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「ほら、言った通りだろう宗次」
懐中電灯と蝋燭の明かりの中、父は自慢げに言った。
夜になると、ニュースで台風がこの地方の暴風域に入ったという情報が流れた。
アニメを見ながら、夕食をとっていると、突然、台風の影響で停電となった。
楽しみにしていたアニメを途中で切られてしまった宗次はますます不機嫌になった。
真っ暗な世界に灯りがついた後、宗次の気も知らないで、父は開口一番にそう言ったのだった。
「あら、私の予感よ」
負けず嫌いの母が父に対抗意識を燃やす。
そんな母の取り扱いに慣れている父は、優しく彼女に微笑みかけると、
「お母さん、ボクも来るって信じてたよ」
父の一言に母は、ぽっと頬が染まり急にしおらしくなる。
「そう、私達って、やっぱり気が合うのね」
「当然だろ」
父は気取って言った。
「やっぱり、私のダーリンは最高」
「よせやい」
と、完全に二人はノロケの世界に入ってしまった。
宗次は深い溜息をつくと、一気にカレーをかっこみ予備の懐中電灯を持つ。
「風呂に入って来る」
と、その場を離れようとした。
「宗次、ちょっと待て。この暗がりで単独行動は危ない。よしっ、久しぶりに家族で風呂に入るか」
父は凛々しい表情を見せ、母はうっとりと見つめる。
「そうね、それがいいわ。名案だわ、お父さん」
「だろ」
父はサムアップする。
母は投げキッスをする。
宗次は呆れかえる。
「えーっ、いいよ」
宗次はうんざりして、首を振った。
しかし、こうなってしまうと両親に逆らえない。
二人の愛の前では、すべてが無力、親の前では子は無力となってしまうのである。