アラクネ姉さんと運搬
さてノアちゃん達と合流すべく、椿ちゃん達とはここでお別れです。
彼女たちはこのまま猿狩りを続行するとの事。どうやらアイリちゃんが、やや不完全燃焼気味なようです。
二人を見送った後、ノアちゃん達にメッセージを送ります。
フレンドチャットにテキスト入力して送信。
それから五分ぐらい経ってから返事が返ってきました。
『わりぃ戦闘中だった』
『ごめんなさい! お待たせしました』
とレイナちゃんとノアちゃんのサムネイル画像の横に、漫画のふき出しのような感じでテキストが表示されます。
『いえいえ、お二人はどの辺にいるんですか?』と返信。
ノアちゃんから『この辺りです』というテキストと一緒に、ピン止めされたマップ画像が送られてくる。
その画像から見るに、私のいる場所から北西の森林地帯のようですね。
『わかるか? 迎えにいこうか?』
『大丈夫ですよ。そこまで離れた場所ではないようなので』
『そっか。んじゃ気を付けて来いよ』
『了解。ではまた後程』
レイナちゃんの気遣いに感謝しつつ、会話を終了。
そして、すぐに行動開始。
それから、十五分後ほど木と木の間を飛ぶようにして移動すると、ノアちゃんとレイナちゃんの姿を発見。二人がいる近くの木に移動し、声を掛ける。
「お待たせしました」
「「っ!?」」
するとびくりと体を跳ねさせ、こちらに体を向けてバックステップする二人。
着地する頃には二人ともばっちり臨戦態勢。そして二人と目が合う。
「お前なぁ……脅かすなよ!?」
「びっくりしました……」
レイナちゃんは頭を掻きながら剣を収め、ノアちゃんは胸に手を当て、ふぅと息を吐いてから大剣の柄から手を放す。
「フィールドに出てる時は気が立ってんだから。気を使え! 気を!」
「れな! シグさん始めたばっかりなんだし、ね?」
二人とも私に気付いてると思ったのですが、そうじゃなかったみたいです。
これは失礼。ごめんなさい。
さて、何をすればいいのか二人に聞いたところ、作業はほとんど終わってるとの事。
あとは集めた素材を近くに停めている荷馬車に積んで運搬するだけ、だそうです。
「ん? アイテムはイベントリーに収納されるので、荷馬車に積む必要性がないように思うのですが?」
「普通のアイテムならそうですが、ハウジング素材はイベントリーに収納出来ないんです。他にもイベントリーに収納できないアイテムもありますけどね。なので、収納出来ないアイテムは直接持って運搬するか、荷馬車とか使うんですよ」
で、他に収納出来ないアイテムってのは解体してないMOBだそうです。
そもそも、MOBは【解体スキル】を使用しないとアイテムを手に入れる事ができないらしく、バリボリ捕食していた私はその辺を勘違いしてたようです。
バリボリすれば、そのままイベントリーにアイテムが収納されてましたからね。
本来なら倒したMOBを解体しないと、倒したMOBからアイテムを入手できない。その際、【解体スキル】のレベルによって入手できるアイテムの質や数が変動する。
狩猟系のゲーム要素に似てますね。
これらを踏まえて運搬にどう繋がるか、といいますと。
イベントリーに収納できる大きさってのがあるらしく、それに合わせないとイベントリーに収納出来ない。でも収納できる大きさに解体すると、目的のアイテム、素材にならない。
あるいは【解体スキル】のレベルが低くて目的のアイテム、素材が入手できない。そう言った際は、街まで運搬して解体できるプレイヤーを探すか、NPCに頼む。中には街で解体しないと入手できないアイテムがある。
だから運搬する。
――との事。
なるほど勉強になります。ありがとうノアちゃん!
「……知らなかったのかよ」
「知りませんよ。食べてたら勝手にイベントリーに収納されてたんですから」
「お前、ゲーム始める前に下調べしたって言ってなかった?」
「ええ。言いましたね。でも調べたのは戦闘に関してが主で、あとは流し読み程度です」
レイナちゃんの苦笑いを流しつつ、運搬作業のお手伝い開始です。
はい、積み込み終了。
ノアちゃんが角材に加工していたので思いのほかサクッと終わりましたね。
積み込み作業中にレイナちゃんが変な顔して私を見ていたのが気になりますが……まぁいいでしょう。
それよりも、です。
荷馬車が気になります。
具体的に言えば、その荷馬車に繋がられてる馬? が気になります。
なんですかこれ?
「ポニーです!」
……元気よく答えてくれてありがとうございます。ノアちゃん。
可愛いですねぇ。頭をなでなでしましょう。
えへへとはにかむノアちゃんで一旦リセットです。
それから再度、ポニー? を見ます。
……いか、いや大きいですねぇ。
なんかオーラみたいなのが出ててかっこいいですね。
ですが、私の知ってるポニーとは少々……いや随分と違いますね。
あ、目が合いました。ブルルと唸ってます。
その際、鼻からぶしゅーと蒸気らしきものが噴射されます。
…………。
レイナちゃんの腕を掴んでこちらに寄せます。
「……んだよ?」
「なんですかこれ?」
「……ポニーだ」
「……聞き方が悪かったですね。再度聞きます」
「……」
「これは馬ですか?」
「………………ポニーだ」
「レイナちゃん。私の目を見て答えてください。あれはなんですか?」
と言って指を指します。
指した先でノアちゃんがポニー? とじゃれてます。
ん? 頭を撫でようとしてますが、不可能でしょう。
あ、ポニー? が膝を折って……頭いいですね。それなら撫でれます。
ぶしゅーとまた蒸気が噴射されましたね。
え? 鼻息だろ? 何言ってるんですか?
あんな蒸気機関の圧抜きみたいなのが鼻息なわけないでしょ。
それより、私の目をちゃんと見て答えてください。
今、あそこで、ノアちゃんに、頭を垂れてる生物はなんですか?
仕方なさそうに私の目を見つめるレイナちゃん。
そして、たっぷり時間を掛けゆっくりと艶っぽい唇が動きます。
「……………………ポニーだ」
かなり遅いですが、あけましておめでとうございます。
変則的といいますか、思い出したかのようにする更新。
本当に申し訳ない。
最後になりましたが評価、ブクマ、感想、あとレビュー(これは現在一つだけですが)
ありがとうございます。