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アラクネ姉さん  作者: ますくばろん
森の中のアラクネ姉さん
32/37

森で出会った○○○○

 

 飛んだり跳ねたりして向かった甲斐あってか目的地にパパッと到着です。


 巨木の森と呼ばれてるだけあってこの森の木々は凄く大きいです。飛んだり跳ねたりするのが非常に楽しかったです。

 中にはちょっとしたビルぐらい大きさの木もあったりして、某蜘蛛な記者な気持ちを味わう事が出来ましたね。


 レイナちゃんもノアちゃんもキャーキャー騒いで楽しんでいたようなので良かったです。

 今は静かですが。


「さて、目標を目視で確認できる場所まで来ましたよ」と声を掛ければ右から「……うん」と。左から「――はい」と生気の抜けたお返事が返ってきました。


「ゴブリンとオークがいるみたいですねぇ。数は……六。いえ、八ですか」


 私達がいる場所は背の高い木の枝ですので、見下ろす形で状況を確認できます。

 どういった状況かと言えばプレイヤーと思しき人物の周囲を囲うように前面にオークが二匹、ゴブリンが四匹。


 これまた、絵にかいたような劣勢で後ろに束ねた紅い髪を振り乱して応戦して、どうにか耐えてるようです。


 で、件のプレイヤーと思しき人物は髪型と声から察するに女性でしょうか。

 幾分、女性にしてはハスキーに感じますが。

 顔は上からなのでハッキリとは見えないのが残念です。


 それにしても、動きが悪い様な……ぎこちないような。

 まぁこれは私同様下半身が特殊なようですから、そう感じるんでしょうか?


 私と脚の数は同じようですが、脚とは別に二本の大きなハサミがあり、それを大きく広げてる様はいつか見たディスカバリーチャンネルで紹介されてた黒い蠍のようです。


 彼女の下半身の蠍は赤黒くて頑丈そうで、こう肉厚な装甲に覆われてるって感じがします。

 そして、蠍といえばあの特徴的な尻尾ですが、これは些か見た目が違いますね。


 蠍の尻尾と言えば数珠つなぎのように見えるのが一般的だと思いますが、彼女の尻尾は装甲が折り重なったような蛇腹状の尻尾です。

 私の【テイルソー】に似てますねぇ。全体的に太く大きくしたらあんな感じになるのでは?

 蠍なだけあって、蜘蛛な私と共通点が多くみられます。


 上半身の方は重厚な鎧姿って感じで動き易さを意識してる風に見えます。

 胸元が開いてる、というか空いてるので谷間がばっちり見えちゃってますね。

 肌がやや露出して、所々顔をのぞかせる肌色が非常にエロいです。


 しかしながら椿ちゃんといい、アイリちゃんといい。今まで出会った半身異形種のセクシーな要素が多いのは……気のせいですかね? 勿論私も含めて、です。



「で、あのSF系のゲームに出てきそうな赤黒い重装甲のエロカッコイイ兵器はなんですか?」

「あんたも似たようなもんだろ。あれは――セルケトだっけか?」


 生気が戻ってきたレイナちゃんがそう答えると、ノアちゃんがその後を引き継ぎます。


「確か、アラクネ実装前に追加された半身異形種で、高い耐久力と尻尾を使った攻撃が特徴ですね。ですので前衛としての性能も高かったはずです」

「なるほど。それであれだけ囲まれても耐えれてるんですね」

「盾職ってやつだな。でも見る限り、死なないけど殺せないって感じか?」

「それでもあの数を一人で相手にするのは、かなりきついと思います」

「ジリ貧ってやつですか……で、どうします?」


 返ってくる言葉は察しがつきますが、二人にもう一度どうするのか聞いてみます。

「ノアに任せる」とレイナちゃんは当初のまま答え。


 そして、ノアちゃんは、


「困ってるように見ますけど……。もしかしたらMOBを多めに釣ってレベリングしてるのかなって。もしそうだったらここで私たちが手を出しちゃうと横取りになっちゃいますし」


 と意外な答えが返ってきます。

 損得なしに困ってる人がいれば手を差し伸べるのかなと思っていましたが、そうじゃないようです。


 ノアちゃんが気にしてる点は、彼女が本当に困った状況なのか、のようですね。

 彼女、セルケトの女性を一見すれば敵に囲まれ危うい状況に見えます。


 本来ならすぐに加勢したほうがいいのでしょうが、ノアちゃんが言ったように苦戦してるだけで助力は『余計なお世話』になるかもしれない。


 彼女はその辺を気にしてるんでしょうかね。


 私としては敵に囲まれようが何しようが、本当に死ぬわけでも大怪我するわけでもないのですし、万が一敵に殺されても、スタート地点に戻るだけですから。

 こちらとしての利点が特にない様でしたら無視するのが安全策と思いますね。


 それに今回は二人の時とは違って相手がMOBです。

 相手がエネミーであれば、強化素材にお金。これらがMOBより多く手に手に入ります。

 あとは貢献度ってモノも貰えます。これはMOBでは得られないモノです。

 ですので、私としても利が大きいですから、介入するという選択肢も生まれます。


 彼女を囲ってるMOBが討伐クエストなどの対象でしたら話は変わってきますが、今回はそういったクエストは受けていません。


 それにMOBというのは、こちらを視認すれば問答無用で襲ってきます。

 こちらに対しては見敵必殺、サーチアンドデストロイな存在なのです。


 なので、MOBに見つからないよう行動すれば、あのような状況に陥ってしまう事を未然に防ぐ事ができると思います。


 現に私がそうであったように。


 なので現在の彼女、セルケトの女性の状況は自業自得あるいは自己責任では、と思えるんです。


 自ら選択あるいは招いた結果ああなってるのでしょうから、私達が無理をして、どうこうしなければならない理由がない。

 利点があれば別ですが、感情的な理由は除外すれば、現段階で()()()()()()私が助ける利点を見つけることができません。


 ですが彼女ではなく、ノアちゃんとレイナちゃんが助けるという行動を取るとなれば、ここに利点が生まれます。

 これでしたら私が行動を起こす理由になるわけですからね。

 二人の為に行動するという理由が。


 だから私はあの時ノアちゃんに「あなた次第」と言ったのです。


 でも私はノアちゃんが『助けない』という選択をしても彼女を助ける気満々でした。

 勿論一人で、です。その時はあの場かこの場に二人を置き去りにすれば安全でしょうから。


 何と言いますか、半身異形種に対して変な情が湧きつつあるんですよねぇ。

 自分が半身異形種だからでしょうか。自覚したのは椿ちゃんとの出会い、ですかね。


 敵に囲まれ四苦八苦してるセルケトの彼女を見てると、背の低い姉が高いところにある物を取ろうと一生懸命、背を伸ばしてる姿を見た時に似た感情が湧き上がるんです。


 ――凄くもどかしいんです。『余計なお世話』をしたくてしょうがないんですよね、今。


 これが私の感情的な理論の答えだったりします。


 まぁ感情がある時点で理論ではなく感情論なんでしょうが、ね。

 それにしても厄介なモノが根付いてしまったものです。


 因みにですが、余計なお世話をした時の姉の反応は、顔を背けつつも「ありがとっ」と短めにお礼を言ってきます。控えめに言って、凄く可愛いです。





「では、ノアちゃんは彼女が助けを必要としているのかどうか知りたいのですね」

「はい。余計なお世話はしたくないですから」


 いやはや、いいですねぇ。

 当初は可愛いだけの愛玩少女かなと思ってましたが、あの酒場での彼女そして、今の彼女を見る限りでは、そうじゃないと確信を得ることができました。


 だって今、戦ってる時の顔と同じ顔してます。こう感情を押し殺してるような、と言えばいいんですかね? 

 なので、『余計なお世話はしたくない』と言いつつも、したくてしょうがないように見えてしまいます。


 これは私の主観ですから、真意はわかりませんが。

 何かしらの自分ルールがあるんでしょうかね?


 でもこれは私の()()()()()()()()()()とは違うのでしょうね。


 私の場合は――したくてしょうがないから、()()()()()()()()()『する』と決めている。

 ノアちゃんは――したくてしょうがないけど()()()()()()()()()()()()()()()()()『できない』と決めている……ですかねぇ。


「なら取る行動を一つですね」と言いつつ脇に抱えた二人を降ろして、件のセルケトの女性に向けて声を張り上げます。


「あぁのぉーー!! 今困ってますかぁー!?」


 それが聞こえたのか、セルケトの女性は周囲をキョロキョロと見回した後、


「誰だか知んねぇーけど!! すんげぇ困ってる!! 死に戻るのはめんどくせぇんだ!! 手が貸せるんなら貸してくれ!!」


 と少々荒っぽい口調ですが、元気のいい返事が返ってきます。


「だそうです」

「すげえなシグって」とレイナちゃんがあきれ顔でそう言うと、ノアちゃんもそれに続いて「……ホント凄いです」と言ってきます。


「これは私個人の考えですが、ノアちゃん。わからないのであれば聞けばいいだけの話ですよ? 互い共通言語で会話できるんですから、とても簡単な解決方法だと思いますがね?。さっ! これで心置きなく武力介入できますねぇ」

「なんつーか、それができるからすげぇよ。シグって」

「そうだね……ほんと羨ましい」


 二人はそんな事を言いながら戦闘準備を整えています。どう動くか決まったようですね。


「そうですか? 凄く自分に都合のいいルールで行動してる考えなしなだけな気がしますが……あとノアちゃん。貴女は私とは違う凄さってのを持ってると思うんですがねぇ。」

「え?」

「まぁ、私との出来事を振り返ってみればわかると思いますがぁ……どうでしょ。まぁわからないなら」


 と言いつつノアちゃんの頬に触れて一拍おいた後に微笑みながら続けます。

 

「――後で一緒に探しましょう」


 彼女の凄さはこの私を感情のみ、理由なしで動かそうとする何かを持っている事です。

 きっと彼女も早妃ちゃんとは違うでしょうが、私を狂わす何かを持ってるんでしょうかね。


「……シグさん」と私の手を包むように触れるノアちゃん。

 俯いてしまって表情が見れないのが残念です。


「いい雰囲気とこ悪いんだけど。それって死亡フラグじゃね?」とレイナちゃんから呆れ声でそう言われます。なので、


「なら、死んだ後にお話しましょう。どうせ本当に死ぬわけではないんですから」と返します。


「そうだよ。れな……それに。シグさんは死なないよ?」

「ノア? 流石の私でもそれに続くセリフは想像できるぞ?」

「もう! せっかく言えると思ったのに! そんな事言われたら言えないじゃん!」


 と頬膨らませてノアちゃんにいつもの雰囲気が戻りレイナちゃんにじゃれつきます。


 そして、下の方から「まだかぁっ!? いろいろキッツいんだけど!?」という叫び声が聞こえてたので「そろそろいきまーす!!」と返して、二人に「という事ですので、サクッと行きましょう」と話しかながら状況を再確認します。


 声の主である彼女を見れば、私の声がした方向を正面にするように移動していました。

 偶然かそれとも彼女の判断かは知りませんが、これでしたら私たちは今いるこの枝から飛び降りるだけで敵の背後を取れます。


 ささ、どうするか決まったところで再びノアちゃんとレイナちゃんを脇に抱えて。


「おい! 何する気だ! まさ――」とレイナちゃんがまた騒ぎ出しますが、それを無視して私は枝から飛び降ります。








私事で本当に申し訳ないです。

腱鞘炎が悪化し、指を動かせない時期があったモノで。


短い文でもかなり時間がかかる状態でした。

それでも書き続けていたら、指が痺れて動かなくなった時はかなり焦りました。


中途半端なところで止まってるので、なんとか仕様とした結果盛大にやらかした感じです。


次回まで暫しお時間頂けたらと……。

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