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5

 廃屋の外に出ると、視界にまたギラギラと強い日の光が差し込んだ。

 薄暗い廃屋から外へ出たので、宗次は眩しさに顔をしかめた。

 ほどなくして目が慣れる。


 切り取った竹の束の上に実を座らせ、宗次も腰を降ろすと、黴臭く湿った部屋ではない、新鮮な外の空気を思いっきり吸い込んだ。

 それから宗次は思いっきり伸びをする。


 しばらく宗次が竹藪の隙間から空を見上げていると、実の大きな溜息が聞こえた。

 宗次はそれがさっきの出来事を吐き出すかのような溜息に思えた。


「大丈夫か?」


 宗次は、実を見た。

 心なしか、いつもよりもさらに顔が青白く見える。


「う、うん」

 

 実の返しには元気がなかった。


「びっくりした?」


 宗次の言葉に、実はコクンと頷いた。


「そうか・・・実は、俺も」


 宗次はニヤリと笑うと、実はやつれたた笑いを返した。


「さてと・・・」


 宗次は立ち上がると、ズボンをはたいた。

 

「もう、一仕事しますか」


 そう言うと、彼は何故か意味もなく側転を三回した。

 その後、親指を立て実にポーズを決める。


「よしっ」


 宗次に促され、実はゆっくりと立ち上がる。

 すると、空からゴロゴロと重たい重低音が響いた。


「なんだ?」


「雷だよ!雨が来る!」


 それまでのピーカンの太陽が、あっという間に灰色の分厚い雲に覆われると、周りが薄暗くなった。

 雷鳴がピカッと一瞬、青白く辺りを照らすと、大きな落雷音がする。

やがて激しい雨が降り出した。


 慌てて、夏希、猛が廃屋から飛び出してきた。

 二人は宗次と実を見ることなく無視して駆けて行った。


「・・・」


 実は不安げな顔をして、去っていく二人の後姿を見ていた。

 宗次は彼の肩を叩く、


「今日は仕方ないさ。大丈夫、また仲直りするから。俺たちも家に帰ろうぜ。風邪をひいてしまう」


「う、うん」


 宗次が駆けだすと、実は一度廃屋を振り返り見つめ、彼を追って走った。


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