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 廃屋の秘密基地で

 久しぶりですね~。


 ギラギラとした夏の太陽が容赦なく辺りを照りつけ、もくもくの入道雲が、青空の半分を覆っていた八月のある日だった。

 竹林に周りを囲われたその場所は、時間帯が悪く木陰はなく日差しは照りつけるばかりだった。

 小学五年生になる宗次たちは、太陽を全身に浴び汗をいっぱいかきながら、二階建ての廃屋で自称秘密基地建設の作業をしていた。


「おーい、実、これ、ここでいいのか?」

 真っ黒に日焼けした長身の宗次は、竹林で切って揃えた竹を床が抜けている場所へと置いた。

 丸々太って度の強い牛乳瓶底のような眼鏡をかけている色白でクラス一の秀才、実は頷き、

「うん、OKだよ」

 彼は両腕を頭の上へあげ〇をつくった。


「ん?」

 宗次は確か、さっき床に置いたはずのノコギリが無くなっている事に気がついた。

(おかしいな・・・)

 と思いつつ、実にノコギリを触ったか尋ねたが首を振った。


「そろそろ、きゅうけいにしないか」

 宗次の集めてきた竹を床の抜けている部分へ、カナヅチで釘を打ちつけていた、少し日焼けの具合が足りない夏希が、手を止めて宗次の方を振り返った。

「ああ、そうしよっか」

 と、宗次が頷くと、

「待っていました」

 と、みんなの中で一番背が低く、一番日焼けしている猛が二階から駆けつけてきた。


 宗次はタオルで汗を拭きながら、水筒の麦茶をガブ飲みし、夏希に渡した続いて、猛がごくりと飲み、実だけはお上品にコップに麦茶を注いで飲んでいる。

「もうちょっとで完成だな」

 宗次は廃屋の部屋を見回した。

 はじめて彼らが廃屋を見つけた時は、それはもうボロボロのズタボロだった。

 四人は三カ月をかけてようやく、廃屋を基地へと完成させようとしていた。

「ああ、よくやったな」

 猛は実に渡っていた水筒を、また取って、ごくりと喉を鳴らしうまそうに飲んだ。


「おーい、宗次君たち」

 玄関の方で女の子の声が聞えた。

「綾子かな?」

 宗次はそう言って、玄関の方へ行こうとすると、夏希、猛、実

もドヤドヤと後へ続いた。

 玄関先にはクラスのアイドル綾子と友達の美也子がいた。

「差し入れ、持って来たよ」

 美也子がビニール袋をゆっさゆっさと揺らすと、男子はそれに群がった。

 中には、アイスが入っていて、それぞれ種類が違うので取り合いとなる。

 真っ先に一番人気のチョコアイスを手にしたのは、すばしっこい猛だった。

 不満残る三人は彼にぶつくさ言いながら残りのアイスを食べはじめた。


 綾子たちを廃屋の一番上等な部屋である居間にまねくが、彼女は鼻をクンクンとならし、

「あいかわらず、カビくさいね。ここ」

 そう言うと、ハンカチで鼻を押さえる。

「そこが、基地っぽくていいんだよ」

 宗次は食べたアイスの棒を綾子に向け言った。

「どこが?」

 と、冷ややかな表情を言う綾子の横にいた、美也子が、

「あっ、そうそう、あのね、ここに行くっていったら、お母さんが急におこりだしたんだ」

 美也子は意味ありげな表情を見せた。

「お前、ひみつって言ったのに、しゃべっちゃったのかよ!」

 猛が口を尖らせる。

「ごめん、ごめん」

 美也子はそう言いながらも、反省することもなく目を輝かせて、

「ここ・・・出るらしいよ」

 と、声をひそめて呟いた。

「何が?」

 実がおそるおそる尋ねる。

「そりゃあ・・・幽霊」

 美也子は目を大きく開いた。

「どわっ!」

 と、驚く男子たち。

「それが、昔住んでいた、ここの家族全員が死んじゃったんだって」

 美也子の声が沈む。

「・・・なくなった」

 綾子は息を飲む。

「そう、両親の他に私たちと同じ年の女の子、そして三才の男の子がいたんだって」

 美也子はそこまで言うと、ふうと一息ついた。

「どうして死んじゃったんだ?」

 宗次は腕組みしながら美也子に尋ねた。

「分かんない。けど、お母さんがそう言っていたわ」

 美也子は首を振った。

「あ、そう言えば、さっきノコギリ無くなって、みんな動かしていないか」

「いいや」

 宗次の言葉に皆は首を振る。

「そういえば、ここで、よく物が無くなったり、壊れたりするな」

 夏希は言う。

「おいおい」

 と、男子たち。

「おいおい、じゃあ、とんでもない所に秘密基地を作ろうとしていたんだな」

 実は身体を震わせた。

「おもしろい。これは俺達が解決する事件だな」

 夏希はニヤリと笑う。

 みんなは彼の言葉にドキッと驚いた。

「まさか、夏希お前・・・」

 猛はゴクリと唾を飲み込んだ。

「ああ!その霊を退治する」

 夏希は力強く言うと、拳をぐっと固めた。

「どうやって・・・だよ」

 実が不安気に聞く。

「なんとかなるさ、なんとか!という事で、夜の七時にここに集合だ!こないヤツは弱虫決定!」

 夏希はみんなの意見も聞かず勝手に決めた。


 

 宗次はなんとかそれなりの理由をつくって家を出た。

 嘘をついているので後ろめたさと、幽霊退治で鳥肌がたっている。

「おっ、来たな宗次、んっ、なんだそりゃ」

 夏希は懐中電灯を彼へ照らし、じっとと見る。

 宗次の胸元にはくすんだ鏡があった。

「大昔の銅鏡だよ。ウチの家の御守りなんだ」

「ふーん」

 夏希はあまり興味なさそうに言った。

 「カッコいいね・・・でも」

 綾子は緑青のふいた銅鏡をまじまじと見、続いて、

「勝手に持って来たでしょ」

「まあな」

 宗次は苦笑いをした。

「カッコよくは・・・ないけどな」

 猛は言った。

「それより他のみんなは?」

 宗次は周りの皆を見て言った。

「美也子は行かないって」

 綾子は申し訳なさそうに言った。

「言い出しっぺのくせに」

 夏希はそう言うが、

「幽霊退治を言ったのは夏希だ」

 宗次は返した。

「あっ、そうか」

 と、思いだし、頭をぽりぽりとかく夏希だった。

 やりとりの最中、重いリュックを背負った猛が懐中電灯を照らしながらやって来た。

「ごめん、ごめん、おそくなって」

 実はぜーせーと息を切らせながら謝る

「実、遅いぞ。こわくなって逃げたかと思ったぜ」

 猛が実の頭をぽんと叩く。

「じゃあ、行くか」

 夏希がそう言った途端、皆に緊張が走った。

「も、もう行くの?」

 実の表情はさっと青ざめた。

「当たり前だろ。あんまり遅くなると親に叱られるだろ。さっさと行くぞ。ついて来い」

 夏希は先頭をきって廃屋へと足を進めた。

 宗次は嫌な予感がして銅鏡をグッと握りしめた。


 廃屋の玄関まで来ると、夏希は大声で、

「おーい、幽霊いるかぁ!いたら返事をしろ!!!」

 と叫んだ。

 廃屋の中は当然真っ暗で、静まりかえり物音ひとつしない。

 猛は鼻をフフンと鳴らし、

「やっぱり、何もいないじゃんか?こりゃ美也子のデマだな」

 と言った瞬間、凄く強い風が外から吹きつけ、みんなは廃屋の中へ引き込まれた。

「痛いっっつ」

 五人は重なり合うように倒れ、ゆっくりと立ち上がり、顔を見合わせ全員の無事を確認した。

「大丈夫か?」

 宗次が聞くが、皆の表情は強張って一様に彼の背後を指さした。

「なんだよ」

 と、振り返った瞬間、目の前に青白い光りに包まれた女の子が立っていた。

 あまりの恐怖に宗次はその場に尻餅をつく。

 女の子は目を閉じたまま、ぼそりと、

「・・・許さない」

 とつぶやいた。

 凍りつく五人。


 女の子が人差し指を宙にむけると、五人の身体はふわりと浮かんだ。

「あわわわわわっ!」

 恐怖で固まる五人。

「お父さん、お母さんどうして!」

 女の子の目がカッと見開かれると、みんなは床へ叩きつけられた。

「美也子の言ったことは本当だったのよ。あの子、私たちを親とかんちがいしている!」

 美也子は叩きつけられた傷みも忘れ、どうにもならない叫び声をあげた。

「オレたち、殺されるのか!」

 猛も絶叫する。

「そうはいくかっ!」

夏希は竹の棒で、女の子に殴りかかろうとするが、すり抜けてかすりもしない。

「来るな!来るなっ!」

 実はひたすら目を閉じたまま、リュックの中身を投げつけた。


(・・・なんとかならないのか)

 宗次は銅鏡を胸元で強く握りしめ祈った。

「どうして!!」

 女の子がかなしげに叫ぶと廃屋が揺れる。

 そうしてゆっくりと五人に迫りくる。

 その時だった。

 宗次の銅鏡がまばゆく光りだし女の子を照らした。

 それはすべてを包み込むような、あたたかい光だった。

「・・・?」

 女の子は理解出来ず首を傾げた。

 宗次は彼女へと足を進める。


「おい、宗次・・・」

 夏希が宗次を呼んだが、彼には何も聞こえていなかった。

 一種のトランス状態におちいっており、宗次に宿る力が目覚めたのだった。

 かつて、太古の日本でシャーマニズム(呪術)とよばれ、恐れ崇められてきた巫女の力が解放されたのだった。

 宗次は朗々と言う。

「女よ。聞こえるか。ここはなんじの住む世界ではない。なんじが行くべき光の元へ帰るのだ」

 言い終えるや、銅鏡はより輝きを増し、光を放った。

「・・・あああ・・・私は・・・」

「恐れるな、憎むな。すべてを光に委ねよ」

 宗次は銅鏡を天に向かってかざす。

 光の道が廃屋を突き抜け、夜空に示す。

 女の子はゆっくりと空へ。


 一面を眩く照らした光はやがて静かに消え、再びゆっくりと夜の闇が訪れた。

 宗次たちはその場に倒れ気を失った。

 やがて、五人が目を覚ますと、そこにあったはずの廃屋が消えていた。

 

 2000.09.19→2024.06.17


 まだありました。

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