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嘘と秘密  作者: Noeru
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①嘘と秘密

①嘘と秘密


「ひーちゃんは好きな人、いるの?」

「………いないよ。」

ひかりは心がざわついた気がしたが、笑顔を張り付けたまま嘘をついた。

いや、正確にはひかり自身もそれが嘘だとは思っていなかった。

ひかりは平気な顔をして、ずっと自分の心にも嘘をつき続ける。

ひかりの本心は誰にも分からない。一体、ひかりはいつまで嘘をつき続けるのだろうか————。




 昼休み、大学の食堂は多くの席があるのにもかかわらずほぼ満席状態になっていた。

食堂は今日も様々な生徒の会話が混ざり合い賑わっていた。

その中で、女子学生の三人は窓側の席に座っていた。

「ねぇ、本当だって!すごく、かっこいいんだって!」

そのうちの一人、宮島ミカは少し興奮気味に目を輝かせながら言った。

「へぇー、その彼ってジャニーズ系イケメン?それとも、性格イケメン?」

友達の真崎翔子はうなずきながらミカの話に食いついた。

「うーん、どっちもかな。でも、どっちかというと性格イケメン?」

すると翔子は、疑いの目を向けながら言った。

「本当に?どっちもって、怪しいなぁ……?」

ミカは夢見る乙女のよう目をしていた。

一方、緩月ひかりはミカと翔子の話に耳を傾けながら静かに水を飲んでいた。

そしてゆっくりと口を開いた。

「まぁ、ミカはよくカッコいい人って言うからなぁ……。人よりもストライクゾーンが広いよね。」

それを聞いたミカは口をふくらませながら言い返した。

「もぉ、ひーちゃんはいつもそうやって………。今回のいい人は本当の本当なんだからね?

あたしだって、誰でもかっこいいって言っているわけじゃないんだからね。」

翔子は二人のやり取りを見ながら言った。

「まぁ、ミカが幸せならそれでいいんだけどさ。」

「本当は翔子もあたしのこと信じてないんじゃない!」

ミカはいじけた子供のようにそっぽを向いた。

翔子とひかりは困った顔を見合わせ軽く笑った。


 三人は同じ学科ということもあり、とても仲が良い。

こうしてお昼はほぼ毎日一緒に食べている。

表情豊かなミカ、大人っぽく落ち着いている翔子、いつも冷静なひかり。

休日には遊びに行くこともある。

ひかりにとって、二人は大事な友人であり、一見、性格がバラバラに見えるがなんだかんだで居心地のよいメンバーだと思っている。


 しばらくミカは不機嫌そうにしていたが、違う話題を思いついた様子で、再びキラキラした目をしながら言葉を続けた。

「そうえば、ひーちゃんは恋愛関係の話、聞かないけど、そこのところはどうなの?」

「えっ、うち?うちは…………」

ひかりは、ミカと比べて異性に疎い。

また、今までに特定の異性とお付き合いしたことが無かった。

しかし他の(ほとんどはミカ)の恋愛話を聞くことは多い方である。

今まで自分のことを聞かれることがなかったので、返答に戸惑った。

ミカはそんなひかりの困っている様子に構うこと無く言葉を続けた。

「ひーちゃんも、この大学でかっこいいなぁとか思う男子、一人くらいはいるでしょ?」

ミカは、キラキラした目のまま顔を近づけてきた。ひかりは、近づいてくるミカを手で制しながら言った。

「いないよ。ほら、まず、うちはミカと比べてあんまり交友関係が広いわけじゃないし……。」

「えぇ、またそうやって自信なさそうな顔して……!ひーちゃんは黒髪美人なんだからもっと堂々としていれば男が寄ってくると思うのに。」

ミカは自信満々に言い切った。しかし、ひかりの薄い反応を見てつまらなさそうな顔をした。

そして翔子の方をじろりと見て言った。

「部活で忙しい翔子ですら、いるんだからね?だからひーちゃんも一人くらい、少しくらいはいそうなんだけどなぁ。」

いきなり話を振られた翔子は、驚いた顔をしていた。

「えっ、私、そんなこと言ったっけ?そうやって適当なこと言わないでよ。」

ミカは二人の顔を見比べながらため息をついた。

「もぉ、二人ともダメだなぁ……。青春しないともったいないよ。」

ちょうどその時、ミカの後ろから声をかけられた。

「あのー、話終わった?ちょっと聞きたいことがあるんだけど……。」

振り返ると三人と同じ学科のヒロがノートを片手に立っていた。

ひかりは、あまり話したことのないヒロの登場に戸惑いながらヒロを見た。

ヒロはその視線にすぐ気が付きひかりと目を合わせた。

ひかりは驚き、すぐに視線を外した。ミカはそんな二人の様子には気付かず、言った。

「何でしょうか。……ってか、食堂混んできたからこっちおいでよ。席も空いてるしさ。」

三人が女子トークで盛り上がっている間に食堂は混んできていた。

「おう、ありがとう。空も、こっちに移動しようぜ。」

ヒロは一緒に座っていた空にも声をかけた。

この大学の食堂のテーブルは六人がけで一つは翔子の部活の荷物が置いてあるため

ちょうど満席状態になった。ヒロは席につくと自分のノートをテーブルの上に広げた。


「さっきの授業のノートの、この部分なんだけどさ、先生の説明だけだと分からなかったんだよね。あと、字が小さくて見えなかった。」

すると、空も前のめりになりながら言った。

「ヒロ、俺もそこよく分からなかった。」

ヒロはそんな空の様子を見て、意外そうな顔をした。

「空も分からなかったなんて珍しいな。じゃあ、緩月さん、分かる?」

ひかりは突然、話を振られて驚いた。

まだ、彼らとはミカの友達というだけの繋がりで、話したことすらなかったからだ。

「あれっ、緩月さんで名前あってるよね?」

ヒロは少し不安そうな顔をしてひかりに聞き返した。

「あっ、うん。ちょっと待ってね。ここは、前回のノートとプリントの表からこうして………。」

ひかりは、バッグからノートとプリントを出して、分かりやすく説明した。

「おぉ、さすが緩月さん。穴埋めも全部、埋まってるしすごい。」

ヒロと空はひかりの丁寧な説明を真剣に聞いた。

解説が終わるとヒロはお礼を言って席を立った。

すると、空も続くように席を立った。ひかりは、ホッとしながら胸を撫でおろした。

ふと二人の方を見ると空と目が合った。

すると空がひかりの方に何か投げてきた。ひかりはそれを咄嗟に手でキャッチした。

手の中を見るとイチゴみるくの可愛い包み紙の飴だった。

「あげる。教えてくれてありがとう。」

空は、軽く微笑みながらそれだけ言い残して去っていった。

ひかりはしばらく、そのもらった飴を眺めていた。

しかしすぐにミカと翔子の痛いほどの視線に気が付きハッとした。

二人の顔を見ると、頷きながらニヤニヤしていた。

ひかりは二人が何を言いたいのかなんとなく分かり、急に恥ずかしくなってきた。

「なんか変なこと考えている顔してない?勝手な妄想膨らませないでよ?」

ひかりは頬を赤らめながら飴をバッグにしまった。


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