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4 嫌なものは嫌なのさ日和


「ここがジャイアンかぁ。」


「うん、シャイアね?」


目的地の駅に到着し、龍二は機関車を降りて若干テンション高めで王都の名前を某アニメのいじめっ子の名前と言い間違え、横でミントが若干どころかかなりテンション低めで訂正した。


「わはー! すっごい人だね!」


「あ〜……何かシブヤでの出来事思い出すわぁ……。」


「シブヤ?」


二人の背後では、クルルがまだ眠っているむぅちゃんを頭に乗せながら大勢の人が賑わってるのを見て無邪気にはしゃぎ、フィフィがげんなりとした呟きにプリンが頭に眠っている珠を乗っけたまま首をかしげた。ナイスバランス珠。


「うし、じゃミントの家行くぞ。」


「……マジで行くの?」


「マジで行くぞ。」


「…………。」


とりあえず何かおもしろそうだからという気持ちが顔に思いっきり出ている龍二の顔を張り倒したくなってきたミント。


「……も、もしかしたら家に誰もいないから開けれないんじゃないかなぁ?」


それでも、一応抵抗はする。


「窓から入りゃいいじゃん。」


「「「「待てぇい!!??」」」」


龍二のサラリとした犯罪発言にミントのみならず、ココア、花鈴、ウララまでもが綺麗にハモった。


「とりあえず、誰もいないとしてもアルスの奴が心配だし。」


「心配に見えないんですけどー?」


「黙らっしゃい?」


「は、はいー!!!」


抗議したココアに龍二は100%笑顔を向けて黙らせた。


「うーし、じゃさっさと行く。ほら、案内人。」


「…………。」


「返事?」


「あいすいませんでしたー!!」


テンション低くて返事するのを忘れていた案内人ことミントは、エルの柄を握った龍二によって強制的に返事させられたっつーか謝罪した。






駅から出た一行は、人がゴチャゴチャと込み合ってる大通りへと出た。向こうには立派なファンタジー溢れるお城が建っており、ここが王都なのだと改めて実感する龍二達。


「んにしても人多いな…。」


「そりゃぁ王都だからねー。この時間帯はとくに多いしー。」


「……ん〜……。」


さっきから人を避けまくってばかりで、龍二はちょっとイライラしてきた。


「……うし。」


「?」


何が“うし”なのかわからないミントは首を傾げた。


「ジャーンジャジャーン。」


「!!??」


だが、龍二が口で効果音を言いながら懐から取り出して上空に掲げた物を見て、何するかハッキリわかった。


「はーい道開けてー。」



【ドンドンドンドンドンドンドン!!!!】



「「キャー!!!???」」


大通りに鳴り響く銃声・・に、道行く人は一斉に伏せた。


「うし、これで歩きやすくなったな。」


「「む、ムチャクチャすなあああああああああ!!!!」」


龍二はニッコリ笑いながら、いつぞや大勢の仲間達と共にヤクザの屋敷に殴り込みに行った時に組長室で手に入れた拳銃を再び懐にしまい、ミントと花鈴は伏せつつも銃声に負けないくらい盛大なツッコミをかました。


「さ、今のうちだ今のうち。」


「つか何でアンタそんな物騒なもん持ってんのよ!?」


「あぁ、これ? ちょっとばかしあってもらった。」


「ちょっとばかしって何なのさ!? とゆーよりもらっちゃダメでしょ!!」


「じゃあかっぱらった?」


「「尚更性質たち悪いわぁあああ!!!」」


混乱中の人達を超えつつ、花鈴とミントが見事なコンビネーションでツッコんだ。







「お〜、店がズラリだ。」


「……ソウデスネ。」


混乱が収まりつつある大通りのど真ん中で、龍二は手をかざして道の脇にある店を見回す。ミントに関しては何か若干やつれていた。


「! リュウくんリュウくん!」


「ん?」


クイクイ、とクルルが興奮気味に龍二の服の裾を引っ張る。


「見てあれ見てあれ!」


「?」


はしゃぎながらある店を指差す。



『駄菓子屋』



何かそう書かれてあった。


「…………で?」


「え、っと…………。」


若干言いにくそうにモジモジし、チラリと龍二を見たり駄菓子屋を見たり。


「…………。」


その行動がおかしかったらしく、フっと軽く笑った。


「わぁったよ。行ってこい。」


「! わぁい!」


許可をもらって、嬉々として駄菓子屋へと走っていくクルル。


「……何かリュウジってクルルのお父さんみたいだねー。」


「うむ、厳しいけど優しさもかね添えたお父さんだ。」


「まぁ、クルルが子供っぽいだけなのかもしんないんだけど。」


そんな光景を見てほのぼのしているココアとプリンと、呆れたように肩をすくめるフィフィ。


「あ、龍二龍二!!」


「何だ? しょーもない話だったらその口ホッチキスで止めてやる。」


「ってアタシだけなんでそんな態度違うわけ!?」


明らか花鈴には小馬鹿にしたような感じ丸出し。


「…ま、まぁいいわ……でさ、ちょっとあの店行ってきていい?」


「んだよそんなことか。好きにしろ。」


「やりぃ! ウララ、行こ!」


「オッケー!」


「え、いつの間に仲良くなってたの!?」


ミントのツッコミをよそに、ウララを連れて花鈴は服屋さんらしき店に入っていった。


「…同じ傷を舐めあう者同士ってわけだ。」


「そういうこったな。」


「こっちはこっちで黒い、です。」


二人を見送ったユウと龍二は黒い笑みを浮かべて、リンが横でポツリと呟いた。


「ウララ、友達できてよかったね?」


「なんか一人も友達いなかったみたいに聞こえるわね…。」


クスリと笑うアオイに、フィフィが苦笑しながら呟いた。


「じゃ、残りはミントん家に……あ?」


言いかけたが、また服の裾を引っ張られる感じがして振り返る龍二。


「? 何だリリアン?」


「…………。」


何か言いたげに龍二を見つめるリリアンだが、若干顔を赤くするだけで何も言おうとしない。


「? ………………あぁ。」


龍二の視線の先には、いろいろ売っているお土産屋があった。


「土産か?」


「……久美の……ために。」


「なんか旅行に来たって感じだな?」


ポトフが言うが、リリアンはスルーした。


「……しゃーねぇな。ここ電波ねぇからケータイ使えねぇし。後で迎えに来てやっから店で待ってろよ?」


「……わかった……じゃ後で。」


「ああ。」


「ユウ、ユウ! 僕達もお土産見てこようよ!」


「そうだな。」


「リンもお供する、です。」


了解を得ると、リリアンはアオイとユウとリンをお供にお土産屋さんへ歩いていった。


「……何かさァ、アンタってクルルちゃんのみならず皆の保護者みてェだよな。」


「そうかぁ?」


「うん。」


ポトフらに言われて龍二は首を傾げるが、ミントに即答された。


「んー……ただあいつらの面倒見てるだけなんだけどな。」


「いやそれが保護者みたいなんだけどー。」


「ん、さよか。」


ココアに言われても、別にどうでもいいや、みたいな顔をする龍二。


「さ、ともかくミントん家行くぞ。余計な時間食った。」


「……もっと時間食ってもよかったのに……。」


くらーい顔を隠そうともしないミントはポツリと呟いた。






とりあえず大通りを抜け、運河の上に架ったアーチ状の橋を渡って、白亜の城と反対方向に進んで三番目の角を曲がった何か微妙に複雑な道を歩く龍二、フィフィ、ミント、ココア、プリン(頭の上で珠熟睡中)、ポトフ


「……ここ。」


「ここか。」


さっきの倍はくらーーーいミントが立ち止まって、目の前にある赤い屋根のお家を見上げる龍二。


「見た感じ普通の家だな。」


「…見かけで判断したらダメだよ……いや、家自体は普通なんだけどさ。」


「ふーん。」


さして興味なさそうに返事をし、龍二はトコトコとミントの家のドアに近づく。


「さて……。」


そしていざ、ノックをしようと足を振り上げ


「「「ってストーーップ!!!!」」」


「あ?」


ミント、ココア、ポトフの三人によるツッコミによって、龍二の強行突破は阻止された。


「何しようとしてんですかい!?」


「いや、蹴破ろうと。」


「んでそんななことすんだよ!?」


「いや、おもしろそうだからと。」


「そんな理由でドア壊そうとしてたのー!?」


「いや、オフコースなり。」


「そこで“いや”はいらないだろってか何で英語なのってか“なり”って何!?」


ミント、ポトフ、ココア、最後にミントの三連ツッコミによるコンボが決まった。


「冗談だっつーの。今はドアを蹴破る気分じゃねぇし。」


「気分で蹴破るの!?」


ミントはすでにボロボロだ。


「ま、とりあえずノックノックーっと。」


コンコン、ならぬ、ドンドン、と家が震えるくらいの強さでドアを叩く、ならぬ、殴る龍二。


「……くれぐれも家は壊さないでください。」


ミントはもうツッコむ元気もない。


「…………………………………………???」


が、家の中からの反応は何もなかった。


「……留守なのか?」


「留守っぽいな。」


プリンに続いて龍二が困ったように頭を掻きながら言った。


「あ、何だ留守なんだぁ(っしゃあぁ!!!!)。」


顔色が戻ったミントは、残念そうに呟きながら心の中でガッツポーズをとった。ついでに心の中で飛び跳ねた。


「ふむ、しゃーねぇな。」


龍二は少し考え込んだ後、


「窓から侵入だ。」


犯罪予告をして心の中で飛び跳ねているミントを滑らせた。


「ちょ、えええ!? マジで言ってんの!?」


「大マジ大マジ。窓はどこだ?」


「あそこね。」


「オッケー。」


「何教えてんのーーー!!??」


フィフィが指差した方向へ向かって歩き出す龍二を止めようとするミント。


「? あれ?」


が、龍二は突然立ち止まって視線を下に向けた。


「……へ? どしたの……。」


ミントもその視線の先を追うと……


「…………。」




いかにも、てな感じで緑色に濁った水溜りがあった。




「…………こ、これ、は…………。」


心当たりがありまくりなミントは、ダラダラと冷や汗をかき始める。


「……きったねぇ水溜りだな。」


「でも何でここだけ?」


ただ、水溜りの正体を知らない龍二とフィフィに関しては頭の上に疑問符を浮かべるだけ。


「「「…………。」」」


ついでに、正体を知っているココアとプリンとポトフも硬直した。


「? どうしたお前ら?」


「「「「…………。」」」」


未だ硬直している四人に気が付き、龍二が振り返った。



【ブクブクブク…】



「!!??」


龍二が振り返ってる間に、水溜りが泡立ち始めてミントはさらに顔を青くする。


「? ミント?」


「どしたのよ?」


龍二とフィフィが問いかけるが、ミント反応なし。そうしてる間にも水溜りはさらに泡立っていく。


「? 何だ?」


が、音に気付いて顔を水溜りの方へ戻す。




「ゲヘヘ、さんじょー♪」




だが、そこにあったのは水溜りではなく、緑色の髪を三つ編みにしたメガネをかけた変な笑い声を上げる女性だった。


(うわ、出やがった。)


出来る限り会わせたくない人物が、水溜りからヌゥっと出てきてミントはこれ以上にないくらいの嫌〜な顔をした。


「な、何よこれ!? 水溜りが人になったぁ!?」


「…………。」


フィフィは目の前で起こった異常な光景にビビり、龍二はじーっと女性を見つめていた。


「…………。」


そしてチラリと頭を抱えているミントを見て、


「…………なるほど。」


一人何か納得した。


「アンタがミントのお袋か?」


「そういうアンタは何奴なにやつよ?」


「必殺仕事人、荒木龍二。」


「!? お前があの」


「ってノるなよ!?」


龍二とミントママの変なやりとりに復活したミントはすかさずツッコミ入れた。


「……つーか何してんのそんなとこで。」


「水溜りドッキリよ!!」


「…………。」


自分から聞いたけど、ホント何してんだこいつとか思ったミント。


「……どうでもいいけどさ……。」


とりあえず、


「倒立やめろ。」


目の前で謎の行動をしている母親にツッコんだ。


「ゲヘヘ♪ 無理無理。」


「…………。」


倒立やめろを拒否したミントママに、このまま放っておくといろいろと狂ってしまいそうになったミントは、



【シパンシパン】



どこからともなく薔薇の鞭を出現させた。


「ローズホイ」


そして技を放とうとした。


「『ライトニングアロー』。」



【ドッカァァァァン!!!】



が、いきなり雷が飛んできてミントママを吹っ飛ばした。



「…………。」


薔薇鞭を振り上げたところで硬直したミントは、ゆぅっくりと隣を見た。


「いや、話進まんからな。」


『貴様にしては妥当な考えだ。』


龍二は腰のエルをポンポンと叩きながら平然と言ってのけた。


「…………。」


そんな龍二に、実の母親をぶっ飛ばされたミントは当然の如く


(ナーイスリュウジ!!!)


喜んだ。


「まぁいいや。さっさと入るか。」


そして龍二はとっととミントママを回収しに歩いていった。


(……そらミントもあんな親がいたら帰りたくなくなるわけね。)


(うん、わかる…。)


(とゆーより普通に吹っ飛ばすリュウジもどうかと思うんだけどー……。)


(う、うむ…。)


そんな彼の後ろ姿を見つめながらしみじみ思うフィフィとポトフとココアとプリンなのであった。




物語は大きく動き出しそうで動かない。つかもうどうしようもない。

この小説で一番悩んだのは、何と言ってもミントママことジャンヌ。いや個人的には好きなんですけど、どうもあの性格を描写するのが難しくて……こんな時は、あれに限る!! おやすみなさい(ベッドにGO)

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