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3

 竹林をかきわけて、長竹が茂る薄暗い中をしばらく歩くと、光が差し込み開けた場所に出る。

 目の前には、昔は人が住んでいたであろうズタボロの二階建て廃屋が建っていた。

 夏希、猛、実はすでに来ていて、作業をはじめていた。


「遅いぞ、宗次」


 宗次の到着に、いち早く気づいた夏希が開口一番に言った。


「悪い、悪い」


 宗次は申し訳なさそうに、手刀をたて背をかがめながら、図面を広げて指示を出している実に近づいた。


「で、俺はなにをしたらいい?」


 実は、自作の廃屋の図面、二階部廊下を指さし、


「宗次君、ここの床が抜けているだろう。周りの竹を切り出してきて、廊下の幅50㎝に切りそろえて・・・」


「抜けた床を作るんだな、わかった」


 宗次は実の話が終わる前に、工具箱からのこぎりを取り出すと、駆けだして行く。

 それから次々と、力任せに竹を切っていく。

 汗だくになりながら、一心不乱に没頭し、遅れを取り戻そうとした矢先、


「うおーい!」


 と、猛の素っ頓狂な甲高い声が響いた。

 離れた所で作業をしていた宗次は皆から遅れて、廃屋の三人が固まっている一室に着いた。

 猛はニヤついた顔をしながら、


「こいつは、すげえぞ」


 と、宗次に色褪せた雑誌を見せた。


「うわっ、すげっ」


 宗次はゆっくりと雑誌に顔を近付け、まじまじと見た。

 若い女性の裸体写真がバーンと載っていた。


「・・・これって」


 宗次は二三度、首を振って雑誌を指指す。


 夏希は大きく頷き、


「そう、エロ本だよ。兄ちゃんが持っているのを見たことがあるから、間違いない」


「え・・・え、エ・・・ロ・・・本」


 実に明らかな動揺が見える。


「俺はじめて見た」


 宗次は深い溜息をついた。


「それだけじゃないんだぜ」


 猛はペラペラとページをめくった。

 すると、男と女が裸で抱き合っている姿があった。

 みんなにとって、それは衝撃的すぎるものだった。


 宗次の鼓動は高まり、胸が痛み、えもいわれぬ嫌悪感が込み上げてきた。


「・・・これ何やっているんだろう」


 かろうじて、宗次が言葉を発すると、

 夏希は得意気に、


「ほら、先生がなんかの授業で言っていただろ。赤ちゃんは、どうやって出来るかって・・・」


「アレか!」


 猛は(まなじり)を大きく開いて叫んだ。


「でもな・・・」


 宗次が言った瞬間、


「えんがちょ、エンガチョ!!!」


 実は半狂乱となって、叫びながら雑誌をほおり投げた。



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