どうか国外追放してください!
かるーい読み物なのですぐ読めます!私は結構綺麗系悪役令嬢も好きですが可愛い感じの悪役令嬢はもっと好きです。むしろヒロインの見た目な悪役令嬢とか最高です。みなさんはどうでしょうか?
私の名前はアイリス・プラディア
サイラリア王国のプラディア伯爵家の長女だ
私の父であるラース・プラディアは現役の騎士団長であり娘の私とは似ても似つかない身長190センチ超えの黒髪、サファイアブルーの瞳を持つ美丈夫な大男である
その息子、ルイン・プラディアも黒髪にサファイアブルーの瞳を持つ21歳にして180センチ越えの精悍な美青年であり、この国の第一王子の近衛騎士である
対して私は
腰まであるふわふわとしたピンクブロンドの髪
睫毛に縁取られた大きな猫目のピンクの瞳
15歳にして145センチという小柄な身長、華奢だが胸にはちゃんと栄養が行き届いている身体……
全然似ていない
まあ、似ていないのは当たり前である
何故なら私は、父と兄とは血は繋がっていないからだ
私の母は私と同じくかなりの美人で、前王の第二妃でもあった
しかし、小さな頃から美少女だと持て囃され、愛されることが当たり前、自分の思い通りにならないと気が済まない、美男子に媚を売るような見た目とは正反対の悪女で、国王に宝石やドレスをねだり、正妃である王妃様よりも綺麗に着飾り〝傾国の悪女〟だと言われていた
そして、前国王がご逝去され、その弟である現国王が王位についてからは邪魔になった前第二妃である母を臣下であるプラディア伯爵家に下賜された。
プラディア伯爵、つまりお父様はその時、奥様を亡くされたばかりで、幼いお兄様に母親ができるなら……と二つ返事で承諾した
しかし、その時すでに私を宿していた母は後妻として伯爵家に嫁ぐことを嫌がり、私を出産した後に私を置いて出て行ってしまったのだ
普通なら血の繋がりもない、妻にもならなかったような、王に降嫁された女の娘など育てようと思わないだろうが、父と兄は私のことをそれはそれは目に入れても痛くないとばかりに溺愛してくれた
しかし私はもう耐えられなかった
成長するにつれて母に似ていくらしい私
何処に行くにも母の噂が付きまとう
男を手玉にとる女の娘、愛らしいのは見た目だけで中身は悪魔だと、何度言われたことか
何よりも、そんな私をかばってくれる父と兄にこれ以上迷惑をかけたくなかった
そこで、学園に入ってからは少しずつ庶民になっても生きていけるように、いろいろなことを学び、お金を稼ぐために休日は正体を隠して冒険者稼業をしていた
14歳になったら第3王子?と婚約することになるかもしれないってお父様が言っていたけれど、私は家を出るつもりだから婚約なんて冗談じゃない。むしろ国外追放してほしいくらいなのに
♢♦︎♢
そして
今日は第3王子の17歳の誕生祭、私が初めて婚約者に会う日である
本来なら王族であればもっと早くに婚約者がいてもおかしくはなかったが、幼い頃に病弱であった第3皇子は甘やかされて育てられた為、美丈夫だがかなりワガママでなかなか婚約したがらなかったのだそうだ
仮の婚約まではしてあるけれど、私が卒業するまでどうなるか分からないからってことで、(絶対婚約破棄してもらおうと思ってるけどね)お披露目会はしていない。そもそも現国王が現騎士団長である父との結びつきを強めるために用意した政略的な結婚だからあちらから断ってもらわないと、私からは何にも言えないからね
そう思ってたのに、チャンスは意外とすぐにやってきた
「アイリス・プラディア!お前の非道な行いは既に調べがついている!今ここでお前との婚約を破棄し、身分剥奪の上国外追放とする!」
第3王子との婚約パーティーで、かつ初めての顔合わせの場でもある会場に着くと、ホールの真ん中で私抜きで変な茶番が始まっていた
あ、言っておくけどまだパーティーは開始宣言もしていない時間帯だから遅刻してきたわけではないのよ?
で、ホールの中心に人だかりができていたから、お兄様にエスコートしてもらいながらそこに向かう
あら?あれが第3王子かしら?
第3皇子らしき金髪にサファイアブルーの美男子と右腕に巻きついてる黒髪の女性、その後ろには青い髪と赤い髪の美青年が2人、その前には私より少し濃い色のピンクの髪と黒の瞳をした女性が1人
「あ、あの?私はアイリス嬢ではございませんが……え?え?」
あら、人違いで私の断罪してるの?ちょっと!そこの女性がかわいそうじゃない!完全なとばっちりね
「殿下。私がアイリス・プラディアでございますわ。はじめまして。そして婚約破棄で身分剥奪のうえで国外追放ですね!かしこまりましたわ。」
キターーーーーーーー!!!!まっさかこんな早くに婚約破棄出来るなんて!ありがとう第3王子!
ずっと待ちに待った国外追放の日!
隣に立っているお兄様からすごく冷たい冷気が出てるような気がするけれど気のせいよね?
「な、な、な、貴女はあの時の……えっ……?貴女が、アイリス嬢……!?」
?あーなんかみたことがあると思ったら、あの時のボンボン息子だわ。魔の森で魔物の討伐依頼をこなしてたらワイバーンの群れに素人パーティーが襲われてたから助けてあげたんだよね。せっかく助けてあげたのに名乗れとか不敬だとかなんとかボンボンの周りがうるさかったわ〜。
助けてあげたのに私のこと捕らえようとしてきたから全力で逃げたけどね!
「それでは……失礼いたします。」
「あ、待ってくれ!俺は貴女だとは思わなくて、俺が本当に好きなのはアイリス嬢なんだ!」
「えええっ!?キース様!?何を言ってるの?あのアイリス嬢よ?あんなの見た目だけよ!ほんとはすごい悪女で、性悪で、悪魔だって言ったじゃない!私と婚約してくれるんでしょう?ねぇ!」
「アンナ、少し黙っていてくれ。あと、婚約破棄するとは言ったが君と婚約するとは一言も言ってないぞ。俺はあの人を探し出して婚約するつもりだったんだ、それがまさか、こんな近くにいたなんて、」
「うそ!嘘よ!そんなの嘘!!だって、あの子はぶりっ子悪役令嬢で、悲劇のヒロインぶってるだけで、影では人の悪口言いまくって、男に媚びまくってるような女なのよ?!それに、ルイン様もなんであんな女のエスコートしてるの!?険悪な仲なはずでしょ!?シナリオと全然違う……あ、あんた、転生者なんでしょ!?そうなんでしょ!?なんで悪役が出しゃばってくるのよ!!!!?あんたが悪役なのに私をいじめないから……ぁぁぁぁああああ!!!」
「え?てんせいしゃってなんですか?ちょっとよく分かりませんけど。あと、私はそういう悪口は言われ慣れてますから怒ってませんよ。あ、国外追放の件ですけどちょっと出て行く準備もあるので、近日中には出て行きますのでご了承くださいね」
さっきからルインお兄様の殺気がヤバイ。早くこの場を離れないと、
「おまえ……!!」
「ルイン兄様!帰りましょ!ね!?おねがい!」
上目遣い(身長差があるから不可抗力)でルイン兄様の両手を掴んで瞳を合わせてお願いする
ルイン兄様は昔から私のお願いに弱いのだ
「あぁ、そうだな。こんなところすぐ立ち去るべきだった。さ、行こう。」
「あ!待ってくれ!」
「申し訳ありませんが、アイリスは心無い誹謗中傷で心を痛め、疲れ切っておりますので失礼します」
後ろから「待ってくれ」とか「婚約破棄は取り消す」とかなんとか言ってたけど、何にも聞こえません。ええ。このまま知らないふりして出て行くからね〜!
「あのクソガキ……!アイリスを貶めるとは言語道断。噂に惑わされるような奴には絶対に渡さん。もうずっとどこにも嫁がずに家にいていいんだからな?アイリスはずっと俺と一緒にいれば良いからな。安心しろ。何があっても守ってやるからな。」
「……ルイン兄様……でも、私、きっと大罪を犯してしまったんですわ。知らないうちに……ですからこれ以上家に迷惑はかけられません。幸いここを出ても生きていけるすべはありますから、隣国へ行こうと思っております。」
「何を言ってるんだ!絶対にダメだ!こんな可愛いアイリスが、どうやって悪漢につかまらずに生きていけると言うんだ!絶対にダメだ!」
身長180センチ越えの細マッチョイケメンのルイン兄様は年の離れた妹である私のことをかなり溺愛している。エスコートの時以外は私を歩かせてくれないし、すぐに私を横抱きにして抱え上げるし、休日は家でずーっと膝に座らされることもザラだ。私は15歳!!もう子供じゃなーい!
「さ、おいで、疲れたろう?家に帰ろう」
………もう、これが最後かもしれないもんね、ルイン兄様に抱っこしてもらえるのは。
お兄様に軽々と抱えられて、首にキュッと掴まる
うん。やっぱりお兄様の抱っこは安心するなぁ。
結局家に帰ってから荷支度をしようとしたけれどお父様とお兄様に全力で止められて、監禁も辞さない勢いで家から出してくれなくなったので暫くはおとなしくするふりをしておこうと思う。……絶対出て行くんだからね!!!
評価してくれると嬉しいです!設定は気に入ってるので続きも書きたいと思ってます