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アラクネ姉さん  作者: ますくばろん
森の中のアラクネ姉さん
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夜中のアラクネ姉さん 4

 

 カタカタという音共に登場したのは動く人骨さん達でした。


「ノービスに優しいスケルトン先輩でぇす。基本このモルグで遭遇するMOBはスケルトンにゾンビ兄貴だよん。稀にリッチーさんも出るね」


 MOBについて解説しながら臨戦態勢を取る椿ちゃん。


 お互い単独で動く手筈になっていますので、私は大人しく後方に下がります。

 一応、イレギュラー対応できるように蜘蛛の巣を発動させときます。


 蜘蛛の巣から感じられたMOBも数は六体。

 今視認できる数は四体ですね。残りの二体は奥の方にいるようです。


 巣の効果範囲は半径二十メートルほどなので、凡そ、それぐらい先にいるって事ですかね。

 なんせ薄暗くて奥の方は真っ暗で見えないので、憶測になってしまいますが。


 あ、そうだ。熱源感知使ってみますか。

 相手がアンデッド、いわいる動く死体だとどう映るか確認です。


 とまぁ、早速使ってみた結果。


「なるほどね。熱を持ってないMOBは周りの温度と同化してわかりませんね……で。奥二体は見える、ですか。後で聞いてきますか、ね」


 奥の熱源から椿ちゃんに視線を移し、彼女の行動を観察します。


 ここに来るまでに彼女から聞いたアルラウネの特徴は大まかに言えば『支援特化型』

 それも相手の行動を阻害するほうの支援だそうです。


 なんでも地中に根を張る事ができ、その上にいる敵の位置を把握できるとか。彼女も振動探知を持ってるみたいです。


 範囲は彼女を中心にして、半径十メートルほど。

 根を張り巡らせてる時はその場から動けないそうです。


 性能が私の蜘蛛の巣と似てますね。

 範囲内であれば拘束できる点とかも同じですし。


 ただ、彼女の場合は攻撃が可能だそうです。


 ちょうど彼女に攻撃をしようとしてるスケルトンがいますが手にしていた剣を振り上げたところで、足に茨のようなツタ? が絡みつき動きを止めます。


「ま、こんな感じに棘の生えた根っこで絡めとって動きを邪魔するんだよ。で、攻撃は――っと」


 地面から別の根が飛び出しスケルトンの頭部を貫きます。


「――こんな感じで下から根っこで串刺しにする。いつもは囮――苗床を用意して、そっちに気を取られてるところをグサッと一刺しするんだよ」


 因みに囮ってのはスキルで作るらしいです。

 倒したMOBの死体に種を植え付け操るとか。

 彼女はその囮を苗床って呼んでるみたいですね。


 椿ちゃんは「んじゃ、次ねぇ」と言うと腰から生えてるツタの先を尖った花の蕾に変え。

 そして、それを敵に向けるとパンッと乾いた音がしました。


「これはね、ガンフラワーってお花で。弾を撃ち出す事が出来るんだぁよ。で弾が種でね。種類によっていろいろ効果があるの。今撃ち出したのはマンドレイクの種。これを先に撃ち込んで殺すと、死んだ直後に発芽して苗床になるんだよ。因みに一定時間経つとアイテムに変わる。そんでもってこれがいい値段で売れるんだなぁ。でも今回は相手が骨だから発芽すんのか? これ」


 そんな風に解説しながら淡々と敵を倒してく椿ちゃん。

 因みに、種を植え付けられたスケルトンは、全身を根っこを絡ませて形作った不格好な人形の様になりました。

 しかも頭の先にお花を咲かせて……なんかすんごいシュール。




 彼女から前もって聞いた通り戦法で『待ちの戦い方』のようですねぇ。

 自分を囮にして、向かってくる敵を絡めて撃破する。

 誘い受けってやつですかね……あれ? これ違うか。


「まぁこれが単独(ソロ)での戦い方かな。動けないから手足になる駒を用意しないといけないけど。アタイ的にアルラウネは、それなりに強いと思ってるけど。どうだったかな?」


 と言って彼女は、最後の一体を串刺して倒すと、いつものチェシャ猫のような顔でこちらに振り返ります。


「率直に言えば、非常に面倒です。なので極力敵対は避けたいですねぇ」

「ンフフフ。それは最高の誉め言葉だね。アタイもシグちゃんはちょっと相手にしたくないよぉ」

「おや? 私の戦い方を見ないでそう言い切るので?」

「んー? チラッと見てるからねー。何となくだけど想像はできるよん。そうさねぇ。シグちゃんと戦い時は如何に誘い込むかが肝、だろうね。しかもこれが一番苦労する。あーいやだ。想像しただけも面倒この上ないっさね!」




 その後彼女から細かい説明を聞き終えところで、戦闘前に見た奥にいる二体の熱源について報告しました。


 椿ちゃん曰く、このモルグにはアンデッド系のMOBしかいないとの事で、熱を持つアンデットというのに心当たりがないと言ってました。


「シグちゃん? 二体ってことはその熱源は人の形をしてんのかい?」

「ええ。通路の左右脇に一体ずつ立ってる感じですね」

「ふーん。なんだろうねぇ。因みにこの先は小部屋みたいなのがあって。その右側に下の階に行ける階段あるんだけども。その小部屋ってのが入ると入り口に鉄格子が降りてきて閉じ込められるんだよね。で、わんさか死体が襲ってくる」

「トラップですか?」

「そそ。ほんとは黙っておいてシグちゃんをそこに閉じ込めてみたかったんだよねぇ。でぇ、それをニヤニヤしながら眺めたかった」

「最低ですね。ドSですか? 椿ちゃんは」

「んーどうだろ? 相手がシグちゃんなら責められたいし、責めたい」

「非常に不本意ですが……その気持ちわかりますね。私もそう思う相手がいますので」

「お! 恋バナかい! えーだれだれ?」


 グイグイ顔を寄せてくる椿ちゃんを押しのけながら、どう行動あるいは処理するか話し合いました。




「では、偵察に行ってきます」と椿ちゃんに告げて壁を駆け上がり、天井に向かう私。


 彼女との話し合いの結果、何らかの魔法を張ってるらしく。

 私と椿ちゃんが持ってる振動探知になんら反応がないのはその所為では? となり、その魔法の効果範囲が天井には届いてないので私が天井を這って偵察する事になりました。


 椿ちゃんは魔力視という感知スキルを持ってるらしく、私の熱源感知のように魔力てのを可視化できるようです。

 その結果、通路を覆う感じで魔力反応があるが天井には届いてない、と言う事が事前に知る事が出来たのです。


 半身異形が二人揃うだけでかなり優位に動けるのでは? なんて、思ってる内に熱源の真上に到着。


 彼女には言ってなかったですが……。実は私【暗視】ってスキル持ってるんですよねぇ。

 言わなかった理由は信用してないと思われるようですが、手札ってのは何枚か隠す事に意味があると思うんですよ。てかこれはお互い様でしょうね。


 椿ちゃんも何枚か隠してると思いますのでね。

 馬鹿正直に全て晒すって行為をされると逆に不安ですよ。


 友達だから、家族だからと言って自分の全てを教えたり晒したりする人って少ないんじゃないですかね?

 それと似てると思います。

 だれだって見せたくないモノってあるでしょうから、ね。


 そう言ったモノを含め、受け入れるってのが信用ってモノだと私は思います。

 メリットがある限り、リスクってのは背負うべきでしょうからね。

 そして、常にそのリスクに対応できるようにする。これ大事。


 何となくですが、椿ちゃんもこんな感じではないのかなと思います。

 そう思う理由は――()()()()。ですかね。


 まだ知り合ったばかりですので、わかりませんが。




 ――さ、それよりも私の真下にいる、()()()()は何でしょうねぇ。





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