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アラクネ姉さん  作者: ますくばろん
森の中のアラクネ姉さん
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街中のアラクネ姉さん 4

 

 ――三人姦し娘がやってきたのはこの街の中央に位置する商業区です。


 少しだけこの街について説明すると、街の形は円形状で周りにプレイヤーたちのプライベート区画があったり、戦闘可能な区画『スラム』と呼ばれる場所があったりするそうです。


 そして、この街は初心者から中堅と言われるプレイヤーたちが拠点として利用するそうで、前線と呼ばれる攻略プレイヤーたちが集まってる街などの中継都市として認識されてるとか。

 で、その前線と呼ばれる場所で活動されてる方々を『シーカー』と呼ぶそうです。

 まぁこの辺は私には関係ないので省略します。


 で何が言いたいか、と。

 それは、人がうじゃうじゃいるわけですよ。

 七、八割プレイヤーだそうですが……人酔いしそうです。


 あと『突き刺さる視線とはこの事だ』と言わんばかりの視線を私が集めています。

 この理由はご存知の通り、私が『アラクネ』だからです。


 見渡す限り人類種と呼ばれる『普通の人間』ばかりですからね。

 半身異形種を全く見ないわけではありません。


 下半身が馬のケンタウロス。

 下半身が蛇のラミア。

 あと変わり種で、下半身が植物(形状は花)アルラウネ。

 など見かけました。


 ん? アラクネは? 知らない子ですね。


「意外といるもんですねぇ。半身異形種って」とポツリと零せば、レイナちゃんがそれを拾ってくれます。


「ん? ああ――。まぁケンタウロスはけっこー見かけるな。あいつら突進力とかあるからな。騎馬で突っ込んで粉砕ってのがセオリーらしいぞ? あとは『アバター動かしやすい』って聞いた事があるな」

「下半身が馬なら強いですよ。アバターの動かしやすさもわかりますね。イメージとしては四つん這いで歩いたり走ったりする感じですかねぇ」

「それでも慣れるまでは苦労するって聞いたぞ?」

「私達は本来なら二足歩行ですからねぇ。そう言えばラミアってどうなんですか」とあの時直感で強いのでは? と思ったラミアについて質問してみます。

 能力的に考えれば、蜘蛛に負けず劣らず強いんではないのだろうか、と思ってる種族ですので。


 私の質問を受けてレイナちゃんは頭を捻って思案顔になります。

 話を聞いていたノアちゃんもお揃いに。


「ラミアなぁ。強いって話には聞くけどなぁ。大半がマスコット扱いって話だ」

「私もそう聞きましたね。たまに私の店に来るラミアの人たちも、そんな感じの事言ってました」


 といった二人の回答。

 ……これは実際に()()()みない事にはわからないようですねぇ。

 私の検証メモに書いときましょう。




 そうこうしてる間に、私達は目的の酒場に到着しました。

 噴水はこの時間は混んでるらしく、先にお食事もとい私の歓迎会をしよう、との事。


 で現在、私の目の前に酒場と思しき大きな建築物。街に合わせた作りです。

 入り口には扉がなく大きめに作られてますね。


 思うに私のような半身異形種対策ではないですが、その辺を考慮した結果なんでしょうね。

 私の場合は横にも大きいですからね。大変助かます。


 因みにですが、通常の扉などは触れるとテキストフレームが表示され、入室とか入店を選択するとあっという間に視界が変わり、建築物内に移動します。

 流石ゲームといった仕様です。

 これは半身異形とかだけの仕様のようで、二人に確認したところ普通に扉を開けるとの事でした。


 そんな半身異形のゲーム的ご都合仕様に感謝しつつ、私は二人の後を追う形で酒場へと足を踏み入れました。




「ひっろいですねぇ」と入り口を進み、店内に入るとその広さにちょっと驚きます。

 天井も高く、カウンターの上がロフトのようになっていて、吹き抜けの二階建てといえばいいんですかね。そんな作りのようです。


 店内のガヤガヤした感じとか、地面が石畳でその上に木造の雑多な感じのテーブルが並んでるこの景色なんかを目にすると、異世界に飛ばされたらこんな風景を見れるのでは? と勘違いしそうです。

 こういった雰囲気などは、ファンタジー物が好きな方にはヨダレが出るほど、なのでしょうね。


「シグ! こっちだ! あそこならあんたでも大丈夫だろ!?」とレイナちゃんが壁際にある広めの丸テーブル指さします。私を呼ぶ声が大きかったのは、ここの騒がしさの所為ですかね。


 レイナちゃんが選んだテーブルに移動し二人は椅子に、私は椅子を退けてそのまま地面に蜘蛛の底部分を付けて、アラクネ式お座りをします。椅子なんて座れませんからね。


 それでもテーブルを低く感じますが、問題ないでしょう。

 いざとなれば尻尾で刺すか、パタを伸ばして何とかしましょう。


 と配膳された時の事を考えてるとノアちゃんとレイナちゃんが、椅子を私よりに寄せて座りなおします。


「シグはでけえからな。あたしとノアで食いモノ取ってやるよ」そう言ってニッと笑うレイナちゃん。

「あ、ここは私達が持ちますんで。好きなだけ頼んでくださいね」とニッコリ微笑むノアちゃん。


 ――くっ! なんて優しい人たちなんでしょう!! 


 早妃ちゃんに負けず劣らず素敵な方々で私の天秤がブレッブレッですよ!

 私は思いのほかチョロいと自負してる部分がありますのでね! こんな優しくされるとコロッといってしまう!!


「お、お? どうした? 頭抱えて」

「大丈夫ですか!?」

「……大丈夫です。なんとかしてお二人を手籠めにできないモノか――」

「――大丈夫そうだな」

「その……」


 レイナちゃんには途中で遮られ、ノアちゃんは最後の方は口を閉ざしてしまったので聞けませんでした。

 そして、各々いろいろと注文して、しばし私たちは話に花を咲かせるのでした。

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