アラクネ姉さんと七日目
ゲーム開始から七日目の朝。
本日の予定はこの街でやんちゃしてるPKギルドの情報収集。
まぁ椿ちゃんが集めた情報を聞くだけなんですがね。
因みに昨日森で助けたレイズちゃんは、ノアちゃんの提案で私同様、彼女の家に住むことに。
そして、夜に開催された歓迎会と言う着せ替えショーは大いに盛り上がりました。
とくに恥じらいMAXのレイナちゃんは最高で、ナイスバディのレイズちゃんはどちゃしこでした。
衣装はもちろんノアちゃんお手製。
嬉々として私を含めた三人を着せ替え人形の様にしてたノアちゃんは非常に、楽しそうでした。
それからレイズちゃんも住むことになったので、増設も当初より広くする事になり、本日彼女はそのお手伝いに、レイナちゃんもそれに同行。
私は椿ちゃんとの用事を済ませた後に合流しようと思ってます。
ついでに椿ちゃんも巻き込んでやろうと考え中。
どうせ暇でしょうから、彼女。
さて、「お昼にどうぞ」とノアちゃんから渡されたお弁当を持って、待ち合わせ場所に向かいます。
場所は南門を抜けた先にある大きな一本木。
南側は見通しの良い平原地帯だそうで、この一本木は大変目立つらしいです。
街の外なのでMOBがウロウロしてるそうですが、この一本木の近くは安全地帯でMOBが近寄ってこないとか。
何故、そこを待ち合わせ場所にしたかというと、いわいる『壁に耳あり障子に目あり』ってやつです。
見通しもいいですし、盗み聞きしようにも隠れる場所もありませんから。
そこまでしなくとも、プライベートメッセージで済ませればいいんじゃない? と思うのですが、椿ちゃんが『デートしよう!』とうるさいので、こう言った経緯になった次第です。
南門を抜け、チラホラいるMOB狩りに精を出すプレイヤーたちを横目で眺めながら、目的の場所に到着。
幸い、付近には私以外のプレイヤーはいないようです。
ですが、用心の為に『蜘蛛の巣』を発動。
それから、新しく覚えたスキルも発動させます。
私の肩――厳密には髪できた影から手の平サイズの蜘蛛が這い出てきます。
肩から伸ばした腕を伝って掌の上に来ると、器用に前脚をピンと上げます。
私の影からぞろぞろ這い出て、右手と左手に四匹ずつ、計八匹の蜘蛛がひしめき合います。
この子蜘蛛ちゃん達は、PKやらMOBやらを倒して(食べて)得たマーズアニマで強化した事により、新しく覚えたスキル『子蜘蛛召喚』によって召喚された存在です。
見た目は私の下半身――蜘蛛部分――と同じ姿をしてます。もちろん色もお揃い。可愛いです。
そして、この子蜘蛛ちゃん、超便利。
このスキルを覚えた時に獲得したアビリティで、子蜘蛛が見てる視界がパネルモニターで表示され、個別に音を拾う事ができます。ちょっとした偵察、斥候が可能。数は最大で八匹同時召喚できます。
大きさは数によって変化します。
二匹召喚だと、私の蜘蛛部分のだいたい三分の一。
四匹だと、その半分ぐらい。で、八匹だと手の平サイズ。
因みに一匹だと一回り小さくしたサイズです。
デメリットは召喚するとMPが空っぽになる事でしょうか。
まぁ今のところ主だってMP消費されるスキルは糸ぐらいなので現状はそこまでデメリットではなかったりします。覚えたてのスキルなので、これからに期待大のスキルですねぇ。
それでも、子蜘蛛ちゃんのおかげで待ちの戦術が容易になったのは大きな収穫です。
さてさて、私の体に群がる子蜘蛛ちゃんを展開した『蜘蛛の巣』にぐるっと一周囲む形に配置。
配置の仕方は『蜘蛛の巣』と連動しているパネルモニターに番号が表示されるので、配置したい場所へ指先でちょんとマーカーを付けるだけ。子蜘蛛ちゃんはある程度は自立行動ができるので、簡単な指示には対応してくれます。
ポチポチとマーカーをつけ、指示を出し終えると子蜘蛛ちゃん達は各自の持ち場に向かって駆け出していきます。
さぁ、あとはモニター見つつ椿ちゃんが来るのを待つだけです。
周囲を警戒するのがホント楽になりましたねぇ。
それから、そう時間も経たずに『蜘蛛の巣』に反応が。
黄色いマーカーが二つ、こちらに向かってきます。
配置していた子蜘蛛ちゃんが二匹その後ろに位置取り追跡を開始。ちゃんと出した指示通り動いてくれてるようです。
追跡している子蜘蛛ちゃんと繋がってるパネルモニターに、下半身が大きな薔薇のような黒い花の黒髪ツインテール少女の姿が映ります。胡散臭い糸目の笑顔で隣にいるラミアの少女と楽し気に話してるみたいです。
この胡散臭い糸目が特徴なのは椿ちゃんで間違いないようです。
今日はネグリジェみたいなドレスではなく、花弁を重ねたようなチューブトップ姿で……意外とお腹周りが引き締まってエロいですね。
そして、隣の若草色の癖ッ毛を後ろに結い下げてニコニコ可愛らしい笑顔を振りまいてるラミアがアイリちゃんのようです。本日も素晴らしいクビレを惜し気もなく晒したアラビアンな踊り子然とした姿は相変わらず、どちゃしこです!
二人のクビレに見蕩れている内にアイリちゃんの声が聞こえてきました。
声がした方に振り向けばアイリちゃんが飛び込んできて、ぎゅっと抱きしめられます。
「シグさん!」
「こんにちは。アイリちゃん。随分とご機嫌ですねぇ」
と、返事をしながら私もアイリちゃんギュッと抱きしめ返します。
ついでに頭をなでなで。柔らかい髪質が癖になりそう。
「えへへ……わかります? 実はですね! 昨日椿ちゃんとリベンジしてきたんですよー」
「……リベンジですか?」
一旦アイリちゃんから目線を外すとちょうど椿ちゃんと目が合います。
「やぁやぁシグちゃん。ごきげんよう。……で、アイリちゃんが言ってるリベンジってのはね。ほら、彼女をイジメてたやんちゃボーイズがいたでしょ? あれが所属してるギルドのメンバーを昨日サクサクっとやっちゃた訳さ」
「ああ――なるほど。それでご機嫌なんですね?」
アイリちゃんに目線を戻してそう聞けば、彼女は鼻息を荒くして私から離れます。
「そうなんです! ぶっ飛ばせたので気分爽快です!」
「ぶっ飛ばすってか。斬り刻んでた、だけどねぇ。スルスルゥって敵の間合いに入り込んで喉をサクッと切ったかと思えば、巻き付いて締め上げたところに、グサッと頭を刺したりしてさぁ。可愛い顔してヤルことがエグいんだからぁこの子は」
と、言いながらアイリちゃんの頭をポンポンと軽く叩く椿ちゃん。
叩かれたアイリちゃんは頬を膨らませながら椿ちゃんに反論。
「そうやれって教わったんだからしょうがないんですぅー! それに椿ちゃんだって人の事言えないと思う! 下からグサッ! て串刺しにしたりしてたじゃん!」
昨日の戦い方で言い合ってじゃれ合いだす二人。
美少女のじゃれ合いってのも眼福ですねぇ。
二人の話から察するに昨日は派手に遊んだようです。
椿ちゃんの表示されてる名前もオレンジから白に変わってますし。どれだけ倒せば白になるかは、知りませんがね。
それでもアイリちゃんがスッキリする程度には狩ったのでしょう。
とりあえず、二人のじゃれ合いが治まるまで待つことにします。