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宗次は懸命に台風一過の外の世界を走る。
空には澄みきった青空が広がり、アスファルトには風に飛ばされたゴミやどこかの看板、植木鉢、瓦などが散乱していた。
目指す場所は、もちろん廃屋の秘密基地だ。
(あそこに実はいる。絶対に!)
宗次は確信に近い自信を持って駆けている。
電話での話でも夏希、猛とも考えは一致した。
あの秘密基地の完成に一番、固執していたのは実だった。
彼は補修設計から、必要な材料調達まで一人でこなす力の入れようだったからだ。
台風が心配で、基地の様子を見に行ったというのが三人の共通する考えだった。
夏希は綾子の家が近いという事で彼女を誘ってから基地へ向かい、宗次と猛は直接基地へ行く。
宗次は夢中で走りながら、心の中で、
「指を鳴らして良い音が出たら、きっと実は無事だ」
と、また訳の分からない決め事をつくって、指を鳴らす。
しかし、焦って走っているので、かすっという虚しい音しかでない。
彼は何度も試みるが同じ事だった。
(落ち着け、落ち着け、実の命がかかってるんだぞ・・・そうだ!)
彼は走るのを止め、立ち止まると、すーっと深く息を吸い込み、指先に集中して音を鳴らした。
パチンと乾いた良い音が、彼の耳に響いた。
「よし、実は無事だ」
宗次は自分に言いかせ叫ぶと、再び基地を目指して全力で走り出した。
その場所に行くと、何とか廃屋の基地は建っていた。
が、この前よりも台風のせいで、さらにボロボロとなっており、自分達が持ち寄った道具や、廃屋の建材、瓦が散らばっていた。
息を切らせながら、その惨状に宗次は呆然となる。




