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初めてのダンジョンの日 前編

 ここは、アングルランドルト王国から南西に100キロほど進んだ都市――アレフトラスト王国。

 ここはアングルランドルト王国のような田舎の王国とは違い、かなり都会な印象を受ける。

 ハンブラドルト大陸には主要都市が三つあり、そのうちの一つを担っており、それだけ、多くの人が行き交い、毎日のように賑わっている。


「グレイド! 凄いよ、人が一杯いるー!」

「そうだな、俺もここに来たのは久しぶりだ」


 グレイドは魔族との戦争の後、この国に派遣された。

 しかし、何時になっても魔族はこの都市を責めてくることはなかった。

 理由は明白だ。アングルランドルト王国での戦いの際、魔族サイドは、思ったより、痛手を負ったしまい、魔族軍はこれ以上戦争を続けることは不可能と判断を下し、自国へと撤退した。



「グレイド様、宿はどうしますか?」

「宿だよな、どうしようか」


 ここ二日ほどは野宿だったので、ベッドに寝転んで、ゆっくり休みたいところなのだが、グレイドには大きな問題があった。


「金がないんだよなー」

「グレイド、貧乏―」

「うるさい」


 金銭的にかなり厳しいのだ。

 国を出る際、いくらか持ってきてはいたが、それでも、旅というはお金がかかる。何処かで稼がなければ、いずれ完全に尽きてしまう。


「それでは、グレイド様、冒険者になってみては如何ですか?」

「冒険者か」


 冒険者。

 それはこの世界において、一般的な職業の一つ。

 冒険者の仕事は、護衛、用心棒、敵対する何らかの事象、モノ、生命の駆除、郵便など、多岐に渡り、基本的にはギルドに加盟し、仕事を斡旋してもらう。


「まぁ、物は試しだな、冒険者ギルドに行ってみるか」


 グレイドたちは市場で果物を買ってから、冒険者ギルドへと向かった。


★ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 ここは冒険者ギルド『メメシス』。


「いらっしゃいませ、どんなご用件ですか?」

「あー、冒険者になりたくて、どうすればいいですか?」

「あ、新規様ですね、それではこの用紙にお名前など、各所、必要事項をお書き下さい」

「分かりました」


 窓口にいた受付嬢のお姉さんから用紙を受け取り、書類に記入をしていく。


「これで良いですか?」

「はい、バッチリです。それでは、このギルドについてご説明しますね」


 そう言うと、受付嬢は何枚か紙を並べた。


「まず、ギルドにはランクというものが存在しております。下からC、B、A、S、S+ですね。まず、新規様はCの依頼から熟して頂きます。依頼は右手にあります、ギルドボードからお選び頂き、依頼が完了しましたら、こちらで手続きをし、報酬を支払わせて頂きます。大まかでは以上となりますが、ご質問はありますか?」

「特には、あ、一つだけ良いですか?」

「何でしょう?」

「初心者でもできる依頼はありますか?」

「そうですねー、まずは採取系か、移動手段があるなら、郵便などが人気ですね。あ、今なら、ダンジョンが人気ですかね」

「ダンジョンですか?」

「はい、知っているとは思いますか、時折、空間に亀裂が生じ、ダンジョンという不思議な空間が出現することがあって、そこでは希少価値の高い鉱石やその他アイテムが手に入るんですよ。しかし、そこにはこの世の者とは思えない化物が沢山いるらしく、何と、言葉も交わせないらしいですよ」


 この世界のほとんどの生物は人間と同じレベルの会話が可能だ。それ故、会話も出来ないで生物は本当に奇妙に思えるのだろう。

 しかし、それはグレイドにとってはチャンスだ。


「ダンジョンに行きます」

「そうですか、今、出現が確認されているダンジョンの難易度はCランクなので、可能だと思います。それでは、手続きしますね」


 そう言うと受付嬢は直ぐに手続きを済ませた。


 「場所はここから、南南東に五キロほど歩いたとこにある、バサルトの森付近ですね。Cランクとは言え、命の危険はありますので、気を付けて」

「はい、ありがとうございます」


 グレイドはお礼をし、ギルドを後にした。


★ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「グレイド様、私たちはご一緒しなくてもいいのですか?」

「あぁ、もしものことがあるかも知れないからな、二人は先に宿で休んでいてくれ」

「……うぅ、私も戦闘に参加できるほどの力があれば」

 

 レディナは分かり易く落ち込んでいる。


「ナギはいくもん!」

「駄目だ、死んじゃうかも知れないんだよ?」

「死なないもん! 行くもん!」


 ナギはグレイドにしがみついて、離れようとしない。


「こら、ナギ! グレイド様の迷惑になるでしょう! どきなさい!」


 レディナはナギを引っ張るも、勿論、ビクともしない。


「困ったな……」


 ナギには魔法の才能は有るらしいが、何も教えていない。

 それ以前に子供だ、戦闘が出来るわけがない。

 

「ナギ、お利巧に出来るなら、ついて来て良いぞ?」

「うん! ナギお利巧にする!」


 ナギはにっこり笑って、尻尾を左右に振った。


「すまないが、そう言うことだ。留守番はレディナに頼む」

「分かりました。気を付けていってくださいね」

「あぁ」


 グレイドはナギを連れて、ダンジョンに潜ることにした――。


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