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アラクネ姉さん  作者: ますくばろん
森の中のアラクネ姉さん
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森の中のアラクネ姉さん

 始まりました。アラクネ生活初日です!


 ふむ。辺りを見れば――ここは森の中って言葉がピッタリな場所ですね。

 圧倒的グリーン感! こう深呼吸とかしちゃうぐらいに。


「――ふぅ。この独特な湿気感。リアルですねぇ。お爺ちゃんの家を思い出します」


 パパンと喧嘩するとママンは早々に実家に戦略的撤退をし、その都度私も拉致られます。

 そこはどえらい田舎で自然が豊か過ぎてちょっとした危機感を感じるほど、ですが、とてもいいところです。

 よって、こういった緑豊か過ぎる場所は馴染み深いのです。

 ですが、木が大きいですね。その所為か木と木との間が離れているので密林って感じではないです。

 これならこの体で行動しても問題ないでしょう。木にも登れそうですし。

 結構大きいんです。アラクネって。まぁ大きいの蜘蛛部分ですがね。


「やはり、目の高さはリアルよりやや高めでしょうか? リアル身長は百七十強あるので、今は二メートルぐらいですかねぇ。……脚を真っすぐ上に伸ばすと約倍ぐらいですね」


 まぁそれはいいとして。


「異形種だけあって開始位置は自然のど真ん中ってわけですか。これ人類種だったら、裸でポイ捨て状態ですよ?」


 今言葉にした通り、現在の私はすっぽんぽんなわけです。

 ステータスパネルの装備項目は軒並み『なし』


 由々しき事態ですよ? うら若き乙女が上半身裸を大自然のど真ん中で晒してるなんて……が。

 ところがどっこい大丈夫だったりするんですよねぇ。

 装備はないですが、『固有武装』なるものがあるんです。

 その名も蜘蛛乙女と書いてアラクネと読む。


 ようは種族専用の装備みたいなもの感じですかね。

 まぁとりあえず、おっぱい丸出しなのは乙女の沽券にかかわるので、ぽちっとな。



 でその結果はかなりセクシーな仕上がりになってます。

 上半身は、下半身の蜘蛛部と同じ色のぴっちりした露出度高めのボディースーツのようなものに覆われ、問題のおっぱいに関しては下乳と先端桜は見えなくなりました。

 ですが上乳と中乳がっつり見えとります。中央がガバッと露出してるので私の可愛いお臍とわりと引き締まって薄っすら縦線の浮ぶお腹がお目見えしています。

 ちなみに胸の安定感はバッチリ。普段着用してるブラより性能がいいんじゃなかろうか。


 それから腕に関しては二の腕半から指の先っぽまでロンググローブっぽいもので覆われてます。

 で、指なんですが……。


「これなんて言うんでしたっけ? フィンガーガード? アーマー? だったっけ? えーっと表示名は……蜘蛛乙女(アラクネ)の指先、ですか」


 親指、人差し指、中指、計三本の指先が大変鋭利な爪で覆われてます。しかも両手お揃いで色は鈍い金色。


 以上上半身の出来栄えを見た感想は『悪役の女性(ボスタイプ)』でしょうか。

 まぁアラクネですからね。見た目ボス感は半端ないでしょう。露出した肌が透き通るような美白なのが救いですかね。これが青だの紫だのしてたら完璧な化け物です。

 ですが……人型のプレイヤーと遭遇は避けた方がいいですね。


 理由は簡単。異形種は敵――モンスターと見なされ問答無用で襲われる率が高いと情報サイトに書かれていた為。

 特に、半身異形は徘徊してるモンスターと見分けがつきませんから、似たようなのがいるようですし。

 あーこのゲーム内ではモンスターではなく、MOBって呼ぶんでしたっけ?


 あと情報サイトに書かれてましたが、異形種対人類種で全面戦争してる区画――エリアもあるそうですが、今の私には縁のない高レベル推奨エリアなんで関係ないですね。


 なんて、本決定したアバターと異形種の立場を再確認してるとお客さんの姿が見えてきました。


「いやはや便利ですねぇ、【振動探知】って。二足歩行なのか、そうじゃないか。それと何体いるのか、あとは、距離ですか? 凡そですが、わかるんですから。知覚範囲は……半径二十メートルぐらい?」


 しかしながら、自然界に喧嘩を売る様なカラーですねぇ。

 左から赤、黄色、紫てな感じでギーギー声を上げて騒いでます。

 背丈は子供ほどの腰巻姿で手にぼろっちぃナイフ。

 そう、皆さんお馴染みのゴブリンさん達です。


「初戦闘はやっぱりゴブリン先輩ですよねぇ。では、さっそくっ!」


 素早く左右の赤ゴブリンと紫ゴブリンに手をそれぞれに向けて【魔力糸】を発動し体に絡めます。


「かぁらぁのっ! 【蜘蛛の巣】!」


 を発動。あっという間に左右のゴブリンが糸で蓑虫状態。

【蜘蛛の巣】ってのは拘束スキルみたいなものです。

 他にもいろいろ使い道があるようですが、それは追々。


「まだまだぁ! 拘束からのっ! はりつけ&縫い付け」


 これはスキルではなく、拘束した後の方向指定です。

 はりつけは近くの木とか岩とかの障害物に、縫い付けはその場の地面に、といった具合。

 ちなみに、指先とか目線とかで狙いを定めればそこに縛り付けたりもできます。

 便利ですねぇ。


「で、黄色いあなたには【下顎】です」


 と最後に下顎で素早くキャッチからの引き寄せ。勿論ゴールは蜘蛛のお口の前。


「あとは【かみつき】ですよねぇ」


 口の前のゴブリンをナイフ状の牙? 脚? でめった刺し。

 ゴブリンと表示された下にある緑にHPバーがガンガン削れて行きます。


「おお、これはけっこうえぐい攻撃ですねぇ。血が飛び散ってます。あ……頭にグサッと。おや? 死にましたねぇ」


 ふむ、半分ぐらいあったバーが一気になくなりましたね。これが即死判定ですか? 


『レベルが上がりました』

『レベルが既定値に達した事でスキル【毒生成】を獲得しました』


 おや、お馴染みのアナウンスさんですね。

 ちなみにこのアナウンスさんのお名前はピクシーです。

 初心者の味方、サポートお姉さんです。


 それはさておき、毒作れるようになりましたよ。

 蜘蛛と言えば糸の次に毒でしょう! 

 実験体は後二匹います。しかも拘束が解かれる様子もない。であれば、このくたっとしたゴブリンの処理ですね。


「ここは【捕食】一択でしょう。てなわけで――いただきます」


 これは……とスキル【捕食】のえぐさに慄きます。

 いえ、なんか口の横からさらに鎌状の脚でいいんですかね? それが左右に、で。死体ゴブリンを抱える様に挟み込みます。それからグッと力強く口の奥に引き込むと、バリボリ音が……。可愛く言ってますが実際はかなり生々しい音です。今なにか潰れる音がしましたよ!


「うわぁー流石の私でもこれは……ん? バナナの味がしますね。へーゴブリンってフルーティーなんですね……では残りは?」


 と拘束された赤と紫ゴブリンを見れば、いやいやと首を横に振ってました。

 リアルですねぇ。怯えた感じとかが……ですが、ダメです。助けてあげませんよ?

 何故ならば先に仕掛けたのはあなた達。よって私の敵、なわけです。そして、私が勝ちました。


 そう勝者は私。敗者はあなた達。そんでもってこの世界は弱肉強食。弱者は強者の糧になるのです。

 であるならば、私の為すべき事はただ一つ。





「――――いただきます」







 とバリボリ。

 ちなみにお味はグレープとリンゴ味でした。

 ゴブリン美味しっ!!








『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

『特定のモンスター捕食した事により【毒生成】が強化されました』

『レベルが既定値に達した為、スキル【魔力糸】に【斬糸】が追加されました』






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