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初めての村についた日 前編

レディナは妖精(フェアリー)の長、ママルルの直属の子孫であり、活発で元気な少女だ。

 昔から、様々なものに興味を示した。その中でも歴史について深く関心を持ち、その中で過去には人間と妖精が共存していた世界があったことを知った。


「私を、連れていってくれませんか?」

「……君は?」

「私はレディナと言います」


 グレイドはその小さな少女をまじまじと見る。レディナは真っ直ぐとグレイドを見つめる。


「よし! それじゃ、一緒に行こうか?」

「本当ですか! やったー!」


 レディナが仲間になった。


★ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「それではお父様、行って参ります!」

「うむ。グレイド殿に迷惑のないよう気を付けていくんだぞ?」

「はい!」


 グレイドはナギ、レディナを連れて旅を再開した。


「レディナは何で俺について行こうと思ったんだ? 人間は怖くないのか?」


 この世界での人間は他種族に嫌われているだろう。なんせ、自分たちを食おうとする化物なのだから。

 ママルルは過去には人間と仲良くやっていたとは言ったもののそれは所詮歴史上の話だ。

現在を生きるレディナにとってはそれは適応外だ。


「私は野生(ノーマル)ですので、人間が私たちを食べる姿を見たことがありません。直ぐそこに、アングルランドルト国がありますが、近づくことは村の掟で、禁止されています。たまに森に入ってくる人間もいますが、薬草やキノコなどを、適当に採取して帰るので、別に被害はありませんし。という訳で、野生の私たちは人間をそれほど恐怖に思ってないのです」


 グレイドは日本のことを思い出す。

 何も生き物は家畜ばかりではなかった。野生で暮らしいている生物も沢山いたし、ペットのように飼われているものもいた。

 この世界でもそうだ。何も全ての生物が食用として飼われているわけではないのだ。


「それに私は人間が好きです。理由は知性があり、魔法が使えるからです。魔法が使える者は人間以外だと、魔族しかいませんが、魔族(アモンノイド)は少しだけ、苦手です」

「そうなのか? 俺、今から魔国に向かうのだが、いいのか?」

「え!? そうなのですか?」


 そう言えば、何処に向かうとか、目的とか何も言ってなかった。


「俺は魔族(アモンノイド)の一人の女に会いに行くつもりなんだよ」


 そう。グレイドの旅の目的はリリィに会うことだ。

 

「……そう、なのですね」


 あからさまにテンションが下がっているレディナ。


「そんなに嫌なら戻っていいぞ?」

「なぁ! ついて行くに決まってします! 一度決めたことを曲げませんから!」


 レディナは空中でぴょんぴょん飛び回りながら、そう言った。


★ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 グレイドたちが森を抜けるとそこには村があった。

 人間たちの村だ。

 この世界には王都の周辺にいくつかの村が存在している。アングルランドルト国の傘下にある村の多くは、それなりに栄えており、城下町ほどではないが、小国ほどの大きさを有している。


「うわー! 人が一杯だね!」


 ナギは元気よく、走り回る。


 ここはハグルト村。

 多くの人間がそれなりの生活水準で、暮らす平和な村だ。

 だが、ナギを見る人の目は悲惨だ。レディナは小さいせいかあまり目立たないが、ナギはうろちょろするので、目立って仕方がない。


「なんで、家畜がこんな場所にいるんだよ! どこから逃げ出した?」


 鎧を着た人間がナギを捕まえる。


「あ、すみません。その子は俺の旅の連れでして」

「あん? …………え? もしかして、グレイド様、ですか?」

「あ、グレイドですが?」


 グレイドはその男の顔を見るが、覚えがない。


「なんで、この村にいらっしゃるのですか?」

「あ、えーと、その前にナギを離して貰っていいですか?」

「ナギ? あ、こいつですか?」


 男の腕の中で、バタバタ暴れるナギ。

 男が腕を緩めると、ナギはさささと走って、グレイドの後ろに隠れる。


「それで、何用でこの村に?」

「あー、ちょっと野暮用で」


 ここで、旅のことを言う訳にいかない。

 グレイドは王国においてかなり重要な役割を果たしている人物だ。それが国から逃げ出して旅をしているとなると、混乱を生む可能性もなきにしもあらず、なのだ。


「それでは、村長にお会いになるのですか?」

「あー、いや、別にそんな予定はないけど?」

「……そうなのですか? てっきり、例の件かと」

「例の件?」 


 男は、はい、と深刻そうに話始めた。


「この村では最近、狼族(ウルホルルト)が頻繁に襲いに来るのです。勿論、それほど甚大な被害は出ていませんが、それでも、この前子供が一人連れていかれてしまって」

「……はぁー」

「グレイド様が直々に助けに来たのかと思いましたが、違うのですね?」

「……うん。なんか、ごめん」

「い、いえ! そんなそんな! それで、なんで、家畜などを連れているのですか? この年のだと、確かに肉質は柔らかいですが、味がないでしょう?」

「……いや、こいつは仲間だ」

「仲間? あー、愛玩動物(ペット)ですか? それはまた」


 ――まぁ、そう、思われるだろうな。


 仕方ないことだと思いつつも、やはり少し悲しい。


「あ、そう思えば、この村には泊まれる場所はありますか?」

「勿論! 温泉が有名な宿泊できる場所はありますから、紹介しますね」


 グレイドは男についていき、宿まで向かった――。


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