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廃屋の外に出ると、視界にまたギラギラと強い日の光が差し込んだ。
薄暗い廃屋から外へ出たので、宗次は眩しさに顔をしかめた。
ほどなくして目が慣れる。
切り取った竹の束の上に実を座らせ、宗次も腰を降ろすと、黴臭く湿った部屋ではない、新鮮な外の空気を思いっきり吸い込んだ。
それから宗次は思いっきり伸びをする。
しばらく宗次が竹藪の隙間から空を見上げていると、実の大きな溜息が聞こえた。
宗次はそれがさっきの出来事を吐き出すかのような溜息に思えた。
「大丈夫か?」
宗次は、実を見た。
心なしか、いつもよりもさらに顔が青白く見える。
「う、うん」
実の返しには元気がなかった。
「びっくりした?」
宗次の言葉に、実はコクンと頷いた。
「そうか・・・実は、俺も」
宗次はニヤリと笑うと、実はやつれたた笑いを返した。
「さてと・・・」
宗次は立ち上がると、ズボンをはたいた。
「もう、一仕事しますか」
そう言うと、彼は何故か意味もなく側転を三回した。
その後、親指を立て実にポーズを決める。
「よしっ」
宗次に促され、実はゆっくりと立ち上がる。
すると、空からゴロゴロと重たい重低音が響いた。
「なんだ?」
「雷だよ!雨が来る!」
それまでのピーカンの太陽が、あっという間に灰色の分厚い雲に覆われると、周りが薄暗くなった。
雷鳴がピカッと一瞬、青白く辺りを照らすと、大きな落雷音がする。
やがて激しい雨が降り出した。
慌てて、夏希、猛が廃屋から飛び出してきた。
二人は宗次と実を見ることなく無視して駆けて行った。
「・・・」
実は不安げな顔をして、去っていく二人の後姿を見ていた。
宗次は彼の肩を叩く、
「今日は仕方ないさ。大丈夫、また仲直りするから。俺たちも家に帰ろうぜ。風邪をひいてしまう」
「う、うん」
宗次が駆けだすと、実は一度廃屋を振り返り見つめ、彼を追って走った。