③嘘と秘密
③嘘と秘密
三限が始まった。
ひかりはミカと翔子といつもの中段の席に座った。
ヒロと空は後ろの方に一緒に座っていた。授業が始まって三十分が経過した。
ひかりは先生がスクリーンに映し出している資料を一生懸命書き写していた。
隣に座る二人を見ると案の定、うつ伏せになり居眠りをしていた。
二人とも背丈はバラバラであるが同じ格好で寝ていて、ひかりは吹き出しそうになった。
じっとその様子を観察しながら自然とペンが進んでいた。
ノートの端に軽く二人の居眠り姿を落書きして、心の中で笑っていた。
ふと、午前中本気で落書きした空の横顔の落書きを思い出した。空に褒められた事が頭を遮った。
ひかりにとってはとても嬉しい出来事だっとので、自然とにやけそうになった。
しかし頭を軽く振り、気持ちを切り替え再度、授業に集中しようと前の黒板を見た。
「はぁ、よく寝たわぁ。」
ミカがチャイムと同時に大きく伸びをした。
すると、隣で寝ていた翔子もゆっくりと起き上がり、ミカに声をかけた。
「ミカは部活してないんだから、もう少し寝ないように頑張りなよ。」
「いやいや、私だって昨日は深夜までバイトだったんだからしょうがないじゃん。しかも途中までワンオペで店を回してたんだから。あと、サークルはたまに顔出してやってるし。」
ミカは眠そうに言い返した。するとすかさず、ひかりが言った。
「理由はともあれ、二人とも寝ていたことには変わりありません!」
二人は黙った。すると後ろの席からノートを持って、ヒロが近づいてきた。
ひかりたちの席の前で止まると、申し訳なさそうに声をかけてきた。
「ごめん、ちょっと最後の方だけノート写させてくれない?」
するとミカは呆れたようにヒロに言った。
「あんたも後ろの席で寝てたんかい!ってか空に見せてもらえばいいじゃん。」
すると、空は頭の後ろをかきながら言った。
「いや、なんか次の授業があるからって先に出ていっちゃって……。お願いします、見せてください!」
ひかりは静かに自分のノートを開き、見せてあげた。
ヒロはひかりを拝みながらノートを写した。するとミカもヒロの後ろからひかりのノートを携帯で撮ろうと構えていた。
「あれあれ、もしかしてミカも寝ていたのでは?しかもひかり様の了承を得ていないのに勝手に写真を撮ろうとしているなんて………。」
ヒロがミカをからかった。すると、ミカはあたふたしながら言った。
「別にあたしは……。ごめん、ひーちゃん。次からは寝ないように頑張るから見せてください!」
ミカはひかりに向かって顔の前で手を合わせた。
「はいはい。次からは寝ないように努力してくださいね。」
ひかりは呆れたように言いながらノートを見せた。
教室を出ると、翔子は次の授業の部室へ、ヒロはバス停へ歩いていった。
ミカとひかりは図書館に向かった。大学の図書館の一階は会話をして良いフロアになっている。
ひかりとミカはパソコンが置いてある席を確保し、荷物を下ろし、課題に取り組み始めた。
数分後、ミカはひかりに声をかけた。
「ひーちゃん、ひーちゃん。②って自分の意見を書くんだっけ?」
「うん、そうだよ。①の調べたことを元に自分の考えを書くって言ってたよ。」
「おっけ、ありがとう。」
二人はしばらく課題に取り掛かった。
時間を忘れて集中していると授業の終わりのチャイムが鳴った。
その数分後、翔子が図書館に入ってきた。翔子の隣にはがっしりした男子学生がいた。
遠目からでも翔子と仲良さそうに会話をしているのが分かった。
その男子学生はミカとひかりに気がつくと翔子に軽く手を振り図書館から出ていった。
「翔子、お疲れ様!」
図書館を見回している翔子にミカが声をかけた。翔子は片手をあげ、ひかりの隣の席に座った。
ひかりは翔子に質問した。
「さっき翔子と一緒に歩いてきた男子はどなた?」
翔子は部活で使うものが入っている大きなバッグを椅子におろしながら答えた。
「あぁ、さっきの男子は同じ部活の同期だよ。」
するとミカはニヤつきながらひかりに言った。
「そうそう、翔子の彼氏候補。前々から思ってたけど男前だよねぇ。」
ミカは机に頬杖を突きながら翔子に言った。
「いやいや、付き合ってないから。仲良しなのは認めるけどさ。入学式前の春休みから部活で顔合わせていた仲だからね。」
ひかりも口を開いた。
「へぇー、そうなんだ。確か翔子の部活の同期って一人しかいないって言ってたよね?」
「そう、あれが唯一の同期だよ。」
「やっぱりそうなんだ!えー、せっかく二人だけなんだから付き合えばいいのに。」
ミカはニヤニヤしながら翔子に言った。
すると翔子は頭の後ろをかきながら困惑した表情で言った。
「せっかくってなんだよ。本当に彼とはそういう関係じゃないから。ミカにも今度、彼、紹介してあげようか?すごく真面目でいい子だよ。」
「マジ?それは嬉しいわ。」
ミカは笑顔で嬉しそうに言った。するとすかさず翔子は言った。
「ミカは本当に色んな異性に興味を持つよねぇ。だから、彼氏ができないんだよ。」
「そんなことないよ!別に紹介しなくてもいいよ。冗談だし。」
ミカが少しいじけながら言った。
しかし、翔子とミカは目を合わせて笑い合った。そして、ふと翔子が口を開いた。
「っていうかミカって過去に本当に好きだった異性とかいるの?」
翔子はふと疑問に思ったことを聞いた。するとミカは、照れ笑いを浮かべ答えた。
「まぁ、過去にはいたよ。」
「へぇー。告白して付き合ってたの?」
ひかりが言った。
「いや、告白はしなかったよ。好きって気持ちも微妙だったし。意外とあたしってチキンだからさ。」
すると、すかさず翔子がミカに突っ込んだ。
「チキンは嘘でしょ。どうせ、色々と余計なこと考えたんでしょ?」
「まぁ、ミカは意外と何かと考えちゃうところあるからね。」
ひかりも翔子に同調した。
「意外って何よ………。一言余計なんだよ。」
ミカは少し寂しそうに笑っていた。




