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嘘と秘密  作者: Noeru
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④嘘と秘密

④嘘と秘密


 その後、ミカと翔子は部活とサークルに行ってしまったため、ひかりは帰路についた。

すると電車内で空を見かけ、後ろから声をかけた。

「空くん、お疲れ様!」

「おぉ、お疲れ様!」

空はやや驚きながらイヤホンをポケットにしまった。そしてひかりに質問した。

「ひーちゃんはこれから帰り?それともバイトとか?」

「いや、普通に帰りだよ。空くんは?」

「今から母さんの誕生日プレゼントを買いに行くんだ。」

空は少し照れた様子で言った。

「へぇ、そうなんだ!何をプレゼントする予定なの?」

ひかりは興味津々に聞いた。すると、空は困った様子で答えた。

「それが、全く決まってないんだよね。あ、そうだ!ひーちゃん、時間あるなら一緒に来てくれない?何も決まってないから女性の意見も参考にして選びたいかも。」

ひかりは空からの誘いに迷った。

しかし、少しでも役に立てるならと思い、承諾することにした。

「うん。この後、予定無いからいいよ。」


 二人は定期内である途中の駅で降りた。

空は慣れた足取りで改札を抜けてどんどん進んでいった。

ひかりは周りのお店を見ながら空の後ろを歩いた。少し前を歩く空は振り返りひかりに声をかけた。

「ひーちゃんは、あんまりこの駅で降りたことない?」

「まぁ、そうだね。この辺は来ないかな……。」

その時、ひかりは道の段差に転びそうになった。

しかし空が即座にひかりの腕を掴み転ぶ寸前で支えた。

その瞬間、お互いの目が合った。しばらく固まっていたが最初に口を開いたのは空だった。

「大丈夫?危なかったね。」

ひかりは恥ずかしくて固まったままだった。あたふたしていると空は少し笑いながら続けて言った。

「ひーちゃんも意外とドジることがあるんだね。」

ひかりは空から視線を逸らして慌てて言った。

「あ、ありがとう。恥ずかしいところ見られちゃったなぁ。」

ひかりは気まずくその後、空に話しかけられなかった。

しばらく歩いていると目的地の小さなデパートに着いた。

 まずは一階の財布やバッグなどが売っている婦人服売り場に向かった。

空はワゴンに入っていた商品を手に取り、じっくりと見ていた。

「何がいいかなぁ。ひーちゃんは、おすすめのプレゼントとかある?」

「うーん、まず空くんのお母さんがどんな人か分からないからなぁ。何か趣味とかあるの?」

空はじっくりと考えた。そして、閃いたような顔をした。

「料理が上手い。なんか、調理師の免許を持っているとか言っていた気がする。」

「そうなのか。じゃあ、キッチン用品がいいんじゃない?あっち側が売り場みたいだよ。」

ひかりは辺りを見回し、キッチン用品という看板を見つけて指差した。

二人はどんどん店の奥へ進んでいった。

「空くんは料理するの?」

「俺は、たまにするかなぁ。最近はパエリアを作ったなぁ。」

「えっ、パエリア?すごいね!」

ひかりは予想外の料理名が出てきて、心底驚いた。

「でもレシピを見ながらでしか作れないよ?だから別にそこまではすごくないよ。」

空は手をひらひらさせながら言った。

「いやいや、めったに料理をしないうちからすると、すごい尊敬する!」

ひかりは少し興奮気味に言った。すると空は軽く微笑みながら言った。

「そっかぁ、ひーちゃんは褒め上手だなぁ。ありがとう。」

二人は会話をしながらお店を回り、無事に空の母親へのプレゼントを買った。

時計を見るといつの間にか七時を回っていた。


「こんなに遅くまでありがとうね。おかげで良いプレゼントが見つかったよ。」

「いえいえ。こちらこそ楽しかったよ。無事にプレゼントが買えてよかったね。」

ひかりは笑顔で言った。

「ひーちゃんはまだこの後、時間ある?よければ一緒に食べていかない?」

空は笑顔で言った。ひかりも時間を確認して、承諾した。

「うん、いいよ。あ、その前にお母さんに、連絡しなきゃ。」

ひかりは携帯を出して、母親に夜ご飯が不要であることを連絡した。


 二人は駅地下にある和食屋に入った。

「ひーちゃんは食べられないものある?」

空はメニューを見ながらひかりに聞いた。

「特にないけど生ものは少し苦手かな。刺身とかね。」

ひかりもメニューを広げながら答えた。

メニューには、日本らしい食材を使った定食がおすすめされていた。

目の前に座る空は注文するものが決まった様子で、運ばれてきたお茶を飲んでいた。

(完食できるか心配だなぁ……。どれくらいの大きさの料理が来るのかなぁ。)

ひかりはしばらくメニューを見ながら迷っていた。

すると、その様子を見ていた空が口を開いた。

「もし量が多かったら、俺がもらうからね。だから好きな物頼みなよ!」

ひかりは心底驚いた顔をした。

「なんで私が思っていたことが分かったの?」

空は静かに笑っていた。店員を呼んで注文した後は無言の時間が少し続いた。

ひかりは独り言のように言った。

「こうやって誰かと寄り道するの久しぶりかも……。」

「そうなの?あ、そっか。あの二人は部活とかで一緒に帰れないのか。」

「そうそう!うちもバイトがある平日はまっすぐ帰宅しちゃうからさ。空くんはよく寄り道するの?何か部活とか入ってるの?」

「俺はバスケ部に入ってるよ。」

「へぇー!確かに空くん身長も高いし、バスケ強そう。他大学との試合とかはあるの?」

「あるよ!ちょうど、来週の土曜日、試合だよ。トーナメント戦で、小さい大会。

今回、もしこの大会で二位以内に入ればもう少し、大きな大会に出られるらしいんだよね。」

空は興奮しながら語り始めた。

ひかりは、そんな空の様子を見ながら本当にバスケが好きなんだなぁと感心していた。

「よければひーちゃんも試合見に来る?一応、無料の入場チケットがあるけど?」

空はバッグから数枚のチケットをテーブルの上に出した。

チケットには大学名と関係者と大きく書いてあった。

ひかりは、珍しそうにチケットを眺めていた。ちょうどその時、注文した料理が運ばれてきた。

ひかりはテーブルに広げられたチケットを急いで手でどかし、スペースを空けた。

店員はごゆっくりどうぞと言い残し去っていった。

ひかりは手に取ったチケットを見てから困った顔で空を見た。

「あ、いいよ、あげるよ。チケットはたくさんあるからさ。」

ひかりはお礼を言ってとりあえずチケットを貰うことにした。

運ばれた料理を目の前に、空は嬉しそうに写真を撮っていた。

「空くん、写真撮ってSNSに載せたりするの?」

「まぁ、それもあるけど健康管理のために記録しているんだよね。試合も近いし。」

「へぇー、そうなのか。なんか偉いね!うちはあまり写真撮らないからなぁ。」

ひかりは、テーブルの横に置いてあった取り皿を手に取り、空にあげる分を取り分けた。

たわいもない会話をして、楽しく食事をした。


 食べ終わるとすぐにお会計に向かった。

空はお会計の際、バッグの中に手を入れたひかりに言った。

「ひーちゃん、いいよ。俺が奢るから。」

「え、そんな悪いよ。割り勘で……」

「いや、今日は俺が付き合わせちゃったから。最後くらい格好つけさせて。」

空に強気で言われたので、お言葉に甘えてご馳走になった。二人はお店を出て、駅に向かった。


 「美味しかったです!ごちそう様です。」

ひかりが空に向かって手を合わせてお礼を言った。すると、空は言った。

「こちらこそ楽しかったよ。また行きたいね。他のみんなも呼んで食べに行ったら楽しそうじゃない?」

「あ、いいね!みんなでも食べに行きたい。」

二人で笑いながら話しているとあっという間に駅に着いた。

電車は少し帰宅ラッシュで混んでいた。

二人が同じ方向の電車に乗り込み、ドアのそばに立った。電車が動き始めた。

「ひーちゃんはどこに住んでるの?」

「北浅間駅だよ!だから、次の駅で乗り換え。」

「へぇー、じゃあ、俺と途中まで一緒だ……うわっ。」

電車がいきなり揺れて空はひかりが立っていた壁に手を付いた。

ひかりはびっくりしながら空を見ると目が合った。

数秒、見つめ合った後、空はすぐに手を放し、ドア付近の手すりを持った。

ひかりは照れ隠しのように焦りながら小さな声で言葉を発した。

「これが、巷で有名な壁ドンだね。は、初めてやられたわ。」

「そ、そうだね。ごめんね。初めての壁ドンが俺で……。」

「あ、いや、大丈夫だよ。」

その後二人は気まずくなり、駅に着くまで何も言葉を発さなかった。



 駅は帰宅ラッシュで、人が溢れていた。

ひかりは迷子になりそうになりながらも空に続くように電車を降りた。

エスカレーターに乗ると、前に立っていた空がゆっくりと振り向き、ひかりの顔を見た。

「?」

ひかりは最初、空が何を言いたいのか分からなかった。

空の視線は徐々に下に向けられ、ひかりの無意識に空のバッグを掴んでいた手を見ていることに気がついた。

ひかりはハッとして手を離した。ひかりは、恥ずかしそうに言い訳を考えた。

おどおどしていると、空が声を上げて笑い始めた。

すると、ひかりは、もっと恥ずかしそうに呟いた。

「そんなに笑わないでよ。人混み苦手で、はぐれたら嫌だから昔から掴む癖があるんだよ……ごめん。」

「ひーちゃんはそういう可愛いところがあるんだね。今日は、意外な一面をたくさん見れた気がするよ!」

電車を乗り換えて、ホームに着くと空とひかりは同じホームの逆方面の電車だった。

空は、ひかりが乗る電車が駅に着くまで一緒に駅で待っていた。

そして、ひかりが電車に乗り込む直前まで空は見送っていた。

電車の中で一人になったひかりは自分が微笑んでいることにしばらく気が付かなかった。


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