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アラクネ姉さん  作者: ますくばろん
森の中のアラクネ姉さん
12/37

幕間 名無しの酒場

この話は九割会話文になっております。

飛ばしても問題ない話なので、お気軽に飛ばしてください。

 ここは時雨が大はしゃぎしてプレイしているdifferentの内に点在する情報交換の場。


 酒場『ジョン・ドゥ』


 古びた酒場をイメージして作られたこの場所に、一人の男が足を踏み入れる。

 すると一瞬にしてフード深々と被った如何にも妖しいです。と言った風貌に早変わりする。


 ここは特殊エリアになっており、入店したプレイヤーは、皆この姿になる。

 勿論音声も加工され匿名として情報交換が可能である。


 男は店内を一瞥し、席の空いている円卓を見つけるとそこへと向かう。


 そして、『4番』と書かれた椅子に座って、先に座っている者たちに声をかける。


「よう。愛すべきバカ野郎ども。今日はどんなバカ話を聞かせてくれるんだ?」


「よう。愛すべきバカ野郎。今日はいつもと違ってほんとにバカ話だな」と返事を返したのは『2番』と頭上に浮かばせた『ジョン・ドゥ』である。


 この酒場ではみな名前が『ジョン・ドゥ』と表示される。よって番号が今この時だけの名前になる。



「で、どんな話なんだ?」


「それがよう……おまえ。シーカーくずれのPKギルドがカーディルにできたのは知ってるか?」


「ん? ああ。あのどうしようもなく救いようがないって噂の連中だろ?」


「それそれ。レベルだけのPSカスの連中。あれがカーディルにギルド作ったて今は話してたんだ」


「へえー。こりねぇな。で? ガチPKギルドの逆鱗を引き抜いて嘗め回したあほ共が、今度はどんなアクロバティックを決めたんだ?」


「これが傑作なんだがな。森で人食いに会ったんだとよ」


「は? 熊さんにでもであったのか?」


「熊ならまだまともだろ? そうじゃなくて蜘蛛、だそうだ」


「それ、なんてB級映画?」


「俺もタイトル聞いたんだが、頭の上にどえらい別嬪さんを生やした大蜘蛛らしいぞ」


「は? 半身異形か? それとも未確認のMOBか?」


「おい! 素に戻るなよ! 空気よめ」


「いやいやいや。腐っても元シーカーだろ? メンバー80超えてるって聞いてたがガセか?」


「……もういい。その通りだよ。しかもやられたのがギルマスとサブマス」


「……あいつらそこまでPSカスなのか? もう一回潰すか?」


「おい! おまっ! ま――」



「はーいはい。詮索はご法度だよ。でその半身異形! もしかしてアラクネ!?」


「そうだろうね。蜘蛛の下半身って言えばアラクネだよ。パッチPVにも出てたしね」


「でもあれって……使える奴いんの? ただでさえ半身異形って動くのがハード超えてナイトメアモードって聞いたけど」


「まぁな俺たち二足歩行のホモサピエンスだもんな。足が八本だとか六本だとかムリゲーだ」


「しかも、虫のスペックを人と変わらないカタログスペックにした話だし。というかアラクネって不遇種族のテコ入れ第二弾だろ? 第一弾ラミアだっけか?」


「ラミアの本気はやべぇなぁ……喧嘩売ったら物理的に締め上げられてギロチン。若かりし頃の俺をぶん殴りたい」


「で? で? その真正のバカが見たのってやっぱアラクネかな!!」


「……たぶんな」


「あのよぉ……おまえらエネミーだろ? でここに座ってるって事はそれなりってわけだ。それすなわち半身異形の本気ってのを、知ってるって思っても構わんか?」


「おう。まだ体験はしてねえがお噂はかねがね」


「そりゃねぇ。あたいら。ちょっと調子こいて。ラミアの集団に駆逐されかけたからね……。ほんと蛇はヤバい」


「で、お次は益虫と名高く、ある意味、完成された生粋のハンター。特定条件下では敵なし。作り出す糸は原理上、空飛んでるジャンボジェット機を捕獲できるスペックで、防弾チョッキなんかに使うケブラーとかいう素材の10倍はあり、生物学的に最強。おい! 糸だけでやべえじゃん!!」


「お? ファーブル先生がいんのか? んじゃこれも付け足してくれ。蜘蛛はジェネラリストでありスペシャリストだってな。獲物を選ぶ奴、選ばない奴。……どっちだろうなぁ」


「なにそれ!! かっこいいじゃん! ジェネラリストだとやっばいなぁ……とりま、さ。みんなバカをエサにして観察って事で、どぅ?」


「異議なし」

「俺も」

「うぃうぃ」

「PKやるなら気合入れろってラプラス先生が言ってました」

「あと秩序を破るモノには容赦しないとも」

「それでも破るあたいらを、愛すべきバカ野郎って呼んでくれるからちょーすき!」

「んじゃ、我等愛すべきバカ野郎はバカ話のネタを探しに行きますか」



 ――その言葉を最後に各々席を立ち、どこに行くとも言わずに去っていった。

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