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アラクネ姉さん  作者: ますくばろん
森の中のアラクネ姉さん
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夜中のアラクネ姉さん 5

 

 さてさて、熱源の正体は小部屋の入り口前で身振り手振り何かしてる男性二人のようです。


 ここまで来ても音を拾えないという事は椿ちゃんの予想通り、何らかの魔法かスキルで音が漏れないようにしてるんでしょう。


 ふむ。どうしましょうか。こちらには気付いてないみたいですし……。

 そもそも何してるんでしょうか? 先程から部屋の方を指さしながら笑ってる? ようですが。


 あと私から見て左側の男性がなにか撃ち出してるようですね。

 彼が手を伸ばすとその手から火球が飛び出してます。


 ……狙うなら彼ですかね。

 椿ちゃんは通路を覆っているのは多分魔法だろうと言ってましたしね。

 私も一応スキルの可能性を感じてはいますが、本命は魔法だろうと考えてます。

 根拠としては彼女の魔力視で見る事が出来た、です。


 ま、どちらにしろ彼らは部屋に何かしてて、それに夢中のようで隙だらけですので処理は容易ですね。


 あ、彼らエネミーなんですかね? この距離だと名前を見る事が出来ないのでレッドネームなの確認できません。


 うーん。処理するならこのまま彼らの頭上に落下したほうが手っ取り早いのですが……。

 仕方ありませんね。確認する為にも昼間編み出したクレーンゲームのアーム戦法で処理しますかね。


 そうと決まれば即行動開始です。


 指先から糸を出して、それを天井に張り付けその場で跳ねればあっという間に宙吊りに。

 このままだと蜘蛛のお尻がだらんとなるのでお尻から伸ばした糸と指先から伸ばした糸につなげて引っ張り、お尻もとい蜘蛛の部分を水平にします。


 このままゆっくり降下していけば、彼らの真後ろに降りる事ができるはずです。

 出来なくてもすぐに行動できるように着地できますので、エネミーだった場合、即処理しますがね。


 そんな風に考えながら降下開始。

 スーッと音もなく下に向かい、彼らの名前が表示されたので一旦そこで停止。


 うん、紛れもなく真っ赤っかなお名前ですねぇ。

 処理確定です。


 確認が終わればまた音もなく降下します。

 今度はゆっくりではなく一気に降下します。


 急降下してる途中狙いを付けてた左側の男性が上を向きましたが、その時にはもう私の蜘蛛のお口が目前にある状態でした。


 なので即噛みつきで上顎を彼の頭部に突き立てます。

 ごりっと音がしたのでうまく噛みつけたようです。

 だらんと腕も垂れ下がってるようなので即死のようです。


 なのでそのまま捕食。バリ、ボリ、にゴリッも追加されてモグモグします。


 チラッとも一人の方を見れば目が合いましたので、


「いい夜ですね? エネミーさん」と声を掛けたら……


「ひぃひ、ひいいいいぎぁああああ!!!」と大絶叫。


 あまりの大音量についサクッと彼の顔面にパタを突き刺してしまいました。


 刺したものはしょうがないのでぐりっと回して刃を上に向け、そのまま振り上げます。

 思いのほか、抵抗もそんなに感じることなく、サクッと斬る事ができました。

 これも即死ですね。

 綺麗にパカッと割れた頭部がら血がどくどく溢れ、そのまま彼は地面に崩れ落ちていきました。



 しかしながら、即死判定があるのはいいですねぇ。

 レベル差という圧倒的な優位性をあっという間に崩す事が出来るんですから。


 まぁ彼らと私ではどれだけ差があるかわかりませんが……きっと彼らの方がレベルは上でしょうから。



「なんかすんごい声響いたけどなにしたん?」と椿ちゃんの声がしました。


 そちらを見れば頭に花を咲かせた元スケルトンさんを連れて彼女がこちらに来ていました。


「エネミーでしたので、美味しく頂いたところですよ。一人に声を掛けたら絶叫されましてね」

「ふーん……うわぁ。こっちは綺麗にドタマが割れてんね? なにしたん?」

「え? パタをこうサクッと刺してからぐりっと捻って上に振り抜いただけですよ?」

「うっわぁーエグイ事してんね? シグちゃん過剰演出は切ってないんでしょ?」

「ええまぁ。なので捻った時にぽろっと目だ――」

「それ以上はいけないよ」


 聞かれたので説明したらそんな感じで遮られてしまいました。

 聞いておいて酷いです。


「うん、そのね? ほんと女の子としてどうかと思うよ?」


「椿ちゃんも似たようなモノでしょう」と言い返すと何とも言えない表情になり、


「そうだけどね? アタイはもうちょい乙女ってのを気にかけてるよ?」


 そんな事言うのでじーっと彼女を見つめます。


 フム。確かに服装といい髪型といい女の子してますねぇ。

 表情はあれですが、ツインテールとか似合ってますし。


「シグちゃん? 今少し失礼な事思わなかったかい?」

「流石ですね。ですが失礼ではないですね。表情はアレですが髪型が良く似合ってると褒めていたところです」

「いやいやいや。出だしでディスってんじゃん!?」

「ん?」と小首を傾げると彼女はげんなりした表情になりました。


「もういいさね。……ところで、そのお嬢ちゃんはなんぞ?」と部屋の方に指を指すしそんな事を言い出しました。


 お嬢さん? と怪訝に思いながら彼女の指す方へ視線を移すと、


「――これは、なんですかね?」

「シグちゃん? どう見たってラミアのお嬢ちゃんだと思うんだけどなぁ?」


 そうなんでしょうが私はこのゲームのラミアを見たことないのでね。明言は避けたんです。

 椿ちゃんのいう通り、部屋の中には半人半蛇で有名なラミアちゃんが、ガタガタ震えながらこちらを見ていました。

 踊り子っぽい服装で肌の露出度が高いです。

 きゅっと引き締まったいいクビレしてます。


 ついお腹に目が行きましたが……お胸もいい感じの大きさですねぇ。とバランスの取れた肢体を観察していると、あちこちに痣っぽいのが浮かんでいるのが見て取れました。HPバーの色が黄色です。


 大方ここにいたエネミーに何かされたのでしょうね。

 ああ、最初に処理した彼が部屋に向かって火球を放っていましたが、狙いは彼女だったのですね。

 よくもまぁ、酷い事考えつきますね。ああいう部類の人間は。

 なんて思いつつ彼女の顔もよく見れば、凄く怯え切ってます。




 ラミアちゃんは若葉色の癖ッ毛を頭の後ろで結い上げてる少女風な顔立ちで。

 瞳は金色でクリっとして大きいですが、瞳孔が縦に割れてます。

 まさに爬虫類の目を彷彿とさせますが、可愛らしい顔立ちなのでさほど気になりません。

 系統としてはノアちゃんみたいな感じですね。

 人懐っこい雰囲気を感じますが……。

 今は完全に怯え切ってまして、見てるこちらがなにもしてないのに良心が痛む思いです。


「いや、確実にお嬢ちゃんはシグちゃんに怯えてるよ?」

「うるさいですよ。私ではなくきっと椿ちゃんの胡散臭い笑顔に危機感を覚えてるんです」

「おい、蜘蛛女やんのか?」

「なんですか? 雑草? やりますか?」

「ちょ! 雑草は酷くない!!? あんまりすぎて素に戻っちゃったじゃん!!」


 とふざけつつ、場を和らげたつもりでしたが、椿ちゃん目を開いての猛抗議を受ける羽目になりました。


 そんなやり取りをしてると、


「あ、あの! お二人はエネミーじゃないですよね!?」とやや上擦った声が聞こえてきました。


 勿論発生源はラミアちゃんです。


「ええ。善良なプレイヤーですよ」と微笑みかけると何故がびくっとされました。


「ぷぷっ!」と椿ちゃんの方かそんな声が聞こえたのでとりあえず睨んどきます。


「コホン。とりあえず気を取り直して。私はシグっていいます。見ての通りアラクネですね」

「ハロハロ、お嬢ちゃん。アタイは椿ちゃんだよん? 可憐なお花のアルラウネさね」


 そんな風に各々自己紹介するとほっとした表情になってその場に座り込んでしまうラミアちゃん。


「よかったぁぁ。やっと出れますよぉ。……ううっごわがだでずぅぅぅ」


 そして、顔を上に向け子供みたいにワンワン泣き始めたのでした。




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