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第6話:かわいい(洗脳済)

【遭難:十七日目――昼】




「ギチギチ、ギチギチ?」

「そう、そうなんだよ」

「ギチギチ?」

「ずっとそのままで保管しておくと肉が腐って、こっちも病気になっちゃうんだ」


「ギチギチ、ギチ」

「冷暗所の保管、冷凍、燻製…色々あるけど――あ、水に漬けるのはダメだよ? 余計に悪くなっちゃう」



 考え自体は色々あるし。

 やってやれない事は無いと思うんだけど……はぁ。


 僕が動けないと、無理だね。


 見本も示してあげられない。


 最終的な目標として。

 残り物を肥料にする事で菜食に移行したいとも思うんだけど、動けないとね。



「――何で動けないのか、カミラは知らないんだよね?」

「ギチギチ」

「……何でだろう」



 そろそろ傷も塞がり。


 動ける筈なんだよね。


 背骨も悪くなってないし。

 動かそうと思えば足も腕も首も動くんだから、麻痺しているわけではない。



 ―――なのに、動けない。



 正確には、痛すぎるんだ。


 我慢して立ち上がろうと。

 歯を食いしばって動いた瞬間、そんな決意を忘れる程の激痛。



「カミラも知らないとなると…何で?」

「ギチギチ」

「うん、分からない。本当に分からないんだ」



 そもそも、僕が血を吐いたのって。


 落ちてきたから……じゃないよね。


 今思えば、衝撃とか。

 感じていなかったし。

 

 落下で普通に死んでるし。

 どちらかというとその後――呼吸をし始めた瞬間に呼吸器や内臓をズタズタにされたような。



「――やっぱり、此処って異世界だよね? 変な星見えるし、推定ゴブリンいるし、何よりカミラたちがいるし」

「ギチギチ、ギチ」

「こんなアリさん居ないよ」



 普通にあり得ないよね。


 時代が遡るわけもなし。


 歴史上でもこんな生物はいる筈もない。

 或いは地球の内側とかいう可能性もあるけど、そもそも星見えてるし。



 ―――キュウ



 どうなんだろうね、その辺。



 ―――キュウ



 僕には意味が分からないというか――キュウ?



「――ねぇ、何か可愛い声聞こえない?」


 

 例えると、小動物。


 癒される鳴き声だ。


 でも、同時に聞こえてくるカサカサ音。

 音質から考えて、アインの足音だけど――また獲物をとってきたのかな。


 でも、あんまり可愛い見た目だと。


 僕はちょっとトラウマというか…。


 さながら、屠殺現場。

 動けもしない状況で、可愛い動物をお肉に加工する瞬間を見せられるのは、ちょっと。



 あぁ、もう来るよ。



「ギチギチギチ――ギチギチ」

「キュウ――キュウ」

「…え? えぇ……」



 戻ってきたアインは、顎に。

 およそ可愛いという表現を使えないようなモノを咥えていた。


 大きさはバスケットボール位。


 丸っこいような薄緑の身体で。

 体表はプルンと艶があるけど。

 同時に、柔らかい産毛のような毛が確かに存在していて。


 短い脚が左右に三本ずつ。


 特徴的なまん丸フォルム。



「―――キュウ。キュウ、キュウ」

「……アブラムシ?」

「ギチギチ」

「いや、アブラムシさんだよね。生け捕りだよね。とったどーだよね。何で連れて来たの? 良い匂いでもした?」

「ギチギチ、ギチ」



 僕の長い話に取り合いもせず。

 まん丸ボディを僕の顔面へと押し付けてくるアイン



 ――ねぇ、何? 何なの?



 いや、押し付けないでよ。


 僕の顔に押し付けないで。



「キュウ……」

「ほら、嫌がってるし、やめてあげ――ん? ――あまッ」



 何か、凄く甘いんだけど。

 

 あと、声可愛いんだけど。


 声()()可愛いんだけど。


 顔に押し付けられていて。

 前が見えない影響もあるからか、その小さな鳴き声だけが耳に届いて、耳が癒される。


 これがえーえすえむあーるなのかな。


 思ってたのと大分…全然違うんだよ。



「あと、音だけじゃ――もがッ……ぷにぷにで柔らか――もがッ」

「キュウ……」

「――ギチッ」

「ギチギチ?」

「……うん、カミラの言う通り。アイン? ちょっと苦しいんだけど。分かったから、止めてくれる?」



 僕の必死の言葉に。

 というより、カミラの言葉? に。

 ようやくどかされるまん丸プニプニ。


 離されたアブラムシさんは。


 何故か自ら顔に戻ってきて。


 完全にヨチヨチ歩きで……うん。

 どうやって今まで生きてきたの?

 動きも遅いし、如何にも食べてくださいって感じの――ナマケモノみたいな歩みの遅さで――僕は道路じゃないよ?


 ヨチヨチ歩くアブラムシは。


 暫く僕の上を自由に歩いて。


 キュウキュウ鳴いてたけど。

 やがて何を思ったのか、自分の方から僕の顔面に引っ付いて離れなくなる。



「………もが!」

「「ギチギチ」」



 もう、意味わかんないよ。


 何? 新手の虐めなの?


 僕自身は動けないから。

 顔を左右に振るだけで。

 でも、掴む力だけはそこそこ強いのか、アブラムシは顔から全然離れなくて――あ――ッ!?


 まさか、コレって。


 寄生じゃないの!?



(こうやって口から卵とか飲ませて、いずれ―――)



 顔から、血の気が引いていく。


 意識がどんどん遠のいていく。


 とうとうこの日が来たんだ。

 僕は遂に本当の餌になって。

 アブラムシが満足した後、残ったお肉をカミラたちで美味しく頂かれてしまうのだろう。


 ―――さらば人生。


 来世はアリとアブラムシ以外でお願いね。


 

「―――キュウ、キュウ……キュウ?」

「……ブクブク」

「ギチギチ……ギ?」

「………ギチ? ギチギチギチ?」




   ◇




 ……………。



 ……………。



「―――アレ? ぼく……一体何を?」



 目覚めたら、普段の天井。


 僕が知る土剥き出しの空。


 天国――見た目的に地獄かと思って見回すけど。

 あぁ、別の意味で地獄……ドアップカミラの怖い顔だよ。


 どうやら、僕は生きていて。


 生きたままエサになるの?


 多分、今頃僕のお腹の中にはアブラムシの卵があって……うッぷ。



「ギチギチギチギチ」

「――ねぇ、カミラ」

「ギチ、ギチ…ギチ」

「うん、分かってるよ。どうせ僕を嘲笑ってるんでしょ? 僕とは遊びだったって――あばばばばば」



 彼女は顎を鳴らしつつ見下ろして。


 僕が冷たく当たると。

 何を思ったのか。

 カミラは僕を脚で挟み込み、コロコロと転がして、転がして。


 また吐き気が込み上げ。


 そろそろ目が回……?



 いつもと違う違和感が……あれ?


 


「―――――何か、身体が痛くなくなってる?」

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