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八尺様





俺は(あずま)という無職の男だ──まぁ信じて貰えないかもしれないが霊能者と呼ばれる類の、所謂〝見える人〟だ。別にお祓いとかできるわけじゃないんだがな、まぁそんなことはどうだっていいんだ。それで今から話すのは当時俺が大学生だった頃の話だ。



お前ら八尺様って知ってるか?知ってるやつは手を上げろ。おぉ……割といるな、にーしーろーはー……9人か、30人いてこの数って……ちなみに9人の中で詳細について知ってるやつはいるか?まぁ居ない──居るのかよ。嬢ちゃん、名前は?(さくら)?良い名だな。大事にしろよ、絶対にな。それと人に優しくしてやるといいぞ、特に日本ではな。


おっと話がズレたな。それで八尺様ってのはどういう存在か、から話していくぞ。まず八尺様は名前の通り背丈が八尺──つまり身長約2m40cmある化け物でな、性別は女らしい。こいつは主に若い男を狙うんだ、まぁ当時の俺も若いから狙われたわけだが。それでよ、こいつの特徴である身長以外にもいくつか特徴があってな「ぽぽ」っていうなんて言うかぽとぼのあいだの音を口から出し続けるんだ。これが怖いのなんの……当時の音声あるんだがなんも録音できてなかったな。んでまぁだいたい狙われたやつは数日で死ぬんだが。


それで見初められたって言うとおかしいが気に入られた俺はよ、めっちゃびびったのよ。いやだって夕暮れ時に畑のど真ん中で「ぽぽ……ぽっぽぽ、ぽぽぽぽぽ」とか言いながら口止めのところが黒い穴みたいになってんだぞ?ほら、想像してみろ、2m越えの女が「ぽぽ」いいながら黒い穴をこっちに向ける光景を。怖ぇだろ。え?八尺様に狙われたやつは死ぬんじゃないのかって?そりゃお前俺がタダでやられるわけないだろ、ていうか……俺の事マジで知らないの?俺のこと知ってたらそんなこと思わないと思うんだが……いや気にするな、話し続けるぞ。


それでさぁ、ビビりながらも俺は当時借りた家で寝泊まりしてたわけよ。その時俺は内心ビビりまくっててさぁ……もう怖いのなんのってことで寝泊まりする部屋の四隅に清めた塩を置いて、一応持ってきておいた地蔵も置いて寝たんだよ。そんでもっていつの間にか目が覚めた、ふと思い立って携帯で時間確認したら午前二時なんよな。それでそのままぼーっとしてたらドアの向こうから声をかけられたんだ。


「お客さん、夜中にお腹すいてませんか?」


ってね。声的にここの管理人なんだろうけどさおかしいよね。なんでわざわざ午前二時なんて時間にそんなことしてるのか、オマケに俺が起きたタイミングで。意味が分からんね。そんなことを考えていてもドアの外からは声はする。


「寝ていますか?寝ていないのであらば1度顔を見せて欲しいんですが」


嫌だよ、絶対お前管理人じゃないじゃんって言おうとしたらふと視線に入ったものがあったんだよ。それが清められた塩。なんかてっぺんが黒くなってんの……いやいやいや、確実に八尺様じゃねぇかって思ったね。そう確信した瞬間窓の外から手で叩かれたようにコツコツって音がし始めたん。あっれぇ……?ここ2階なんだけどなぁって思ってそっち見たら案の定八尺様が居た。ぽぽぽぽいいながらこっちみてるの、オマケに顔全体が黒くなってるんだよ、するとあら不思議……清めの塩全体が黒くなるではありませんか。あ、こりゃあかんって確信したんだよ。だから俺はドアを開け放って外に出て、村から出てったのよね。後ろからぽぽぽぽ言う音が追いかけてくるのを聞きながら、その道中に地蔵を置いて逃げたんだよ。







「どうだ怖かったか」

「オチはどうしたんすかオチは」


そう質問してきたのは先程八尺様が知ってるかどうか聞いた時に手を挙げた1人だった。


「ん?オチか?後ろ見てみろ」


──ぽっぽぽ……ぽぽぽ


その声にここに来ていた30人の学生達が腰を抜かした、オマケに怖いものも見たしな。そりゃ体全体から霊力的なものを噴出しながら恨みがマシくみてくる八尺様を見たらそうなるわ。


「なななな、なんでいるんすか!?」

「そりゃ俺は逃げただけで追いかけられてんだよ。まだ対象だとは思わなかったんだがなぁ……」


それと教えてやる、今の今までここに八尺様が来なかったのは八尺様の通り道に地蔵があったからだ。何故かは知らないが八尺様は地蔵があるとそこの道を通れないらしい。


「それで去年確認とったらこっち方面に続く八尺様の地蔵が壊れたらしくてなぁ、案の定憑けられてたわ、ハッハッハっ」

「笑い事じゃないでしょう!?」


多分道中で何人か死んでんじゃないかな? せっかく大枚はたいて買った地蔵なのになぁ……勿体ねぇなぁ。何人犠牲になったんだか……妙に強くなってるし。


「とりあえず祓いますかね」


瞬きをした瞬間、目の前にいつの間にか移動していた八尺様は俺の首を両手でつかみ、潰そうとしてきた。


「う、うわぁ!?」

「せ、せんせー!?」

「逃げろ! 死にたくねぇ!」


おっとせっかくの生徒達が逃げてしまう。仕方がないからすぐに終わらせてくれる。


「滅」











「──って感じで東先生が八尺様をやっつけたんだ」

「え、それだけだったんですか?」

「そうだよ?」

「そのあとはどうしたんですか?八尺様はどうなったんですか?」

「その場で溶けていなくなりましたよ、聞いた話によると浄滅したらしいです」


その言葉に思わず私は恐怖してしまった。八尺様と言えばココ最近人を殺しまくって格が上がったやばい怪談だったはずだ、規模なら既にテケテケや口裂け女に匹敵するほどの化け物。そんな存在をたった一言で終わらせる?一体どれだけの技量を持った存在なのだろうか、その東という男は。今までそんなに人がいることを聞いたことも無い。本家ですらそんな存在は知られていない、本当に何者だ?


もしその人物が霊能者であったなら私はどうしただろうか。恐らく師事して欲しかったに違いない、この、私が、だ。


「んでいきなりそんな話聞いてきてどうしたんすか、なにか気になることでも?」

「あなた……それ以降なにか良くないものが見えたりしなかったんですか?」

「あぁ、見えますよ。今もそこで突っ立ってるやつとかいますし」

「……あれはただの浮遊霊です。なるほど、分かりました。お話ありがとうございます」

「あ、ところであなたは何者なんです?なんかすんごい後光が差してるけど、見たことないくらいに」



「私は伊勢(いせ)(きく)。霊媒師とか言われてるの、今後なにかそういった関係で問題があったら私に知らせて。大抵の事はやってあげる、お金は取るけどね」



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