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1 出会いました日和

読む前に注意をいくつか。


1.この作品はめろん先生とのコラボ作品です。当然、許可はもらっておりますことをここに記します。


2.時々キャラの性格が変わってるかもと思いますが、そこは目を瞑ってくれたら嬉しいです。


3.なお、当然のことですが、感想欄で中傷、荒らしなどのようなコメントを発見した場合、有無を言わさず消去します(誤字脱字、文章のアドバイス等は受け付けます)


4.クロスコメディーなんてクソ食らえ!! と思われる方は読むことをオススメしません。


5.めろん先生の作品と私、コロコロの作品を先に読んでいただくとわかりやすいです。とくにめろん先生の作品サイコー。


6.因みにオリジナルの魔物およびキャラ出ます。


以上を踏まえた上で、この作品を読んでくださいまし。


んじゃあレッツで・ゴーなり!

ある晴れた日のこと……ここ、龍二邸の庭では、いつものようなまったりのんびりした時間が流れていた。



「ご、ごめんなさいリュウジさん! ホントにごめんなさい!」


「謝ります! 謝りますから許してリュウくーーーーん!!!」


「フハハハハ……人の大切な丼割っといて許せとは、いい度胸してまんな〜? あぁ?」


「で、ですからあれは不慮の事故で…」


「そうそう! アルスが暴れるから!」


「な!? さ、最初に暴れだしたのは魔王でしょ!?」


「違うもん! アルスだもん!」


「いっつもいっつもボクに罪を擦り付けて! いい加減自重してください!」


「だって事実だもん!」


「違っがう!! あれは明らか魔王です!!」


「アルスでしょ!!」


「魔王!!」


「アルス!!」


「魔王!!」


「アルス!!」


「魔王ーーー!!!」


「アルスーーーー!!!」


「よしお前らが死にたいということはわかったというわけで死んで♪」


「「みゃああああああああああああああ!!!!????」」



…………まったりのんびりした時間の空間に地獄絵図が展開された。






「さぁて……暇だし、今からどうすっかな。」


「「……どうしましょうかね……。」」


とりあえず庭の草の上に飛び散った血を適当に洗い流してから龍二は縁側の上に腰掛ける。アルスとクルルは頭に包帯を巻き体にロープを巻きつけて、ギザギザの板の上で満身創痍の状態で正座していた。


「……マジで暇だな……。」


「暇ならまずこの板とロープを解いてくださ」


「何か言った?」


「すいませんでした。」


言いかけたところをものごっつ鋭い目で睨んできた龍二に圧倒されてすぐさま謝るアルス。


そして龍二は、ふと隣にあった植木鉢を引き寄せ抱える。


「……何しようかマっちゃん?」


植木鉢に話しかけたところで何にもならない


『ジェララァ。』


……こともなかった。


植木鉢からニョキッ! とでかい蕾のような頭に牙が生え揃った口とそこから出た紫色の舌がある、植物と称していいのかわからんもんが出てきた。


龍二の愛玩(?)植物のマっちゃんである。


「「…………。」」


それを見るたびに、過去のトラウマによってアルスとクルルは軽い恐慌状態に陥いるのであった。


「……アンタねぇ、いい加減それと戯れるのやめなさいよ。」


「無理だろ。」


「即答!?」


『フィフィ、もうあきらめろ。』


「ミャ〜。」


フィフィがテーブルの上でサクランボを頬張りながら呆れ、エルも同じように呆れた感じにテーブルに立てかけられたまま言う。隣にいる球に関しては関係ねぇとばかりに大あくびした。


つかぶっちゃけて言うところ、龍二は何気にマっちゃんを可愛がってるのでやめろというのが無理。


『ジェラララァ♪』


「コラコラ、顔を舐めるなよ甘えん坊だなお前は。」


その証拠に、めっさ甘えてるマっちゃんと楽しそうに戯れてる龍二。


ああ、平和な午後……。




【ピンポン♪】


「? 誰だ?」


突然、インターホンが鳴り響き、龍二は一旦マっちゃんと戯れるのをやめて靴を脱いでリビングへ上がった。


「はい……おお、オメェらか。入れ入れ。」


インターホンの開錠ボタンを押し、訪問者を招き入れる龍二。



「……こんにちは。」


「いらっしぇい、リリアン。他一名。」


「誰が他一名か!?」


扉を開けて入ってきたのは、戦乙女リリアン。いつもの如くのんびりとした目つき。


二人目に入ってきたのは、ポニーテールがトレードマークの花鈴。気が強いが悉く龍二にいじられる運命にある悲劇の少女。


「……暇だから、遊びに来た。」


「おう。ちょうどこっちも暇だったし、大歓迎だ。リリアンだけ。」


「だけ!?」


「……でも、あの二人は暇に見えない……。」


「そーゆー趣味の連中だから。」


「「違う!!」」


「…わかった。」


「「納得しないで!!」」


「つか何でああなってんのよ……。」


リリアンの激しい誤解に二人はボロボロになりながらも訴えるがもう遅い。


「あれ? リリアン、クミはどうしたの?」


「……久美ママと……ショッピング。」


「お前は行かなかったのか?」


「……親子二人の時間……邪魔したくない。」


気遣いができるいい子。


「うし、じゃ乱入したろか。」


「うん、やめたげてね龍二?」


気遣いができない悪い子。


「……ところで……何して遊ぼうか?」


「うむ、そだな。何かするか。」


言いながら、二人を許したのか、龍二はアルスとクルルのロープを龍刃で切り、開放してあげた。


「「うきゅ〜……。」」


「ちょ、ホント大丈夫アンタら?」


見事に前のめりに倒れこんだ二人。しばらく立てそうにない様子。そんな二人を介護する花鈴だった。


「……あ、そういえば。」


「?」


何か思い出したかのように、龍二は和室へ行き押し入れを開ける。


「え〜〜〜〜〜っと…………あ、あった♪」


やがて、ある物を持ってリビングへと戻ってきた。


「? …それは…?」


そのある物が珍しいのか、小首を傾げるリリアン。


「こいつか? これはな、今でも根強い人気を誇る、超次世代型パーティゲーム……その名も、」


ドン! と樽のようなそれを置いて、力強く宣言する。


「黒髭危機一髪ゲーム!!!!」


「…………。」



それは超次世代型とは言わねえよ、的な眼差しで龍二を見つめる花鈴。うん、わかるその気持ち。



「ルールわかるか?」


「【フルフル】」


無言で首を横に振るリリアンに、しゃーねぇなとばかりにため息を吐く龍二。


「いいか? この樽の周囲にある穴に、このプラスチックの短剣を一本ずつそれぞれ順番に差していく。この穴のうちどれか一つに剣が刺さると、この人形がピューンと上へ飛んでいくという仕組み。因みに当たりの穴は毎回変わるから、スリル満点ハラハラドキドキ、楽しいことこの上ないゲームなんだぜHAHAHA。」


分かり易いルール説明なんだけど最後の笑いはいらないと思う。


「……納得。」


でもリリアンは別に気になってないからツッコまなかった。


「じゃあ始めっぞオメェら。」


「【コクリ】」


「え、アタシもやんの?」


「たりめぇだささっと座らんかいボケ。」


「…………。」


未だ痺れてるアルスとクルルを置いておき、花鈴は釈然としないまま龍二とリリアンに向かい合う形に座り込む。


ちょうど、黒髭を囲む形となり、いつでも勝負できる状態となった。因みに庭の芝生の上でやってる理由は、ノリだとのこと。


「……じゃ、まずはジャンケンね。」


「おー…。」


「うーし、行くぞー。最初はグッチョチョのみのも○た!!!」


「何それ!?」


最初はグー、という掛け声が普通なのだが、訳のわからない掛け声に圧倒されつつも花鈴はパーを出した。対し、龍二はグー、リリアンもグー。つまり先行は花鈴となる。


「あ、やったアタシから。」


「ふむ、ちゃっちゃと頼むぞ。」


「……ガンバ。」


気合を入れるため、意味もなく服の袖を捲くり上げる花鈴。そして短剣の山の中からおもむろに一本、赤い短剣を取り出し、眼前にかざす。


「よぉし、やるわよ〜……。」


「いきなり当たり引くなよ?」


「【コクリ】」


「だーいじょうぶよ。こう見えて、アタシは運が人一倍強いの。」


「あ、そ。」


「……ムカつくわねその言い方。」


とか言いつつ、ゆっくりと黒髭の真正面にある穴を選び、剣先を向ける。


「……行くわよ。」


「おう。」


「……ゴク。」


真剣な花鈴と、いつに無く若干緊張している龍二、そして唾を飲み込む音をわざわざ口で表現する意味不明なリリアン。


「「「「『『…………。』』」」」」


その様子を固唾を呑んで見守るアルス、クルル、フィフィ、エル、珠、マっちゃん。


緊張の一瞬……。


「……うりゃ!」


【カチッ!】


思い切り短剣が樽に埋まった。


『…………。』


沈黙がリビングに流れる………………………。





「……うし!」


しばらく待っても何も起こらず、花鈴はガッツポーズを取った。


「じゃ、次は龍二かリリアンね。」


「……ハラハラした。」






「何言ってんだ。お前の負けだ。」


「………へ?」


突然、龍二が呆れたように言い、花鈴は素っ頓狂な声を上げる。


「ほれ、よく耳すましてみろ。」


「な、何言って……。」




チックタックチックタックチックタックチックタックチックタック…………




「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


「……ねぇ龍二様?」


「何だ。」


「何か樽ん中から時計の音が聞こえるんですが?」


「そうだな。」




チックタックチックタックチックタックチックタックチックタック…………




「……何仕掛けたの?」


「おう、臨場感をアップさせたろかーということでな。当たり引いたら爆発するように、黒髭ん中に時限爆弾埋め込んどいたんよ。」


「……へぇ…………………因みに爆発力はどんくらい?」


「ん〜、まぁ一軒家が吹っ飛ぶくらいだな。安心しろ、この家は思いのほか頑丈だから。」


「あ、なーんだ。じゃ安心ね♪」


「だろ?」




チックタックチックタックチックタックチックタックチックタック…………




「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


「……ねぇ、ついでに一つ言いたいことあるんだけど?」


「何だ?」




チックタックチックタックチックタックチックタックチックタックカチッ!






「アンタバカでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」



その日、町のとある一軒家から閃光が迸った。












〜龍二〜



【チュン、チュン、チュン、チチチチ…】



「……………………………。」



【チチチチ……チュンチュンチュン】



「………………………………ん?」



うつ伏せのまま倒れていた龍二だったが、小鳥の囀りを聞いて目を覚ました。


「ああああああああ………よう寝たべ。」


起き上がって上半身だけ思いっきり伸びをし、気持ちよさそうな顔をする龍二。


「……ふぅ。」


空を見上げ、余韻に浸る龍二。そよ風によって葉っぱが舞い、周囲の木々がざわめき、心地よい音色を奏でる。さらに地面のふかふかの芝生が最高に気持ちよく、眠気を誘う。


「……二度寝しよ。」


再び芝生に寝転がり、目を閉じる龍二。やがて息は、穏やかな寝息へと変わっていった……。





『って何寝とるか貴様! 起きろ!!』


「んんんんんにゃ?」


突然エルの声が響き渡り、龍二はガバリんちょと起き上がった。


「あ、おっはーエル。」


『おっはー……って何言わせるか貴様。』


『寝ぼけ眼ですね。』


「ありゃ。珠もおんのか。」


『はい。』


見れば、足元には鞘に収まったエルと丸まったまま寝てる珠が。


「お前ら何してんだ?」


『……こっちが聞きたいわ。』


『そうですよ。』


「? どゆこっちゃ?」


『…………ここはどこだ。』


「ここ?」


龍二は立ち上がり、周囲を見回す…………木、木、木、木、草、草、木、草、木、草、草、木…………。


「おお、自然たっぷり。」


『栄養たっぷりみたいに言うな。』


エルのツッコミが炸裂した。


「じゃ、何も無い?」


『いや確かに無いが。』


「緑を大切に。」


『何故宣伝してる。』


「皆で守ろう緑の地球。」


『だから宣伝するな。』


「つかここどこよ。」


『宣伝するなと……いやそれで合ってる!!』


危うく引っ掛かりそうになったエルでした。


「ん? つかさ、何で俺こんなとこで寝てんの? さっきまで家にいたじゃん俺ら。後他の連中は?」


『知らん。私も先ほど目覚めてから他の連中の気配を探したんだが、全く感じられん。』


『因みに私もさっき起きたところですニャ〜…。』


緊張感も無く再び寝ようとする珠。


「……しゃーねぇな。」


そんな珠をヒョイと自分の頭に乗せ、エルを右の腰に付けて立ち上がった龍二。


「ま、あれだ。疑問に思うならまず行動。」


『そうだな。』


「ンミャ〜ァ…。」


珠が龍二の頭の上であくびした。


「え〜っと…………うし。」


ひとまず、足に力を込める。


「……飛翔せよ。」

【ブゥン】


すると、足元から青い光が発生し、龍二の靴にまとわりつく。


「行くぞ。」


『? 行くってどこに』


エルが言いかけてる途中で、龍二はジャンプした。


ジャンプして、そのまま落下…………ではなく、いつまでも空中に浮いていた。


『ってえぇ!? 飛んでる!?』


「『龍飛翔りゅうひしょう』。実にわかりやすい技名だろ?」


そんなこと言いながら、高度を上げる龍二。今じゃもう木なんて軽く飛び越えてる。


「………ほぉ、広いな。」


掌を眼前にかざし、周囲を見回す龍二。そこに広がるのは、広大な木々、イコール森。意外に広く、ちょっとビックリした。


「…………およ?」


『何だ?』


だが、若干遠いが丘の上にある城らしき建物を発見。こりゃラッキー♪ と龍二は指をパチンと鳴らした。


「うし、あの城みたいなとこ行くか。」


『……他の皆はどうするのだ?』


「あいつら死なねんじゃね?」


『んな軽く言われても……。』


そんな軽い感じで言う龍二にエルが呆れた。





「うわあああああああああああああ!!??」


「ん?」


『へ?』


突然、背後から叫び声が聞こえてきて龍二はクルリと振り返った。





【ドカアアアアアン!!】





何かとぶつかった。


「ありゃ。」


ぶつかられた本人は屁のカッパ。ぶつかってきた相手は弾き飛ばされて綺麗な放物線を描いてそのまま重力に逆らうことなく自由落下。


「うにゃあああああああああああああ!!!!」


「あ、落ちた。」


『落ちましたね。』


『落ちたな。』


弾き飛ばされた人物が猫のような悲鳴を上げながらピューと急降下してるのをのんびり眺める一人と一匹と一本。


『……助けなくていいのか?』


「あ、忘れてたわ。」


『天然ですね。』


エルと珠に言われて、龍二は体を斜め下に向けてロケットの如く飛び出した。


『うにゃにゃにゃにゃ! 速いですー!!』


「掴まってねぇと地面に落ちてミンチだぞ。」


『私は掴まれないんだが。』


そんな事言い合ってるうちに、ドンドン地面が近づいてきている。こりゃもう落ちてる人が地面と色んな意味で運命的な出会いを果たすのは時間の問題だ。


「あ〜、でもこれ軽くやばいな。」


龍二もそれなりの速さで落下してる人を追ってるが、その前に地面にぶつかることは必須。


『もっとスピード上げればよいではないか。』


「いやそれだと一瞬で追いついて何のおもしろさもねぇじゃん。」


『何を求めようとしてるのだ貴様は。』


「スリル&ショック&サスペンス&大爆笑。」


『いらんわそんな四拍子。つか最後のいらないだろ。』


エルのツッコミが冷ややかに炸裂してる間にも、地面はぐんぐん迫る。


「しゃーねぇなぁ。んじゃスピードアップ。」


音速を超えた速さで龍二は地面に突っ込んでいく。


「ほいっと。」


「うわぁ!?」



【ドズン!!!】



そして落ちてる人をキャッチすると同時に地面に激突。爆音と同時に砂埃が周囲を漂った。



「…………。」



やがて煙が晴れていき、そこにあるのは今しがたできた小規模なクレーター。そして真ん中には仁王立ちしてる龍二と、その龍二にお姫様抱っこされてる人物。


「ビクトリー。」


「ニャ。」


「何が!?」


顔色一つ変えずにそんなこと口走った龍二と珠に、現在お姫様抱っこされてる人がツッコミいれた。


「お、そだそだ。アンタ大丈夫?」


「へ? ……あ、そ、そっか。ありがとう。」


お姫様抱っこから開放し、龍二は安否を気遣う。相手はドモりながらも礼を言った。


「…………。」


「…………。」


「…………。」


「…………な、何?」


「んじ〜。」


龍二は相手の顔に自らの顔を近づけてセリフを付けながらよ〜く観察する。


何か黒と白の色合いの帽子と、アルスのようなグリーンの瞳、中性的な顔立ちに、黒いコートみたいな服……



とどめに帽子からはみ出た、一際目立つ赤と緑の左右色違いの髪。



「…………人生いろいろ人もいろいろ。」


「ねぇどこ見て言ってんのさ?」


「さてどこでしょう。」


「…………。」


何だかダークな空気を纏い始めたクリスマス少年。一番しっくりくるネーミングだと思う。


「? あれ? どったん?」


『貴様のせいだろ。』


「はえ?」


真っ暗な少年に声をかけるも、エルに言われて首傾げた龍二でした。





「ミントォォォォォ!!」


ガバチョー。


「!? ってうわぁぁ!?」


「おりょりょ。」


っと、いきなり少年の背後から誰かが飛び掛ってきて、少年にしがみついてきた。


「心配したぞ!? さっき落ちたからマジで心配したんだぞ!? 怪我ないか!? 怪我ないよな!? ミントーーーーーーー!!!!」


「ぐぇ……ポト、フ、ちょっとぐるじ……。」


「…………。」


しがみついてるのは龍二のような黒髪の少年。龍二よりかは若干整っているが、クセが目立つ。そして右目に伊達政宗みたいな黒眼帯。ついでに左耳の十字架のピアス。しかもものごっつハンサムボーイ。


でも抱きついてるのを見てるとかなり鬱陶しい。


「お、珍しい形の雲。」


一人取り残された龍二は、どこ吹く風で青空を眺めていた。




「ちょっとー何してんのミントー?」


「あ、何か増えた。」


突然、空から箒に乗って誰かがスィ〜っと降りてきた。


『って何故に箒!?』


「いいじゃん。ファンタジックで。」


『そんな理由ですかぁ?』


「オゥイエ。」


『おいコラ。』


とりあえずそこでエルと珠を交えた会話という名の漫才を打ち切った龍二は、降りてきた人物を眺める。軽くウェーブかかった桜色の髪と同じ色の瞳をした、可愛らしい少女……



「コッコアちゃーん!」


【ガバァ!】


「うひゃあ!?」


に、黒髪の少年が箒から降りてる最中の少女にガバリと抱きついた。つかさっきまでクリスマス少年に抱きついていたのに行動速すぎ。


「あ、危ないでしょー!? 落ちて怪我したらどうするのー!?」


「そん時は俺が愛の処方薬で回ふk」


「終焉の闇、ダークネスサクリファイス!」

【ドカァン!!!】


何か黒い十字架が炸裂して龍二目掛けて吹っ飛んできた黒髪少年。


「リリース!」


「ごふぉお!?」


そして何故か殴り飛ばして返す龍二。



【チュドォン!!】



とどめに少年は大木を粉々に粉砕しながら吹っ飛んだ。


「ポ、ポトフゥゥゥゥ!!??」


「……決まった。」


『何がだ。』


クリスマス少年が吹っ飛んだ黒髪少年を追いかけ、龍二がビシっと決めポーズ、エルが冷ややかなツッコミを入れた。


「……って、あれー? 誰?」


「ん?」


と、ここで初めて桜色の髪をした少女が龍二に気付く。対し、龍二も決めポーズを解いた。


「誰って…………そんな俺の名前知りたいか?」


「ううん、別にー。」


「そうか、ならいい。」


『待てコラ。』


何か自然と変な会話を繰り広げてる龍二と少女にエルが再びツッコミかました。


「んだよエル?」


『……普通こういうのは自己紹介すべk』


「あ、そうそう。重要なこと忘れてた。」


『聞けコラ。』


「?」


突然龍二が右の掌をポンと叩き、少女は何してんだこの人みたいな目をしながら首を傾げた。


「あんよ、ここ一体どk「「うわあああああああああああ!!??」」……。」



なぁんでこう急な展開ばっか起こんのかなぁと内心ちょっとイラっときた龍二であった。



「え、何ー?」


突然響き渡った悲鳴に、少女は振り返る。そこには、先ほど吹っ飛んだ黒髪少年とクリスマス少年がものっそい必死な顔して並んで走ってきた。


「? 二人ともどうし」


「に、ににににに逃げろーーーーー!!」


「えええええ!?」


突然二人に両腕を掴まれ、全力疾走で逃げ出す。





『ボオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』





んで何かいきなり人間とは思えない怒声が響き渡ったかと思うと、木々をドッカンバッカンなぎ倒しながらバカでかいマンモスみたいな動物が現れた。


「あ、あれ? あれって」


「ポトフが寝てるあいつ叩き起こしちゃったからでしょおおお!!!」


「だってしょうがないじゃん吹っ飛んだんだからさあああああ!!!」


キョトンとしてる少女を差し置いて、走りながら叫ぶ少年二人。そんな彼らは龍二の横を通り過ぎた。


「!? って何してんのさ早く」


クリスマス少年が振り返ったと同時に、龍二は迫り来るマンモス目掛けてジャンプした。


【ドン!】


そして眉間に一発、飛び蹴りを食らわし、空中で一回転をして再び元の位置へと膝をついて着地する。何故かマンモスは飛び蹴りを食らってから動かなくなった。


「……『龍牙瞬脚りゅうがしゅんきゃく』。」


ゆっくり立ち上がり、右手を上げる。


めつ。」


そして右手で指を鳴らす。



【ドォン!!!!】

「「「!!???」」」



瞬間、マンモスの体中に無数の靴跡が付き、背後の三人は驚く。


「次は相手を選びな。」



【ドスゥゥゥン……】



龍二が呟くと、マンモスの巨体がゆっくりと横に倒れていき、地面を震わした。


『お見事。』


「……いや、呆気なさすぎてどうかと思うんだが。」


「ふにゃぁぁぁぁ……。」


大あくびをかます珠と困ったように後頭部を掻く龍二と賞賛するエル。



「「…………。」」


そして何かわからないけど目の前の青年に畏怖の念を抱くクリスマス少年と少女と、


「す、すっげー!!」


見事な足技にキラキラと尊敬の眼差しを向ける黒髪眼帯少年なのでした。









〜アルス〜



龍二がなんやかんややってるその頃……



「あいたたたたた……。」


頭を擦りながらゆっくりと起き上がったアルスは、目に涙を浮かべた。


「うぅ……コブできちゃったかなぁ?」


後頭部の安否を気遣いながら立ち上がる。




「……って、あ、あれ?」


が、擦るのをやめてキョトンとした感じに呆気に取られた。


何か、中世ヨーロッパな雰囲気丸出しな石畳の地面にレンガ造りの家が周囲に立ち並ぶ、明らか日本じゃない風景がアルスを取り囲んでいた。


「へ? あれ? り、リュウジさん? フィフィ? 魔王? リリアン? カリンさん?」


突然のことに困惑しながらも、龍二達の名前を呼ぶアルス。だが返事はなく、ただ風がヒュ〜っと吹くのみ。


「……………………………。」


返事がないのがわかると、目をパチクリして、


「……………………………。」





(ええええええええええええええええええええええ!!!??? どうなってるのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!???)



心の中で思い切り叫んだ。








「うぅぅ………ここどこなんですかぁぁぁ?」


ほぼ半泣きになりながらも、アルスは数分歩いていた。このような町並みはアルスらの世界によくあるらしいが、正直日本の生活に慣れてきていたのでこのような光景に正直ビビっていた。ああ、慣れっていうのは恐ろしい。


「……リュウジさ〜ん……どこ〜……?」


弱々しい声で龍二の名を呼ぶアルスだが、当然の如く返事は返ってこない。


「う〜……フィフィ〜……リリア〜ン……。」


仲間達の名前も呼ぶが、やっぱり返ってこない。


「カリンさ〜ん……まお……………カリンさ〜ん……。」


魔王と言いかけたところを言い直し、もう一度花鈴の名を呼ぶ。頭の中で、正直クルルに頼ったところでどうにもならない、という意外とキッツイ考えが頭をよぎったせいである。


「………はぁぁ………。」


一時、渋谷での経験がアルスの頭を過ぎる。しかも今回はフィフィがいないし、天介達もいそうにない。てか当然いない。


「……どうしよ……。」


一人ぶつくさ言いながら歩き続けていると、


「…………?」


ふと、足元にある物に目を向けた。


「水溜り……?」


何故か道のど真ん中にそれほど大きくない円形の水溜り発見。


「…………。」


しばらくその場で水溜りを見つめながら立っていると、やがて何を思ったのかトコトコと水溜りの前まで移動、そしてチョコンとしゃがみ込んだ。


「…………。」


汚い水なのか、何か不気味に緑色をしている水溜り。それでも一応は爽やかな青空に浮いている雲を映し出していた。それをアルスは切ない目で見つめる。


「……はぁ……。」


ため息ばっかり吐いてると幸せが逃げるという。


「もうすでに不幸せですよ……。」


ナレーションに語りかけちゃイヤン。


「………はぁ〜………。」


長いため息をはき、ふと空を見上げる。雲が所々浮いている青空、そして心地いい風。少なくとも、これらが何とかアルスの気持ちを和らげてくれた。


「……ボクって、ホントは何かに取り憑かれてるのかなぁ……。」


元気のない声で呟き、流れ行く雲を見つめる。


「…………………はぁぁ。」


またため息を吐き、見上げるのをやめてもう一度目の前にある首に目を向けた。





…………………





「…………。」


「…………。」


「…………。」


「…………。」


「ゲヘヘ♪」


しばらく見つめあっていると、水溜りに浮いた緑色の髪を三つ編みにしてメガネをかけた女性の生首・・が、なんつーか変な声で笑いかけた。


「……………………。」


そしてそんな生首を見ていたアルスは、




「……はにゃむにゃへにゃもにゃめにょぉぉぉ………………。」




さらに変な声を上げながら後ろへパッタリ。



「アララ。」


そして最後にアルスが目を回して意識を失う直前に見た物とは。




水溜りから泡立つような音をたてながら人が生えてきた光景だったそうな。








〜クルル、フィフィ〜



「ミュ〜……。」


「キュ〜……。」


ところかわって、こちらは龍二達がいる森……なのだが、彼らとは離れた位置にある木の根元。クルルとフィフィが、揃って目を回しながらうつ伏せに寝ていた。


目を回している理由は簡単、木の上から突然クルル達が出てきて、そのまま枝を次々折りながら落下、おかげで衝撃は和らげたが、クルルが尻餅ついた上にそのまま痛がってのたうち回っていると、フィフィをその時にペッチャンコにして200ポイントのダメージを与えた上、ついでに自ら木の幹に頭をクリティカルヒットさせて160ポイントのダメージを受けたから。


「ミュ〜……。」


「キュ〜……。」


まぁ、そんなわけで只今絶賛気絶中の二人……。



【カサ】



すると、彼女達の近くの草むらが小さく動いた。


「ミュ〜……。」


「キュ〜……。」


それでもまだ気絶中の二人。



【カササ】



さっきより大きく揺れる草むら。それでも二人はまだ起きない。



【カサササ…カサ】



そして、遂にそれは草むらから現れた。


『……?』


で、気絶しているクルルとフィフィを見て長い耳をパタパタ動かし、そして首……とゆーか首がないので体全体を傾けた。


「ミュ〜……。」


「キュ〜……。」


さっから同じような呻き声を上げてるクルルとフィフィに、その短い足を必死にちょこちょこちょこと動かして近づいた。


「ミュ〜……………み?」


ようやく覚醒したクルルは、顔に泥を付けながら顔を上げて霞んだ視界のまま目を開ける。


「………!?」


が、目の前にいる生物を見て一気に視力が回復した。


「……か……。」


そして、ようやく紡げた一言が……これだ。ワンツースリー。←(ザ・ベ○トハウス風)



「かわいい……!」



そして返答するかのように、その生物も可愛らしい声で鳴いた。



『む〜。』





「キュ〜……。」


はよ起きろフィフィ。








〜リリアン〜



「…………。」


その位置から少し離れた場所で、リリアンは手入れのされた道の上でうつ伏せに倒れていた。


「…………。」


そして、リリアンの傍でしゃがみ込んでじっとしてる少年が一人。流れるような水色の長い髪を後ろで一本に纏め、風がそよそよと吹くたびにその髪も静かに揺れる。水色の瞳は、今にも眠りそうなほど半開き。


で、一際目立つのは何故か抱えられている枕。


「…………。」


少年はいつまで経っても起きないリリアンを興味深げに見つめていること、早三分。カップラーメンが出来上がる時間だ。でも今はそれ関係ない。


「…………。」


そしておもむろに足元にあった枝を掴むと、


「ツンツン。」


リリアンの頭を突っつき始めた(ついでに効果音付)。


「ツンツン。」


全く反応がなく、つつくのを続ける少年。


「ツンツン。」


それでも反応がなく、さらにつつく少年。


「ツンツン。」


やっぱり反応がなく、さらにさらにつつく少年。


「ツンツン。」


どうしようもないくらい反応がなく、さらにさらにさらにつつく少年。


「ツンツ」


「ん。」


「ぴわ!?」


いきなりリリアンが顔を上げてびっくらこいた少年は慌てて立ち上がり、枝をポイした。


「……?」


そんな少年に気付かず、体を起こして周囲を見回すリリアン。少年に負けず劣らずトロンとした表情からは、わずかな動揺が見られる。


「……ここは……?」


明らか龍二邸とは違う場所に戸惑うリリアンはゆっくりと立ち上がった。


「……痛い。」


「?」


と、いきなり下から声が聞こえてきたので下を向くと、そこには尻餅をついた少年が。さっき驚きすぎて思い切り尻をついたが、両手で枕を抱えていたため衝撃を和らげることができなかったらしい。じゃ枕放しなさい。


「………大丈夫?」


そんな彼を見て、リリアンはそっと手を差し伸べた。


「うむ、大丈夫。」


右手を枕から放し、その手を握る少年。よっこらせっという感じに立ち上がり、右手だけで尻についた埃を払う。


「そ……よかった。」


「うむ。」


「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


「……?」


「……?」


無言が続き、リリアンが首を傾げると少年も首を傾げた。余談だが、リリアンの方が少年より背が高いため、少年は若干リリアンを見上げる形となっている。


「……。」


「……。」


「……。」


「……プリン。」


「?」


突然、何故か食べ物の名前を言い出した少年にリリアンはさらに疑問符を浮かべた。


「僕はプリン=アラモードだ。」


「……?」


「?」


リリアンは首を今度は反対側に向けて傾けた。


「……プリン?」


「そう。僕の名前。」


「……。」


個性豊かすぎる名前に若干ビックリしたリリアンは、いや、人それぞれだしという感じで片付けた。


「……いい名前(いろんな意味で)……。」


「…照れる/////」


リリアンの言葉に、赤面しながら腕の中の枕に顔を埋める少年改めプリン。そのしぐさは愛嬌抜群。


「それで、お前の名前?」


枕から顔をちょこっと出し、リリアンを見るプリン。


「……私は……リリアン・ヴェルバー。」


「うむ、そっちもいい名前だ。」


「……ありがとう……//////」


プリンに負けず劣らず、赤面したリリアンはそっと顔を背けた。彼女にはプリンの枕のように顔を覆い隠せるような物はない。


「……ところで……ここはどこ?」


赤面から一転し、いつもの無表情のままリリアンはプリンに聞いた。


「む? ここは魔法学校の近くの森だぞ?」


「……魔法……学校……?」


「? 知らないのか?」


「【コクリ】」


「むぅ。」


黙ったまま頷くリリアンに対し、また枕に顔を埋めて考えるプリン。


「………………まぁ、いいか。」


「……そうね。」


何がいいのかさっぱりわからないけど二人は納得した。


「……それで、プリンは何でここに……?」


今度はリリアンが質問した。


「むぅ……ミントとココアと馬鹿犬が追いかけっこを始めたからここで待ってる。」


「…………。」


頬を膨らませたプリンをよそに、リリアンはキョトンとした。


「……何と、何と何?」


「? だから、ミントとココアと馬鹿犬。」


さっきと変わらない感じでリピートするプリンにリリアンはこめかみに一指し指を当てる。


「…………………もしかして、人名?」


「む? そうだ。」


さも当然という風に答えるプリン。前の二人はともかく、馬鹿犬って名前はどないやねん。


「……そう……。」


そんなこと気にすることなく謎を解明したような感じでリリアンは満足そうに頷いた。


「……あ、そういえば龍二達……。」


「リュウジ?」


ハッと思い出したかのように呟くリリアンに、小首を傾げるプリン。


「……ねぇ、さっき魔法学校がどうとか……。」


「うむ。僕はそこの生徒だ。」


「…………できれば連れてってくれない……? 他にも仲間がいて……もしかしたらそこにいるかもしれないし……第一、行くあてがないの……。」


「もちろんいいぞ。」


「……ありがとう。」


「……照れる////」


再び枕に顔を埋めてしまったまま歩き出したプリンの後をリリアンはトコトコとついていった。



今ここに、不思議ちゃんコンビが誕生した。








〜花鈴〜


「あったたたたたた………。」


リリアンとプリンが意気投合しちゃった頃、そこから数キロ程離れた位置の道で花鈴は落下と同時に打った頭を擦った。


「も〜……あんのバカ龍二の奴〜……。」


涙目になりながらも、幼馴染の悪態をつく花鈴。



「邪魔。」


「? へ?」


と、突然頭上からかなり悪意のこもった声で言われ、バッと振り返る。


そこにいたのは、撥ね捲くった黒髪と漆黒の瞳、そしてかなりのハンサムな顔をした少年だった。服装も全部黒。


「邪魔だと言ったのが聞こえないのか?」


「…………。」


そして先ほどの悪意ムンムンの声を発した張本人。とゆーより何故にキュウリを食っとる。


「…………。」


「……もう一度だけ言う。邪魔だどけ。」


かぁなり鬱陶しげな表情で花鈴に罵倒を浴びせる少年に、しばしきょとんとしていた花鈴。だが、だんだんと何を言われているのか理解してきたのか、顔が赤くなっていった。当然、怒りで。


「……アンタねぇ、誰だか知らないけどいきなり初対面に向かってその言い方ってないんじゃない?」


立ち上がり、なるべく声を抑えながらポンポンと服についた汚れを落とす花鈴。二人の身長はほぼ同じくらい。


「真実を言ったまでだ。邪魔なものは邪魔。」


怒ってる花鈴に何も思っちゃいないらしく、先ほどと全然変わらない口調で告げた少年はキュウリを一齧り。


「じゃ………まぁ!?」


「煩い黙れ。」


そしてキュウリを頬張りながらさらに追撃する少年とさらに顔真っ赤にさせる花鈴。


「………ねぇ、ごめん私軽くキレそうよ?」


「お前がキレて怒鳴ったとしても二酸化炭素が大量に発生する以外何も起こらんだろう。」


こめかみピクピクさせながら笑顔で言う花鈴とサラリと言う少年。何かもう普段の龍二とのやり取り見てるみたい。


「………………あんさ、アタシ純粋に初対面の人殴りたいって思ったの初めてよ。」


「やれるもんならやってみろ雑魚。」


どこからともなく何かが切れた音がした。


「ぶっ飛ばす!!!!」


とうとう花鈴は自慢の右拳を振り上げた。




「ちょっとーユウ? アンタさっきから何しt」


「『壮麗なる龍はすべてを呑み込む』」


「きゃああああああああああ!!??」


「って何でやあああああああああ!!??」


突如発生した巨大な水で出来た龍が花鈴と誰か知らないけど巻き添え食らった不幸な狐色のツインテールの少女を飲み込んだ。




「ユウー、こんなところで何してたの?」


「危うく巻き添え、です。」


「いや、ちょっとゴミの処理をな。」


「わぁ、ユウって自然を大事にするんだね。」


「……ま、まぁな。」


ツインテールの少女の後から来た銀髪の中性的な顔立ちをした少年と、栗色のセミロングの無表情な少女が来て、黒髪の少年は銀髪の少年に笑顔で言われて若干顔を赤くした。




そして彼らから離れた位置には水死体(注:死んでません)が二人。








〜龍二〜



「なぁ、これなんなんよ?」


「!? ふぁい!?」


龍二は先ほど倒したマンモスのような生物をゲシゲシと蹴りながらクリスマス少年に問いかける。聞かれた本人は現実世界に復帰し、変な声を上げた。


「え、えっと、何が?」


「いやだからぁ、これ。何でこんなでかいのがこんな森にいんだ? 後食えるのかこれ?」


龍二はありのままの疑問を口にし、ついでに野性味溢れることを口走った。


「え、えっと……この森に住んでる中で一番珍しい“ポンポン”っていう魔物で……まぁ一応食用には」


「シャキーン。」


「って何剣抜いてんのさ!?」


クリスマス少年が言い終わらないうちに龍刃を引き抜いた龍二にツッコむ少年。それに対し、龍二は頭に“?”を浮かべた。


「何って食うんよ。」


「ダメだって! それ一応絶滅危惧種なんだから!」


「ならいなくなる前に食わんとダメじゃん。」


「メチャクチャ言ってるよこの人!?」


今にも妙に可愛らしい名前をした生物、もとい魔物から肉を剥ぎ取ろうとしている龍二にクリスマス少年は全力でツッコミかました。


「ん、半分冗談はこれくらいにしようか。」


クリスマス少年のツッコミを聞き流しながら、龍刃を鞘に収めた龍二。


(((半分!?)))


そして彼の言葉に心の中でツッコむ少年少女達。


「まぁ、とによりかくよりだなぁ。」


気だるそうに頭をポリポリとかいた龍二は、改めて少年達に向き直った。


「オメェら何?」


今聞くんかい。


「…………あ、そういえば名乗ってなかったっけってか何って何!?」


一瞬、何言われたかわからなかったクリスマス少年は遅れてツッコミ入れた。


「あ、ちゃうちゃう。誰?」


「普通間違えるかそこ!?」


ツッコミご苦労様です。


「え、えっと私はー……………あ。」


少女が名乗ろうとしたが、何故か途中で止まった。


「? どした?」


「「「…………。」」」


龍二が首を傾げても、三人はその場で停止していた。しかも何か若干上向いてる。






『ブルルルル…………。』






理由は、さっき龍二がボッコボコにした魔物が、全身靴跡だらけのまま鼻息荒くして立っていたから。思い切り血管が浮き放題浮いてるし。


「「「…………。」」」


「おーい?」


『龍二さん、後ろ見たらどうです?』


「ほぇ?」


『ボオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』



頭の上に乗ってる珠に言われた瞬間、魔物が怒号を上げながら大きな足を振り上げた。



【ズドォン!!】

『モオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ……………』



ついでに龍二も右足をちょいと後ろへ振り上げ、魔物にちょこんと当て、ドカーンと吹き飛ばしてモーと叫びながらキラーンとお星様にした。



「で、だから誰お前ら?」


何事も無かったように、を通り越してむしろさっきの魔物の存在さえも忘れたかのように再び問いかける龍二。


「…………………み、ミント=ブライトです。」


「俺はポトフ=フラント……。」


「ココア=パウダー……。」


かぁなり縮こまった三人は、それぞれの名前を言った。


「…………………ほぉ?」


名前を聞いいた龍二は、意外そうな顔をした。


「うまそうな名前だな。」


「「「!!!!????」」」


瞬間、ギックゥ!! という擬音が出てきそうなほど飛び上がってから後ろへ下がる三人。


「あ? どったん?」


『完全に怯えられてるんだっつーの。そりゃあんだけでかいのを事も無げに蹴り飛ばす奴に言われたらビビるわ。』


「ありま。」


エルに言われ、龍二は頬をポリポリとかいて困り顔になった。


「……あ〜……んなびっくりせんでも取って食いやしねぇから。つか食えるか。」


「「「…………。」」」


イマイチ信用してない様子だが、さっきよりかは幾分マシになったようで三人は再び元の位置に戻った。


「さて気を取り直して……俺は荒木龍二。よろしく。」


「……よ、よろしく。」


右手を軽く挙げる龍二に、クリスマス少年改めミントも右手を挙げて返した。握手じゃないんだ。


「で、こっちが珠。」


「ミ。」


龍二の頭の上で同じようにビシッと右前足を挙げて挨拶する珠。


「…か、かわいー……。」


それを見て桜色の少女改めココアがときめいた。


「最後にこれ包丁のエル。」


『待てや。』


「おぉ! スッゲェ喋る包丁!?」


『黙れ貴様!!』


右腰に差してある包丁ならぬエルを見せると純粋な子供のように目を光らせる眼帯黒髪少年改めポトフ。


「え、えと……ところでリュウジはこんなところで何してたの?」


ミントがぎこちなくだが、そんな質問した。


「ん、何か俺もようわからんのよ。つかここどこだ?」


「……へ? リュウジって魔法学校の生徒じゃないの?」


龍二の答えに、ミントは再び質問。


「? 何だそのファンタジーに満ち溢れた学校は。知らん。」


当然のことながら、龍二は普通にそう返した。


「……じゃあどこから来たのー?」


「いやそれがよ、家で黒髭危機一髪ゲームしててな? うちの馬鹿な幼馴染が当たり引いちまってさぁ、黒髭に内臓されてた時限爆弾が爆発したかと思うと皆離れ離れの状態でこの状況。」


「ちょと待って百歩譲って黒髭やってたのはいいとして何で黒髭に時限爆弾内臓してんのさ!?」


「臨場感UP。」


「UP軽く通り越してあぶねえ!?」


さっきまで怯えてたのに今では普通にツッコみまくるミント。


「まぁ俺の方はどうでもいいとしてだな。」


「ちっともよくないし!?」


「オメェらは何してたよ? つか飛んでたよなミント?」


ミントのツッコミ軽く無視。


「えっとー、今日は暇だったから皆で箒鬼ごっこしてたんだけどー」


「あ、わかったそっから先言わなくていいや何か理解できないと思うから。」


ココアから聞きなれない単語を聞いてすぐさま龍二はバッサリ切り捨てた。


「いやぁにしてもあれだな。道迷ってて誰もいなくて困ってたところでオメェらに会えるなんてラッキーだな。」


「全然困ってるように見えないけどー?」


「まぁぶっちゃけた話全然困っちゃいねえ。」


「認めた!?」


『……オイ、ミントとやら。こいつにツッコミしてると疲れるだけだぞ?』


何かエルが同情してるし。


「……なぁ、それよりも皆バラバラになったって言わなかったか?」


「? 言ったぞ?」


ふとポトフが話に入った。


「いいのか? その人たち放っておいて?」


「いいじゃん別に。」


「全然よくないよ!?」


ミント、ツッコミお疲れー。


「……ん、待てよ……?」


だが、やはり皆が不安なのか龍二は顎に手を添えて考え込んだ。


「…そういや吹っ飛ぶ前に洗濯物取り込んでなかったっけか?」


「知らねえし!?」


残念、別の心配してた。


「まぁ、何だ。そのうち会えるっしょ?」


「……何ていうか、ポジティブというか楽観的というか。」


もはやクッタクタなのか、ミントはツッコむのを諦めた。




【ググオオオオオオオオオオオオ!!!!!】

「「「!!???」」」




突然、森に響き渡るほどの大きな轟音が周囲を揺るがした。


「な、何だぁオイ!? 魔物かぁ!?」


「………そういや腹減ったなぁ。」


慌てるポトフ達をよそに、龍二は一人腹を抑える。


「……なぁ、オメェらさっき魔法学校がどうとか言ってたよな?」


「え、言ったけど…。」


「ワリィけどそこ連れてってくんねぇか? 行くアテがねぇし、腹減ったんだわ。」


そう言って、腹を擦る龍二。


「い、いやいいけどさ、それよりさっきの咆哮…」


「? 俺の腹の音がどうかしたか?」


「あ、何だ腹の音かぁ…………って腹の音ぉ!?」


一瞬、納得しかけたところでミントが再びツッコミ入れた。


「ちょっと待ってさっきの咆哮みたいなの腹の音!?」


「そうだが何か?」


「「「…………。」」」


三人の脳裏に、こいつ人間じゃねぇ、という考えがよぎったとかよぎらなかったとか。


「ホラ行くぞ。何ボサっとしてんだ。」


「「「……あい。」」」


何かものっそ疲れた三人は、俄然元気な龍二に付いて行った。


この先、何が起こるのか……不安でしょうがない。








「あのー、そっち逆の道だよー?」


「あらま。」


冗談抜きにホント不安だ。


はいやっちゃいました勇魔以上日和! 今回の第一話、どうでした? キャラが若干おかしいと思うかもしれませんが、そこはそこで目を瞑っていただければハッピーです。後これ長編ですから、終わるのはいつになるのかわかりません(コラ)。


というわけで、よーし記念に表紙を描くぞー! と意気込んでみました。



丸と線だけしか描けないことに気付きましたOTZ



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