幕間
「――ぅんしょっと。これでオーケェ! いやぁ【苗床】っていいスキルだわっ!」
とかなんとか言いつつ、たった今仕留めたばかりのボブゴブリンを苗床もとい、肉壁ちゃんにしちゃってます。
「オークちゃんにボブくんボブ子ちゃん。でこれは……ボブゾウさん。さぁ! ちみたち! しっかりアタイの肉壁になっておくれよ! カーディルまで、まだあっからね!」
ささ、肉壁ちょんも補充したし……ああ。
早く会いたいなぁ――アラクネちゃんに!
「美人さんって言ってたし……ぐひっ楽しみぃ!!」
両手を空に振り上げアタイはアタイを祝福するように花弁をまき散らした。
◇
――はぁどうしてこんな事になったんだろ。
「あぁぁ! こんな事なら護衛お願いしとくんだったぁぁ!」
カーディルぐらい一人で大丈夫とか強がらなきゃよかったぁ……。
ここ狭し……暗いし……リスポーンもここだし。ログアウトしてもインしたらここだし。
だしだし言ってる自分に苛立ちますよぉ。
「こーゆの後悔先になんちゃらって言うんですかね……うぅうぅ」
ズルズル言わせて体を引き寄せて抱きしめます。
「だれかぁ……たすけて」と言ってもどうにもならない呟きが薄暗い部屋に吸い込まれるように消えていきました。
◇
「だぁぁぁ!! 動きが!! ムリゲーだろこれ!!」と普段絶対に感じない感覚に苛立ち、それを目の前のゴブリンに叩きつける!
ぐしゃりと潰れる感覚はなれると案外気持ちいもんだが……如何せんこの不自由さがそれを台無しにする。
「くそっ! だいぶ慣れたが……ゴブリン一匹でこんなに苦労するとか聞いてねぇぞ!」
見た目で選んだ結果なんとも不自由なアバターになってしまった自分にもカチンとくる。
「だぁ! 確かに見た目は私好みでかっこいいけど! あと耐久もいい感じだし! 攻撃力も申し分ないけど! ろくに動かせない上に! 開始地点が森とか!! ありえねぇ!」
と声を張り上げ今度は地面に尻尾を叩きつけて八つ当たりをする。
「街はどこにあるかわかんねーしよぉ! 聞いてた以上にマゾゲーじゃねぇかっ!!」
森に私の声が空しく響いてるように思えてきた……。
「とにかく……先ずは前に進めるようにならないとな」と現状ぼったち状態でゴブリンホイホイな状況を脱する事が最優先だ! ちくしょ!