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薬の擬人化ファンタジー

【番外編】(after.15)だいたいの男はタイトスカートもお好き

作者: イトウ モリ

服屋のおやじの短編。まさかの第二弾です。


~人物紹介~


■セリ:主人公。移動舞踊集団ナナクサと呼ばれるキャラバンの生き残り。行き倒れたところをボルターに拾われ、現在に至る。暗殺者として仕込まれた過去があることは秘密にしている。


■ボルター:エヌセッズというギルドのエロマスター。バツイチ。2児の父。現在独身。一応ギリギリ20代。


■レキサ・ロフェ:ボルターの息子と娘


■メフェナ:エヌセッズのメンバー。お色気ボンバー。1児の母。

 ボルターが酒場の奥の部屋で、町長宛の報告書をまとめていると、扉がノックされ、無意味にエロい声でメフェナが声をかけてきた。

「ボルター、ねぇ? コーヒー欲しい? イれてあげよっかぁ?」


「ん? ああ、悪いな」

 そう答えてから、少し考えてボルターは言い直した。

「あ、待て。ちょっと、薄めに淹れてくれ」

「うふ。薄いのね? 了解~」


 あらためて書類に目を通していると、まもなくメフェナがコーヒーを淹れて部屋に入ってきた。


「お・待・た・せ♡」

「おう、置いといてくれ」

 ボルターの視界の端に、メフェナの足が入り込む。


 体に密着するデザインのロングスカートの脇に、ざっくりと開いた切れ目から、見事な太腿があらわになっている。


「お前、その服どこで買った?」

「え? 普通に市場の近くにある服屋だけど」

「ふーん」

「あ、なになに? セリちゃんにこういうの着せたいわけ?

 あー、でもセリちゃんにはまだ早いかなぁ?

 やっぱりこういう服着てエロくなるのは、ある程度大人の女の曲線が出るようになってからの方がいいと思うんだけどなぁ」

「別にそんなんじゃねえよ」


***


 と、言いつつ気がつくとボルターは服屋の前にいた。

 以前、思わず勢いで3枚もエプロンを買う羽目になってしまったあの店に。


「あれ、ボルターさん。また来たの?」

 またしてもおかみさんに見つかり、ボルターは居心地の悪い思いをする。

「いや……あの、オヤジさん……いますか?」

「はいはい、今呼びますよ。ちょっとアンター? ボルターさんが呼んでるよ~!」


 前回同様、服屋の亭主はのそのそと店の奥から出てきた。

「ああ、あんたか。この間のエプロンはどうだった? なかなかいいだろう?」

 おかみさんを気にして、お互いに声のトーンを落とす。

「ああ、悪くなかった。

 それよりオヤジさん、この店、タイトスカートってあるのか? できればミニの」


 亭主の目がキラリと光った。


「ああ~、あんた本当に好きだねえ。

 あの子を前の奥さん風に仕上げてくつもりかい? 悪い男だねぇ」

 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら亭主はボルターを肘でつつく。


「んなことするわけねえだろ!!

 つーかあんた、俺の(元)かみさんがタイトのミニはいてるの見たことあんのかよ!?

 俺だって見たことねーわ!!」


 ボルターの非難を聞いているのかいないのか、亭主は手招きをしながらボルターを店の奥へ案内する。

「で、位置はどこがいいんだい?」

「位置?」


 意味が分からず聞き返すボルターに、服屋の亭主は呆れたように大きくため息をつき、次は腰に手を当て偉そうにふんぞり返った。


「なんだいなんだい、ボルターさんも大したことないな!

 てっきりすぐに分かってくれると思ったのに。

 スリットだよ。

 スリットの入っていないタイトスカートはスカートに在らず!! って言うだろ?

 で、どこにスリットの入ってるやつがいいんだ?」


「見てから決める。とりあえず出してくれ」

 妙に男のプライドを踏みにじられた気がして、ボルターは相手に負けないよう、居丈高に言い放った。


 亭主はやれやれ、と愚痴りながらもったいぶった動作で3着のタイトスカートを出してきた。もちろんミニ丈だ。


 ボルターは思わず固唾を飲んで亭主の説明を待った。


「まずは後ろスリットだな。

 これのいいところはどんなに食い入るように、穴が開くほど見つめても、はいてる本人に気づかれないところだろう。

 どこまでも歩く後ろを追い続け、スリットからのぞく内腿と、その先の光景を想像しながら見守り続ける楽しみがある」


「ああ、なるほどな」

 

 気づかれないように尾行するスリルと、何かの拍子に屈んだり、階段を登ったりする神から与えられしお恵みへの期待が膨らむ。


 たしかに胸が熱くなるかもな。


 ボルターは亭主の説明を聞きながら静かに頷いた。


「次は横だな。残念ながら秘密の花園の入り口をチラ見することは不可能だが、これはかなり際どいところまでスリットが入っていても、足が長くきれいに見えるとか言うクチで女性側にも抵抗なく受け入れやすい。肉付きのいい女が着ると萌えるな」


 さっきのメフェナのやつがそれだな。

 ボルターは腕を組みながら、何度も深く頷いた。


 たしかにセリは肉付きの点ではまだまだ物足りないが、細いながらも筋肉がきれいについている。

 尻も好きだが、あの締まった太腿をもう少し上の方まで見てみたい。


「そして、前だ! セクシーさは一番だと思う。

 わしは好きだ、一押しだ。

 こちらに向かって歩いてくると、ああ! 見えそう! もう少し! あと少し! もっと足を開いてくれ!! と思わず悶え、懇願してしまいたくなる。

 もう屈んで下から見上げたくなるな。いっそ踏みつけて欲しい。

 なんたっていいのは座った時だ! 着ている本人もその見えそうな隙間を意識せざるを得ない! 恥じらいながらの横座りのその色っぽさは最高の一品だ!」


 そこまで言うならちょっと再現してみるか。

 頭の中のセリにスカートをはかせてみて、まずは通常のセリモードで一回楽しんでみる。


 …ちょっとボルター、変な目で見ないでよエッチ!


 うん、これはこれで楽しみだ。

 からかいながら徐々に攻略していくのが燃える。まあ、いつものパターンだが。


 そして、十分に堪能した後は、最近仕入れたばかりの脱力・ヘロヘロモードのセリで出力してみる。


 やだ…ぁっ、ボルタぁ。そんな…っ、見ちゃ……いやぁ…っ。


「ああ、いいな」

 思わず無意識に呟いてから、慌ててゆるんだ口元を隠した。


 このまま妄想を続けてしまうと、まくり上げて秘密の花園への進撃を開始してしまいそうだ。

 さすがに昼間だから、よしておこう。


 何はともあれ、前スリットだけでしばらくは、ご飯が三杯はイケる。


「さあ、どうする?」

「ふっ、聞くまでもねえだろ? オヤジ! 三枚とも買うぜ!」


 二人の男は固く手を握りあった。


「勇者ボルターの英断に敬意を評し、これを授けよう。さあ、その宝箱を開けるがよい!」

「なんで今回は王様風なんだよ」


 文句を言いながらも宝箱を開けたボルターは言葉を失った。


「王様!! これは……このアイテムは!!!」

「お前には分かるだろう。最強の相性を誇る伝説の防具、網タイツだ!!」

「うおおおっっ! マジか!? 良いのか!? くれるのか!!!?」


 これが………これがあれば……!!


「男の憧れ、パンスト破りからの着衣プレイも叶うな!」

「オヤジーーーー!!!」


 男たちは熱い抱擁を交わしあった。



***



 ギルドでの仕事を終え家に帰る途中、タイトミニをはいた実に自分好みの、形のいい尻をした少女が前を速足で歩いていた。


 あの尻はセリだ! 間違いない!! しかもあれは前スリットだ!!!

 服屋からギルドに戻る前に、こっそりセリの部屋に忍び込んでスカートをタンスにしまっておいた甲斐があったってもんだ。


 ボルターは我ながら馬鹿みたいだが、思春期の少年の時のように胸が熱くなるのを感じた。

 思わず大きな声でセリを呼びながら駆け寄る。


「おい! セリ!!」

「あ、ボルター? 仕事終わり?」

 セリは顔だけ振り向いた。立ち止まりもしない。

 故に距離が縮まらない。よって前側が見えない。


 体ごとこっちに向いて立ち止まれよ! と、思うが急いでいるようなので尋ねてみた。

「お前は? 一人で何してんだ?」


「調味料が切れてたから、ダッシュで買い足しに行ってたの。レキサとロフェは家で留守番してるよ」


 お前、その間に俺以外の男にそのスリットの先の光景を見せたんじゃないだろうな。

 というか、そのダッシュを真正面(下)から見たかった……。


 そして二人で家に入り、ボルターは愕然とした。


「セリ!! お前!? それ、どういうことだよ!!」


 ボルターの指差す先にはタイトスカートのスリットがある。

 あった。というべきか。


「え? このスカート? いつの間にかタンスの中に入ってたから誰かのお古なんだろうけど、裂けたのか切れたのか分からない切り込みがあってね、捨てるのもったいないし、前に近所の奥さんからもらったハギレでつぎはぎしたんだ。

 かわいいでしょ?

 あえて無地のスカートにはワンポイントで柄ものをアクセントにするのが今風なんだって。

 古着リメイクっていうの? ほらすごいでしょ? かわいいでしょ?」


 無邪気に喜んでいるセリの表情は珍しいから、本来であれば許してやるのが男なのだろう。

 だがしかし……。


「お前……お前なあ、なんてことを…!」

 そして、ボルターは見てしまった。


「お前ーー!!

 網タイツの中に野菜を入れるなーー!!

 なんでよりにもよって大根2本さしてんだよ!!

 めちゃくちゃ生々しいわ!!」


「え? あれ野菜ネットじゃなかったの?」


「お前なあ、お前……っ」

 がくりと膝をついてしまった父親の姿に、子供たちが心配して駆け寄ってきた。


「あれ? どうしたの。お父さん? お腹いたいの?」

「おとーしゃん? 大丈夫? ないてるの?」


「怒鳴りすぎて舌でも噛んだんじゃない? ほっといてご飯にしよう?」

 居候の少女はどこまでも変態家主に厳しかった。


エプロン編とセットでお楽しみください。

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