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3 機関車乗ろうぜ!日和

ちょっと短いです。あと文章不安です。

【ポッポー】



「おお、見てみろ機関車だぜ機関車。SLだSL。」


「おっきー!」


「みー!」


『む〜!』


「今時見れないわよねー機関車だなんて。」


深緑の森の前にある駅に立つ龍二達は、目の前にある汽笛を鳴らした黒い蒸気機関車を見てテンションが上がっていた。ついでに言うと珠は龍二の頭の上に、むぅちゃんはクルルの頭の上に乗っかっていた。


「……………。」


「? どしたのよミント?」


「いや、何でもないよ?」


が、龍二達とは対照的にローテンションなミントを気遣ってフィフィが声を掛ける。ミントは明らか空元気とわかるくらいひっくい声で返事した。


「……………。」


そして、どうしたこういう展開になったのかふと回想してみた。




―――――――――――

―――――――

―――――




「って、アンタ達本気で忘れてたっての!?」


龍二達が黙り込んだのを見て、フィフィが怒鳴る。


「い、いやいやいやそんなわきゃないよー?」


「…イ、イエス…。」


「そ、そうそう!!」


『わ、忘れるわけがなかろう?』


「ミャ〜。」


「ちょっと水もらってくるわ。」


「あざといのよアンタら!!」


明らか焦っている花鈴とリリアンとクルルとエル。珠は欠伸。龍二は普通に席を離れた。


「…なァ、アルスって誰だ?」


「私らの仲間よ! ったく何で忘れるのよあいつを!」


ポトフの疑問にフィフィはプリプリ怒りながら答える。


「いや別に忘れてたわけじゃないのよ? うん。たださ、まぁ何というかそのー……ね?」


「完璧忘れてたってことだろがこのバカ。」


「バ花鈴。」


「うるっさいわ!!!」


言い訳する花鈴を容赦なく叩くユウと水の入ったコップを持って戻ってきた龍二。


『いやしかし、アルスはどこにいるのだ? 誰か見かけた奴はいるのか?』


叫ぶ花鈴は脇に置いといて、エルが皆に質問する。


「いや、オレ達そのアルスって人がどんな人なのかわからないし…。」


もっともなことを言うミント。


「外見はあれだ。髪はショートで翡翠っつーか緑色で目も同じ緑色の見た目若干男よりの女。」


「髪と目はわかったけど、男よりの女ってよくわからないんですけどー?」


「気合と根性とノリと勢いで知れ。」


「そんなの無理でしょー!?」


龍二の言い分にこれまたもっともなことを言うココア。気合と根性もあれだけど、ノリと勢いもどうかと。


「ふむ……そういう人は見てないな。」


「……私も……プリンと同じ。」


「ふーん……。」


龍二は後頭部を掻いて考え込んだ。


「……もしかしたら、まだ森にいるかもしんねぇな。」


「え、それまずいんじゃ…あの森にはドラゴンがいるのに?」


「へぇ、ドラゴンか。またファンタジーだな。」


「「言ってる場合か!!」」


ミントとフィフィが同時に龍二にツッコんだ。


「あいつなら大丈夫だろ。結構泣き虫だが剣の腕前はなかなかのもんだからな。」


「伊達に勇者やってないもんね?」


のほほんと水を飲む龍二にクルルは同意する。


「……勇者?」


「あ、言ってなかった? アルスは勇者なんだよ?」


「「「「…………。」」」」


ミントとココアとウララとリンは、魔王の次は勇者かよ、とか思ったり。


「……でも泣き虫なんだよね?」


「おう。」


「…………。」



ミントは勇者と魔王の固定概念が覆された気持ちになったそうな。



「…で、どうするのアンタ達?」


緊張感の欠片もない龍二を見て、ウララがこれからの方針を問うと、


「寝る。」


「「「「コラ。」」」」


真顔で返答した龍二にミントとウララと花鈴とフィフィが素早くツッコんだ。


「しゃーねぇだろ? ねみぃんだから。」


「そのアルスって人はどうすんのさ!?」


「さぁ?」


「「「「オイ。」」」」


ツッコミの速さ0.3秒。


「でも、とりあえずは、探した方がいい、です。」


「そんなもんか?」


「……じゃないと……アルス、もっと泣く。」


リンとリリアンに言われて、龍二はうーんと首を捻る。


「………しゃーねぇ。メンドいが探しに行くか。」


「仲間探しに行くのにメンドいってアンタねぇ…。」


「何か言った?」


「イイエー何でもございまセーン!?」


ウララの頚動脈にいつの間にか抜いていた龍刃を突きつける龍二。因みに薄皮一枚で止めてあるのでちょっとでも動いたら食堂は大パニックになること必須。


「ま、手がかりはないがテケトーに探してりゃそのうち見つかるっしょ。」


「……マイペースだねー。」


「いつものことよ。」


龍刃を鞘に収めた龍二に呆れたように呟くココアに慣れろと言わんばかりに肩をポンと叩く花鈴であった。





『ホー。』


「?」


と、いきなり頭上から鳴き声がし、龍二はチラっと見上げた。


「フクロウ?」


『ホー。ホー。』


窓から入ってきたフクロウが、龍二達の頭上を旋回していた。足には何か白い物を持っている。



【パサ】



そして、足から掴んでいた何かを落としていった。


「? あれ、手紙だ。」


「どれ。」


「って何で!?」


目の前に落ちた手紙を取ろうとミントが手を伸ばす前に龍二が素早くひったくった。


「え〜と……差出人は。」


そして封筒に書かれてある名前を読み上げる。


「ジャンヌ=ブライト。」



瞬間、ミントの周囲だけが凍りついた。



「? ミント?」


「…………。」


プリンが声をかけても反応無し。


「……。」



【ビリリ】



「って何で開けてんの!?」


ミントの代わりに花鈴が勝手に封筒の封を開け始めた龍二に勢いよくツッコんだ。


「いや、何かミントの奴が動かんから代わりに読んでやろうとな。」


「いやいや手紙はその人が読まないとダメ」


「読み上げるぞー。」


「って聞けー!!!」


軽く花鈴を遮って四つ折にされてあった手紙を開いて読み上げ始めた。


「え〜と……『へロー!! メルヘーン!!』あ、コイツバカだ。」



いきなりバカ呼ばわりする龍二にツッコむ人は誰もいなかった。



「ん〜? 何か次の文は文字の形が変わってるぞ?」


「? どういう意味ー?」


「つまりは別の奴が書いたってことだな。」


ココアの質問に軽く答えた。


「え〜…



『最近手紙書いてないから書いてみたけど、ミント元気かぁ? こっちは相変わらずジャンヌに弟子入りしてる二人がわけわからないことしてるけれど元気だぞ。まぁ特に用事というのはないけど、たまには帰ってこいよ?  シャーン



追伸。そういやジャンヌが緑色の女の子を拾ってきたんだけど、ミント何か知ってるか? 気絶してるからベッドの上に寝かせてあるけど、なんかうわごとのようにリュウジさんリュウジさんって言ってるんだけど。』



………………………。」



明らか彼らにとって重要なことが追伸に書かれてあったのでミントだけじゃなく全員の時が止まった。



「…………………ミントよ。」


「……はい?」


長き沈黙を破った龍二に呼ばれて、遅れながらもミントは返事をした。


「このブライトっつーのはオメェの苗字だよな?」


「……不本意ながら、そうですが何か?」


次に言われる言葉が大体予想できてるミント。


「……。」


「……。」


「案内。」


「………………………はい。」



ミントは今までで一番嫌な顔をしていた、と近くにいたエルは語る。




―――

―――――――

―――――――――――




「……はぁぁぁぁ。」


ということがあったので、ミントは激しく嫌な顔をしたまま駅に立っている。そりゃ龍二の仲間が我が家にいるんだから、案内するのは当然だと思う。


けれど神様というのは何て残酷なんだろう。何でよりにもよって我が家なんだよと、ミントは神を呪い殺したくなった。


「む? ミント顔色悪い。」


「大丈夫ミントー?」


「何なら俺がおんぶしてやろうかァ?」


「…うん、ありがとう。」


三人の優しさに触れ、ミントは幾分か気分がマシになった。


「おい何ボサっとしてんだ。さっさと乗っぞ。」


「…………はい。」


気遣いの欠片もない龍二に、幾分か殺意が沸いたとか沸かないとか。






【シュシュシュシュシュシュシュ……】


国立魔法学校の駅から出、機関車は煙を上げて力強く突き進んでいく。乗客は、そんな機関車の旅を楽しんでいた。




「おかーをこーえーゆこーおよー♪」


「くちーぶえーふきつーつー♪」


その客室で、クルルがテンション上げ上げで歌い、それに乗じてアオイも一緒に歌った。


因みに大人数なため、それぞれ通路を挟んでいる形で客室の座席に座る面々。意外と中が広いのが助かった。


「皆テンション高いねー?」


「そりゃあ機関車なんて乗るのアタシら初めてだから無理ないでしょ? ……まぁそっちはそっちで楽しそうだけど。」


そう言って、ジーっと目の前の光景を見つめる花鈴。視線の先には、ポトフの膝の上にチョコンと座っているココアがいたり。


「な!? べ、別に楽しくなんかない」


「じゃ何ですっぽり収まってるわけ?」


「そ、それはー……。」


「そりゃァ俺とココアちゃんはラヴラヴだからだぜ♪」


「何言ってんのバカーー!!」


とか言いながらココアの顔は赤い。


「…………。」


だが、それをジーっと見つめるのが約四名。



「……り、龍二?」


「あん?」


ふと花鈴は、隣でヘッドフォンを頭に付けながら窓の外を眺めてのんびりしている龍二に声をかけた。


「あ、あのさぁ? せ、せせせせっかくだからアタシもアンタの膝の上に…え〜と、乗りたいなぁ〜……なんて?」


「窓から飛び降りろ。」


「…………。」


龍二は視線を窓の外に戻しつつサラリと自殺を勧めた。



「ねぇねぇリュウくんリュウくん! 私もリュウくんのお膝の上に座りたい!」


「剣山の上にでも座っとれ。」


「足ズタズタになっちゃうよ!?」


そんなことを想像してしまったクルルは咄嗟に足を抑えて顔を青くした。



「……龍二。」


「あ?」


「…………………やっぱ何でもない……///////」


「はぁ?」


引っ込み思案なリリアンは顔を赤くしてそそっと引き下がった。


「ゆ、ユウ! 私も」


「「シね。」」


「って何にも言ってないんですけどって何でアンタまで言ってんのよ!?」


言いかけたウララにユウと龍二のダブルポイズンが炸裂した。


「……ふ〜ん……さてはカリン達って……。」


「んな!? な、何言ってんのよココア別にアタシはそんなわけ」


「なーんにも言ってないんですけどー?」


「ならそのニヤニヤ顔やめなさいよ!!」


「……/////」


「オメェらうるせぇ。」


そんな感じでワイワイやっていた。



「………………。」


が、約一名だけくらーい感じで窓の外を眺めている人物がいた。


「ん? どしたミント?」


「……あぁ、リュウジ。」


そんなくらーいミントに気が付き、龍二が声をかける。因みにミントと龍二は互いに向かい合ってる形で座っている。


「まさか酔ったか? エチケット袋なら持ってんぞ?」


「あ、ううん。別にそんなんじゃないから。」


「そうか。まぁ気分が悪ぃ時は言えよ?」


「…………あ、ありがとう。」


「気ニシナーイ。」


何故か妙に優しい龍二に、感謝はするけれど何か恐いミントは疑わしげな視線を向けた。


「? 何だ? 俺の顔に何か付いてるか?」


「い、いや、何か妙に優しいなぁって…。」


「さすがに気分悪そうにしてる奴を弄ることなんかできねぇよ。」


「……そ、そう。」


……激しく調子狂うミント。


「……もしかしてあれか? 家に帰りたくないと?」


「………ご名答。」


「あれま。」


正解を言われてさらにうなだれるミントに、適当に言ったのがまさかの正解でびっくらこいた龍二。


「んじゃあれか? 親同士仲が悪いとか?」


「………仲はいいと思われます。」



何でそんな変な敬語になってるのだろうか?



「何だ、じゃ問題ないじゃん。」


「……親自体に問題があるんだよ……。」


「……ふーん。」


憂いを帯びたミントを見つめつつ、龍二は再び外に目を向けた。


「…リュウジの家に溶ける母親とかっている?」


「バカ言ってんじゃねぇべ。いるわけねぇじゃん。」


「……だよね。」


我ながらなんちゅー質問してるんだと心の中で後悔するミントであった。



「……まぁ、とりあえずだな。」


「?」


突然龍二の声がいつもと比べて真剣味を帯びているのに気が付き、視線を龍二に向けるミント。


「例えどんな親だろうが、大事にしてやれよ? この世で親ってのは唯一の存在なんだからな。」


「………は、はぁ。」


真剣なだけでなく立派なことを言ってる龍二に、ミントはかなり戸惑った。


「まぁ、帰れば親がいるってのはいいことだ……少なくとも、俺よっかは。」


ふと、龍二の顔に陰が落ちる。


「……リュウジ?」


「…………。」


もしかしたら暗い過去があるのではないかと、ミントは何だか気まずい気持ちになった。


「……まさか、リュウジの親って……。」


「ああ……。」


ふぅ、とため息を一つ吐く。


「『羽伸ばしてくるー』っつって世界中を元気に飛び回ってるぜ。」


「オレのしんみり返して!!!」


最悪なパターンを予測していたミントは思いっきり叫んだ。


「しかもたまに帰ってきては目の前で抱き合って『ハニー!』『ダーリーン!』とかわけわからん横文字叫びながらクルクル回りだすし。」


「うわぁ何か想像するだけでウザい!?」


「おまけに夜中とかベッドの上でブレーンバスターとかジャイアントスイングとかしてるし。」


「うわぁスッゲェ近所迷惑ってか何でプロレス!?」


「おかげで俺もツッコミ役なんだぞ?」


「うわぁ想像できない!?」


「まぁ俺も時々一緒になって暴れるけど。」


「うわぁアンタ絶対ツッコミ役向いてないよ!?」


見事なテンポで次々とツッコミを入れていくミントであった。


「あぁ、リュウくんのお父さんとお母さん、すごかったよね。」


『ああ、あれは正直引いた。』


「いくら何でもあれはないわ。」


龍二の両親の性格を知っているクルルとエルとフィフィは、どこか遠くを見つめる目をした。


「まぁ、とにかく親は大事にな?」


「…今の話で説得力が皆無になりました。」


「ありま。」


ふたたびげんなりしだしたミントは、駅に到着するまでずーっとそのまんまだったそうな。


めでたしめでたし。



「いやめでたくないよ!?」


ツッコむ力は残っていた。






『むゅ……むゅ……。』


「スー……。」


因みに小動物コンビは網棚の上で気持ちよさそうに丸まって寝息をたてていた。


言い忘れてましたが、作者的にウフフと来るような展開がこの小説には詰め込まれていたりいなかったり。

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