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アラクネ姉さん  作者: ますくばろん
森の中のアラクネ姉さん
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森の中のアラクネ姉さん 10

 頭上に迫る、雑な作りの棍棒。


 私はそれに構わず、さらに前へ。

 そして、それを手にする右手が私の間合いに入った瞬間。

 手の甲から伸びた刃でその手を斬り飛ばす。

 それが終わればその場から離脱。


 手首から先が無くなった腕を掴んで「ブモォォッ!」と叫ぶのは、豚頭の人型。

 私がピーチオークと呼ぶMOBである。


 で、私が後ろに下がると同時に右側から飛び出すのは、金色で短めの髪を靡かせる小柄な少女――私のノアちゃん。何とかして持って帰れないか考えてたら、枕詞に「私の」って付いてしまいました。


 彼女はオークと間合いを素早く詰めると「やぁぁっ!」と可愛らしく且つ、気合の入った声上げ体を大きく捻り、手にしている可愛くない獲物――ゴツイ槍斧(ハルバード)に遠心力を付けてオークの右膝に叩きこむ。


 肉厚の斧の刃を勢いをつけ叩きこめば、文字通り粉砕っと言った感じにオークの膝が弾け飛ぶ。

 膝から先を失ったオークは体勢崩し、地面に肘をつく感じに倒れこみます。


 ノアちゃんは即、その場から華麗なバックステップで私同様離脱しました。

 凛々しいお顔もいいですねぇと思いつつオークに目線を戻すと、左側から銀色の軌跡が流れ込みます。


 それは這いつくばっているオークの傍にたどり着くと褐色肌の女性に姿を変えます。


 手にした剣を振り上る銀髪女性――レイナちゃんです。

 両腕を振り上げることでわりとタワワなお胸が上に跳ね上がります。


 その胸が元の位置に戻る前に、振り下ろされる長剣。

 お手本のように綺麗に振り下ろされる剣の行き先は、無防備に晒されたオークの首筋。

 吸い込まれるように、と表現してもおかしくないその斬撃は、オークの太い首を易々と斬り落としました。


 それを見つつやや後方に飛び去るレイナちゃん。

 ノアちゃんの「ふぅ」っと小さく吐いた声を合図にオークとの戦闘終了です。


 私は他に敵はいないか、こちらに向かってくるモノはいないか、と【蜘蛛の巣】の上に点在す反応に気を配り、最低限の警戒をしときます。



「……なんつーか。オークってこんなに簡単だったけ? 思うんだが」

「その……私も、です。足をあんな簡単に部位破壊(ブレイク)できるなんて」


 お二人は驚いてるようですが、そんなに驚く事なんでしょうか?

 別に変った事をしたわけではないのですがねぇ。

 強いて言えば、敵の意識の誘導。


 私が先手を打って敵視を総取り、その後ノアちゃんによる機動力の粉砕。

 ここでオークの敵視はノアちゃんに移りますが、間髪入れずにレイナちゃんの首ちょんぱで止め。

 安全マージンバッチリな狩りです!


 あとは、先手で敵の武器を奪った私の異常なる機動力と動体視力でしょうかね。

 私の見てる世界は基本戦闘状態でしたら、かなりスローな世界です。

 その世界で私だけがスムーズに動ける。ミノ兄貴なんかは追いついてきますがね。


「いやいや! ミノタウロスはフィールドボスだからっ! それを一人でやれるってのがおかしいから!」と相変わらず早妃ちゃんを彷彿させる突っ込みをするレイナちゃん。


 まぁミノ兄貴については、やれない事もなかったって感じですしね。

 対処法さえ確立すれば、もやはデカイお肉です。


 てなお話でレイナちゃんと盛り上がってると、ノアちゃんがてててぇーっとオークの死体の下へ。

 ん? と思い観察してると。徐に腰の後ろに下げていたナイフを手にします。

 んん? と更に観察してると、なんら躊躇いもなく振り上げたナイフをドスっとオーク突き刺し、グッと下に引き裂いていきます。


 ……更にロリっ子の凶行? は続きます。

 大きく切り裂いた傷口を両手でググっと広げ、柘榴を割ったような感じになったそこへ、手と言うか腕を突き入れます。

 それから、「あれ?」とか「ん?」とか可愛らしく突っ込んだ腕をぐりぐりします。

 ややあって、「あった!」声をあげ、腕を引き抜くノアちゃん。


 そして私の方にやってきて、血まみれになった手を差し出します。


「これが剥ぎ取りなんですよ! でこれがオーブです」と血まみれになった顔に満遍なく笑顔を浮かべる彼女。


「お、そうなんですね。意外とグロいですね」と思わず本音が。

 しかしながらノアちゃんは小首傾げてキョトンとなる。それからすぐにあ、という表情になると、


「あ! そうでした! 私過剰表現を切ってるんでした。あはは。シグさんたちにはちょっと怖い感じに見えちゃいました?」と無邪気に笑うノアちゃん。


 そこでいろいろ謎が解けました。

 いやこのゲームわりとリアルなんです。しかも表現のレベルを上げると映画さながらの演出になったりもします。


 これはチュートリアル時に設定を変えたりするんですが、私は面倒だったんで全部MAXにしたんですよね。


 でノアちゃんはみんなに優しい表現演出にしてるようで、私が例のクズ食してる姿をガッツリ見てもトラウマになるほどショックは受けなかったようです。


 レイナちゃんは……


「アタシはあんたのあの姿を見てから即きった。今はノアと同じレベルにしてる」


 こんな感じにややトラウマになってしまってるようです。


「てか、なんでシグは大丈夫なんだ? 切ってない上にMAXとか……最悪思い出した」とげんなりしながら聞いてきます。


「いえ、気持ち悪いですよ? 普通に。でも……騒ぐほどでは。それにバリボリ音、聞きなれるとけっこういい音ですよ? あと感触とかも。リアルでは経験できないVRならではの体験です」

「……聞いたアタシが悪かった。ほんとごめん思い出させないで」

「そうは言いますが目の前で見たわけじゃないんですし……ねえノアちゃん」

「あ、はい。わりと大丈夫でした、よ?」


 とまぁそんなこんなで、オークのとの遭遇戦を済ませ、私達は町に向かって出発します。



 え? なんで町に? それは決まってますよ! 私の種族武装【蜘蛛乙女(アラクネ)】をパワーアップさせるためですよ!

 え? アニマ云々? ああ、だから町に行くんですよ。

 そのアニマ、私の場合ですと。マーズアニマってのになるんですが、どうにもこれが先ほど言いました、

武装強化に使うみたいなんですよ。しかもノアちゃんのお力が大いに関係してくる。


 なので、私は森を離れ、町に行くのです! 


 あと、マーズアニマはプレイヤーを倒すと貰えるみたいです。

 格下の相手では貰えないみたいですが、明確な判断基準は今のところ謎とのこと。

 もちろんMOB倒しても貰えるらしいんですが、私はオーブをそのままにしてるのでまったく気づきませんでした。

 であるからにして……町に行けば森で出会ったクズもそれなりにいるとか。


 町に行く、強化する、それに必要なマーズアニマ。



 ――――入手先は?



「おい……なんて顔で笑ってんだ。こぇよ。いや、わりとガチで浮かべちゃダメな笑顔だろそれ……」


 とかなんとか慄いてるレイナちゃんはそっとして、私はノアちゃんを後ろから抱きしめ、前脚を交差させて座れるようしてます。


 題して、

『ノアちゃん帝国直轄第八親衛隊ロリコニア直属多足歩行型局地戦闘特化自立兵器 シグハンターE』

 とでも名付けましょうか。


 そんなくだらない事を考えるぐらいに、町へ行く事に胸を弾ませます。勿論物理的にも。


「シグさんそんなに楽しみなんですか?」

「――ええ。とっても、愉しみですよぉ」

「なら私が案内しますね! シグさんカーディルの街は行ったことないんですよね」

「そのカーディルはおろか、森から出たことないので。そうですね。ノアちゃんをガイドに街中デートと洒落込みましょうか」

「デデ、デートですか!? そのあの頑張ります! ケーキの美味しい店とか後……そうだ! 私が何か作ります! 街でもそれなりにいい食材が手に入りますから!」

「ほぉ食材、ですか。それは愉しみですねぇ。人も多いでしょうから。それなりの()()()()()転がってそうですねぇ」

「あ! 好きなモノあったら言ってくださいね!? 気合い入れて作りますから!!」

「おやおや。これは……愉しみですよ。ちなみに私の好きなのは――お肉料理でしょうか」


 ノアちゃんは弾んだ声も愛らしいです。


「おいノア? おまえ、シグの顔見えてるのか?」とレイナちゃんが徐にノアちゃんにそう聞きます。


「え?」と声と同時にお腹に柔らかく、もぞもぞって感触が。


「その――胸で顔がよく見えないです」とどこかしょんぼりした声色のノアちゃん。


「そうか……ならそのまま見ないほ――」

「レイナちゃぁん」

「――っひ!」


 うんうん素直でよろしい。


 そんなこんなで森に続いて今度は街を堪能します!



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

皆さまの声援という評価、ブクマ、感想のおかげで日間1位。週間2位になる事が出来ました!!

本当に本当にありがとう!


誤字脱字報告本当に有能過ぎて甘えそうで怖いです。

多くてすいません。そして報告ありがとうございます!


それから、ついに時雨ちゃんが森から解き放たれます。

目指すはカーディル。

そこでもやはりバリボリ音を奏でるのでしょうか。

そして、完全に忘れ去られているスキル【擬人化』これはいつ使われるのか。


ちょっと予告風に。

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