10 俺達も巻き込まれたました日和 前編
長らく放置してすいません。勇魔以上の勢いにのって、こちらも更新させていただきます。次の更新はまたもや未定です。
「う…」
脳が覚醒し、彼がまず始めに感じたのは、眩しい光。そして体を包み込む柔らかい感触。その柔らかさに包まれてまた意識が飛びかけるも、目に飛び込んでくる光の刺激によって強制的に脳を覚醒させられた。
「………?」
目が光に慣れ始め、彼は自ら置かれた状況を改めて確認する。まず自分が今どういう状態なのかであるが、現在彼は柔らかいベッドの上に横たわっている状態である。先ほどの眩しい光は、窓から差し込んでくる日の光だったことが判明した。
「…!?」
脳が状況を確認するやいなや、彼は飛び起きる。ごく当たり前のようなこの状況ではあるが、彼にとっては驚愕に値するものであった。
「…ど、どこだ…ここ…?」
呆然と部屋を見回し、呟く。クローゼットや小さな丸テーブルにイス、それら全ては木製で作られており、全体的に落ち着いた雰囲気が醸し出されていた。
「俺は………確か………」
ここに至るまでの経緯を思い出そうと、彼は額に指を当てて考え込む。だが、それは一つの音によって中断された。
【ガチャッ】
「あ、ようやく起きたんだね」
「…え」
扉が開く音がし、そちらへ顔を向ける。家具と同じ木製の扉の前で、いかにも好青年といったような顔立ちの茶髪の青年が、柔らかい笑顔で立っていた。
この家の主なのだろうか? ともかく、青年の笑顔によって、彼は警戒心を若干緩めた。
「いやいや驚いたよ。玄関の扉を開けたら、君が倒れていたからね」
「…は、はぁ…」
部屋に入ってきてイスを引き、ベッドの横に隣接する形で座る青年に、彼は曖昧な返事を返す。そんな彼の様子に、青年は「あ、いけない」とうっかりしたという風に改まった。
「自己紹介がまだだったね。僕の名前はソラ。よろしくね」
青年、ソラは微笑みながら名乗り、彼もまたベッドの上で頭を下げた。
「お、俺は…あ、いや僕は」
「そんな畏まらなくていいよ。なんだかくすぐったいし」
フレンドリーな性格のソラに安心したのか、彼は咳払いして言いなおす。
「…雅………楠田雅です」
「…雅、君?」
自らの名を名乗った雅に、ソラが聞き返す。
「………ひょっとして君は………」
「え…なんですか?」
「あぁ、ごめん。それに関して少し説明しなきゃいけないね…けどその前に少し教えてもらってもいいかな?」
言いよどんだソラに雅は少し不安になるも、助けてもらった手前あまり図々しくできないと判断し、頷いた。
「君は、ここに来る前のことは覚えているかな? できるだけ細かく教えて欲しいんだけど」
「………ここに来る前………」
ソラに聞かれ、雅は先ほど中断していた思考を再び動かし、考え込む。
(…そうだ…俺は確か、ここに来る前…)
それは、突然のことだった。最近、学校に来ない日が続く龍二の様子を見に行くため、恭田を連れて龍二の家に訪れたのだった。龍二だけでなく、アルス、クルル、フィフィ、花鈴、そしてリリアンも近頃見かけていない。久美の家にも帰ってきていないという。
本来なら久美や香苗も来る予定であったが、久美は母親が風邪を引いたために看病で動けず、香苗は生徒会の緊急会議があったために来ることができなかった。よって予定が空いていた雅と恭田二人が任命された。
のだが………問題が起きた。
龍二の家が留守であるとわかった二人は、とりあえず中の様子を探るために龍二の家の庭へと回り込んだ………回り込んだまではよかった。
だが、庭の中央に空いていた大穴の上を漂う、ブラックホールのような揺らぎを発見して、尋常ではない事態だと瞬時に雅は理解した。
龍二達は、この穴に飲まれた可能性が非常に高い…そうとわかった雅は、すぐさま対策を練るために一旦ここから離れようと恭田に提案した。
その直後、恭田が足を滑らせた。雅が慌てて掴んだ。
結果、巻き添えくった。
「あんのクソ影薄野朗おおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「えぇぇぇぇぇ!!??」
ベッドの上で立ち上がった雅が絶叫。いきなりの豹変にソラ、びっくり。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ………すいません、突然………」
「い、いや、別にいいんだけどね…さすがに驚いたけど」
ベッドに座り込んで謝罪。至近距離で叫ばれたソラはキーンと耳鳴りがする耳を抑えて苦笑した。
「…とりあえず、話したとこでなんかまたブチギレるかもしれませんが話します」
「…うん、心得た」
とりあえずここに至るまでの経緯をソラに出来る限り細かく話す雅。途中でまたブチギレた雅。宥めるソラ。気を取り直してまた話す雅。ブチギレた雅。宥めるソラ。以下略。
「………こんな感じです」
「…なるほど、君は行方不明になった友人の様子を見にそその人の家に行ったところ、庭のところに変な揺らぎがあってそれに足を滑らしたその友人」
「雑草です」
「………うん、雑草が足を滑らせたのを助けようと慌てて掴んで今に至る…こんな感じだね?」
「そうですね今でも掴んだのをすんごく後悔してますよはい」
「………大変だねぇ」
それ以外かける言葉が思いつかなかった。
「…とりあえず、僕から言わせてもらうことがあるけれど…いいかい? 心して聞いて欲しいんだ」
「…なんスか?」
さっきより大分ぶっきらぼうになったのは多分雑草に関する怒りから来るものだろう。ソラはそう思うことにした。
「…ここは、君がいた世界とは違うんだ」
「………………あぁそうですか」
「あるぇー?」
雅の淡白な反応に、ソラは思わず口を3みたいにさせた。
「え、何その薄い反応? もうちょっとこう、シンジラレナーイとか、そういう反応が」
「いや、俺の近くに魔法使いとか勇者とか魔王とか、とゆーか俺が探してる友人の存在自体がファンタジーなんで大して驚きません」
「うそん」
「マジっす」
周りが異常なせいでものすごい順応性が高い雅に異世界なんてなんぞやもし、という感じであった。まぁ自分も雅のような年頃には十分ファンタジー経験したし、別にいいかととりあえず気にはしなかった。彼の周囲はなんか濃いことになってはいるけれども。
「…でも、異世界か…ここがどういうとこなのか、できれば教えて欲しいんですけど」
「そうだね。友人を探すにもまずは現状把握は大事だしね」
で、かくかくしかじか………。
「………すんません、すんごく省略された感があるんスけど」
「え、何か?」
「あくまで何事もなかったことにするんですねわかります」
めがっさ説明を省かれた気分に陥った雅は、深くはツッコまないことにした。ツッコんだら負けかな、と思っている。
「………とりあえず、ここがアクリウムという町であるということはわかりました」
「うん。でも、最近この町に君みたいな服装をした人達が訪れたっていう話は聞かないね。そういう話は案外耳に入るものだけど………そうだ!」
「え?」
ポン、と掌を叩いたソラに、雅は疑問符を浮かべた。
「雅くん、しばらくここにいない? その人達の居場所もわからないし、下手に動いたって迷うだけだからさ」
「え…でも、悪いですよそんなの」
ありがたい申し出ではあるが、雅は今手持ちがない。だがソラは、
「僕らのことは気にしないでいいよ。今はいないけれど、君みたいな年頃の子が一人いるからね。もう一人増えたところでどうということはないさ」
と言って、気前のよさを見せた。
「………じゃあ、申し訳ないですけど、しばらくの間だけお世話になります…」
確かに、不慣れな土地に一人、どこにいるのかもわからない龍二達を探しに行くのは無謀というものである。だから、せめて情報が手に入るまでここでお世話になることを雅は決めた。
「うん、改めてよろしく雅くん。僕も本当は異世界から来たんだけど、ここは慣れると住みやすくていいところだから、安心してね」
「はい、何から何までありがとうございます」
こうして、雅はソラの家でしばらく厄介になることが決まったのだった。
「あ、ソラ。その子起きたの?」
「…?」
扉の方から女性の声が聞こえ、ベッドの上から雅は声の方を見る。金髪で青い目をした女性が、穏やかな笑みをたたえたまま、銅製の鍋と三枚の皿を乗せた盆手に部屋に入ってきていた。
「エリア。うん、さっき起きて色々話してたところだよ」
「そう、よかった。もう大丈夫みたいね?」
「あ、はい。どうもありがとうございます。俺、楠田雅です」
エリアと呼ばれた女性に、雅は少しだけ顔を赤らめながらぎこちなく頭を下げる。顔を赤くした理由は、エリアの顔。誰から見ても、彼女の顔はまさに美人であるというこの一言に尽きる。雅自身、モデル並の顔立ちをしている女性達を友人に持ってはいるが、初対面ということもあって少し緊張気味になっていた。
「フフ、そんなに緊張しなくてもいいのに。あ、私はエリア=フラント。よろしくね、マサくん」
「は、はい」
ニッコリと微笑まれ、雅はますます顔を赤くする。それを見てソラは笑っていたが、彼女の手にある鍋を見て首を傾げた。
「ん? エリア、その鍋って…」
「ああ、これ? お昼持ってきたのよ」
サラリと当たり前のことを言ったエリア。
「………え゛」
その言葉に一瞬理解が追いつかなかったソラ。
「………はい?」
何故ソラが固まったのか理解できなかったものの嫌な予感が脳裏を過ぎった雅。
「………お昼? エリアが作ったの?」
「ええ、そうよ。けが人もいることだし、今日はおじやを作ってきたのよ」
カタン、と鍋と皿が乗った盆をテーブルの上に置くエリア。ソラはまるでこの世の終わりを見たかのような顔になって、雅はますます不安が大きくなっていく。
(…なんか、こんなことが前にもあったっぽいんだけど…)
そんなことを考えている間に、エリアがパカっと鍋の蓋を開けた。
『アギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!』
((なんか言っとるぅぅぅぅぅぅ!?))
鍋の中からなんかこの世のものとは思えない声が聞こえてきて、雅とソラの心の声がシンクロした。
「ウフフ、今日のは自信作なのよ♪」
((なんに対しての自信作ぅぅぅぅぅぅ!?))
嬉しそうに言うエリアにまたもやシンクロした。
そしてエリアはお玉で鍋の中を掬い上げ、皿に盛り付けていく。
((なんか形容しがたい色と形をしてらっしゃるぅぅぅぅぅぅ!?))
で、その盛り付けられた皿の上にある物体を見て三度目のシンクロをした。
「さ、どうぞ。たくさんあるからいっぱい食べてね?」
皿を雅に差し出し、ニッコリと笑うエリア。まだ皿からは『アギャギャギャギャギャ』とかいう声が聞こえる上に、なんか変な刺激臭する。
「………あ、ありがとう、ございます、です」
口調が無意識のうちにどっかの攻撃重視の白魔道士になりつつも、皿を受け取る雅。その時悟った雅の心境。
(………ニゲラレヘン)
それは、助けてもらった恩やエリアの笑顔に魅了されたとか、そんなんではない。
なんか笑顔に妙な迫力があったからだった。
多分、本人はそんな気なんてないのだろうと思う。が、雅にはそれが「逃げ場はねーぞ☆」みたいなそんな印象を受けた。
「…雅くん…お腹がすいていないなら、別に無理しなくてもいいよ?」
そんな雅を見て、自らも皿を受け取ったソラはせめて雅にだけでも危害を与えまいとした。が、雅はそんなソラの気遣いをありがたく思いつつも、首を振った。
「いえ、いいですよ。なんか俺、こういうの慣れてますから」
「………なんか、君とは初めて会った気がしないね。なんでだろ?」
「ははははははははは」
雅のそんな切ない言葉に、ソラは心底彼に同情した。というかなんか近いものを感じた。
出会って間もないのに、二人の間でなんか変な絆が芽生えようとしていたのだった…。
因みにこの後、雅とソラは一日中悪夢に苛まれた。
~その頃の魔法学校~
「…ねぇリュウジ?」
「ん? どしたぁミント」
中庭の草原の上でミントと龍二は並びながら座ってポカポカと日向ぼっこをしていると、ふとミントが隣の龍二に声をかけた。
「なんかさぁ。こうやって会話するのって久しぶりな感じがするんだけど?」
「そうかぁ? まぁ俺なんて二年間ほったらかしにされたような気分になってるけど」
「何それそっちの方がわかんないんだけど」
「そうだな。俺もわかんね」
謎な会話をするミントと龍二。空を見上げれば、白い雲の間を抜けるように飛ぶ数羽の小鳥たち。
「………まぁいいんじゃねぇの? 平和なんだし」
「………そうだねぇ………あ、コーラ一本飲む?」
「いいのか? お前の好物だろ?」
「一本くらいだったらいいよ」
「そか。サンキュ」
ミントにコーラのビンを手渡され、二人一緒に蓋を開けて飲む。
「…コーラってそんな飲まねぇけど、たまにゃいいもんだな」
「でしょ?」
「………平和だなぁ」
「そうだねぇ………」
コーラ片手に、二人は太陽の光を浴び続ける。
和やでゆる~い空気は、いつまでも二人を包み込んでいた。
「というかオレ達の出番ってこれだけ?」
「気ニシナーイ」
~おまけ~
龍二「さて、今回ちょいと一部のキャラクターの扱われ方について軽く俺とユウが説明していこうと思う」
ユウ「…一応、よろしく頼む」
龍二「まず初めにウララと花鈴だが」
ユウ「サンドバッグ兼弄られ役だな」
龍二「異議なし」
ユウ「それで、リンやその他に関してだが」
龍二「これは作者がもう一度めろん先生んとこの学校日和を読み直すことで検討していくそうだ」
ユウ「ダメ作者だな、お前のところは」
龍二「否定しねぇな。事実だし。時間設定間違えるし、現実世界でも書く時期間違えるし」
ユウ「ホントにダメダメだな」
龍二「えーとそんでもう一人。葵についてなんだが」
ユウ「ああ」
龍二「………こいつは弄れんな。弄ったら世界が滅びかねん」
ユウ「わかっているな。さすがだ」
花・ウ「「差別ひでえええええええええええ!!!!????」」
以上、茶番でした(めろん先生、ごめんなさい。もっかい読み直して扱い方考えますとゆーかまた何か不都合な点あったら教えてください。あとついでに次回は雑草ならぬ恭田が出ます)