9 何でもいいから作っちゃえ日和
久々の更新。
朝っぱらからいろいろあったその日の食堂。
「いやぁ何か久々な気がすんなぁ。」
「は? 何が?」
「いやこっちの話。」
【カチャカチャ】
しみじみと呟く龍二に、横でミントは首を傾げて龍二はサラリと誤魔化した。
「あ、ミントわりぃんだけどコーラ一本もらってもいいか?」
「!! ……………はい。」
「む? ミント泣いてる?」
「泣くほど嫌なんかい。じゃあええわ。」
【カチャカチャ】
喉が渇いた龍二はミントの手元にある数十本もあるコーラ瓶のうち一本を要求。泣く泣く一本差し出したミントを見て諦めた。
「そういやお前ら、授業あんだろ? 何時からだ?」
「うむ、今はまだ朝食時間で、10分前になったら行こうと思う。」
「そうか。まぁ頑張れよ、俺は頑張ってる奴らを遠くでお茶啜りながら眺めてるのが好きだから。」
「うわぁ、応援してくれるんじゃなくて皮肉ですか…。」
【カチャカチャ】
そんなこんなで、彼らはまったりくつろいでいた。
「……とゆーより何してんのー?」
ミントの横で、龍二がドライバーやペンチ等が入った工具箱を脇に置いて、テーブルの上に部品を散乱させつつさっきから何かをカチャカチャしていたので気になったココアが質問した。
「見りゃーわかるだろ。」
それに対し龍二はほとんど適当に答えた。
「いえ全然わかりません。」
即答のココア。
「そりゃわかんないだろうな。」
おちょくる龍二。
「………………………。」
「ちょ、ココアストップこんなところで闇魔法放とうとしないでえええ!!!」
無言で掌に暗闇を集めだしたココアを全力で止めるミント。
「……ふぅ、あと少し。」
おちょくった張本人が横の騒ぎなんか屁のカッパと言わんばかりに右手で額の汗を拭った。でも汗かいてない。
「…で? 一体何作ってんだ?」
「あ? これ?」
未だ暴れようとしているココアと抑えているミントを尻目にせっせと作業を再開する龍二に、ポトフが問う。
「ちょいとね。元の世界に戻るための装置。」
「スゲェ!!??」
何かトンデモ装置を発明しようとしている龍二。ようやく落ち着いたココアを席に座らせてミント仰天。
「いやねぇ、ホントは発明なんてやったことねぇんだけんね? そら俺だって帰りてぇし、他の連中もいろいろ事情があるんだし。」
「へ、へぇ〜……ちゃんと帰る気あったんだ。」
「たりめぇだ。」
龍二の意外な行動にミント達はあんまり信じられないような顔をした。いや、それはそれで失礼。
「む……ところで、どういう装置なんだ?」
左手で枕を抱えながら右手でスプーンを持ってテーブルに置いてあるプリンを食べるプリンが聞いてみた。
「おう、この装置の中にこの世界にある特殊な粒子を集めてその粒子を空間に直接ぶつける、もといバラまいて空間に衝撃を与え、こっちに飛ばされてきたように空間に亀裂を一瞬だけ与えることによって元の世界に帰ろうという寸法なんだが今ようやく完成した。」
「え、マジ!?」
小難しい話をしている傍らせっせと手を動かしていたらいつの間にか完成、ミントはすかさずツッコんだ。
「でもどこをどう間違ったのかテレビが完成してしまった。」
「「何故!!??」」
しかし何故か液晶テレビ(ビエ○)が完成してしまい、ミントのみならずココアまでもが盛大に席から転げ落ちた。
「失敗した。作り直し。」
テレビを脇に置き、龍二はもう一度作業に取り掛かった。
「どこをどう間違ったらそんな関連性もない物が出来上がるのさ!?」
「いやぁ、作っとるオラもビックラぶっこいただ。」
「変なキャラに変えるな!!」
ケラケラ笑いながらルーペで精密作業する龍二にミントが怒鳴る。
「まぁまぁ気ニシナーイ方針で行こうや。」
「……気にする、けど気にしたらきりがないからそうする。」
「よし出来た。懐中電灯。」
「だから何でだよ!?」
気にしないようにしたけど完成した物を見て思わず席から立ち上がってのツッコミ。
「失敗したな、次だ。」
「……マジメにやってる?」
「おう、ちょー大マジメ。」
「信用できない……。」
「肉うんめェ♪」
「ぷわ……ねむねむ。」
再び作業開始、そんな龍二を疑いの眼差しで見つめるミントとココア、肉に齧り付くポトフとねむねむプリン。何がなんだか。
「ダイジョブダイジョブ。いつかかならず完成するって。」
「……だといいけどさ。」
「ほれ出来た。」
「え、まだ10分もたってないのに!?」
「マイクが。」
「だから何でぇ!!??」
意図せず完成したマイクに向かって思いっきり叫んだミントの声は、スピーカーもないのに倍でかい声で反響した。食堂にいた人達はいきなりの大声に耳を塞いだ。
「しゃーない、もっかい作り直す。」
そしてマイクを傍らに置く。
「…今度はちゃんと作ってよ?」
「うし出来た。」
「一分も経ってねぇ!?」
「ジッポライターが。」
「しつこいようですが何でってウァッチィ!!??」
またもや別の物が完成してミントがまたツッコむが、龍二が遮るかのようにライターを着火。ミントの前髪がほんのちょっぴり焦げちゃいました。
「よっしゃ、今度こそ。」
ライターを置いて、気合を入れなおしてから作業開始。
「完成ー。」
「いやいやいやいやいやさっきより断然早いって10秒も経ってないって!!??」
「なんかのマイクロチップが。」
「なんかって何!? 何でそんな曖昧なの!? いやそれよりもどんどん小さくなってってない!?」
手をパっと動かしてハイ終わり、な流れと完成した変なチップにミントは疲れつつも連続でツッコむ。
「頑張れーミントー。」
「ミントガンバレー。」
「応援してるぜェミントー。」
「皆手伝ってよぉ!!」
すでに傍観者と化したココアとプリンとポトフは若干離れた位置でミントを応援。ミントは涙目になった。
「大変だなミント。」
「誰のせいだと思ってんの!!!」
加害者が被害者をねぎらったが思いっきり手の甲で叩かれた。
「よし、次で最後にしよう。」
「…………。」
ミントは決意した。もう何も言うまい、と。
〜30分後〜
「よっしゃこれでどうだ。」
「………まぁ、30分も早い方だけど10秒とかよりマシか………。」
すでに諦め半分なミント。
「それより見ろやこれ。今度こそ完成したぞ。」
「……ホントだよね?」
「何さその疑いの眼差し?」
「いえ、今までの流れからして信用できませんのでハイ。」
棒読みチックなミント。
「まぁ騙されたと思って見てみ見てみ。」
龍二はコトリとドライバーを置き、目の前に置いてある装置を若干ミントへ寄せた。
それは、まるで銀色の箱のようだった。横に長く、側面に開いてる細長い穴には下へ下げるスイッチレバーが付いており、装置の上面にはさらに長い穴が二つ開いていた。
そう、それはまさに…。
「…まさか、これって…。」
「おう。」
龍二のその表情は達成感で満ち溢れており、腕を組みながら惚れ惚れと完成した装置を眺め、そして、
【チーン】
「トースターの完成。」
装置からチーンと音がして二枚のこんがりやけたトーストが飛び出したんで二枚ともパックリ。一方、ミントは無言のままテーブルに頭をぶつけて気絶した(数分程)。
「じゃ、授業頑張ってこいよ〜。」
「……あい。」
「「み、ミント……。」」
授業開始10分前になったので、教室へ向かう満身創痍のミントと心配そうに見守るココアとポトフとプリンを龍二はミントと対照的な晴れ晴れとした笑顔で見送った。
「……さて、と。」
彼らを見送った後、食堂を見回す龍二。ほとんどの生徒は授業へ向かって先ほどの騒がしさはどこへやら、すっかりガランガランとなってしまった。
「………………。」
そして視線は目の前にある並べられた帰るために作ったはずの装置達、もとい電化製品へと向いた。
「……ふぅ。」
小さくため息を吐いて、ポツリと一言。
「……まぁ、元々そんな装置作ろうにも材料知らんしな。」
それすなわち、確信犯。
「ん〜……ま、いっか。とりあえず一旦帰るとしよう。」
そしてノロノロと懐から出した緑色の風呂敷(泥棒が使うような渦巻き模様)を取り出し、それらの電化製品を包み込んで背負った。
「つかミントってホント弄りがいあるなぁ……プクク♪」
なぁんて黒い笑みが浮かんだかのように見えたが、それも一瞬だった。
「……もうちょいこの世界、楽しませてもらうとするか。」
どこか悪役チックなセリフを吐きながら、龍二は食堂を出て行った。泥棒みたく忍び足で(理由はなんかそんな気分だったから)。
数分後、授業に遅れた生徒が龍二を泥棒と勘違い、その不幸な猫耳少年は龍二の手刀によって意味なく気絶させられた。
今回、久々に書いたからなのかイマイチ。まぁそもそも自分の文章自体イマイチだと思うけど。
まぁそんなこんなで……え? 最後に出てきた猫耳少年って誰かですと? あぁ、あの少年はですねぇ……
次回、あの二人が現れる。ヒントはヘタレと影薄。これはもうヒントじゃない。答えだ。
え、だから猫耳少年は誰なんだと? ああ、ですからあの少年は
【時間オーバーにつき、ここであとがきは終了とさせていただきます】