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シミだらけの朽ち果てた壁にバンと雑誌がぶつかると、衝撃を受けた一部の壁が崩落する。
漆喰の粉と埃を辺りに散らしながら、パラパラとページがめくれ雑誌はポトリと落ちた。
「おい、おい」
夏希が呆れて、雑誌を取りに行こうとするのを、
「もういいよ」
と、宗次は制した。
「まだ、最後まで見てないぜ」
猛は口を尖らせて言う。
「俺たちの秘密基地を完成させるのが先だろう。でっかい台風が来るんだぞ」
宗次は昼飯時に見たテレビのニュースの事を言い、すくっと立ち上がった。
完全に固まってうずくまり、震え怯えていた実は、ゆっくりと宗次を見た。
「来ないよ。台風なんて、なぁ」
夏希は猛に同意を求めた。
「いっつも、外れているじゃないか、なぁ、天気予報なんて、あてにならないさ、なぁ」
猛も夏希に返す。
宗次がそんな二人を睨むと、険悪な雰囲気が朽ち果てた部屋の中を包んだ。
「じゃあ、お前たちだけで見てろよ。実、行くぞ」
宗次は実の肩を叩く。
が、実は、
「・・・・・・」
固まって、言葉はなかった。
呆けている実の手を無理矢理引っ張って立たせると、宗次は彼を引きずりながら外へ向かった。
「・・・・・・」
夏希と猛は憮然とした表情で顔を見合わせる。