全然知らない人に助けを求めるなんてできるわけないよ。でも助けて欲しいって思っちゃう。はぁ~、なんか私ってかっこ悪いな……でもリーフェの考えは正反対だった。


(アズってすごい頑張り屋さんなんだね!)

(……ははは)


 それ、勘違いだから!

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