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嘘と秘密  作者: Noeru
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②嘘と秘密

②嘘と秘密


 次の日、雲一つない快晴だった。

ひかりは、重いバッグを持ちながらスクールバスに乗った。

そこでふと知っている顔を見つけた。声をかけるか迷っていると相手もこちらに気がつき目が合った。

「あ、おはよう。」

「おはよう、緩月さん。昨日のお昼はありがとうね。」

空はひかりに軽く挨拶を返した。ひかりは隣に立つ長身の空の顔を見あげた。

(空くん、身長が高くて隣に立たれるとなんか、緊張しちゃうなぁ……)

そんなことを内心思っているとまた目が合ってしまった。

ひかりが誤魔化すように笑うと空もつられて目を細めていた。

「緩月さんってなんか小さいね。俺からしたら女子って全員、小さく見えるけど……。」

ひかりは最初、からかわれたことに気が付かなかった。

そして苦笑しながら空にツッコみを入れた。

「それは空くんが長身だからだよ。」

「確かにそうかも。」

空は自分の頭の後ろをかきながらひかりに言った。

ひかりにはもう少し身長があれば良かったのになぁという憧れが少なからずあった。

そのため、空が少し羨ましく感じた。


 スクールバスが大学に近づいてきた。しばらく沈黙が続いていたが空がふと口を開いた。

「あ、そうだ、連絡先を交換してくれない?ミカが交換しとけってうるさくてさ………。」

ひかりはきょとんとした。空はポケットから黒いカバーのついた携帯を取り出していた。

「あ、いいよ。」

ひかりも急いでバッグから携帯を探した。

空とひかりはお互いのLINEを交換した。

空はスマホに映るひかりのLINEのアイコンをじっと見て言った。

「下の名前がひかりって言うからミカから“ひーちゃん”って呼ばれてるんだね。」

ひかりは自分の名前を急に呼ばれて、ドキッとした。

異性には下の名前であまり呼ばれないので何かと新鮮だった。

きちんと自己紹介していなかったのでお互いのフルネームをこの時、初めて知った。

「そうだよ。みんなからはひかりの一文字目をとって、ひーちゃんって呼ばれてるよ。」

「じゃあ、改めてよろしくね。ひーちゃん。俺のことも気軽に空って呼んで。」

不意打ちにあだ名で呼ばれて恥ずかしくなってしまった。

「こ、こちらこそよろしく、そ、空くん…。」

ひかりは少し動揺しながら言った。

すると空はひかりの動揺を見逃さなかった。

「もしかして、あんまり異性に下の名前で呼ばれない?」

「えっと、まぁそうだね。でも、全然、気にしないよ。」

「そっか、分かった。じゃあ、遠慮なく呼ばせてもらうよ。」

ひかりはしばらくドキドキしていた。

いつのまにかスクールバスが大学に着き、二人は教室に向かった。


 「ひーちゃんは一限の教室、どこ?」

ふと隣を歩く、空から声をかけられた。

「うちは一番大きな教室。」

「俺も同じだ。」

二人が同じ教室に入ると席が指定されていた。

「あ。隣だ。改めてよろしく。」

「すごい偶然だね。こちらこそよろしく。」


 チャイムが鳴ると授業が始まった。

空は頬杖をつきながら黒板を眺めていた。

しばらくして退屈になってきたのであくびをしながら隣のひかりを見た。

すると空とは対称的にペンを一生懸命に動かしていた。

(退屈な授業なのに、ひーちゃんは真面目だなぁ。)

空はうつ伏せになろうとした。その時ひかりが空の方を向き、小さな声で呟いた。

「あぁ、ちょっとそのまま動かないでくれる?」

「え、なんで?」

空はひかりの一言で眠気が一気に吹っ飛んだ。

「いいから、さっきみたいに前の黒板を見てて!」

空は、ひかりに言われた通り頬杖を付きながら前の黒板を見た。

ひかりは、必死になってペンを動かしていた。

数分後、ひかりは嬉しそうに小さくガッツポーズをした。

「できた!なんか上手く描けた気がする。」

ひかりはその紙を空に見せた。それは、ボーッとする空の似顔絵が描かれていた。

シャープペンシルだというのに色の濃淡が使い分けられていて見事に影まで再現されていた。

空はその落書きされた紙を受け取り、そのまじまじと紙を見つめた。

「凄いね………。」

「なんか空くんの横顔が綺麗だったから描きたくなっちゃったんだよね。久しぶりに本気で落書きした気がする。」

ひかりは手首を回しながら空に満面な笑みを向けた。

空はもう一度自分の横顔が描かれた紙をじっと見つめながら口に手を当てた。

ひかりは、その様子をじっと見ていたが空が照れていると分かると、何の気なしに発した自分の言葉が急に恥ずかしくなってきた。

「あ、えっと、ごめん。つい………。」

お互い、少し気まずくなった。すると空が突然、口を開いた。

「で、この紙は俺にくれるの?」

ひかりは紙と空を数回見比べ戸惑った。

しかし、空の目が本気だったので少し恥ずかしそうに目を背けながら弱々しく頷いた。

空はお礼を言いながらとても嬉しそうに透明のファイルに入れた。

ちょうど、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。



 午前中の授業が全て終わった。

ひかりが食堂に向かうと、すでにいつもの場所にミカと翔子が座っていた。

そして、珍しくミカの目の前にはヒロが座っていた。

「お疲れ様!」

翔子はひかりに気が付き、優しく手を振った。

ミカはヒロとの会話に夢中だったのでひかりが椅子に座るまで全く気が付かなった。

ヒロはひかりと目が合うと軽く一礼した。

そして再びミカとの会話に戻っていった。どうやら二人は共通の俳優について話しているようだった。

「ひーちゃんは今までどこで授業だったの?」

唐突に翔子がひかりに質問した。

「一番大きい教室だよ。」

ひかりは翔子の質問に答えた。

他の人は空きコマだったらしく、ずっと食堂にいたそうだ。

するとヒロが唐突にこちらの話に加わってきた。

「その授業、空も取ってたでしょ?」

「あ、そうそう。空くん私の隣の席だったよ。」

ひかりは、持ってきたお弁当をバッグから出して食べ始めた。

「どうだった?仲良くなった?LINE交換した?」

ミカは思い出したようにひかりに聞いた。

「まぁ、そうだね。LINEは今朝、交換したよ。空くんのこと昨日まで知らなかったから今まで同じ授業だったなんて驚きだったよ。」

ひかりは笑った。すると、ミカが目を丸くして言った。

「えぇ、昨日まで空のこと知らなかったの?長身でかっこいいって学科の女子の中ではそこそこ有名だよ?」

すると、翔子がミカのフォローをした。

「いやいや、ミカと違ってひーちゃんはそういうの興味ないし、情報が入ってこないんだって。」

ミカは信じられないと言いたげにひかりを見た。

「え、じゃあうちらの学年の長身で綺麗な田中さんも知らない?」

「田中さんは、流石に知ってるよ。確か、雑誌のモデルやってるんじゃなかったっけ?」

「それは知ってるのか………。」

ミカと翔子は顔を見合わせていた。

「ひーちゃんは、あと少しだけでいいから男性に興味を持った方がいいよ。」

隣に座っていた翔子はスポーツドリンクを飲みながら言った。

ひかりは少し困った様子で笑っていた。

するとすかさず、静かに女子トークを見ていたヒロがカップ麺を食べながら言った。

「でも、ミカは空と同じ高校で同じクラスだったんでしょ?別に大学で知り合ったわけじゃないじゃん。」

するとミカは軽くヒロを睨んだ。

翔子とひかりはそれこそ初耳とばかりにとても驚いた。

ヒロは、口に運ぼうとした箸を止めてミカの顔を見ながら言った。

「え、ごめん。もしかして隠していた感じ?」

ミカは黙ったまま、飲み物を飲んだ。翔子とひかりはミカをじっと見つめた。

「え、なんで。俺もしかして悪いことした?もしかして、空とミカの間で知られちゃいけない過去があったとかそういうやつ?」

ヒロは少しニヤニヤしながらミカに質問した。

一斉にミカに視線が集まり、ミカは少し動揺していた。

「いや、別に空と同じ高校だったのは隠していたわけじゃないし、過去に空とは何もありません。」

ミカはきっぱりと言った。翔子はそんなミカの様子を不思議そうに見ながら言った。

「なんか、逆にそんな言い切られると怪しいなぁ?本当に何も無かったの?」

するとミカは、今度はもっと強く答えた。

「空とは普通のクラスメイトの関係だったし、別に何も無かったよ!」

ミカは再度そう言い切ると携帯をいじり始めた。

「何、怒ってるんだよ。」

ヒロは、怯えるように言った。

気まずい空気になったのを察し、ひかりはすぐに時計を見ながら話題を変えた。

「結構、もう時間ないよ。そろそろ、次の授業が始まっちゃうから片付けよ。」

三人は教室へ向かった。


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