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アラクネ姉さん  作者: ますくばろん
森の中のアラクネ姉さん
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街中のアラクネ姉さん 5



 注文した料理が配膳され、それを口にした私はあまりの美味さに絶叫。


「っうっま!! なんですか!! 街からスタートした方々はいきなりこれを食べれるんですか!!!?」


 くっそぉ……森の中でゴブリンとかオークをバリボリしてた私は何だったのかって話ですよ!

 まぁ、彼らは彼らで美味しかったですがね!? 


 だが加工されたモノには勝てませんね。うまし!


「うんまいですが……ノアちゃんの手料理の方が上をいきますね」

「あ、ありがとうございます。その、明日は私が何か作りますね!」

「ま、カンストした調理師の料理だからな。あとノアはリアルでも料理したりするから尚だな」

「へぇノアちゃんも――」

「――よう、姉ちゃんたち」


 なんて話をしていると、どこからともなく三人の男性が現れ、私達に話しかけてきました。


 如何にも荒くれ者ですと言った風貌です。

 なんなんでしょう。人が楽しくお話してる時に……イラっとしますね。


「お、来たか」とレイナちゃんが彼らに反応します。


 おや? 知り合いなんでしょうか? 

 なんて思っていると、目の前にテキストフレームが浮かび上がります。


『乱闘イベント発生』


 はて? 乱闘イベント?


「どうした? あんた、こういうの好きだろ?」

「え? このイベント、レイナちゃんが発生させたんですか?」

「いいや? このイベはここ限定の突発イベで、ランダムにNPCが絡んでくるんだよ」


「へー」と言いつつ、彼らをよく見みます。スキンヘッド、眼帯、ヒャッハー。

 とあだ名が簡単に浮かびそうな彼ら。


 このゲームのNPCはよく出来てますね。ぱっと見ではわかりません。


「お? どうした? 俺たちと遊びてぇのか? ねえちゃん」

「いえ。ご遠慮します」


 私に触れようとした手を払いながら、レイナちゃんの方を見ます。


「これ。もう食っていいので?」

「ちょっ! まだ駄目だぞ? 適当に相手したら開始のパネル出るから!」


 なんだか慌ててるレイナちゃん。

 早くぶん殴りたいんですよね。

 彼らのニヤニヤしてる顔がムカつきます。


「シ、シグさん! 落ち着いてください!? もう少ししたら始まりますから!」


 とノアちゃんも慌てた様子で私を宥めるかのように話しかけてきます。


「お二人とも? 私を狂犬か何かと思ってるんですか? 流石にいきなり殺したりしませんよ?」

「そ、そうか? 目がヤバいから、な」

「わ私は怒っちゃったのかなって……」

「目つきに関しては生まれてこの時までそう変わりありません。それからNPCだとわかれば、なんとも思いませんよ?」


 NPCで敵対するのであれば等しくエサですからね。MOBと一緒です。

 これがプレイヤーだった場合は丁重にお断りしてます。しつこい様でしたら……まぁそれはその時考えるとして。

 今はこの乱闘イベント? を楽しみましょうか。


 それから悪漢風NPC三人がオラオラ言ってるのを聞き流していると、再度浮かび上がるパネル。


 『準備はいいですか? 【はい】【いいえ】』 と書かれています。


「レイナちゃん。ちょっと気になるんですが、このイベントは強制なんですか?」

「ん? あーっと確か、ひたすら無視するとキャンセルされるって聞いた事があるな。もしかしてやりたくなかったのか?」


 ちょっと不安気な表情になるレイナちゃん。

 この子も意外と可愛いんですよね。姉御って感じなんですが、こういった時折見せる女の子顔がたまらなくグッときます。なんだか、早妃ちゃんに会いたくなりましたね。


「いいえ? キャンセルの表示がなかったのでちょっと気になりまして」と言いつつ、【はい】を選択。


「それならいいんだけど、ノアもいいか?」

「はい! いつでもいけますよ!」

「よーし。まぁ強さはお察しだけど、いろいろ試すには十分だろ」

「おや? 私が試したいの気付いてたんですか?」


「まーな。てか新しいモノって早く使いたいだろ?」と最後はニヤッと笑うレイナちゃん。


「そうですねぇ。性能チェックは早めに済ませたいです」と返せば、

「お二人とも男の子みたいです」とノアちゃんがクスクス笑いながらえぐいハルバードを手に持ちます。

「シグはともかくあたしは乙女だけどな」とレイナちゃんも剣を抜き臨戦態勢に。


 そんな二人を見つつ、私も爪を伸ばして戦いに備えます。

 先ずは両手合わせて計十本になった爪の性能チェックです。

 しかし、手間が省けてよかったです。テストがてらに夜の街を徘徊しようと思ってましたが、事前にテストできるのならこれに越したことはありません。


 そして、オラつく三人が六人になり乱闘イベントが開始がされました。



「では、各々二人受け持つ感じでいいですか?」と敵から目を離さず、二人に声を掛けます。

「おう」とレイナちゃん。

「了解です」とノアちゃん。


 二人とは何度か戦闘を一緒にしましたので力量的に問題ないでしょう。

 レイナちゃんがそんなに強くないみたいな事を言ってましたからね。


 だからといって手を抜く理由にはなりません。

 まぁテストなのでそれなりに全力を出しますよ。


 自分のペース配分を考えてる間に相手が先に動きました。

 一人は剣を振り上げ、もう一人は左に回り込もうとしてます。


 ふむ――ここは、一歩前、ですかね。


 私は剣を振り上げ向かってくる敵に合わせるように突っ込みます。

 一気に間合いを詰め振り下ろされる寸前、剣の柄の底を左手で受け止め右手を手刀の形に。

 そして素早く敵の喉元を払うようして切り裂きます。


 切り裂かれた喉は過剰演出のお陰で派手に血を噴き出し、若干返り血を浴びてしまいますが、私はお構いなしに左手で掴んだ敵の手首を振り回し、回り込んでこちらに向かってくる敵に振り投げるようにして、事切れた敵をぶつけました。


 いやはや。ステータスの恩恵と言えばいいんですかね。

 このゆっくりとした風景は。非常に助かります。


 死体をぶつけられ体勢を崩す敵を見つつ、改めてこの便利な力に感謝します。


「こんなもんですかね。爪のテストは。感想としましては……前より切れ味が良くなってますねぇ」


 と誰に言うわけでもなく呟き、必死に死体を退けようとアタフタした敵を視界の端に捉えつつ、チラッと二人の様子を盗み見ます。


 可愛く気合の入った声が聞こえてそちらを見ると、丁度ノアちゃんがハルバードの斧の部分で敵の頭を叩き割ってるところでした。

 この街に到着する間ゴブリンたちで散々練習した『スイカ割り』が様になってます。


 飛び散る飛沫と赤い塊。それをやや顔に浴びつつも次の敵を睨むロリっ子。


 いいですねぇ。赤が映える、そして金髪幼女の微笑がなんともグッときますよ。

 可愛いだけではない、素晴らしいですねぇ。


 片やレイナちゃんは危な気もなく、敵の斬撃を躱し、即座に敵を切り裂いていました。

 さすが、と言うべきですかね。戦闘職で一年もやってるだけの事はある、と安易に思う事が出来る動きです。


 いわゆる『慣れている』と初心者の私が思えるぐらい洗練されています。

 ですが、彼女曰く、まだまだ。だそうです。


 二人は心配ないですね、と思いながら、視界の端で立ち上がろうとしている私担当の敵に脚の爪先を突き立てるようにして、振り下ろします。

 敵の右肩ら辺を突き刺し、ぐっとそのまま斜めに差し込みます。

 聞くに堪えない豚のような悲鳴と表現するのがピッタリな絶叫が響きます。


 私の前脚は太いですからね、三分の一ほど入ると上半身が裂けてしまいます。

 そのまま毒を流し込みながら、先に仕留めた敵を下顎で掴み、捕食します。

 特殊イベントっぽいのでできるかどうか不安でしたが、問題なくバリボリと音を立ててくれました。


 どうにもMOBよりもNPCやプレイヤーはバリボリ音がより生々しいようです。

 何かが折れる音や、水気を感じさせる破砕音が強調されてる感じでしょうか。


「お味は……なんですかね? フルーツのミックスジュース?」


 このNPCはベリー系のミックスジュース味です。

 そう言えばプレイヤー、もといあの二人は……忘れましたね。

 バリボリ音がリアル過ぎて、そっちに気を取られていたので。

 これも後で要検証ですね。


 一人目が食べ終わり二人目をひっ捕まえ咥えたところでレイナちゃんに声をかけられます。

 なので振り向こうとしたら、


「終わ――こっち向くなよ! ノアもいるんだから!」と大声で止められました。


「えぇ……お話しするときは相手の顔を見るのがマナーですよ?」

「ならその下の蜘蛛が咥えてるのを何とかしたら、こっち向いてくれ!」

「わかりました。でも音はどうにもできませんからね?」と言った後にバリボリ。


 レイナちゃんが両手で耳を塞いでしかめっ面。

 ノアちゃんは意外とキョトンとした表情で肩越しに見ている私と目が合います。


「私別に何とも……。そもそも、レナも過剰演出きってるんだから大丈夫でしょ?」

「それでも、あの音は嫌だ」

「音って言ってもバリ、ボリってしか聞こえないよ?」

「――それでもだ! 思い出すんだよ! 目の前で人が喰われてる様子が!?」

「……なんか。トラウマを植え付けたようで申し訳ないです」


 私も正面から食べてる姿って見たことないのですが、ここまでなるって事はよっぽどなんでしょうかね?


 なんて事を思っていると目の前に『乱闘継続。プレイヤーがこの乱闘に参加しました』の文字が。


 二人もその表示を見たのか表情を一変させ武器を構えます。

 そして、四人組のプレイヤーと思しき姿が見えてきました。


「俺たちも混ぜてくれよ」と中央にいた金髪の男性がそう言ってきます。


 それに返したのはレイナちゃん。

「もう終わったよ。また今度な」と言いつつパネルを操作しようとしますが金髪の隣の男性がそれを止めます。


「まだ終わってねぇだろ? そこにいるだろ? 化け物が」と私を指さします。


「超ラッキー! 半身が乱闘に参加するとか! 経験値がっぽりなんでしょ?」と彼らの後ろにいた女性が声を上げて隣の男性と喜んでるようでした。



 ほう……()()()ですか。

 で、経験値がっぽり、ですか。


「シグ! 相手にすんな。これはキャンセルできるからそうしろ」とレイナちゃん言ってきますが、それにかぶせるように相手方も好き勝手言い始めます。


「おいおい逃げんのか? お前らも狩れよ。こいつら半身はMOBなんだろ?」

「そーだよ。化け物の味方すんのか?」

「てか下のあれ蜘蛛? キモイんだけど」

「まぁまぁ。あれでも中身は僕らと一緒の人間ですよ?」


 なんでしょ? 誰かに言わされてるのか? って思うぐらいテンプレなセリフです。

 RPGに疎い私でも知ってるような感じですよ? 


「レイナちゃん。これもNPCですか」と言って四人組を指さします。


「おい! て――」

「黙ってください。あなた達には聞いていません」と遮ります。


 それからレイナちゃんを見ますが何故かびくっと体が跳ね上がります。


「え? あ、ああ。こいつらはプレイヤーだな。だから気にすんな? そ、そうだ! 噴水見に行こう! ノアも見たいって言ってたしな! な! ノア!」


 とノアちゃんにやや強引な感じで話を振ります。


「そそそうですよ! シグさん! 綺麗なんですよ? だから、ね?」


 ノアちゃんが可愛らしくそして、やや目を泳がせながらそう言います。


「お二人がそう言うのであれば――」

「おい! チビとエルフは黙ってろ!」


 無視したかったんですが……。


「キャンセルしましょうか。噴水楽しみですねぇ」といつつパネルを操作します。

 二人もホッとした表情で操作を開始。

 私はその手の動きを見ながら、


『乱闘継続。プレイヤーが乱闘に参加しました。継続しますか? 【はい】【いいえ】』


 と書かれたテキストフレームに指を伸ばしました。

どうにも腱鞘炎が悪化したようです。

次回から更新頻度が落ちるかもです。

その際はご理解のほどを。

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